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水無月蔵光の冒険譚~第二部 古代地下帝国の謎を追え  作者: 銀龍院 鈴星
第一章 古文書の謎
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第7話 ビューティフル・マーメイド

新たな味方です。

第7話 ビューティフル・マーメイド

蔵光達一行は、グランマリアにある大きな商家に立ち寄っていた。

既に辺りは真っ暗であり、建物の入り口の扉の横にある燭台の灯火が寂しく光っていた。

辺りにある他の建物の窓からぼんやりとした光が漏れ出ている。


商家の名前は『ビューティフル・マーメイド』と言って、ここグランマリアでも、一、二を争う人材派遣業者であり、冒険者ギルドのような冒険者を派遣するのではなく、『メイド』、つまり清掃、洗濯、炊事などの家庭内において労働を行う女性の使用人を派遣する組合であった。

だが、ここは単なるメイドの派遣業を営んでいるわけではなく、家事や炊事などをキチンとこなす一方で、一般常識や礼儀作法に対する徹底的な教養を行い、それが同社の一定水準以上のレベルに至ってからでないと雇い先に派遣はさせないように徹底している。


ここの主人はアイネス・マルキアーナという女主人でこの国の貴族や皇室にも、絶大な信頼を寄せられる程の実力者である。

またメイドを派遣する事に関して、その派遣されたメイドの洗練された立ち居振舞いは貴族達の間でも大変重宝されており、その人気が高まり過ぎて、今やアイネスの所のメイド派遣は数ヵ月待ちとも言われる程であった。


「失礼するよ。」

蔵光が『ビューティフル・マーメイド』の会社事務局となる建物のドアを開ける。

建物は街中に建てられている他の建物と同じモロマネスク様式の建物である。

頑丈そうな石の土台や太い柱に厚い石やレンガの壁等の他、比較的小さめの窓などの特徴を持つ。


建物内に入ると直ぐのところは、少し大きめのホールとなっていて、入口横には受付の窓口と、その奥には個室型の相談窓口がいくつか設けられていた。

また、VIP用の部屋も二階にあり、出入口のドアも明らかに造りの仕様が違うようだ。


蔵光の声が聞こえたのか、奥の方からここの関係者と思われるメイド服の女性が現れた。

まだ、20歳そこそこというところであろうか、若い感じであるが、落ち着いた雰囲気であり、さすが『ビューティフル・マーメイド』のメイドという感じである。


「いらっしゃいませ、申し訳ありませんが本日のお取り扱いは終了しておりまして…」

とそのメイドが言うと、蔵光は、

『俺は水無月蔵光という者だけど、アイネスはいる?』

蔵光はいきなり、ここの主人を呼び捨てにする。

だが、それを聞いたメイドは、ハッとした表情となり、

「少々お待ち下さい。」

と言って慌てて奥に入って行った。

本来、正式な客ならばどこかの部屋に通して待たせるところであるが、急な訪問のため、その場で待たされる事になったようだ。


しばらくというよりも、そのメイドが奥の部屋に入ると直ぐに、奥から30代半ばくらいの女性が小走りでやって来た。

普段は落ち着いているのであろうが、今はめちゃくちゃ慌てている様子である。


「蔵光お坊っちゃま!」

その女性は蔵光の前に駆け付けるなり、蔵光をそう呼んだ。

「やあ、アイネス久しぶりだね。」

蔵光も相手の事をよく知っている様子である。


「お久しぶりでございます。蔵光お坊っちゃまも相変わらずお元気そうで何よりでございます。」

とアイネス呼ばれた女性が深々と蔵光にお辞儀する。

アイネス・マルキアーナは、ハッキリ言って綺麗系の美人である。

年齢が34歳、身長が170㎝とやや高く、 細身だが筋肉質でスタイルもめちゃくちゃ良い。

髪はやや黒系の茶髪で、瞳の色はグレーがかった様な薄い水色をしている。

服装は、メイド服ではなく、グレーのパンツスーツでベージュのパンプスを履いていた。


「昨年の『魔海嘯』の件、お手柄でございました。隣のヴェネシア王国でしたので、いつかこちらにお越しになられるかとは思ってはおりましたが…まさかこんなに早くお出でになられるとは全く思っても見ませんでした。こんなことなら、連絡を頂いておれば直ぐに出迎えをさせて頂きましたのに…」

