第8話 東の森の怪物
赤いドラゴン出現。
第8話 東の森の怪物
翌日、蔵光達はメイド派遣事務局『ビューティフル・マーメイド』を出発すると、一路『東の森』に向かった。
『東の森』は文字通り、タイトバイトス皇国にある四つの森のうち、東にある広大な森である。
大きさはヴェレリアント領の三分の二程の広さを誇るが、それでも、南北の森に比べればかなり小さい。
これら四つの森は、昔から魔物が跋扈する森であり、最奥部には主と呼ばれる最強の魔物が住んでいると言われていた。
また、それらの森にはそれぞれ魔女と呼ばれる森の管理者がいて、それらの魔物を抑えていると伝えられていたが、ギャラダスト家のセブレインの話では、魔女達は、それら魔物達と外から来る冒険者等の者達とを会わせないようにするために存在していたと説明を受けていた。
そして、その魔女が忽然と森から消えた。
魔女がいなくなった今、魔物の主が暴れ出して森の外に出てきた場合を想定すれば、そのままにする事は出来ない。
今のところそれらの魔物の主が暴れだしたという情報は入っていないが、これらの魔物の主に関する情報が全く無いため、万が一の可能性を考えて森の中の魔物の主がどのような者であるのかということについて、現場に行き調査、とりあえず確認することが現在の最重要課題となっていた。
当然ながら凶暴な魔物と化していれば討伐もやむ無しといった状況となるであろう。
魔導飛行船は『東の森』の上空までやって来た。
そこは広大なジャングルであり、また、森の中は平面ではなく、山あり谷ありといった起伏に富んだ地形をしている。
蔵光が直ぐ様、生命体感知を展開する。
「ああ、いっぱい気配があるよ。というよりも、気配が多すぎて大変だぞこれは…」
ヘルメスやザビエラも気配察知をしているが、その量に驚く。
飛行船は森の中に一部開けた場所に停船させた。
そして、オルビアとトンキは飛行船で留守番ということとなった。
全員が空にホバリングしている飛行船の中から外へ飛び出した。
蔵光、ヘルメス、ザビエラ、ゼリーは飛翔魔法が使えるというか、全員が高魔力の持ち主であり、体の中の水分を魔力操作で操り浮かせているだけなので、飛翔魔法は使っていない。
ちなみに飛翔魔法のシステムは魔力で飛ばしたいものを包み込んで空中を浮遊させ移動させるというものであり、これも基本的に魔力操作に近いのでどちらでも良いのだが…
蔵光達が『東の森』の西の端あたりに降りてきた。
大きい魔力の気配はこの奥から感じられていた。
「よし、行こう。」
蔵光が先頭になり、森の中へ進んで行く。
小さい動物はまず、襲ってくることはないが、魔物は小さくても襲ってくる事が多々ある。
魔物、つまり『魔力のある生物』は魔力と動物が融合した生物であるが故に、魔の力にかなり左右されていることは間違いなかった。
負の魔素を吸収して凶暴化し、あるいは巨大化して、森の生物同士で喰いあい、段々と強くなっていく。
森が大きければ大きいほど魔物の数が多くなり、それにともない自然淘汰、弱肉強食が加速する。
また、森の中心に行く程、強い個体が残り、また、個体数が極端に少なくなってくる。
蔵光達が通る道も、最初は弱い個体が数多くいた魔物が、奥へ進むほどに少なくなる。
「大分、魔物の数が減ってきたな。」
蔵光が生命体感知を拡げたが数十kmの範囲にはいなくなっていた。
森の木々もかなり巨大化しているものが増えてきた。
このまま進めば恐らくは古龍クラスの強さを持つ個体もいそうである。
「負の魔素も『悪魔素』に迫るくらいの濃さのところもありますね。」
とヘルメスが言うと、ザビエラが『魔素口』から出ている負の魔素を『聖神力』で浄化する。
