表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水無月蔵光の冒険譚~第二部 古代地下帝国の謎を追え  作者: 銀龍院 鈴星
第二章 謎の国『ジパング王国』
38/56

第38話 ジパング王国6 幽霊門の怪物

ヤバイ奴来ました。

第38話 ジパング王国6 幽霊門の怪物

『幽霊門』の前では、各分家の者達が突然現れた魔物に驚いていた。

流石に普段から魔物を扱っているためか、さほどの動揺は見られなかったが、その大きさには少なからず驚きがあった。


そして、暗闇にじっと目を凝らしていると、ようやくその正体が明らかになってきた。


濃い青の半透明の体を持つ粘性の体。

うねうねと動く体とゆっくりとしたユーモラスな動きは相手の警戒心を低下させるが、そこにいた者達の誰もがそれを非常に危険な存在と判断していた。


「あれは…スライムなのか?」

ジパング王国キュッシュ島に住む第三位の当主水無月空眞(くうま)がスライムにしては大き過ぎるその姿に違和感を覚える。

他の分家の者達もその姿に騒ぎ始めている。


「ラージ…いや恐らくあれは…エンペラースライム…こりゃマズイぞ!」

そう言ったのはシッコク島の第四位の水無月家から選出されてきた水無月獠眞(りょうま)だ。


「逃げろ!アイツの『霧風』は危険だ!こんな狭い洞窟内で使われたら全員死んでしまうぞ!」

アーワジ島の第五位当主水無月威三波(いざなみ)が全員に声を掛ける。


水無月家分家の当主のほぼ全員がエンペラースライムの恐ろしさを知っていた。

奴の繰り出す強酸の霧は、人間などは一瞬で溶かしてしまう程の威力を持っていて、過去にはこのエンペラースライムが国を一つ滅ぼしたとさえ言われているほどだ。

ゼリーも以前、ダウラという龍族の者に使用したことがあったが、一瞬で跡形もなく溶けてしまった。1-85

まだ、霧は発生していないようだが、発生してからでは遅すぎる。


「奴には火魔法も水魔法も効かないぞ!」

「何てこと!こんな伝説級の魔物が出るなんて!」

第六位サアド島の水無月金剛(こんごう)や、第七位ナアハ島の女性当主、水無月朱麗(しゅれい)らもこの魔物の脅威を肌で感じている様子であった。


この洞窟への行き来には、水無月家の作っている魔導エレベーターくらいしか連絡手段がない。

この洞窟内から出るためにはそのエレベーターが必要であり、他の抜け道は無い。

つまり、洞窟内はエレベーターが無ければ密室と同じであり、強酸の霧が洞窟内に充満すれば全員の命は無いということなのだ。


全員がその事実に焦りの表情が出る。


「魔導エレベーターはまだこの階に止まっているのか?」

主眞が娘の姫羅に尋ねるが、

「お父様、もし魔導エレベーターがこの洞窟の階に停止していたとしても、100人以上いる水無月家の関係者達が全員乗れるとは到底思えないのですが?」

「確かにな…つまり、何とかあの化け物を退治しなくてはならんということだ。」

と主眞が言うと姫羅もその言葉に頷く。


「ですが、相手は災害クラスの魔物、何か良い方法でも?」

「とりあえず、今出来ることと言えば結界を張ってこちらに『霧風』を防ぐ程度しか方法はないな…」

「結界術を持たれた方は?」

「私と朱麗くらいか…」

「えっ?あの七位の?」

「そうだ、何か?」

「いえ、何でもありません。ただ意外だなと…」

「ふふ、アイツは自分の術の凄さをわかっていないからな。」

「えっと、どういうことでしょうか?」

「この水無月の分家の中でも群を抜く程の結界術の使い手なのだが、それを余り戦いに使いたくないらしくてな…」

「はあ…」

「だからいつも分家の中ではいつも最下位なのだ。他の分家の者達とは戦いたくないってな。変わっているだろう?」

「そうでしょうか?仲間を傷付けたくないと思われているのでしたら、大変お優しい方だとお見受けしますが…」

「まあ、時代が戦いを求めていなければそうなのだろうが、魔物が跋扈するこの世界ではアイツはあまりにもいびつだ…」


そう主眞が言いながら朱麗の方を見ると、案の定と言うか、直ぐに主眞が判断したように、自分達とエンペラースライムとの間に『結界術』を使用し、エンペラースライムと自分達のいる場所を結界で遮断した。

