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水無月蔵光の冒険譚~第二部 古代地下帝国の謎を追え  作者: 銀龍院 鈴星
第三章 マリガトリア帝国
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第41話 そして帝国へ

いよいよ、新章です。

第41話 そして帝国へ

次に全員が現れたのは先程のフロアよりもかなり大きな建造物となっていた。

それは部屋というよりも、野球場や競技場、古い建造物ならコロッセオといった円形闘技場のような形状の巨大なホールと表現した方が良いだろう。

建物の中心部分は確かに何かを催すためなのかやや広めの広場になっていて、蔵光達はその広場を囲むようにして建てられた観客席のような円形で階段状の建物端部分の一角で、一番高い場所にある少し広めの箇所に描かれた魔法陣の上に転位していた。


「ここは、帝国なのか?みんな、大丈夫か?」

ヘルメスが辺りを見回し、併せて気配察知で危険の有無を確認し、平行して全員の無事を確認する。

リーダーとしてその辺りはしっかりとしている。

だが、それにも限界があった。


と言うのも建物の周囲は闇に包まれていて、その建物の構造部分以外は見えない状態であり、建物の上部から降り注ぐ明かりが建物の全容を照らしているのだが、その光源さえもハッキリとしないような不思議な空間であった。



「あれは何だ?!」

ゼリーの体内にいるトンキの声だ。

魔族の中でも高い索敵能力を持っていたため、魔族軍に所属していた頃は『斥候』という戦場での前線調査をする仕事をしていた。

彼は戦う事が嫌で、小心者、つまり怖がりである。

そのため、普段から自分の命を守るため周囲に対する索敵能力や危険回避能力はもちろんのこと、不審な建物や工作物などに対する警戒能力はずば抜けていた。

そのトンキが広場の中央付近に不審な建造物を発見するのは当然の結果であった。


そのトンキの声に全員の視線がホールの中央に注がれる。


トンキの言う通り確かに何かが立っている。


「建物?…ではないな。」

「クリスタル?」

蔵光や誠三郎が直ぐにそれに向かって近付く。

危険性を考慮しているのだろうかと思いたくなるが、慌ててヘルメスやザビエラ達も後に続く。


「蔵光殿!そんなに近付いては危険なのではないのか?」

ヘルメスがその建造物の直近に立っている蔵光に追い付き言葉をかける。


「ゼリーが呼ばれている場所だから大丈夫だろ?」

「ま、まあ確かに…そうだな。」

ヘルメスは蔵光が周囲の状況と照らし合わせながら高速思考により、瞬時にこの場所が安全圏であることを判断していることに舌を巻く。

ヘルメスも魔力値が上昇してからは高速思考がスキルとして身に付いていたが、まだまだ蔵光程ではなかった。

ちなみに誠三郎の場合は、高速思考というよりも蔵光の従者として直ぐに主人の行動に対応しなければならないという癖が身に付いているため反応が早かったのだ。


「しかし、これは大きいなあ。」

蔵光が見上げているのは高さが10m、太さも2mにもなろうかと思われる巨大な『クリスタル』の結晶柱であった。

直径10m程の黒曜石で作られた円形で階段状の土台の上にクリスタルが安置され、クリスタルの下の部分には金色の台座が取り付けられている。

かなり古いデザインなのだが新品のように綺麗であった。

また、台座の上に置かれているクリうっすらと輝いているのがわかった。


「アズマンの奴、こんなところに転位させて一体どういうこっちゃ?」

ゼリーがクリスタルの横に近寄りペタペタとクリスタルを触る。


「お、おいおい!」

誠三郎がその行動に慌てる。

いくら罠ではないとわかっていても、どう見ても重要そうなモノに気軽に触れるゼリーには肝を冷やす。

壊すのは当然ダメだが、もし、触れたことにより何かの呪いや防御魔法や反射魔法の類いが周囲に撒き散らされれば逃げる場所がない。


『ようこそ、お越し下さいました。』

頭の中に声が響く。


「こ、これは?!」

蔵光がクリスタルを見上げる。

そう、その声は目の前のクリスタルから聞こえてきていた。

それを聞いたゼリーが怒鳴る。


「アズマンやな?!隠れんと姿を見せんかい!」

ホール全体に響く程の大きな声である。

だが、誰もその場所に現れる気配はなかった。


『もしかして、あなたがクリムさんですか?』

クリスタルから更に声がする。

「うーん、ちょっと違うけど同じ様なもんや!」

「えっ…と、本人ではない…のですか?」

「ああ、そうや本人やない、せやけど本人と同じ記憶を持っとる。」

確かにチョッコ・クリム本人ではないが、本人の記憶を持つ生き物であることは間違いない。


『えっと、それは転生という事でしょうか?』

「うーん、それとも違うけど。」

『えっ?えっ?どういうことでしょうか?』

「どういうこともこういうこともあらへん!宮離霧千陽子が転生してチョッコ・クリムとなり、その記憶を植え付けられたスライムネコがワイや!」

ゼリーがこれまでの長い伏線を一言で説明する。

『えっ?どういうこと?転生した人の記憶を植え付けられた?』

「そうや!せやからワイは本人から依頼されてここに来とる。」

『で、ではカリスマさんは?』

「ここにおる。」

ゼリーは体内の空間からエージを出す。


『カリスマさんも転生したのですね。』

空間から出てきたエージを確認したクリスタルがホッとしたような口調で話す。


「こちらも姿を見せたんやから、そろそろお前も姿を見せたらどうや?」

ゼリーがアズマンに姿を見せるよう急かす。

だが、アズマンから意外な言葉が返ってきた。


『スミマセン、あなた達の目の前にあるこのクリスタルが私の現在の姿なのです。』


一瞬、その場の空気が凍り付いた。


「ええーーーーー!!!!!??」

次の瞬間、全員が驚きの声を上げる。


「ど、どういうことや?アズマンって人間やったんとちゃうんか?」

ゼリーがアズマンに問い掛ける。



『ここに来られるまでに私の事を四人の魔女達に聞いてこられたと思いますが、確かに私はこの世界に転生した当初は人間の姿をしていました。ですが、私が帝国を地下に移してからしばらくして身体に異常な変化が生じてきていることに気付きました。』

