第5話 首都グランマリア
タイトバイトス皇国のグランマニア
に入りました。
第5話 首都グランマリア
蔵光達が急遽、タイトバイトス皇国の首都グランマリアに入る事となった。
それは、ビーレイク村の無人状態のことやそれが『東の森』と関係していることなのか調べるためであり、国の関係者から色々と聞くことが出来るからであった。
ヴィスコもグラマリアに行きたそうだったが、急ぎの話でもあり、今回はシンディーナの家に泊まることになっているため、ヴィスコの『魔法学校グランマリオン』行きは次回持ち越しとなった。
詳しい内容は『水蓮花』で話を聞かせてもらうということで折り合いがついた。
蔵光達は、魔導飛行船でタイトバイトス皇国の首都グランマリアの近くまで飛んで行った。
移動手段が飛行船になってからというものは、移動時間が短縮され非常に便利にはなったが、これまでのように移動の途中で、見つけた魔素口の封印をする作業が出来なくなったことが蔵光にとっては少々痛い。
だが、空の旅というのは普通に自分だけ飛ぶのではないので、これはこれで蔵光には味がある様で、魔素口の封印は後で一人でボチボチとやっていこうかなと、本人は思っているようである。
ドラグナーがグランマリアの上空にやって来た。
上空から見えるグランマリアの街並みは非常に美しく、黄緑色の瓦屋根で統一された街並みは観る者に感動を与える。
首都を囲む外壁の外にドラグナーを降ろす。
当然だが、騒ぎになっても仕方がないので機体には透明化と気配遮断の魔法を掛けてある。
これも、エージが、巨大魔石に付与している魔法を、スイッチひとつで飛行船全体に展開出来るような操作システムに設定しているからだそうである。
全員が船を降りるとゼリーが体内で展開している亜空間の中にドラグナーを収納する。
そして、徒歩で街の外壁の一角にある検問所に行く。
夕暮れ時のため人の出入りが多いのか、検問所前に人の列が出来ていた。
蔵光達はその列の最後尾に並ぶ。
検問所には、大きな体をした門番が何人か立っていた。
しばらく並んでいると、ようやく蔵光達の順番が回ってきた。
「よし、次の者、こちらへ。」
一際大きな門番兵士が蔵光達を呼ぶ。
門番が検問所に置かれた板状の魔鉱機を指示して、
「ここに、通行証、もしくはそれに代わるものをかざすように。」
と説明する。
蔵光達は言われた通りにギルドカードの指輪をかざす。
全員が青色の光を灯す。
「コレは?」
門番がゼリーを指差して尋ねるが、その言葉にゼリーが食いつく。
「誰がコレや!ワイは物とちゃうで!」
ゼリーが大声で門番に突っ込みを入れる。
「う、うわあ!しゃ、しゃべたあー!」
大きな門番がその声に驚いて尻餅を付く。
普通は魔物が喋ることなど殆ど無いため、初めてゼリーを見たものは大抵驚く。
「どうした?!」
と他の門番がこちらに駆けつける。
「こ、こ、この、ま、魔物が…」
尻餅を付いた門番がゼリーを指差す。
「何!お前達!一体何をした!?」
他の門番が手に持っていた槍をヘルメス達に向けて構える。
その対応にヘルメスが驚く。
「えっ?いや、いや私達は何もしていないぞ、その門番が、私達のところの従魔がしゃべったのを聞いて驚いて腰を抜かしただけだろ。」
と説明したが、腰を抜かした門番はそれが恥ずかしかったのか、
「う、うるさい、黙れ黙れ!俺がそんな魔物に驚いて腰を抜かすものか!お前達の誰かが俺を押し倒したのだろう!」
と本当のことを隠して、蔵光達に体を押したと因縁を付け始めた。
「な?何を?!」
驚くヘルメス。
とんでもない言い掛かりだ。
「と、とりあえず、お前達の身柄を拘束する!」
尻餅門番は、そこ門番達の中では一番の偉いさんだったらしく、他の門番に蔵光達の身柄を抑えるように指示をする。
指示をされた門番達が蔵光達を取り囲んだその時であった。
「ちょっと、お待ちなさい!」
女性の声であるが、その声を聞いた途端に門番達の動きが止まる。
「は、ハーネスト様!」
尻餅門番が急に直立不動の状態になる。
そこにはスラリとした金髪の女性が立っていた。
年齢は20代後半くらいで、身長は160cmくらい、背中まで伸びた髪の毛をいくつか三つ編みにしている。
ほっそりとした顔立ちで、瞳は街の屋根の色に似た、黄緑色にやや青みがかった色をしている。
服装は、軽装のワンピースであるが、かなり上等な布地を使っているようで、直ぐに貴族関係者と判断できた。
「貴方はこの方達がどなたかご存知なのですか?」
とハーネストと呼ばれた女性が尻餅門番に尋ねる。
「い、いえ…あ、こ、こいつらは冒険者ギルドの冒険者達です。先程、街に入る手続き中に、私を押し倒しましたので捕まえようと…」
