第6話 セブレインの話
いきなり、伝説暴露か?
第6話 セブレインの話
セブレインから聞かされた話はこのような内容であった。
その昔、タイトバイトス皇国のある地域はマリガトリア帝国と呼ばれていた。
今と違って、広大な地域を支配していたマリガトリア帝国は、一部の土地で、魔物に統治を許していた。
それが現在のタイトバイトス皇国の辺りであったと言われているらしい。
最初は静かに暮らしていた魔物達だったが、次第に凶暴性を増し、それら統治されていた魔物がその勢力を強大化させはじめた。
マリガトリア帝国の帝王アズマンがその地域を沈静化させようとした時に戦争に発展した。
魔物が反乱を起こし、周辺の地域にも被害を及ぼし始めた。
アズマンは流出する魔物の大群を抑えるために四人の魔法使いを招致した。
そして、この魔物の住む地域から魔物を出させないように申し付けた。
アズマンには魔物を滅ぼすという考えは無かった。
彼は、人間が住んでいる地域については訳あって戦闘行為により手に入れたものもあったりして、事実上、支配の形を取らざるを得なかったが、魔物については、魔物と対等の立場に立つ『共存』を考えていた。
というのも彼は魔物の一部に知能を持った個体がいることに着目し、それらの者達と意志疎通を図り、交友関係の拡大を積極的に進めようとしていた。
これにはアズマンのある思惑があった。
だが、彼の家臣は魔物は所詮、低級な知能しか持ち合わせていない生き物であり『支配』で十分であると言う者もいた。
彼は悩みに悩んだ『支配』か『共存』か…
ある時、彼は決心し、それを実行した。
アズマンには強力な魔法があった。
彼の出自は全く誰も知らなかった。
彼は全ての支配を解き、魔法により世界を反転させ、地中深くにその帝国を沈めた。
そして、その頃、自分の配下となり、魔物を統治していた『四獣』と呼ばれる魔物にその沈めた帝国の入口を守らせた。
さらに、アズマンは『時の魔法』を使い、その四人の魔女に『四獣』が住む森の管理をさせた。
良からぬ考えを持った人間を『四獣』に接触させぬために。
そして、森の存在はいつしか『マリガトリアの伝説』として伝えられ、あたかも四人の魔女が4つの森の魔物の主を抑えているかのような話となっていた。
その四人の魔女の一人サンマーサがある日、突然、森からいなくなった。
ちょうど一年くらい前の話らしい。
「それって、かなり核心に近い話ですよね?」
ヘルメスがセブレインに尋ねる。
「ええ、それは『東の森』の魔女サンマーサから直接聞いた話ですから。」
「えっ?『東の森』の魔女?それは何代目の魔女なんでしょうか?」
「何代目も何も、魔女は彼女達四人だけですよ。アズマンという者の『時の魔法』により何千年という非常に長い時間を与えられたのです。」
「ええっと、それが事実だとすると彼女達は一体、どれくらい前から森に住んでいたんですか?」
「帝王アズマンがあそこを四つの森に変えた時だから、約7000年前になる。」
「な!7000年前…」
そこにいた全員が言葉を失う。
そんな話を誰が信じるだろうか、ハーネストが言えないというか言っても信じて貰えなかったから言わなかったのであろう。
「それが、ちょうど一年前にその『東の森』の魔女サンマーサから言付けをされました。」
「言付け?」
「はい、それが、例の『古文書』です。彼女はもうすぐ、自分達はこの世に姿をとどめていられなくなるだろうと言ってあの『古文書』を渡してくれました。」
「あれは、四人の魔女の持ち物だったのですか!?」
「そうです。そして、もし、森に異変が起こり、四獣が暴れる様なこととなればこの古文書を使って『四獣』を止めて欲しいと…」
「えっ?四獣って帝王アズマンの配下の魔物じゃなかったの?」
「確かに、彼等はアズマンの配下ですが、本来は魔物の王達です。彼等にもかかっていた『時の魔法』が解け、四人の魔女の様に消えたりせずにこの地上に残っていたとしたら、もし、アズマンとの約束を守らず、地上の人間に害を成すことになれば、…私達ではどうすることも出来ません。ですから、水無月一族の力を借りて、この事態を何とか切り抜けることが出来ないものかと思い、依頼をしたのです。」
