第37話 ジパング王国5 不穏な影
ちょっと他の人達の動きも見てみましょう。
第37話 ジパング王国5 不穏な影
ここは水無月家の分家の一つ。
「親方様、本家の者3名が『幽霊門』をくぐったと知らせが入りました。」
親方と呼ばれる者のところに配下の者と思われる者が現れ、現状を報告する。
「ふむ、ではあの噂は本当だったと言う訳か…」
「その様だと思われます。」
その報告を受け、ボソリと言葉を吐き、報告者は頭を少し下げる。
「では、兼ねてからの予定通り、王国の警戒体制を強化させろ。そして、これを国王と各分家に報告、その後にこの国は厳戒体制に移行することになるだろう!」
「御意!」
命令を受けたその配下の者は音もなくその場から消えていった。
親方と呼ばれた彼の名は、八鬼仁蔵、誠三郎の実父である。
彼もまた『黒緒神流』の免許皆伝者であり、誠三郎の剣の師匠である。
今は家督を自分の長男に譲り、現在は、ジパング王国内にいる『忍』のうち、上忍と呼ばれる者の一人として陰ながら王鎧を支えていた。
現在は、分家第一位の当主水無月主眞の所に出入りしているが、流石の主眞も仁蔵が『忍』であることは知っていた。
第一位の『ミクニの水無月家』は本家と仲が良いのだが、第二位以下の分家とは仲があまり良くない。
分家も、流石に本家とは事を構えるという事はないのだが、順位が下位になるほど財力が弱く、何か問題がある毎にその順位を取って変わろうと虎視眈々とチャンスを狙っている。
『順位』とは文字通り、各分家の順番を決めているものである。
最近はその順位は固定されているのだが、実は三年に一回開催される武術大会の結果により順位が逆転するというとんでもないルールが水無月家にはあった。
これは自分達水無月家の戦闘能力を低下させないため常に互いを競いあわせる状態を作っておくためのシステムであり、少しでも気を抜けば下位に取って変わられるという恐ろしいものであった。
そして、この期間中は本家は一切、分家との交流は禁止される。
本家が特定の分家に肩入れしないようにするためである。
そして、もう1つ、分家の順位が変動する時がある。
それは、本家の人間が長期に渡ってジパング王国から不在となる際に、他国から攻撃を受けたりした場合、その攻撃をいかに分家の者達が防御、防衛したのか、または制圧したのかという事に対する実績によって順位や仕えている配下の戦士が配置される分家が変動するというものだ。
まあ、それらはトランプの『大富豪』というゲームと同じで、第一位が『大富豪』とすると、第七位が『ど貧民』という理屈だ。
そして、普段、ジパング王国に攻めて来る国はあらかじめ決められていた。
それはドリタニア王国である。
そう、ドリタニア王国はジパング王国の兄弟国である。
えっ?意味がわからないって?
そう、それは兄弟国の協力を得た『軍事演習』なのだ。
流石に、現在のジパング王国に本気で攻めて来るような国は皆無である。
三年に一度の『武術大会』と不定期に行われる『軍事演習』。
これの成績如何によって分家の順位が上下するのだ。
これは本家の指示によりあらかじめ各分家に伝えられるため、下位の分家になるほど上位に上がれるチャンスのため気合いの入り方が違う。
実際に殺し合うことはないが、かなりハードな演習となり、防衛の判定はドリタニア王国の軍が実施するのだ。
だが今回の場合、ドリタニア王国は関与しない。
今回の目的は『幽霊門』から現れるかもしれないと考えられる『害悪』の阻止である。
各分家の者達が集まるため『演習』に極めて近い形式ではあるが『演習』ではなく『実戦』なのでドリタニア王国の判定はないのだ。
今回は、王鎧の指示に従って、まず今回の『幽霊門』に王鎧達が入った時点が開始の合図となった。
そして、ジパング王国の国王に『厳戒体制』開始の連絡が入る。
ただ、今回は不定期のものであり『演習』ではないためドリタニア王国が攻めて来る訳ではない。
今回の厳戒体制の理由は、先程も言ったとおり『幽霊門』から溢れてくる『害悪』、つまり魔物等に対する対応が主たる目的である。
実際に出てくるか否かは不明ではあるが、あれほどの結界に守られている場所が開いたとなるとやはり強力な魔物が封印されている可能性が高く、それらの魔物が漏出してくると判断せざるを得なかった。