最近では、ザビエラやトンキは負の魔素の補給がいらなくなったため、今ではトンキが魔造魔石に貯めてきた負の魔素などはこのザビエラの勇者の力で浄化させている。
ヘルメスやザビエラ等は『聖神力』のおかげで負の魔素に対する耐性があるが、実は蔵光も『魔素口』を封印する関係上、多少なりとも耐性があるので負の魔素による被害等はない。
ゼリーも吸収除去する力を持っているため、特に問題はないが、普通の冒険者らがここに立ち入ればたちまち死んでしまうであろう。
ちなみに森の魔女達は、大体、森の入り口から少し入ったあたりに住んでいたためなのか魔素の被害はなかったようだが…何にしても、人間にとっては苛酷な森であることには違いない。
「こんな森があったなんて、知らなかったよ。」
蔵光が辺りを見回してその感想を述べた。
蔵光達、水無月家の者達が負の魔素が吹き出している『魔素口』を封印するのは宿命であるのだが、これまでは、広いこの世界でたった数人の者達が小さな魔素の吹き出し口を探しだして封印することには限界があった。
ごく最近になって、『魔素口探索魔導機』通称『マソパッド』が開発され、さらに改良を加えた事により飛躍的に封印の数が増えた。
それに伴い、世界の地形が判明し、新たに負の魔素が吹き出している森や火山地帯などが把握されるようになってきたのだ。
このタイトバイトス皇国の『四つの森』もそのうちのひとつであった。
以前、ヴィスコの操作でマソパッドを起動させ、負の魔素が吹き出す地域を確認した時、世界の各地に『魔素口』が沢山あることがわかり、この『四つの森』の事もその時に知ったのだ。
いずれは立ち寄らなくてはならない場所であるとわかっていたが、画面で見るのと、今回、実際に来て見るのとでは全く違っていた。
ノースヨーグの森も大きかったがここはそれ以上に広い。
広大な森であればあるほど魔物は強大となる傾向がある。
それは、この森に入って直ぐにわかった。
「来た!」
蔵光の生命体感知にひっかかる生き物がいた。
ヘルメス達もそれに気付く。
「これは、大きいですね。」
ザビエラも近付いてくるその生き物の姿が目に入った時に、思わず声を出す。
巨木の森に現れたその生き物は、ギガントシープという巨大な山羊であった。
体高が大体30mはあろうか、そこから頭の高さや角の大きさを入れると約50mくらいにはなりそうである。
まあ、この山羊は雑食で、草や果物のほか、小動物も食べるため、人間は気を付けなければならない。
下手をしたら食べられてしまう恐れがあるからだ。
今回、遭遇したギガントシープは、蔵光達を襲ってくることはなかったが、繁殖期等で気が立っている時等はかなり注意が必要だ。
というのも今回は単体だが、繁殖期は群れを成しているため、そんなモノに出会ってしまったら災害にあったと諦めるしかないからである。
ギガントシープが、地面に倒れている倒木を踏むと、それは大きな音を出して砕ける。
蔵光はその横を普通に通り過ぎる。
森から外の世界に出て、人間に危害を加えようとするモノであれば討伐もやむを得ないが、基本的に森の中で普通に生活している生き物を蔵光はどうこうする事はない。
ギガントシープがこの森の生態系を回している生物であれば無理に討伐する必要はないからである。
逆に討伐する事によって森の生態系が壊れてしまっては元も子もない。
だが、しばらく先を進んだところに、その生態系すら壊すモノが現れる
オルビアが予言した『赤いドラゴン』である。
それは、気配を殺して蔵光達に近付いてきていた。
ただ、蔵光の張っていた防御結界魔法によって惨事は免れた。
オルビアの警告がなければ結界を張ることはなかったかもしれなかった。
巨木の脇の茂みから、それは現れた。
いきなり、全員に食い付いてきた。
