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殺人鬼は、息をするただの肉よりマシ。

下手でわかりにくい文章かもしれませんが、暇潰しに読んで頂けたら、幸いです。

錆びれた2階建てのアパートの前に着いた。泥田くんの部屋は、2階の角部屋。赤茶色に錆びた階段をかしゃかしゃランドセルを揺らしながら登る。階段は体重をかけると少し嫌な音がし、手すりを掴むとざらついて、錆がつく。両手で払い、先に進むゆうくんの後ろについて行く。ゆうくんはときどき遠慮なく足を踏みおろすので階段が少し揺れる。

「ちっちょっと!きみは、力が強いからかなり控えめに!」

廊下を進み、

「ここ」

と無表情でついっと顎で示した茶色の扉が泥田くんの部屋だ。

「インターホンがない」

と言い、拳を握り、ゆうくんはちらりとこちらの顔を見る。それしかないよねという感じうなづき、拳を振ろうとしたので、

「待たんかい!」

両手で振りかぶった拳を掴む。こいつは自分の力の強さをわかっちゃいない。コンクリートの壁をぶち抜ける子だぞ。

「お手本見せちゃるから、じっとして!」

拳を握り、第二関節で優しく、しかし音が響く程度の強さでコンコンと叩くと数秒後、遠慮がちに扉が少し開き、隙間ができた。得意顔でゆうくんの顔を見ると無表情で流石という感じで拍手をする。顔を出し、こちらと目が合ったのは、同級生の沼田 聖くん。ガリガリの細く長い腕で扉を開ける。ホリが深い、大きな目をしている。

「はよ、泥田くん」

軽い挨拶を言うと

「おっ ぉはようぅ」

動かない真っ青なくちびるから辛うじて聞き取れる発音で挨拶をしてくれる。いつも通り少し酸っぱい匂いがした。いつもと同じ服を着ており、学校へ行く準備をしてあるかはわからない。泥田くんは、裸足で外に出て、扉を閉める。こちらをちらり見て、廊下を進む。それについて行く。アパートの敷地内の隅っこで泥田くんはこちらを振り返る。手元を見つめ、申し訳なさそうに話し出す。

「父さんがちょっと寝てて。妹を置いて行けなくて、2人にしちゃダメなんだ。多分、どうしたらいいかわからないから」

足元を見つめ、真っ青な唇を動かして、申し訳なさそうに伝えてくれた。

自分とゆうくんは無表情で聞いた。可哀想だなとか同情しているよという顔をしてはいけない。ガチャリと後ろで音がした。泥田くんの家に目を向けると自分たちよりもふたまわりは小さい女の子がいた。黄ばんだシャツを着ており、サイズも合ってないからワンピースのようだった。それを見た泥田くんは、ふらりとまた部屋の方に戻って行こうとする。頼りない背中だが、しっかりと兄としての責務を果たそうとしている。まだ、誰かに守られなければならない子なのに。理不尽な出来事は、誰にでも起こることだ。珍しいことじゃない。しかし、共感を忘れてはいけない。心が不感症になったら、人は息をするただの肉に成り下がる。自分でさえ、殺す人間への共感を忘れたことは無かった。そのとき、ガリガリの泥田くんの体がガクンと後ろに傾く。ゆうくんの手が彼の細い腕を掴んでいた。しっかりと目を合わせて、

「明日も迎えに行く。明後日も」

ぽかんとした泥田くんは、その言葉を聞き、くしゃりと泣きそうな笑顔で、

「ありがとう」

と呟いた。家に戻ろうとする泥田くんの腕を引き、

「絶対来るから」

と力強く伝える。

「うん、ありがとう」

「絶対だから。」

「あっありがとう」

「絶対」

「うっうん」

「・・・・・」

「ひぃぃぁぁ」

「もういいよ、ゆうくん。泥田くんを離しな」

「ぼくの約束は絶対」

「もういいって!」

引き剥がそうとするもびくともしない。流石だとしか言いようが無い!体の造りが違うやつは!そんなやりとりをワタワタやっているとひょこりと泥田くんの後ろから妹さんが顔を出した。目元が泥田くんと似ている子だ。少し不安げな妹さんの前にしゃがみ目線を合わす。少し酸っぱい匂いがした。

「お名前は?」

「しんじゅ 3さい」

と指を2本出した。

「この子は妹の真珠。4歳だよ」

「数字の情報が全部違うな」

「まだ、算数が出来ないから」

申し訳なさそうに呟いた。

横にいたゆうくんが真珠ちゃんに手を伸ばし、未成熟な体をひょいと持ち上げ、目線を合わす。そのまま上にあげ、下にさげるを繰り返す。そして、膝を曲げ、腰を落とし、真珠ちゃんの体を下げる。嫌な予感がしてきた。不思議そうに泥田くんはその光景を見ていた。ぐぐっと踏ん張っている。ゆうくんの足下を見るとミシリッと地面にヒビがはいる。

「なっなにを?」

止めようとした瞬間、勢いよくゆうくんの体が飛び上がったかと思えば、手から真珠ちゃんの体が離される。スーパーボールのように真っ直ぐ。そのままアパートよりも高く空へ登ってゆく。

「ギャッー!ギャッー!ギャッー!ギャッー!」

泥田くんは横で発狂し、何度も飛び上がった。真珠ちゃんが空の上で一瞬止まったかと思えば、そのまま重力に引っ張られ地面に向かってくる。真っ直ぐ地面に引っ張られ、そのままゆうくんの手元に収まる。足がブラン揺れ、ぽかんとした顔で真珠ちゃんは脱力していた。ゆうくんはいつも通り無表情で、

「小さい子は高い高い好きだよ」

「2度と自分より小さい生き物に触れるんじゃねえ!」

こいつはちゃんとフェミニストではない!

「嫌い?」

ゆうくんは、目線を合わせ、グニャリと力が抜けている真珠ちゃんに尋ねる。

「もっもぉいっかいぃ」

ヒィヒィと息も絶え絶えで呟く。なんか変なスリルに目覚めていないか、この子は!

「よしきた」

とまた、腰を落とすので、泥田くんと虫のようにゆうくん飛び掛かる。


これからもよろしくお願いします。

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