第4話 シンディーナの予想とビーレイクの村
謎の魔物に迫ります。
第4話 シンディーナの予想とビーレイクの村
蔵光一行は、久しぶりにギズモワール村のシンディーナの所へやって来た。
相変わらず、外から見れば、寂れた村にしか見えないように蜃気楼の魔法が掛けられている。
村の中に入ると景色は一変し、そこには美しい村が広がる。
どの建物も汚れもなく真新しい感じで、村は整然としていて、村を流れる小川も透明度が高く、そこを泳ぐ小魚も良く見える。
村には年中綺麗な花が咲き乱れ、村の中の所々には果物が成る樹木が植えられ、年中実が成っている。
また、認識阻害されていた森は、実は広大な畑であり、そこの農作物も村人が自分達では食べきれないほどに沢山作っていて、自給自足の分だけではなく、近くの街へ作った農作物を売りに行くために多くの小麦や野菜等を作っている。
シンディーナの防御結界のお陰で外敵や、害獣、それに盗賊達も侵入してこないため、ギズモワールの作物の採取効率は非常に高く、また、管理が行き届いているため品質も良く高値で取引されている。
そして、その村の住民達も、シンディーナから『魔海嘯』を防いだ冒険者達であると説明をされていたのか、蔵光達を見ると農作業の手を止めて頭を下げて挨拶をしてくる。
「あんた達が、この国を守ってくれたってシンディーナさんから聞いただ。どうも大変だったなあ」
「本当に、ありがてえ、あんた達はワシらの命の恩人だあ。」
「あんたらのお陰で、ウチらが丹誠込めて作った農作物も被害に遭わず、本当に助かっただよ。」
と口々に礼を言ってくる。
悪い気はしないが、村人一人一人が皆がそう言ってくるのでかなり面倒臭い。
そんな挨拶を掻い潜りながらシンディーナの家にやって来た。
前作でモブキャラだと思っていたが何と二回目の登場となった。
多分、今回の物語は、そんな人が何人かいるのかも知れない。
シンディーナの家は真っ赤な焼き瓦の屋根に、クッキーみたいなベージュ色の漆喰の壁。
その壁には、ゼリービーンズのような色鮮やかな魔石がいくつも埋め込まれていて、それらすべてが色鮮やかに光っている。
扉は茶色のチョコレートのようであり、本当に何度見てもお菓子の家に見える。
蔵光達が訪問するとシンディーナは家に在宅していた。
シンディーナは蔵光達を快く迎え入れ、リビングに通す。
「さて、今日は一体何の御用でしょうか?」
シンディーナは部屋の中央に置かれたテーブルの回りにある椅子に座るように勧める。
テーブル席に座ると、早速ザビエラはシンディーナにタイトバイトス皇国からの『東の森』での依頼内容とオルビアが予知した魔物の特徴を説明し、シンディーナがその魔物について何か知っているのかどうかを尋ねる。
すると、シンディーナは少し考えたあと、一つの見解を出した。
「それは、ドラゴンのユニーク個体かも知れませんね。」
シンディーナはそう答えた。
「ユニーク個体?」
蔵光達は初めて聞く言葉に首を傾げる。
「ええ、そうです。普通の個体同士から稀に生まれる特殊な個体で、特徴として通常より、体も大きく力も強い。当然ながら魔力値も黒龍に匹敵するほどの値を持っている者もいるみたいで、何体か過去には確認されています。それに、ユニーク特有の特殊能力も…」
皆の顔に緊張の色が走る。
「特殊能力?」
「はい、昔、出現したユニーク個体の特殊能力は『魔力吸収』と『絶対魔力操作』を持っていたと言われていて、その力で国を支配していたとか言われています。」
「それって、魔力吸収は何とかわかるけど、『絶対魔力操作』って何?それに国を支配?滅ぼすんじゃ無くて?」
「自分が指定した相手の魔力操作能力を奪い、魔法を使えなくする能力だったようです。あと、国の支配の話は伝説の範疇ですので、本当かどうかは…」