だが、防御結界に弾かれたことで、初めて攻撃をされたことに気付く。
だが、姿は確認出来ない。
相当の巨体であるはずなのに、草の揺れすら感じさせない。
「アカン、こいつは気配遮断と認識阻害を使ってきとる!」
とゼリーが叫ぶなり、こちらも全員に透明化と気配遮断の魔法を掛ける。
『水蓮花』の『念話version』を全員の『水蓮花』に付与する。
『こいつのユニーク能力はこれやったんか!』
とゼリーが唸る。
『相手が見えない、感じられないとなるとこれは長期戦になるな。何かいい手立ては無いのかな?』
と蔵光がゼリーに言った時、信じられない事が起こる。
全員の透明化と気配遮断が解除されたのだ。
『こ、これは?!まさか、魔法が無効化されているのか?』
と蔵光は直ぐに高速思考で判断する。
「魔法の無効化に、自分は気配遮断と認識阻害を持っているなんてチートやろ!」
ゼリーが叫ぶ。
ゼリーの魔法が解除されるということは、ゼリーの魔法に、赤いドラゴンの魔力が干渉しているからであろう。
ということは魔力値は当然ながら1億以上になる。
「ゼリー、俺が囮になる!『魔法無効』の効果に範囲があるのなら少し離れてから二人を空間に!」
「わかった!」
いくら『魔法無効』だとて無効にすることが可能な範囲があるはずであり、蔵光はそれに賭けたのだ。
蔵光はゼリー達に当たらないように、如意棒を振り回す。
如意棒は物凄い唸りを上げて周りの木々を砕く。
こちらが見えない敵であっても、大きな音がすれば一瞬の事なので相手はそちらの方を絶対に見てしまう。
いわゆる『ヘイト』の気配を蔵光が出して、相手の注目を集めたのだ。
「今や!」
ゼリー達は蔵光が作ったその隙を利用して、直感的にドラゴンがいないと思われる方向へ移動する。
これも賭けであった。
相手はチート能力持ちだが速度だけなら何とかドラゴンに勝てるだろうと判断したのだった。
結果、その判断は正しかった。
ゼリーは一瞬のうちにして蔵光から100m程離れると、何とか魔法無効の効果の範囲外に出ることが出来たのか、ヘルメスとザビエラに触れて体内の空間魔法の空間に入れることが出来たので、自分もその中に入る。
次に蔵光は、その場で自分自身のスキルである気配遮断と認識阻害を使用する。
スキルは魔法ではない。
なので魔力を使わないため、解除されたりはしない。
高速で移動して身を潜める。
『これで、条件は同じだ。でも、魔法は?』
蔵光は以前、アサッテというSSS級の冒険者と対戦したことがあったが、その時もアサッテの能力で『魔力封じ』というものを使ってこられた時があった。1-62
その時は魔法を使わなかったのでよくは分からなかったが、今回は、魔法を使えるならば使った方が良いであろう。
もし使えれば、ただ、単に魔力値が、ゼリーより高いだけであろう。
だが、魔法が使えない場合は、『魔法無効』等のユニークスキルを持っている可能性が非常に高い。
蔵光が、自分の指先に魔力を込めた。
普通であれば、空中に水玉が浮かぶはず。
だが、全く水玉は現れなかった。
『やっぱり、『魔法無効』か…仕方がない。スキルだけで戦うしかないか…』
蔵光が考えを切り替える。
蔵光は魔法が使えないからと言っても、慌てる事はない。
彼には『超剛力』というスーパースキルがあるので、魔法が使えないということは、彼にとって大したハンデでもなかった。
蔵光は気配遮断と認識阻害で草むらの陰に潜んでいたが、手に持っている如意棒を伸ばしはじめる。
『流石の奴も、巨体をずっと空中で維持している事はないだろう。それにさっきのゼリーの空間魔法の展開位置からして『魔法無効』の効果はある程度近くにいないと発動しないはずだろうし…』
と蔵光は考えた。
