表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

健全な小学生

コツコツ頑張ります。

 小学生は夜寝て、朝起きる。

目覚し時計が鳴り、止めれば、時刻は午前7時。朝ごはんを食べる、身なりを整える、荷物のチェックする時間は十分にある。夜行性だったときが懐かしい。

 小学生は毎朝、朝ごはんを食べる。

自室から出て、リビングに行くと皿にベーコン、卵焼き、サラダ、小さなロールパン2つ。ナイフとフォークで食べる。きちんとマナーを守って。もう尖ったものを逆手で持つようなことはしない。

 小学生は、バランスの良い食事を取る。

タンパク質、炭水化物、野菜に含まれる補助的栄養素を体に取り入れる。横にある牛乳をコップに注いで、〆の1杯。タンパク質をやたら親がやたら取らそうとするのは、この体の健康か、成長への投資か?

そんな投資家の女性は、鼻歌を歌いながら洗濯物を庭に干していた。

 小学生は清潔感が大事。

しっかりと歯を磨き、寝癖も治す。

自室に戻り、着替える。インナーを着てから、なかなか上質なシャツと黒のハーフパンツをタンスから取り出す。

私服で登校するが故に、普段来ている服から相手の生活のレベルや親の顔が見透かされる。制服を積極的に導入すれば、そんなことは起きないだろうに。丁寧にアイロン掛けされたシャツに腕を通す。ハーフパンツを履いた後は、鏡の前で一回転。

 小学生は重いランドセルを背負う。

持ち物を時間割で確認し、ランドセルにしまう。

背負いあげるとベルトが肩に食い込んで、シャツに皺ができる。学習指導要領が増えたかなんかで教科書の厚みが少しずつ増していき、積もり積もってこのざまだ。毎日、8キロ近いランドセルをえっちらおっちら学校へ運び、また家へとえっちらおっちら運んでいる。玄関の靴箱から長靴を出し、屈んで履く。背負ったランドセルが下に傾き、よろけるも踏ん張り勢いよく背筋を伸ばす。人間生きていくのに、そんなに必要なものがあるのか?円周率が3になっても困るのは1部の人間だけだろう。

小学生は、挨拶をきちんと言う。

「いってきます」

リビングに向かって、この体の母親(投資家)に声をかける。

「はーい、ちょっと待ってー」

パタパタと音を立て、出てきたのはひっつめ髪にした40代後半の女性。洗い物をしていたのか、手をエプロンで拭きながら駆け寄ってくる。

「はい、今日の分」

手を伸ばし、この小さな体を包み込む。自分も小さな手をそっと相手の背中に回した。

「ふふっ、今日は素直ね」

「諦めているだけだよ。いくつまで続けるの」

肩に顎を置き、相手の耳元で呟いた。

「あなたが大人になる日までかなー」

「あと、13年は続くか。長いなー」

「親からしたら、あっという間よ」

はいはい、と適当に切り上げて家を出た。

むず痒い、生暖かいものが。

優しさか愛情、母性、慈愛などなど彼女が自分に対して与えたいものが、日々の生活の中で感じている。

なんといったらわからないが、ちょっと前までは?前世か?得られなかったものが満たされた生活。

家を出て、向かう先は近くにある集団登校の集合場所の公園。公園入り口前の柵の近くには、班のメンバーが集まっていた。そのうちの1人、同じ黄色い帽子を被った少年がこちらに声をかけてきた。

「おはよう 麦ちゃん」

「おはよう ゆうくん」


自分は元殺人鬼である。来世では、名前が無かった。


今世では、善秀小学校 1年1組 好中 小麦 7歳


性別 女


来世で殺した人間は数知れず。

今世では、実りのある人生を送りたい。

最近の小学生の荷物は重いらしいですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