第42話 最強の転生者アズマン
アズマンの過去編始まります。
第42話 最強の転生者アズマン
蔵光達の時代を遡ること約7000年前、魔法世界マーリックが生まれて間もない混沌とした世界であった頃、『岩の国』と呼ばれる国の国王に一人の男子が誕生した。
名前をマキーオといい、国民は新たな王子の誕生を祝福した。
彼は、生まれながらにして恐ろしく魔力値が高く、また、何をするにも優秀で、勉学や武術も飲み込みが早く、5歳を過ぎる頃には、家来の誰も敵わなくなっていた。
そんな彼が10歳を過ぎた頃。
ここはお城の中にある王の間。
「父上!」
マキーオが岩の国の国王である父親ガイゼルーダに声をかけ、物静かなガイゼルーダが王の間の奥に据えられた王座に座りながらマキーオに返事をする。
「どうした、マキーオ?」
「実は、私、旅に出たいと思いまして…」
「何と、旅をとな?」
「はい、私も既に10歳を過ぎ、この国で学ぶことも無くなりました。なので、今後は旅に出て見聞を広めたいと思いまして…」
「なるほど、お前は既にこの国のどの兵士よりも強く、どの学者よりも賢い。世間には『かわいい子には旅をさせろ』とか言う奴もおるらしいからな。」
「では?!」
マキーオの目が輝きに満ちる。
「うむ、マキーオ、お前の旅立ちを許そう。だが、自分の命は大切にしろ。この世界には『神の子孫』と呼ばれる人種や『神の血を受け継ぐ者』と自称する怪物達が存在するといわれ、それらは現在も恐るべき力で戦争をしていると聞く。その戦いに巻き込まれる様な事が無いように気を付けて行くがよい。」
「わかりました。」
マキーオは父親であるガイゼルーダの言葉に頭を下げ、王の間を後にした。
当時の『岩の国』はかなり原始的な生活をしており、学ぶべき事も少なく、また兵士達の戦闘技術も未熟であり、少しの知識、僅かな技術、そして多めの魔力があれば国を治める事が可能であり、マキーオもまた、転生者としての豊富な知識と、日本人東万紀男として生きていた時に親の影響で習得した実戦空手や古流柔術の技術で他者を圧倒した。
マキーオが旅立つころの『岩の国』の建築技術などは学生時代にかじった程度のものを大工らに教えたものだったが十分にその役割を果たしていた。
そんな彼が生まれてから学んだのは、せいぜいこの世界の言葉や未だ低い文化であった。
だが彼は生前から異世界に関するライトノベルやコミック、それにそれを題材にしたお笑いが好きであり、転生した時はかなり興奮したものだが、彼が転生した原始時代のマーリックは、彼が望んでいた中世ヨーロッパというには程遠い世界であり、精神的にかなりヘコんだ。
だが、魔力というものがこの世界に存在し、魔法はもちろんの事、神や魔物といった想像上の存在が実在する世界であることが次第にわかるようになり、未だに世界は支配地をめぐり争いが絶えない状態である事を知ったのだった。
人と魔物が争いを繰り広げる混沌とした世界。
自分もかなり強いと思っているが、この世の中は広い。
どんな強者がいるのかわからない。
『外の世界を見てみたい!』
そんな気持ちが自分の中に生まれることは当然の事であった。
そして、さらにそんな彼の気持ちが再び盛り上がったのは、自分に特殊な能力があることがわかったからだ。
『時間操作』
それは彼がこの世界に転生したときに神から貰ったギフトスキルであった。
『時間操作』のスキルの所持に伴い『次元魔法』『時限魔法』『空間操作』が扱える『上位空間魔法』を補助魔法スキルとして持っていた。
スキルと言っても魔力を消費して行使するので実質は『魔法』である。
蔵光らの持つスキルは魔力消費はないが、この時代、魔法に使用される魔力値や魔力量とスキル発動に伴う技術力や体力との違いについての個別の認識は低く、また『スキル』と『魔法』の概念も線引きが曖昧であり、時代の変化とその後の研究等により次第に区分化されていく様になる。