「本当ですか?」
ハーネストが追及する。
その表情は誰が見てもかなり厳しい様に見える。
「へっ?あ、いや、その…」
尻餅門番の顔がひきつる。
自分の嘘がハーネストにバレているのかどうなのかわからずドキドキとしている。
「それが、本当なら引き立てるのも結構でしょう。ですが、それが嘘ならば、明日の今頃には貴方の首はその胴体には付いてないと思うことです。」
ハーネストが冷徹そうな目で尻餅門番を見る。
それを聞くと尻餅門番はガクガクと震え出す。
そしてヘナヘナとその場に座り込んだ後、急にハッとした顔になり、
「す、すみませんでしたー!私の勘違いでしたー!どうかお許し下さい!」
と言うなり、その場に土下座をして、蔵光達に平謝りする。
「わかったら、エエんや!」
ゼリーがドヤる。
「こら、ゼリー!」
蔵光がその態度を見て注意する。
そして、門番達がハーネストに頭を下げてその場を離れる。
ハーネストが蔵光達に近付いてきた。
「先程は、私共の兵士が大変失礼を致しました。お許し下さい。」
と言って頭を下げる。
「あの…貴女は?」
ヘルメスがハーネストに尋ねる。
「私はハーネスト、ハーネスト・ラムダ・ギャラダストと申します。初めましてヘルメス・カース・ヴェレリアント様。」
ハーネストは自分の身分を明かすと共にヘルメスの名前を口にする。
「ギャラダスト家の方?私の事を御存知で?」
「ええ、先程、ビーレイク村をお発ちになられて、こちらに向かわれたと連絡が入りましたので。」
「えっ?」
これに驚いたのが蔵光だった。
誰かに見られていたのかと思ったが、あの周辺には全く人の気配は無かったはずである。
それなのに、ビーレイクにいた事や、グランマリアに向かった事まで知られていた。
気配察知には相当の自信があったのだが自分達の行動が相手に筒抜けだったことに少しショックを受けた。
「遠隔視魔法か?」
ゼリーが答えを導き出す。
「正解です。こちらの従魔さんは大変お利口ですね。」
とハーネストはニッコリと笑って応えた。
「遠隔視魔法って?」
「遠くにいる鳥や動物などを使役して、その者の視覚を共有し、遠くにいる景色を見ることが出来るという魔法や。」
「ビーレイク村に人の気配は無かったけど、確かに他の動物は沢山いたな。」
蔵光は納得し、そして、ある事に気付く。
「も、もしかしてビーレイクの村は?その使役した動物を使って掃除を?」
「なるほど!それならば無人であっても管理は出来る。」
ザビエラも納得していた。
だが、それについてはハーネストは何も答えす、どうも様子が違うようだった。
「ようこそ、グランマリアへ!さあ、ここで立ち話もなんですから、私の屋敷にお出で下さい。」
とハーネストが検問所の奥で待たせていた魔導車に案内する。
「『忍』の人に会う必要無かったかな?」
と蔵光がこそっとヘルメスに言うと、
「そうみたい。」
とヘルメスも眉を片方だけ下げて口をへの字に曲げる。
蔵光達が魔導車に乗り込むと、静かに魔導車は動き出した。
街の中は上空から見るのとは違って、整備された街並みや建物の造り、街の人の流れ等、一味違う印象を与える。
車に乗りながら、ヘルメスがハーネストに話を聞く。
「もしかして、古文書の依頼をしたのは?」
「はい、それも私どもです。」
ハーネストはニコリと笑って応える。
「詳しい事は屋敷に着いてからお話しますので。」
そう言うとハーネストは再び厳しい表情で前を向いていた。
タイトバイトス城は白亜の城とも言われる程白く美しい形をした城で、螺旋のように配置された円塔と居館等が組み合わされた構造とその周囲に高い城壁が築かれている。
ギャラダスト家の屋敷はその王城の近くに建てられていた。
家柄もあってか、かなり大きな屋敷である。
街全体に特徴的な、黄緑色の瓦屋根を使用し、重厚な石造りの建物で、美しいモロマネスク様式の建物であった。
ギャラダスト家の屋敷に着くと、直ぐに品の良い来客用の部屋に通された。
ヘルメス達はテーブル席に案内され着席した。
ヘルメスはハーネストに色々と質問があったが、特に先程のビーレイク村の事が気になっていたため、早速質問をした。
「あのビーレイク村の件で質問があるんですが、何故あのように無人の村を維持しているのですか?あれは国の方針なんですか?」
とヘルメスが聞くとハーネストは少し間を置いて、
「あ、あれは、村の者達が何時でもあの村に帰れるようにと考えて維持されています。」
「いつでも帰れるように?それはまた、どういう事なんでしょうか?それに聞いたところによると、何故かここにはビーレイク産の特産品も定期的に納められているとか?」