とアイネスは興奮して(まく)し立てていたが、はたと、蔵光の連れに気付き、口を手で押さえる。

「失礼しました。私ともあろうものが…少し興奮してしまいました。」

と頭を下げる。


「で、あの、こちらの方は?」

とアイネスはヘルメス達を見て尋ねる。

「ああ、ここにいるのは、俺の所属している冒険者ギルドのクランズ『プラチナドラゴンズ』のメンバーだよ。」

と蔵光が言うと、隣にいたヘルメスが軽く頭を下げる。

「クランズのリーダーをしているヘルメス・カース・ヴェレリアントです。」

そう言うとヘルメスはアイネスに手を出して握手をした。

「あ、貴女がヘルメス様ですね、蔵光お坊っちゃまが大変お世話になっているとか…ありがとうございます。」

「え?いや、こちらこそ、蔵光殿にはいつもお世話になっております。」

とヘルメスが返す。

その後は、ザビエラ、オルビア、トンキ、そして、ゼリーが紹介された。

「この子が噂のゼリーちゃんね。可愛い!」

とアイネスはゼリーを見るとニコッと笑ってゼリーを抱え上げる。

そして、ギューっと抱き寄せる。

「うわープニプニしてるー!気持ちいい!」

と頬を擦り寄せる。

ゼリーもされるがままにしていたが、流石に、

「お前、いきなり何してんねん?」

とツッコミを入れる。

「あら、ごめんなさい。そう言えばゼリーちゃんはおしゃべりが出来たんだっけ?」

アイネスはどうも可愛いモノ好きのようであった。

「当たり前や!初対面の奴にいきなり抱きつかれたんなんか初めてやわ!」

とさらにツッコミを入れた。


「紹介が遅くなりました。私、このメイド派遣事務局『ビューティフル・マーメイド』の局長をしております。アイネス・マルキアーナと申します。よろしくお願いします。」

とみんなに頭を下げる。


「さあ、皆様、お疲れでございましょう、奥でお食事の用意をさせていますので、しばらくお待ち下さい。」

と言って、二階のVIP室に蔵光達を案内する。

VIP室は、応接室部分と、奥に宿泊も可能なスイートルーム仕様の部屋が設けられていた。

中の調度品は、皇室御用達でもあるためか高級品ばかりで揃えられ、室内の造りもピカピカに磨かれた大理石等をふんだんに使って作られていた。


全員が部屋の高級ソファーに座るとアイネスが口を開く。

「蔵光お坊っちゃま、今日は一体?」

「うん、『東の森』の調査の事なんだけど?」

と蔵光が言うと、アイネスの目付きが急に鋭くなった。

「お坊っちゃま?!」

アイネスが他のメンバーを見回す。

それを見て蔵光が直ぐに、

「ああ、ヘルメス達なら大丈夫だよ。『忍』の事を知っているから。」

と事情を説明すると、アイネスの表情が柔らかくなる。


「そうでしたか、では…」

そう言うとアイネスはヘルメスに、

「ヘルメス様、(わたくし)、アイネス・マルキアーナとは仮の姿で、実はこの地に入っております『クノイチ』の一人『(さざなみ)』と申します。この名前は普段隠していますので、皆様はアイネスとお呼び下さい。」

と本当の名前を名乗った。

クノイチとは『女の忍』の事であり、『女』という字を『くノ一』のように分解したものをそう呼んでいるのだ。

そして、アイネスはその『クノイチ』を束ねる女の頭領であり、ここの『ビューティフル・マーメイド』のメイドはいずれもジパング王国の『クノイチ』であった。

そして、メイド派遣の傍ら、街中やメイドの派遣があった屋敷等において諜報活動を展開しているのだった。


「あの『東の森』の事件は我々もかなり衝撃を受けております。」

とアイネスが少し残念そうな表情となる。

「というと?」

「はい、ここの皇室と一部の貴族、ギャラダスト家等は、この事実を知っているのでしょうが、東の魔女やビーレイクの村人達もいずれかに移動させられているようでして…それが私共にも全く足取りが掴めない状況でして…」

とアイネスが言うと、蔵光が、

「ああ、それがね…」

と先程、ギャラダスト家から聞いてきた話をする。

「何と、それは本当ですか?東の魔女も村人も急に消えてしまったと…」

「そうなんだよ。ギャラダスト家のハーネストも、この事態には驚いているようだったよ。」

そう言いながら、『古文書』の件も併せて説明するとアイネスは、

「では、その『古文書」に今回の『東の魔女』やビーレイク村の住民達の失踪事件の謎が絡んでいると…?」

「恐らくね…なのでエージに今、解析をおねがいしているんで、それを待つしかないのかなと…」

「なるほど、で、蔵光お坊っちゃまは『東の森』には行かれたのですか?」

「いや、まだ入っていないんだよ。」

「そうでしたか、まあ、あの森には十分気を付けて下さい。私共にも手に負えないような魔物がたくさん徘徊していますので。まあ、お坊っちゃまでしたら大体は大丈夫でしょうけど…」

と言って口許に手を当てて笑う。


「うん、わかった。ありがとう。」

蔵光もアイネスに礼を言う。


部屋のドアがノックされる。

「用意が出来たようですね。では、皆様、お食事の準備が出来たようですので、食事をしながら、ごゆるりとおくつろぎ下さい。」

アイネスがそう言うと部屋の中に、メイド集団が料理を持ってやって来た。

座っていた席の前のテーブル上に、ドンドンと料理が置かれていく。

よく見ると、どれも手の込んだ料理ばかりであり、いつの間に作ったのであろうかと思うくらいの速さと量である。


蔵光達は、食事を終えると、その日はこの『ビューティフル・マーメイド』の宿泊所に泊めさせて貰うことになった。

まあ、魔導飛行船に泊まっても良かったのだが、アイネスが是非とも泊まって欲しいとせがむため、半ば仕方なくといったところであった。




ト「メイド集団って、これ全部『忍』ですか?」

(o゜з゜o)ノ

ヴ「みたいですね。」(*´∇`*)

マ「『クノイチ』に切り替わった瞬間に『冥途集団』に変化するという訳ですね?」

(* ̄∇ ̄)ノ

冥途(めいど)…死者が行く暗黒の世界。あの世。冥界(めいかい)冥府(めいふ)。(Google調べ)


ちょ、こえーよ、マッソル!((( ;゜Д゜)))


では次回もよろしく!ヾ(´∀`*)ノ


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