【短編】男だった俺、女の子になってしまったけど「恋愛対象は女ですから」と言って告白してきた少年を振ったら女装して猛アタックしてきた
ただいま連載中なのでよろしければ下記作品も見てください!
ツンデレ幼馴染みは負けヒロインっ!?~二人そろって負けヒロインとなった幼馴染みがただただ仲良くするお話~
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「好きです、付き合ってください!」
「ごめん、無理。」
雲一つない青空。校舎裏にある大きな木の下で。
俺は自分よりも背の低く小柄な少年に告白をされた。
俺は反射的に無理であることを伝え、その場を立ち去ろうとする。
ざわざわと俺を呼び止めるかのように風が吹き荒れる。
長く腰まで伸びた髪が風によってなびく。
スカートがふわりと浮かび上がり思わず手でスカートを抑えつける。
「見たか?」
俺は少年に声をかけた。
「……い、いえ。……やっぱりボクが男だからダメなんですか。」
少年は俺の問いかけに対して視線を逸らす。
恥ずかしそうに顔を真っ赤に染め上げた。
少年は首を左右に振り雑念を振り切ったのか、真っすぐと俺の目を見つめる。
そして告白がダメだった理由を問いかけた。
「そうだ。俺は今でさえ女になっちまってるけど、だからと言って恋愛対象まで変わるわけじゃないからな。」
少年の本気度が伝わった。
なら俺も正直に話さなければならないなと思って言葉を口にする。
◆◆◆
1ヶ月前の出来事だった。
俺は目が覚めた時、大事なモノを失った。それはあまりにも突然で、衝撃的だった。
ここが漫画の世界だったなら異世界転生時に性別が切り替わってしまう。
落ちると女性に変化してしまう池に落ちてしまった。
性転換する病気にかかってしまった。薬を飲まされて変化する。
など色々と考えられるだろうけど、肉体はいたって健康的。
伏線なんて全くなく朝起きたら、あれが消えていた。ただそれだけだった。
そして無くなったことをきっかけに俺の肉体はだんだんと作り替わっていった。
筋肉質だった俺の体から徐々に筋肉が胸の脂肪へと変化していく。
髪の毛も少しずつ伸びていく。
坊主頭だったのに今では腰までだらりと髪の毛垂れている。
せっかく女性の体になったのだ。
男の姿ではできないことをやってみよう。そう思って俺はセーラー服を着用して現在に至る。
◆◆◆
「伝わったか?だから、体は女になっちまったけど、恋愛対象まで変わったわけじゃねーんだ。」
俺は素直に全部伝えた。
突然女の子になってしまったこと、せっかく女の子になったんだから今を楽しんでるだけだと。
「……つまり、女の子が好きってことでしょうか。」
少年は何かを思案するかのように確認を取った。
「あぁ、そうだ。」
俺は淡々と答えた。ちゃんと伝わっただろうか。
俺は少年をゆっくりと見つめる。
「わかりました。」
少年は俺の視線に気付いて会釈する。
納得したのだろうか、そのまま少年は俺の元から立ち去っていく。
俺は少年が真剣な瞳をしていたのに、簡単に引き下がってしまったことに違和感を覚える。
だけどその違和感についてどうすることもできない。
名前くらい聞いておけばよかっただろうか。
だけどもう会うこともないだろうと思い。俺はゆっくりとまぶたを閉じた。
今日は授業サボるか。
こんな姿で授業に出ても男の俺を知ってる奴らから見たら気味悪く思われるだろうし。
さっきの少年とのやり取りを見られていたら冷やかされるかもしれない。
少しだけ心の整理をする時間が欲しかった。
俺はその足で学校の屋上へと忍び込む。
鍵の管理が緩い学校でよかったなと思いつつ屋上へついた俺は寝転がった。
セーラー服は汚れちまうかもしれないけど、まぁいいか。
俺は心地良い風に吹かれてそのまま夢の世界へと足を踏み入れてしまう。