本家の者達がこの『幽霊門』に入っていくとなれば当然いくらかの魔物が討伐されるであろうが、全て討伐される訳ではない。
必ず討ち漏らされてジパング王国に這い出てくる魔物がいるはずであり、王鎧は分家にそれらの討伐任務を任せていた。
そのため、既に、王鎧は各分家の代表者や応援部隊をこのマズマミヤに集結させていた。
そして、今回もその戦果、つまり対応状況の良し悪しで『演習』に準じた順位決定の選考を実施すると全分家に伝えていた。
そのため各分家は目茶苦茶やる気に溢れていた。
当然、実戦でもあるため、成績の如何によっては相当な報酬も期待されていた。
ちなみに分家の実力についてだが、約2000年前に起こった『龍の災厄』後、正統継承者以外にも付与されていた『超魔力』や『超剛力』等の超スキルは水神ミズハノメから奪われ、水無月家の人間の大半は普通の人間の能力に戻されていた。
だが、それでも元々全員がかなりの実力者ばかりであったことや、少しではあるが付与されていた能力の一部が体内に残存している者、能力が変異している者もいたりして、他の人間に比べると極めて強力な戦闘力を持っていた。
そのため、以前、本土で現れたキングドリルなどの魔物は、本来、分家で対応しなければならない個体だったのだが、予想を上回る魔力値と力を持っていたため本家への依頼となったのだった。1-7
そして、今回はそんな分家の者達を完全に巻き込むことになる王鎧の悪い予想が的中することになるのだった。
ここはドリタニア王国の首都ドリトスにあるドリタニア王城の中にある国王アステカイズ・ファン・ドリタニアの寝室。
「アステカイズ様…」
部屋の外から呼び掛ける声が聞こえる。
その大きさは僅かに聞こえる程度であり、ここでは国王しか聞こえなかった。
その声に反応し、部屋の机上で書類を見ていたアステカイズが顔を上げる。
その風貌から、年の頃は50歳くらい、恰幅の良い体格からは国王の威厳が垣間見える。
そして、声の主の姿の方は見えないが近くで潜んでいるわずかな気配だけが彼に伝わってくる。
「仁蔵の手の者か?」
「はい、例の件で、王鎧様、航夜様、そして蔵光様達があの『幽霊門』に入られました。」
「何と…!そうか、やはりあれは噂通りのものであったか…」
「はい、現在は水無月の分家で門の前を固めておりますが、もし我らだけで手に負えない場合はドリタニアからの援軍を要請したいと…」
「くっくっくっ、王鎧がそう言うたか?」
「はい…」
「地下帝国とは彼ら水無月の伝承者達でさえ警戒をしなければならないほどの存在と言うことか…わかった、もし不測の事態が発生すればドリタニアの軍も兄弟国として援軍を出してやろう。」
「ありがとうございます。では…」
「うむ………あっ、ちょっと待て…」
その場から立ち去ろうとした『忍』にアステカイズが声を掛け足を止めさせる。
「何か?」
「ん、いやお前に頼みたい事があってな…」
「何でしょうか?」
そう声がすると、アステカイズにもようやく忍の姿が視認出来る様になった。
見えたと言っても黒ずくめの装束に頭巾を被っているため表情まではハッキリとは見えなかったし、恐らく大半の気配を消しているためか、認識が困難であることは間違いなかった。
「…………」
アステカイズは小さな声でその『忍』に伝言を伝える。
「委細承知しました。では…」
『忍』の声が途絶えると気配が完全に消えた。
「げに恐ろしきは水無月の忍なりか…」
気配消失を確認したアステカイズがボソリと呟きながら、部屋の窓から見えるドリトスの街並みをボンヤリと眺めていた。
ここは『幽霊門』前。
水無月の分家の者達が警戒に当たっていた。
「親父、航夜の叔父貴達はこの門から中に入っていったと聞いているが、ここで一体何をしようとしているんだ?」
そう聞いてきたのは第二位のフォカイド島のエゾ・水無月家の水無月皇詞で、年は18歳、生まれる前までは次期水魔神拳の継承者候補として期待されていたが、出生時、紋章の発現が確認されなかったため継承者争いから外された。
また、皇詞に聞かれているのが第二位の当主水無月蓮之進である。
年齢は45歳、水無月家に生まれ、彼も戦士として育てられた。