「なるほど、わかりました。」
とヘルメスが頷く。
「あの、ビーレイクの住人はどこにおるんや?」
「すみません、彼等はサンマーサが消えた時に、同じようにして消えていなくなったのです。」
「何やて?!消えたやと?」
「はい、村人全員がいなくなりました。」
「なんや、別の所に移住しとるんと違うんかいな?わかったと思ったら全然わからんようになったわ!」
ゼリーが大きな声を出して側に置かれていたソファーに飛び込むように倒れる。
「ですが、そんな事が起こっていると国民が知れば暴動になります。」
ハーネストが事態の深刻さを説明する。
「だから、今でもビーレイク産の名前で農作物等を定期的に王都に入れて、ビーレイクの村人が今も村にいると偽装していたと…」
ヘルメスも高速思考で事の流れを読み取っていた。
「その通りです。」
セブレインが事実を認めた。
「村の者が帰ってくる可能性は?」
「わかりません。あの『古文書』を読み解く事によって、何か事態を打開することが出来ないものかと…魔法学校グランマリオンにも持ち込んで解析をかけたのですが、全くどの言語にも属さない古代文字であり、解読不能でした。ですがもしかすればジパング王国の力で何とかなるのではないかと思い、ジパング王国と交流のあるヴェレリアント辺境伯に依頼をお願いしたと言う訳なのです。」
「なるほど、そういうことでしたか。わかりました。」
「まあ、あの言葉がわかるんは今のところワイとエージとチョッコだけやろからなあ。」
とゼリーがソファーに寝転がりながら呟く。
「えええーーーっ!!??」
セブレインとハーネストが目を点のようにしてゼリーを見る。
「わ、わかるのか?あの言葉を…?」
セブレインがゼリーに恐る恐る尋ねる。
まあ、確かに、誰しもそんな反応になるだろう。
「君は一体…何者?さっきも私のご先祖様の名前を出したり、今もチョッコって、それって、チョッコ・クリム様の事でしょう?」
とハーネストもゼリーという青色の半透明のネコが話す言葉に反応する。
「何者って?ワイはワイ、ゼリーや!何者でもないわ。」
とゼリーが言うと、蔵光が笑いながら、
「ゼリーってちょっとズルいよね。少しずつ話の切れ端みたいな言葉を話の中に入れて、それで相手に興味を持たせるだけ持たせて、核心は話さない。この間のチョッコ・クリムさんが出てきた時もそうだったけど。」
と言うと、ヘルメスも、
「言われてみればそうかな。そこまで言ったんなら言えばって感じする時ある。」
と蔵光の話に便乗する。
そして、その言葉を聞いたゼリーが言い返す。
「お前ら、そこまで言うか?あーハイハイわかりました、ちゃんと話します。でも、これは国を、いや世界を揺るがす事になる事実であると言うことを踏まえた上でワイはギリギリのところで黙っているんやで。それをワイがしゃべることにより、一度人の口に乗ってしまったら、もう二度と後戻りはでけへんからな!」
とゼリーが啖呵を切る。
確かに、7000年前に帝国をひっくり返したアズマンが書いたと思われる『古文書』を読み解く事が出来る者がこの場にいるということは、再び、世界をひっくり返すことが可能、若しくはひっくり返してしまう恐れがあるという事になる。
ましてや、それが『日本』という国から転生した者にしかわからない言語であると判明したときには世界に衝撃が走ることは間違いない。
そんな重要事項をホイホイとしゃべって良いものなのかと言うことをゼリーは言っているのた。
「それを言われるとなあ…」
蔵光やヘルメスもそれには少し躊躇する。
「まあ、当たり障りのない程度で説明したらエエんと違うか?」
とゼリーが妥協案を出してきた。
転生の事実を秘密にして、遠い国の、未だに未把握であった国の言語であるとした上で、説明することとした。
そして、あの古文書の表紙の魔石に付与されていた文字をこちらの世界の言葉にして再現した。
◇◇◇
『ここに我が帝国の全てを記す。知りたくば、合い鍵を探せ、それは年の始まり、北の火の神より昇る太陽を拝む時、その中心に眠る。だが、汝ゆめゆめ忘れることなかれ、それは支配ではなく、また共存でもない。恐怖がその決断を急がせた。』