あれからどれくらいの時間が経過したのだろうか。
体をゆさゆさと揺すられている感覚に気付いて目を覚ます。
目の前には美少女がスケッチブックを持って立っていた。
昼間に告白してきた少年と同じ背丈くらいの小柄な少女だった。
髪の毛は2つ結びをしたおさげが垂れている。
少女はスケッチブックに文字を書いている。
俺は少女の可愛い小動物のような仕草に少しだけ心臓が高鳴った。
少女はスケッチブックを俺に向ける。
『目は覚めましたか?』
「あぁ、ありがとな。どうした、喋れないのか。」
俺は少女の頭をポンポンと撫でた。
少女は目を丸くして顔を真っ赤にした。そして小さな汗がピッピッピと飛ぶかのように焦っている姿が見えて面白い。
少女はスケッチブックをめくりあげて、せかせかと文字を書いている。
文字を書き終えた少女はスケッチブックを再び俺に向けて恥ずかしそうに顔を隠した。
『はい。……あと、撫でてくれたのはとても嬉しかったです。』
俺は胸がキュンと苦しくなる。
なんだこの生き物は。俺は抱きしめたくなる。
だけど、俺は中身は男、見た目は女の世にも変わった人間だ。
突然抱きしめたら通報されてしまうかもしれない。
グッとこらえて俺は少女に話しかける。
「なんだ俺に用事か?」
『はい。』
少女はスケッチブックを俺に見せつけた。
1枚紙をめくりあげるとそこには。
『好きです。付き合ってください。』
俺は思わず「こちらこそ」と答えそうになるもグッとこらえる。
少女は俺のことを好きと言うが本当に俺なんだろうか。
こんなに可愛い子が俺を騙すとも考えられないし、一目惚れなら……本当の俺を知っても好きでいてくれるのか。
頭の中に不安が過ぎる。
だけど話さないのはフェアではない。そう思った俺は思い切って本当のことを話すことにした。
その上で、ちゃんと好きだと言ってくれるなら付き合おう。
「実は俺、1ヶ月前まで男だったんだ。今は女の姿になってるけど、だからそんな俺でもいいなら……。」
俺が本当のことを話しきる前に風は思いっきり強く吹いた。
ふわりと浮かび上がるスカートを手で抑えつけて中が見えないようにする。
風が吹き終わった後、目の前には少女ではなく少年が立っていた。
女子生徒の制服に身を包み、スケッチブックを手に持ったまま。
遠くには先ほどの風で吹き飛ばされたであろうウィッグが転がっていた。
「あっ……。」
少年は小さく言葉を漏らして手に持っていたスケッチブックで顔を隠した。
「おい。」
俺は少年を睨みつけた。
『ごめんなさい、諦めきれなくて……。』
少年はスケッチブックに文字を書く。
先程までの少女と同じように書いた文字を見せつける。
俺はその仕草に思わずドキドキとする。
ゴクリと生唾を飲み込むも、少女が少年であると再度自覚をして雑念を振りほどく。
「人の想いだ、簡単に切り替えられるものじゃないってことはわかる。」
俺は少年を諭すような口調で問いかける。
「だけど、騙して付き合おうとするのはよくない。それは男らしくないことだ、わかるな。」
少年は俺の言葉を聞いてスケッチブックを床に置いた。
「……わかりました。」
少年は俯いた様子で何かを思案する。渋々、俺の言葉を了承する。
「なら、男らしく正々堂々と女装して堕とすことにしますね!」
少年は顔を上げる。俺に対してにっこりと元気のよい笑顔をむけた。
「は、ハァ!?な、なんでそうなる!!」
「だって、欲情してましたよね?だったらボクにもチャンスはあるかなって思いまして。」
俺は少年の言葉に思わず動揺する。
少年は俺の様子を見てクスクスと小悪魔的な笑みを浮かべた。
「ぜ、絶対に惚れない!!」
「いいえ。絶対に堕としてみせますから。」
こうして俺たちの恋愛バトルは開幕するのだった。
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