「しかし、それが本当やったら、かなりエグいな。」
「そんな個体があの森に住んでいるということなのですか?」
ヴィスコが尋ねると、シンディーナも首を振る。
「それは、わかりません、同じ能力とは限りませんから…」
「確かに…」
全員が黙り込む。
ユニーク個体という未知の存在に少し脅威を感じていた。
人を喰らうが黒龍とも違う、ユニーク個体と呼ばれる特殊能力を持つドラゴン。
過去には国を支配したとも言われる存在が本当にあの『東の森』にいるのであろうか。
オルビアがそこで気になる予言を行った。
「蔵光さん、今回のドラゴンはある意味、黒龍よりも厄介かも知れません。十分に気を付けて下さい。」
オルビアがこんなことを言うのはめったに無い。
「じゃあ…」
「はい、未来が割れています。」
それを聞いた全員が固まる。
「あ、あの、どうしたんですか、皆さん?」
シンディーナはオルビアの能力を知らない。
だが、このただならぬ空気に緊張感を覚える。
「一体、あの森に何がいると言うんだ?」
ザビエラの顔に恐怖とも思えるような表情が出ている。
今のザビエラであれば普通の龍族程度なら倒せるほどの力を持っている。
だが、それでも蔵光には到底足元にも及ばない。
その蔵光が気を付けろと注意を受ける。
そんな恐ろしい個体がいる所に自分は一人で行こうとしていたのかと思うと、ゾッとする。
「とにかく、要注意や、ヘルメス!弱小グループは飛行船に待機、あとは全員が『東の森』に入るでエエんやろ?」
「それでいい。細心の注意を払って入ろう。」
ゼリーの言葉にヘルメスが頷く。
こうして、魔導飛行船はシンディーナの家にヴィスコだけを残して再び飛び立った。
飛行船はギズモワール村を飛び立つと、国境となる大きな山脈を越え、すぐ隣のタイトバイトス皇国内に入った。
そして、『東の森』のさらに東にあるビーレイクという村に着いた。
ちょうど森と国境との間に挟まれるような格好となる場所にビーレイク村はある。
その村は近くに大きな湖があり、国境の『龍の髭』と呼ばれる山脈の景色が大変綺麗な所にあった。
ちなみに『龍の髭』は『龍の墓場』と呼ばれる巨大な火山帯から北へ向けて髭の様に山脈が伸びていることから名付けられたと言われている。
シンディーナの話では、村の者は湖の魚を捕ったり、湖の水を利用して野菜等を作り、それを食べて生活していると言っていたが、かなりの田舎村のため話をしてくれたシンディーナも余りよくは知らなかった。
だが、そこは『東の森』に一番近い村でもあり、常に森の危険に晒されている場所であり、普通の冒険者では太刀打ち出来ないほどのレベルの魔物が闊歩するその森は、その昔に森の魔女によって張られた結界のお陰で何とか村への侵入を防いでいると言われていた。
だが、村の入口前に立った蔵光達強者グループは村に違和感を感じていた。
確かに村の建物はあるし、表示もあるが、全く人気を感じない。
蔵光らも生命体感知を使っているが、何も感じない。
ヴェレリアント領のジョリアの街のように魔物に襲われたのだろうかとも思われたが、建物が破壊されている様子でもない。
「森の魔女って今もいるのか?」
ヘルメスが左腕に取り付けたニューマソパッドに質問する。
すると、リストバンド型のマソパッドはその声に反応し、空中に小さな画面を展開する。
エージのアニメバージョンの様なキャラクターがその画面に映し出され、問いに答える。
"質問の回答については、『否』である。今は森の魔女と呼ばれる存在はここにはいない。
また、それにより既に結界は消滅している。
村は建物と名前だけを残してそのままになっている。
村人は他の街に移住している可能性がある。"
意外な答えだった。