薄い魔力の壁が何層にも張られる。


「さあ、出直して次の準備だ。」

と蓮之進が結界が張られたのを見届けると皇詞の服の袖を引く。

「えっ?親父、今からあのスライムを叩くんじゃ?」

「バカ野郎!あんな化け物、俺達が倒せる訳がないだろう。」

「えっえっ?」

蓮之進の言葉に皇詞は驚く。

皇詞は余り実戦経験は少なく、またエンペラースライムのこともあまりよく理解していなかった。

なので全員でエンペラースライムを退治するものと思っていたようだ。


「あれは…、あのスライムは言うなれば災害だ。我々のようなちょっと強い程度の人間がどうこうできるような代物じゃあない。命が大事なら手を出さんことだ!」

まさか自分の父親からそんな言葉が出るとは思ってもみなかった皇詞は半ば納得のいかないような表情でエンペラースライムを見る。


それに、よく見ると他の水無月の分家の者達もそそくさと移動しているのが見える。


その姿を見て皇詞は怒りが沸々と涌き出てくる。

『なんだ、俺達はあの水無月の者だぞ!あんなちょっと大きいスライム程度倒せなくてどうするんだ!』

という考えが頭をもたげる。

彼は水無月家の伝承者候補として期待されていたが、残念ながら伝承者の印となる紋章(アザ)持ちとして生まれることはなかった。

そして、しばらくしてから蔵光が紋章持ちとして生誕した。


その後は、本家の正当伝承者と分家の長男として、明らかに立場が分かれた。


皇詞は、彼等伝承者達の力を目の前で見たことはなかった。

なので、彼自身、彼等の強さには疑問を持っていた。

『何故、これほどの格差を持たされなくてはならないのか?彼等も人間だろ?』

そんな何とも言えない劣等感や悔しい、羨ましいといった感情が彼の中で渦巻いていた。

そして、航夜の伝説等も、彼にとっては単なる尾ヒレの付いたホラ話程度にしか感じられていなかった。

定期的に行われる『演習』や『対抗戦』等にも本家は加わろうとしない、と言うか全く関知もしていない様子だ。


『どれほどお前達は、偉いつもりだ!』


皇詞には直ぐ下の蔵光の存在も許せない存在であった。

幼い頃から、本家での生活をしている蔵光に対して激しい嫉妬心を持っていた。

彼は、蔵光が鉄格子の様な部屋で幼少を過ごしていたことなど全く知らない。

自分と違って、綺麗な服を着て、ぬくぬくとした部屋で美味いものをたらふく食べているのだろうと思っていた。


それだけに、エンペラースライムを前に簡単に尻尾を巻いて逃げる自分の父親や分家の動きに激しい怒りを覚えたのだ。


「親父、水無月の誇りは無いのか?!悔しく無いのか?!」

皇詞が蓮之進の背中に問い掛けた。


「ん?何の事だ?」

「本家は俺達にあんな化け物を押し付けてさっさと洞窟の奥に入っていったのに、親父は何も思わないのか!?」

蓮之進は皇詞が言わんとしていることを直ぐに理解する。

そう理解しながらも、皇詞に対して冷たく感情の伴わない言葉を返す。


「ああ、そうだな。何も思わない。」

「なんで!?どう考えてもおかしいだろ?」

「おかしくない。お前は王鎧様や航夜様の言うことだけを聞いていればいい。」

「くっ!」

当主継承が決定してから初めて明かされる水無月本家の秘密をまだ詳しく知らされていない皇詞にとっては、王鎧達のやっている事は全く意味のわからないことであり、皇詞には父親の言葉は全く耳に入らなかった。