◇◇◇
「なるほど、あの不思議な文字はこの様な意味だったのですね。でも、『年の始まり、北の火の神より昇る太陽を拝む時、その中心に眠る。』この意味が全く見当がつきません。ただ、最後の方の『支配』と『共存』は何となく分かるのですが、『恐怖がその決断を急がせた。』という下りの文の意味もわかりません。」
とハーネストがため息をつきながら呟くと、ゼリーが、
「結局、四人の魔女に聞かな、わからんちゅうことやな。あと、『四獣』ってオッサンが言うてたんで思い出したんやけど、ワイらの国では『四獣』とは東の青龍、西の白虎、南の朱雀、北の玄武っちゅうのがあるんやけどな…オルビアの話では東の森には青じゃなく赤いドラゴンがおるみたいやし…やっぱりちょっと違うみたいやし、ようわからんな。」
と言って謎がさらに深まる。
「合鍵もどこにあるのかな?」
蔵光が、謎の合鍵の場所の記述を気にする。
ゼリーが自分の推測を説明する。
「『年の始まり、北の火の神より昇る太陽を拝む時、その中心に眠る。』と言う言葉に鍵があるとするんやったら、北の神は玄武、つまり北の森の方から昇る太陽の方角、つまり東の方角を拝むということや、そして、その中心とは大陸の真ん中、この西の大陸の中心地、ちょうどヴェネシア王国の北部あたりか、グリエイドラ国との国境辺りぐらいか…」
「でも、その辺りには何も無いな…」
ヘルメスがゼリーの説明を聞いたが、地元だけにその場所に何も無いことを知っていた。
「そうか、そしたら、そこやあらへんな。」
ゼリーはあっさりと自分の考えを取り下げる。
そして、
「やっぱり、エージの解析を待たなアカンかな?」
と呟く。
「Mr.Mが『古文書を無理にこじ開けようとしたら燃える』とか言ってたけど大丈夫かしら?」
とヘルメスが言うと、
「まあ、エージはそこら辺りはしっかりしてるから大丈夫やろ。ただ、なんで火の魔法の仕掛けがしてあるってMr.Mは知っとったんや?それもグランマリオンの解析結果か?」
とゼリーがハーネストに尋ねる。
相手が貴族だろうが何だろうが、ここまで、不敬で偉そうな従魔も珍しいが、言動というか喋る内容が既に只者でないので、ハーネストもゼリーに敬語を使い始める。
ゼリー恐るべし。
「ええそうです。とりあえず、東の魔女からは何か仕掛けの魔法がしてあるとだけ聞いていましたので、トラップ魔法の解析だけを先に進めた結果、施錠部分に仕掛けがありました。掛け帯紐が合鍵無しで外されると燃え上がる様に呪文が付与されていることが解りました。」
ハーネストがそう説明すると蔵光が、
「そしたら、すぐに水をかけて火を消したらいいんじゃないの?」
と思ったままを口に出す。
「主ぃ、そんな簡単やないで、火の魔法は文字が書かれた紙全体に掛けられているんや、水を掛けようが、水の中に入れたままにしようが一瞬で消し炭になるような魔法やで。」
「えっ?そうなんだ。火の魔法って凄いね。」
と蔵光は普通に感心していた。
魔法オタクの蔵光は魔法の特性を知るだけでもすごくうれしいことなので、そんな魔法があるということを聞き、すごく興奮していた。
この感情は、精神異常耐性無効の除外部分らしい。
ということで蔵光達は、クエスト拒否の件を一旦保留にして、ギャラダスト家の屋敷を出た。
既に外は真っ暗であった。
ハーネストが屋敷に泊まっていってはどうかと言ってくれたが丁重に断った。
ヘルメス達にはもう一つ立ち寄る所があったからだった。
マ「魔法学校って楽しいのかねえ?」(´ー`)┌
ヴ「魔力があればそれなりにね。」(・д・)ノ
ト「ギャラダスト家のジュリエッタさんも魔力が強かったのかな?」(-ω- ?)
ヴ「そりゃ、魔法学校の特待生だったらそうなんじゃない。」
( ̄へ ̄)
マ「あー魔法って一回使って見てえなあ。こう、バーンって!」
(* ̄∇ ̄)ノ☆☆)
ト「マッソルには無理だよ。」(ヾノ・∀・`)
マ「だよな。ちげえねえ、ハハハハ」( ´∀`)
まあ、マッソルに一度くらいは魔法を使わせても面白いかもな。
マ「へ?」
では、また(o・ω・o)ね。