魔物に食べられる事を考えれば、当然なのだろうが、村をこの様に残す必要があるのだろうかとも思われた。
「とりあえず、村に入ってみよう。」
ヘルメスを先頭に強者グループが無人となった村に入る。
確かに結界は張られていないし、人の気配もないが先程からの違和感が止まらない。
「何なんだ?この村は?」
それは、廃墟となった村とは思えないほど村が整備されているのだ。
どういうことかというと、人がいなくなった町や村には、それを管理する者がいなくなった事により、それまで人が通っていた道の脇から雑草が生え伸び、建物の壁は汚れ、屋根は落ち、誰もそれを元に戻さない。
所謂ゴーストタウン化するのが普通である。
にも関わらず、この村はそれがない。
綺麗なのだ。
雑草が生えている道もなく、また、家の壁は洗ったように綺麗であり屋根に苔が生えたりしているような所もない。
そう、まるで昨日までここに人が住んでいたような、そんな印象を与えているのだ。
「ん?」
蔵光が何かを感じ、後ろを振り向く。
「どないしたんや、主?」
ゼリーが蔵光の反応を気にする。
「いや、人の気配はしないんだけど、誰かに見られている様な感じがしたんで…」
と蔵光は首を傾げる。
「……」
ゼリーがその様子を黙って見ていた。
「何故、ビーレイク村が綺麗なのか?」
ヘルメスが再びニューマソパッドに問いかける。
"詳細不明。
尚、首都グランマリアには定期的にビーレイク村産と言われる魚や農作物の入荷が行われている。
これは、村の名前を借りているだけで、別の場所で漁や農作業が行われている可能性があるが、その出荷場所等の詳細は不明。"
「どういう事?意味がわからない?」
ヘルメスもそうであるが、全員が眉をひそめる。
「ビーレイクをこの様に残さなければならない理由とかビーレイクの名前を出した産出品の出所って…?」
蔵光も高速思考で考えるが、情報が少な過ぎたため、明確な答えが出てこない。
「そもそも、この情報は各地にいる『忍』の情報を集約したもんやろ?この事をタイトバイトス皇国が知っとるんか?」
とゼリーが言うと、
「その情報を調べてきた『忍』の人と話が出来ないかな?多分、かなり調べようとしたと思うんで…」
ヘルメスが蔵光に尋ねる。
「そうだね、グランマリアにも何人か『忍』の人がいると思うから、その中から実際に調べた人に会って話を聞いてみようか。」
と蔵光が応える。
「ザビエラ、ちょっと『東の森』に行くのは待ってもらえないかな?どうも、この村の事と『東の森』の件は、何か関係しているんじゃないかなと思うんで…」
「わかりました。この件は特に急いでいる訳でも無いようですので、私もそちらの調査に同行します。」
ザビエラもこの村の状態から何か不穏な空気が流れてきているのを感じ取っていた。
ヴ「そう言えば、トンキ、あんたって、アップルティーが好きだったわよね?」
(*´・ω・`)b?
ト「えっ?ああ、そうだけど何か?」
(´・ω・)っ?
ヴ「いや、アップルという言葉でちょっと、ギルガ様がアップルパイが好きだったなと思い出してて…」
ト「なるほど、へへへ、実は、私もアップルティーと同様にアップルパイは大好きなんだよ。」
(^ー^)
マ「そう言えば、今度、うちの『べれり庵』で、メトナプトラの首都ヨーグにある『アシス』という店のアップルパイを取り寄せて販売しようと思ってるんだけど?」
( ・д・)
ヴ「『アシス』って確かギルガ様が好きだったアップルパイの店じゃないの?」
( ̄□ ̄;)!!
マ「えっ?そうだったの?」
ヴ「マッソルやるじゃない!」
O(≧∇≦)O
ト「いやぁそれ俺も食べたいと思ってたんだよ。」
(*´∇`*)
マ「それは良かった。」ヽ(´ー`)ノ
私も今度アップルパイ食べよ。
では次回まで。(* ̄▽ ̄)ノ~~ ♪