「府抜けたか!もういい!俺は勝手にやらせてもらう!」

そう言うと皇詞は洞窟の奥の方に向き直る。

それに気付いた蓮之進が皇詞を引き留めようと声を掛ける。


「お、おい!皇詞!やめろ!」

だが、皇詞はズンズンとエンペラースライムの方に歩いていく。

既にエンペラースライムは『霧風』を周囲に撒き散らし、体の近くの辺りは白い霧が立ち込め始めていた。

そして、洞窟内の鍾乳石等をその強い酸性の霧で溶かしていた。


「ふん、知能程度の低い魔物に俺達がやられる訳がないだろ。」

皇詞は手のひらから炎の魔法を展開する。


「はっはっは!水無月家の中でも珍しい火系の魔法だ!水系の魔物にこの業火が耐えられるか!!!?」

皇詞は巨大な火柱を朱麗の結界越しに放つ。

結界の特性として、相手側からの攻撃を防ぎながら、こちらの攻撃は結界を透過するという『一方通行の法則』というのがあり、この時も皇詞の炎の魔法は結界を通り抜け、エンペラースライムにそのまま到達した。


「やったか?!」

皇詞は魔法の効果を確認する。

だが、期待も虚しくエンペラースライムには傷ひとつ付いてはいなかった。


「何だと?くそ!こうなれば、何発でも打ち込んでやる!」

皇詞はさらに大きな炎を展開した。

「もうやめろ皇詞!」

蓮之進が背後から声を掛けたが、皇詞は一向に止める気配は見せない。

「黙っててくれ!コイツは俺が仕留める!」

さらに激しい炎の球をエンペラースライムにぶつけるがエンペラースライムは全く動じる様子もない。


「おい、あれって!」

周囲にいた配下の者達が口々に騒ぎだした。

エンペラースライムの『霧風』が朱麗の結界を破壊し始めたのだ。


「やはり、駄目だったか。」

朱麗は最初からわかっていた様な口振りで自分の結界が破壊されていく様子を見ている。


「どうして…?」

姫羅がその光景を不思議そうに見ていると、主眞は静かに答える。

「簡単な話だ。奴の魔力値が朱麗の魔力値をはるかに上回っているのだろう。噂ではあるがエンペラースライムの魔力値は1億を越えるとも言われている。」

「い、1億?!そんな…それじゃ、この中の誰が掛かっていっても敵う訳がないではありませんか!」

「そうだな。だからこそ逃げなきゃならん相手なのだが…」

そう言いながら主眞は一人飛び出して行った皇詞の方を不憫そうな目で見ながら話す。


一方、流石の皇詞の方も朱麗の結界が破壊されたことに気付き危機感を持つ。


「くそ!こんな霧なんて!」

『霧風』はまだ結界を破ったばかりなのでこちらにはまだ到達していないが、辺りの岩の表面を徐々に溶かしながら水無月家の部隊に接近していた。


「ぐあ!」

逃げ遅れた部隊員の一人が悲鳴を上げる。

「早く逃げろ!」

他の者から声をかけられているが、強酸の霧はその者の装備を一瞬で溶かし、身体にまで被害を及ぼす。

よく見ると膝から下の部分が溶け落ちていた。


「なっ!?」

皇詞は『霧風』のあまりにも凄まじい威力を目の当たりにして怖じ気づく。


「うわあああ!」

皇詞はその場に尻餅を着くと、叫びながら這うようにして蓮之進達の方へ逃げようとするが、腰が抜けたような感じであり、その移動速度はかなり遅くなっている。


「あのバカ、調子に乗ってエンペラースライムに突っ掛かっていった報いだな。」

そう言ったのは第三位の当主、水無月空眞(くうま)だった。


「死んだな。」

第四位の分家から選出された水無月獠眞(りょうま)が冷めた様な目付きで静観している。

彼は第四位の当主水無月狩馬(みなづきかるま)から選ばれてやって来ていた。

獠眞は次期当主の予定であり、現在は高齢の狩馬に代わり当主代理として支配地のシッコク島を治めている。

水魔法が得意な水無月家の中でも『霧』を扱うという家柄だ。


「奴は『霧』を舐めすぎだ。霧は地に落ちず、一度展開すれば術者の姿を隠し、それが酸ならば敵を溶かし、毒ならば体を蝕む恐ろしいものだという認識が無いようだな。所詮は火の魔法使いということか…」