エゾの水無月家は、水無月家の家系でも、以前は継承者を出したこともある家柄であり、優秀な戦士を多数抱えているが、前回と言うか、ここしばらく第一位の座水無月主眞が当主をしているミクニ・水無月家に一位の座を許しており、今回の『幽霊門』対策で成功というか優秀な成績を納めて順位を奪おうと画策していた。
「皇詞よ、継承者達のやる事に口出しをしてはいけないことはお前も知っているだろう。」
「だってさ、噂では蔵光が冒険者として持ってきた話らしいじゃないか!他にも何人か連れの冒険者も連れて来ているとか…」
「それは、ワシも聞いているが、あの王鎧様が一緒に入っていく程の案件だ…生半可な話ではないだろう。」
と蓮之進が『幽霊門』の方を緊張した面持ちで見ている。
彼等の近くではミクニの水無月家の水無月主眞が娘の姫羅と待機していた。
姫羅は蔵光と同じ16歳で、水無月には珍しく光系の魔法の能力に優れていた。
魔力値も高く、先祖の遺伝が強いのではと噂されている。
蔵光とは幼なじみとなるが、蔵光は生まれてすぐに隔離されていたため、あまり面識は無く、本人の事は噂で聞く程度で、本家に父の付き添いで二、三度来た時にチラッと見かけた程度であった。
「お父様、蔵光様はこのままジパングに止まるおつもりなのでしょうか?」
「それはわからんが、ヴェネシア王国にある冒険者ギルドの冒険者同士でクランズを作っているらしいから、またそちらに戻るんじゃないかな?」
「そうですか…」
「どうした?気になるのか?」
「あ、いえ、そう言うわけでは…」
「ふっふっ、話によると蔵光はクランズに三人ほど若い女性を入れているらしいぞ。」
「えっ、そうなのですか?」
姫羅が少し動揺する様な表情を見せると主眞はさらに娘に不安材料を与える。
「ああ、この間、航夜様から聞いたのだが、なんでもクランズのリーダーはヴェネシア王国のヴェレリアント領主の娘らしい。なかなかの美人らしいぞ。」
「そ、そうですか…」
姫羅の瞳が揺れる。
「そうだ、それにメンバーの中にはメトナプトラの最長老の孫娘もいるという話だ。お前もうかうかしていたら憧れの蔵光様を取られてしまうかも知れんぞ!」
「私はそんな…」
と姫羅は顔を赤くする。
「ハッハッハッ!まあ、蔵光は元々ああいう性格だから、そんな色恋沙汰にはあまり感心は無いらしいがな。」
と娘の表情を見ながらニコニコとしている。
そんな冗談が言えるのも、自分の娘が蔵光の事を陰で慕っていることを知っているからこそだろう。
そんな冗談を言っている時であった。
『幽霊門』に異変が生じていた。
「な、何だあれは?!」
皇詞が『幽霊門』の方を見ながら叫ぶ。
洞窟内で余り明るくないため、よくは見えないが、そこには大きな門を塞ぐかの如く、巨大な『何か』が蠢いていた。
【アサッテ・ハイドのクエスト日記】
ここはイスパイタス王国の首都エムグランドにある酒場。
ガズウ「やはり、政府が絡んでいたぞ。」
(。・`з・)ノ
アサッテ「で、どういった内容なんだ?」
(・д・)ノ
ガ「詳しくは下の者達にも知らされていないようなんだが…どうも件の魔物は王国軍の施設から逃げ出した個体のようなのだ…」
(;゜0゜)
シン「うそ?!じゃあ、クエストに出ないのはその事実を漏れないようにするためなの?」
ヽ(´・ω・`*)
リルカ「どうもそうみたいよ、私とソウドが聞いてきた事もそれに符号する事実があるわ。」
(○・ω・)ノ
ア「そうなのか?」(o゜з゜o)ノ
ソウド「ああ、ここのギルドの中でもかなりそれは噂になっている。あれは『キメラ』ではないかと。」
ヽ( `・ω・)ノ
シ「『キメラ』って合成獣の?それって魔物の合成実験でもしたって事?」
(;´゜д゜)ゞ
ソ「ああ、『キマイラ』が自然界で自然発生したものならば、『キメラ』は人間が生み出した災害だ。もしそんなものが野に放たれていたとなれば…」
ヽ(・ω・`*)
ア「そりゃ隠すわな。」(´-ω-`;)ゞ
ガ「何てこった。割のいいクエストを訪ねてきたらとんでもないモノを拾ってしまったなアサッテ…」
(*´・ω・`)b
ア「ま、クエストでなくても放っておく訳にはいかないな。」
(。・Д・)ゞ
はてさて、話はとんでもない方向に向いてきました。
どうなることやら。(* ̄∇ ̄)ノ