この後、時代が流れて魔族が誕生し、彼らによって古代魔法が生み出されるようになり、やがて人間の世界でも魔法が一般的に使用されるようになっていくのだが、ここでは便宜上『魔法』や『スキル』と表現させてもらおう。
マキーオが自分の能力に気付いたのは、5歳の誕生日を迎えた後のある日の事であった。
岩の国城の壁の補修作業をしていた作業員が梯子から足を踏み外す場面に出くわしたのだ。
かなり高所であり、このまま落ちれば命はないと思った瞬間であった。
マキーオの周辺の時間が停止したのだ。
空中に浮かんだままで止まっている作業員。
先程までざわついていた世界が無音の世界へと変わる。
完全に時間が停止していた。
最初は何が起こったのかわからなかったマキーオだったが、自分だけがその世界で動くことが出来、周りの自分以外が停止していることに気付く。
その後、『時間よ動いてくれ』と願うと再び時間の進行が開始されたことにより、自分の能力であることを知ったのだった。
落ちた作業員は時間を動かす前に干し草を運んで彼の下に用意していたので未然に事故を防ぐ事が出来た。
その干し草についてもマキーオが『何か下に敷けるモノ』と思っただけで、近くの倉庫の中に入れていた家畜用の干し草が頭の中に映像が浮かび、直ぐに亜空間のゲートが開いて、そこから干し草が大量に移動したのだった。
念動力とテレポート能力が同時発動しているような能力であった。
「こ、これは」
そんな能力を持つマキーオであったが、自分の能力のチートさに気付かない訳がなかった。
それは皮肉にも、これまで日本という世界で全く役に立たなかった異世界モノと呼ばれる数々の経典や聖典等の知識が彼の能力の行使に役立っていたのだ。
直ぐに彼は自分の能力の検証を始める。
当然ながら、自分に『出来ること』と『出来ないこと』を知っておくことは重要であり、今後の自分の運命を左右するほどのチートな能力であるからだった。
彼の能力は無敵であった。
『時間』を停止させることはもちろんの事、逆再生の様に対象物の周りの時間を『逆行』させたり、時間を速く進める『倍速』、そして先程の干し草の時のように亜空間を利用し対象物を任意に移動させることが出来る『亜空間転位操作』や魔法などの攻撃を無効化する『亜空間装備』といった能力を持っていた。
この『亜空間装備』というのは『空間操作』の能力により自分の身体の周囲に薄い皮膜状の亜空間のゲートを張り巡らせて身体を保護するというもので、魔法攻撃はもちろんの事、物理攻撃も受け付けないというものであった。
ゼリーや黒龍等も亜空間のゲートを任意に空間に出せるが、それらのゲートを自分の動きに併せて移動操作させる事は不可能であり、また自分が亜空間の中に入るため、自分から攻撃もできないといったデメリットがあるのだが、マキーオは空間操作の能力でそれらの移動や攻撃を可能にしていた。
だが、それは攻撃を念頭にしたものではなく、あくまで亜空間は防御をするための鎧であるのだが、亜空間の中に入る訳ではなく、実体部分は実空間にいることになる。
マキーオはそれらの実体部分を全て亜空間の装甲で塞いでいる状態となるため弱点は無くなるという訳なのだ。
まさに『無敵』。
そんなマキーオが旅に出ることになった。
当時、『岩の国』周辺諸国には既にマキーオの噂は広がっていたが、誰もがそんなチート能力のことを理解するはずもなく、腕に覚えがある強者が彼に挑戦するようになるのだった。
それまでのマキーオは『岩の国』の国内に住んでおり、表面上は国王の庇護の下にいたため、他者からの挑戦を受ける事はなく平穏に過ごしていた。
障害として立ち塞がっていたその庇護が、旅を始めたことによって無くなったため、多くの挑戦者が、マキーオの前に現れる事になったという訳なのだ。
だが、そんな挑戦者達はマキーオの圧倒的な能力の前に次々と倒されていった。
「あー、こんな戦いの毎日、もう嫌だあ。」