あの巨大なギルガンダの体を2000年間にも渡って隠し続けたのも、彼女が展開していた『濃霧』であり、その効果の凄さは実証されているし、ゼリーがヨーグでダウスに使用した『霧風』でその威力も立証されていた。

恐るべし霧の魔法。


「うわああ!た、助けて…」

皇詞が蓮之進に近付こうとするが、蓮之進も『霧風』の威力をある程度わかっているため、近付けないでいた。

「皇詞!走れ!」

声を掛けるしかしょうがなかった。


『霧風』が皇詞の履いている靴の底に触れ、ジューっという激しい音を出す。


「ああああ、」

皇詞の足が完全に止まってしまった。

完全に恐怖で体が固まってしまった皇詞に『霧風』が猛威を振るう。


「『(かん)』!」

『幽霊門』の方から声がしたが、その後、直ぐに皇詞の体は『霧風』の霧の中へ完全に飲み込まれていってしまったのだった。












【アサッテ・ハイドのクエスト日記】

ここはイスパイタス王国の廃棄都市ダークウィンダム。

シン「ちょっと、何よ!この気持ちの悪い街は?!」

(゜Λ ゜;)

ガズン「ここは昔、魔法科学が進んでいた魔法科学都市ウィンダムと言われた場所だ。まあ、もっとも今ではこの通り人っ子一人住んでいない廃都市なんだが、古い建物は崩れつつも残っているという訳だ。」

(。・_・。)ノ

ソウド「魔素?いや、これは魔力だな…この魔力の浮遊具合…魔力災害か…!?」

(。・д・)ノ

アサッテ「そうだ、良くわかったな。さすがソウドだ。以前、ここで発生したのは強大な魔力災害だった。そして多くの人間が亡くなり、この都市は壊滅した。残っているのは、その時の魔力だ。そして今回の『キメラ』は俺が入手したその後の情報によると『魔力』をエサにしているらしい。」

(*´・∀・)ノ

ガ「だとすれば、普通の人間よりもこちらを選ぶか…」

(´・ω・)っ

リルカ「なるほど、それでエムグランドでは死人の噂が少なかったのね。」

(o゜з゜o)ノ

ア「ああ、なので街中にいる魔力(エサ)の少ない人間は襲わず、代わりに残存魔力が多いと言われるここにやって来ている可能性が高いと考えた訳だ。」

(゜ω゜)ノ

ガ「魔力災害と言い、キメラの脱走と言い、このイスパイタス王国という国は一体何をやっているんだ?」

(´・ω・`)?

ア「彼等イスパイタス人は全体的に魔力値が低く、魔法使いが少ないため、戦場では白兵戦が主流だ。だがそれを補うため、イスパイタスではダークウィンダムことウィンダムにおいて、武器、特に多くの魔力を必要とする魔導砲や破壊力のある魔導銃などの魔道具の技術開発が急速に推し進められていたと言われ、その無理が祟って魔力災害を惹き起こしたのではないかとも噂されているんだ。」

(*`・ω・)ゞ

リ「ふーん、まあ、近隣の国、特に隣のドリタニア王国は強力な魔法使いが多いしねえ。仕方がないのかな。」

(*´・∀・)ノ

シ「でもさ、今回の『キメラ』ってどんなタイプの合成獣なのかな?」

(´・ω・`)?

ア「さあな、そこまでの詳しい情報はないが…、イスパイタス王国の軍の方はまだここに来るまでの準備が出来ていないのだろうか?今のところ姿は見えないが…とりあえず俺達の方が先に見つけるぞ!」

o(*≧∇≦)ノ

ガソリシ「おー!!」( ̄0 ̄)/


こうして『キメラ』捜索が始まったが、アサッテ達は無事『キメラ』を見つけることが出来るのか?!

ではまた次回まで。( ´∀`)/~~


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