これはもうひとつの蔵光の賭けでもあった。
魔法が展開しないことから、恐らく赤いドラゴンは地面に足を着けて近くに立っているであろうという賭けである。
「うおーらああぁぁーーーー!!!」
蔵光が自分を中心にして如意棒を横殴りの様に回転させた。
先程の速度よりもかなり速い。
バキバキバキッ
あまりの高速のため辺りの巨木が蔵光の水魔神拳の『水化月』で斬り倒されたように斬られていく。
幹の太さが10m以上もある木をだ。
恐るべき怪力である。
ゴバァァァーー
如意棒が一周回りきる前に、鈍い感触が蔵光の手に感じられた。
その瞬間、体長が100m近くもある赤く巨大な龍が目の前に現れた。
それは真っ赤と言うよりも赤黒いメタルレッドの様な鱗に覆われているドラゴンだった。
蔵光の攻撃により気配遮断と認識阻害が解けたようだ。
よく見ると前足と後足、そして、尻尾の一部が切断されている。
「ゴアアアーーー!!」
ドラゴンの叫び声が森の中に響き渡った。
蔵光の賭けが当たった。
蔵光の『ヘイト』攻撃の後、赤いドラゴンも蔵光達を見失っていた。
どこかにいるであろう蔵光を見極めて仕留めようと、木の陰に潜み、静かに辺りの様子を伺っていた。
だが、それが失敗であった。
魔法さえ無効化していれば大丈夫であろうと思っていた。
まさか、蔵光が巨木をも斬り倒す力を持っているとは知らなかったのだろう。
茂みの向こうから何やら大きな音が聞こえてきたと思ったら、いきなり前後の足が切断されてしまった。
そして、その激痛ため、つい気配遮断と認識阻害の魔法を解除してしまったのだ。
そして、それが勝負を分けた。
蔵光は赤いドラゴンの姿を認識すると、すぐに弾丸のような速度でドラゴンのところまで行き、如意棒でその首を叩き落とした。
時間にして数秒。
一瞬の出来事であった。
鋼鉄のような皮膚と鱗を持つドラゴンであっても蔵光にかかれば、その体も豆腐の様なものであった。
「ふう、中々、手強い奴だったな。」
と蔵光が言うと、ゼリー達が亜空間の中から戻ってきた。
「主ぃ、お疲れさん。流石やわ。」
「ありがとう。何とか退治できたよ。こんな奴もいるんだね。驚いたよ。」
「それを退治する主にワイは驚くわ。」
と言うと、ヘルメス達が笑う。
「あんな個体がいたんですね。驚きました。」
とザビエラが、巨大なドラゴンの死体を見て驚いている。
爪や牙などは通常の個体よりも金属の様な感じがして、かなり硬度が違うようであり、また、鱗についても古龍のレベルと言って良いほど、硬く大きなものであった。
ゼリーが、
「これは金になると言うよりも研究の対象やな。一応持って帰ろか。」
そう言って空間魔法で赤いドラゴンを収納する。
蔵光が、
「まだこの先に、もっとすごい奴がいるんだろうか?」
と言って森の奥を見る。
森は再び何事も無かったかの様に静けさを取り戻していた。
ト「『東の森』こええー!」((゜□゜;))
ヴ「ユニーク個体って強力な魔法が使えるんだ」
(@ ̄□ ̄@;)!!
マ「あれ、どうするのかな?」( ゜ 3゜)?
ヴ「あの死体は多分、依頼分だから、ギルドに持って行くでしょ。それで討伐確認をしてもらう。その後はギルド、若しくはオークションで買い取って貰うでしょうね。」
( ̄^ ̄)
マ「あんな値段が高そうな奴、誰が買うのかな?」
(; ̄Д ̄)?
ト「国じゃないの?ゼリーさんも言ってたし、あそこは魔法学校もあるしね。」
(。・д・)ノ
ヴ「それが、妥当なところだよね。確か、研究棟があったし。」
(* ̄∇ ̄)ノ
おいおい、君達!また、本編レベルの話をしてるぞー!(`Δ´)
それをしたら、私の本編ネタが無くなるから止めなさい!でも、まあいいか。
(o゜з゜o)ノ