ヘルメスがそう言うとハーネストが体をピクリと動かす。
「そ、それはここでお話しできません。」
「『東の森』に関係することでしょうか?」
「それも言えません。」
「『東の森』に関係していることならば、我々のクランズも知っておくべきではないかと思いますが?」
「いえ、それは…すみません。」
ハーネストが答えに詰まる。
「『東の森』とは関係ないとも言えんちゅうことは関係があるっちゅうことやな?」
ゼリーが言うと、
「想像におまかせします。」
とハーネストが言うとゼリーがキレる。
ハーネストの態度にかなり怒っている様子である。
「はあ?お前、さっきから何言うてるんや?立場わかっとるんか?お前らがこの依頼を頼んで来たんやで?それやのに何にも話せません、言えませんってどういうこっちゃ?!おう、ヘルメス、こんな奴の話なんか受けることないで!」
と捲し立てる。
こんなにキレたゼリーも珍しいのだが、確かにハーネストは情報を隠し過ぎの感じがある
「いや、それは困ります。」
「困るんやったら、ちゃんと説明せんか!お前らの先祖のジュリエッタの方がもっと物分かりがよかったで!」
「な?そんな、自分が見たこともない人の事を持ち出してくるなんて、ひどいですね!」
「アホか!見たことないも何も、ジュリーは、チョッコが失意のどん底にあった時、カキノタまで励ましに来てくれたんや、お前みたいな隠し事だらけの陰険な女と違うわ!」
ゼリーはつい300年前の事を持ち出してしまった。
「あ、あなた、一体何の事を言っているの…?」
ハーネストの顔が何か恐ろしいものを見るような目をしている。
300年も前の人物の事を、今見てきたように話す従魔に何か恐怖を感じたようだ。
「あ、言い過ぎた。」
ゼリーが口を押さえる。
ゼリーはハーネストが、チョッコを励ましにやって来ていたジュリエッタの子孫だからこそ、自分達にはキチンとした誠意ある対応をしてもらいたいという気持ちがあった。
にも関わらず『言えない』とか『想像にまかせろ』とかという、依頼した相手に対して普通では考えられない常識はずれの態度を取られたことにブチキレたのであった。
「確かにゼリーが言うとおり、事情を何も話せないとなると、私達も依頼主のことを全く信用することが出来ません。ですから、この話は無かった事に…あと、そう言うことですので、古文書の件も受けかねますので、後で古文書の方は返却させてもらいます。」
「よっしゃ、ヘルメスよう言うた!」
ゼリーがヘルメスの言葉に頷く。
「え?そ、そんな…」
ハーネストは突然の依頼の拒絶話に泣きそうな顔となっている。
まさか、『東の森』の件だけでなく『古文書』の件も突き返されるとは思っても見なかったようだ。
ハーネストは何も言い返せずオロオロとしている。
ヘルメスらが席から立ち上がった時、横から声がかかった。
「お待ちください。ヘルメス様…」
それは男性の声であった。
蔵光達が声のする方に頭を向けると、年配の男性が立っていた。
年齢は50代中頃で、身長は175cmくらい。
がっしりとした体格に立派な服装。
金髪に黄緑色の瞳はハーネストと同じである。
直ぐにハーネストの父親であろうと思われた。
「何でしょうか?」
ヘルメスが応えると男は続けて話す。
「少し、私の話を聞いて頂けませんでしょうか。」
「あなたは?」
「ハーネストの父親でセブレイン・ラムダ・ギャラダストと言います。」
「はっ!これはセブレイン侯爵、失礼しました。」
ヘルメスが胸に手を当てて、頭を下げる。
蔵光達も会釈する。
セブレインはヘルメスの父親バジルスと同じ階級であり、ギャラダスト家は『東の森』を含めたあの周辺地域を領地として治めていた。
「私の知る限りの事を、今からお話しましょう。」
こうして、セブレインの口から今回の古文書から『東の森』の件に至るまでの話の経緯が語られるのであった。
ト「ハーネストさんてジュリエッタさんとどれくらい離れているのかな?」
ヾ(゜0゜*)ノ?
ヴ「マソパッドで調べてみた。ジュリエッタさんを初代としたら6代目らしいよ。」
(* ̄∇ ̄)ノ
ト「さすが、ヴィスコ、世界中の人の事を良く知っているな。」
(゜д゜)
ヴ「あの人が有名な魔法使いだったから。掘り下げて調べてみただけ。」
( ̄^ ̄)
マ「へえー、ハーネストさんは魔法も凄いという事か…」
( ・∀・)
ヴ「昨年の『世界中の魔法使い100選』に選ばれている。」
ヽ(´・ω・`*)
トンマッソ「へえー!すげー!」
!!ヽ(゜д゜ヽ)(ノ゜д゜)ノ!!
そんな人をゼリーは、ぶった切りしてたよね。
怖いもの知らずというのは恐ろしいです。
でわでわ(´・ω・`)/~~マタネー