「マキーオ様、そんな贅沢なことを言うもんではありませんよ。せっかくガイゼルーダ様が旅をお許しになって下さいましたのに…」
マキーオの愚痴を論したのはマキーオの教育係兼従者の女カルマである。
年の頃は20歳前後、金髪の長身、瞳の色は茶色で戦闘に関しては女子としても男子にひけをとらないレベルであり、そんなところをガイゼルーダに認められてマキーオの教育係となった。
ただ、マキーオの方は前世の記憶を持っているため、この世界の言葉や常識以外は遥かにカルマの上をいっていた。
このカルマ自身もこの時代にしてはかなりの常識人というか良識を持っていたが、戦闘に関してはその当時の世相の影響を受けているためか、暴力には寛容的であり、『強者=偉い人』という考えがあるようで、マキーオが戦闘になるたび黄色い声をあげる。
「そうなんだけど、俺の戦い方ってちょっとズルくないかな?」
「何を言っているんですか!この世界は負ければそれまで、勝てばそれが正義なのです。どんな手を使っても勝つということは、その者にそれだけの能力と才能があるという証拠です。気にすることはありません。」
「うーん、そうなのかなあ」
マキーオは少し今までの自分の戦闘を回想した。
殴ったり、斬りかかって来た者には時間停止を使用して、その手足を紐で縛った後、時間を再生する。
当然ながら相手は急に手足を縛られた状態から再始動するためズッ転ける。
そして相手が降参するまでそれを繰り返す。
時には相手の武器や防具を使用不能の状態にしたり、近付く敵を空間に閉じ込め、遠くに飛ばす等相手を傷つけることなく勝敗を決していた。
マキーオは人を殺すのは苦手であり、最初は殺すことはしなかった。
それについてカルマから再三に渡って注意を受けていたが、自分の信念を変えることはなかった。
だが、そんなある日、その信念をねじ曲げられるほどの出来事がマキーオに訪れるのだった。
【アサッテ・ハイドのクエスト日記】
ここはイスパイタス王国の首都エムグランドにある冒険者ギルド・エムグランド支部の近くの居酒屋『オオダルマ』。
ガズン「師匠、遅くなってスミマセン。」
人( ̄ω ̄;)
師匠「構わん。俺も引退して暇だからな。で、其奴らがお前の仲間か?」
((( ̄へ ̄)
ガ「はい、『栄光のハゲタカ』です。」
師「その名は、時々耳にする。なかなか、やる奴等だとな。」
(・д・)ノ
ガ「ありがとうございます。で、彼がパーティーリーダーのアサッテです。アサッテ、この方が俺の師匠のジェンさんだ。」
(*´ェ`*)っ
アサッテ「初めまして、『栄光のハゲタカ』のリーダーのアサッテと言います。」
(*´・∀・)ノ
ジェン「うむ、ジェンだ。まあ、『鉤爪のジェン』の方が話が通るかな?」
(*`・ω・)ゞ
リルカ「か、『鉤爪のジェン』って、あの伝説斥候と言われていたジェンさんですか?!ちょっとガズンどういうこと?」
(゜д゜))ノ
ガ「まさか師匠のことを知っている奴がいるとは…」
(´_⊃`)ノ
ジ「おっ!俺のことを知っている奴がまだギルドにいたのか?」
ヽ(´・ω・`*)
リ「そんなの当然です。斥候でありながら戦闘力もずば抜けて高いため、戦闘員としてパーティーリーダーも兼ねていたとか…それに…」
(o゜з゜o)ノ
ジ「ああ、俺の裏の仕事のことかい?お嬢ちゃん。」
(*´,_ゝ`)ノ
リ「あ、す、すみません。」(;´゜д゜)ゞ
ジ「まあ、知っている奴は知っているんだからかまわんよ。」
( ゜_ゝ゜)ノ
シ「えっ?何何?」ヾ(゜▽゜*)
ソ「まあ、まあ、それは置いておいて、本題に入りましょう。」
(´・∀・)ノ
ア「そうだな。ジェンさん、例の魔力災害の調査結果について覚えている限り教えて欲しい。」
(*゜Д゜)ゞ
ジ「まあ、この話は墓場まで持っていくつもりだったんだがな、ガズンの話を聞いて気が変わった。いいだろう、話してやろう。あそこで何があったのかを…」
いよいよ魔力災害の秘密が…
次回『魔力災害の秘密』やります。
たぶん。