「異常な変化?」

『はい…』


アズマンはこれまでの経緯を話始めた。


彼はゼリー達の読み通り日本からの転生者であった。

転生前の名前は東万紀男(あずままきお)と言い、転生する以前は大阪にある『東運送』という父親の運営する会社に就職しトラック運転手として稼働していた。

彼は父親の影響もあり大学生時代からお笑いが好きでよく劇場通いをしていた。

特に『クリム&カリスマ』という異世界ネタのコントをやっているコンビが好きであり、千陽子のツッコミとエージのネタに魅せられ、ほぼストーカー状態で彼等の舞台を見に行っていた。


彼にとって『クリム&カリスマ』はまさに『神』的な存在であった。

やっているネタはスマートフォンで撮影して何度も見てほぼ完璧に覚える程だった。


そんな頃、『クリム&カリスマ』が『関西コント大賞』の予選に出場するという情報を掴む。

ある日、彼等が移動に使用している車の後に続いて、自分が運転するトラックを付けていた。


だが、連日の長距離運転の疲れからつい居眠り運転をしてしまい予選会場となる建物に入るため速度を落として左折しようとした千陽子らの車の左側面に追突したのだった。

ほぼノーブレーキだったこともあり、万紀男は即死、そのままこの魔法世界『マーリック』へ転生したという事であった。


「そ、そんなことって…アンタが僕達を?!」

エージが自分達の転生した原因がアズマンの居眠り運転であった事実に愕然とする。


「あなた方二人には大変な事をしてしまったと思っています。私は最初、転生したのは自分だけであり、あなた達は助かった、だから転生しなかったのだと思っていました。なので、自分だけが死んで、お二人の命が助かったのならばそれで良かったと思っていました。ですが、それが間違っているということを後で知り、何とか謝罪をしようと、そして、真に申し訳ないと思っているのですが、この事態の収束をする事が出来るあなた達『神』に全てを任せようと…」

とクリスタルとなったアズマンが話した。


「何、勝手なことを言うとんねん!お前のお陰でワイらはとんでもない目に逢うたんやで!謝るんわエエとして、逆に頼み事ってどない言うつもりや!」

ゼリーがキレる。

まあ、本人ではないのだが、ここは千陽子に代わってキレるところなのだろう。

「言い返す言葉もありません…」

アズマンが沈黙する。


暫くの沈黙の後、どうにもしょうがないといった感じでゼリーが頭を振り口を開く。


「まあ、やってもうたんはもう仕方ない、で、ワイらにどないして欲しいんや?」

「!で、では、私の頼みを!?」

「しょうがないやろ!ここまで来とるんやさかい、ハイさようならという訳にもいかんやろ!?」

「あ、ありがとうございます。」



アズマンは、ゼリーに頼み事の話をする前に、転生後の自分のこれまでの経緯を話始めた。


それはアズマンが、前世の記憶を残したままマーリックに転生はしたものの赤ん坊であったため最初は全く右も左もわからない状態であり、自分が置かれた立場を理解するまでに何年間か必要であり、それからしばらくして、自分に特別な能力があることに気付き、旅に出ることになるというものだった。




【アサッテ・ハイドのクエスト日記】

ここはイスパイタス王国の首都エムグランドにある冒険者ギルド・エムグランド支部。

ガズン「待たせたな、支部の知り合いは何人かいるんだが、今回のはちょっと内容が込み入っているからな。」

┐( ̄ヘ ̄)┌

リルカ「で、どうだった?」(´・ω・`)?

ガ「ああ、やはりここでも箝口令(かんこうれい)が…というか関係者のほとんとが異動させられたり辞めている。」

( ̄~ ̄;)

アサッテ「なるほどな。」(゜.゜)

シン「どういうこと?」(・_・?)

ソウド「要は、要らぬ噂を立てられないようにしたのさ。うっかりしゃべってしまったら殺されるかも知れないような話だからな。」

(´・ω・)っ

ガ「ああ、その通りだ。実際、ここの冒険者ギルドからも魔力災害の被害者救助や原因調査などの支援でウィンダムに入っているが、関係書類は全て国が持ち帰っている。なのでギルドにはメモ程度の書類しか残っていない。」

(*´_`)ノ

ア「証拠隠滅か…」(・д・)ノ

ガ「恐らくな、だが、まだ記録は残されていると思う。」

(*´・ω・`)b

ソ「と言うと?」(。・ω・)?

ガ「あれだけの規模の研究だ、そのまま廃棄するとは考えられない。」

(*´・∀・)ノ

リ「た、確かに…」(;゜0゜)

ガ「と言うことで、当時、現場に入っていた冒険者と会えることになった。」

(* ̄∇ ̄)ノ

リ シ「ええーっ??!」( ; ゜Д゜))!!

ア「上手くやったな。」(*>∇<)ノ

ソ「信用できるのか?」(。・`з・)ノ

ガ「その点は大丈夫だ。俺の師匠だからな。」

(* ̄∇ ̄)ノ

ア リ シ ソ「ええーーー!!」

(;゜Д゜)(;゜Д゜)(;゜Д゜)(;゜Д゜)!!


さてさて、次回はガズンさんの師匠が登場(予定)です。

お楽しみにヾ(´▽`*)ゝ





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