第34話 ジパング王国2 『生体認証』
ようやく水無月家の屋敷内に入れるのかと思いきや…
第34話 ジパング王国2 『生体認証』
ヘルメスがアズマミヤ大教会の裏口を出てから初めて見たもの…、それは巨大な壁だった。
それぞれひとつの大きさが約5m以上もありそうな岩のような石で構成された石組みの壁であり、高さも100m以上はありそうで、ヘルメスがそれを見上げながら受けた衝撃はかなりなものであり、その印象を一言で言えば、まるで要塞であった。
そして、それは端が見えないほど長く、遠くまで続いていた。
「こ、これは?」
「水無月家の敷地の周囲を囲っている塀だよ。」
と蔵光が説明する。
「塀って…、ヴェネシア王国の王城の城壁でもこんなに凄くないよ!何なんですかこれ!?」
とヴィスコが興奮している。
この塀には、魔石を使った結界が張ってあるため、外部からの侵入はまず無理であり、機密を守るためにこの様な厳重な造りになっていると誠三郎がヘルメス達に説明する。
「どうぞこちらへ。」
修道士は、蔵光達を裏口から外の階段へ案内する。
階段下には、黒塗りの高級魔導車が何台か待たせてあった。
車内は、『プラチナスカイドラグナー』程ではないが、高級感溢れる仕様となっていて、座席のシートは程よい固さの黒の革張りで、酒やドリンクのサービスまであった。
一番大きな魔導車には蔵光、ゼリーと女性メンバー。
二号車には誠三郎とヒダカ、三号車にはザビエラとトンキが乗車した。
他に取り巻きの車両が数台あって、車列の前後に護衛車両として配置されていた。
「出発します。」
運転手が声をかけると、車は静かに走り始めた。
しばらくは壁沿いに走行していたが、ヘルメスが、ふと壁の反対側を見ると、そこにはジパング王国の首都アズマミヤの美しい街並みが広がっているのが見える。
「す、凄い。」
ヘルメスが魔導車の窓から外を見て感動していた。
そこには、自分達の故郷の街が相当の歳月をかけないとそのレベルにまで到達しないと思われる程、近代化が進んだ巨大な建造物群であった。
超高層ビルとまではいかないが、かなりの高層建物も建てられている。
「こんな、凄い建築様式があったのですか?」
とヴィスコも感動していた。
「エージの建築理論を使ってな。」
とゼリーが解説する。
エージの持っているスキルは、『科学者』『技術開発』というスキルで、この能力を使って様々な最新鋭の魔導機を発明し、更にはこの様な最新の建築技術を使用する事によってジパング王国の近代化に成功していた。
「こんなに凄い技術があるのであれば、情報漏洩に細心の注意を払うのも頷けます。」
ヘルメスは素直に納得する。
「まあ、これは後付けらしいんやけどな。本来の情報の流出を止めたかったのは、これやない。」
「というと?」
知りたがりのヴィスコが尋ねる。
「害悪の流出阻止や。」
「害悪の流出阻止?」
「そうや、このジパング王国の国土は西大陸と魔の大森林地帯の二つを足した程の広さを誇っていて、水無月家はその広い大陸の中にほとんどの龍種を閉じ込めているんや。」
「ほとんどの龍種?」
「そうや、古龍種や龍種、亜龍種なんかも少し含まれているんやが、それらは、一部のドラゴンを除いて、この大陸から自由に抜け出すことが出来ないような仕組みになっている。」
「それって…」
「そう、ジパング王国による龍種の管理や。」
「管理?」
「そうや、大陸の中に閉じ込め、管理する事によって、黒龍化を未然に防ぎ、更に外界に飛び出さないようにしたことにより、世界中の人々に対する黒龍からの被害を最小限に食い止めているという話や。」
「じゃあ、ジパング王国以外の地域に住むドラゴンは?」
「まあ、この間のギルガの件は別として、ある程度は個体数が把握されていて、もし、それらが黒龍化した時には駆除することになっている。それは現在、水月のじいさんが主にやっているんやけどな。それでジパング王国内の方は、主の親父さんや王鎧のじいさんがやっとるという訳や。」
「それが、害悪の流出の阻止?」
「そうやな、アイツらが直接的に害悪という訳や無いけどな、間違って黒龍化した時に外へ出んようにしとるということや。」
ヴィスコがその言葉を聞いて何かに気付く。
「もしかして、2000年前の『龍の災厄』の時に…」
「ようわかったな。まあ、歴史的にはこの大陸へ龍が逃げ込んだみたいな感じになっとるけど、実のところ水無月家の言い伝えでは、わざと、この地へ龍を追い込んだということになっとるらしい。最初から管理しやすいようにするためにな。」
「確かに一つの場所に集めれば管理は楽だけど…本来ならドラゴンを誘導して一ヶ所に集めるというような芸当なんて普通、出来る訳ないと思うんだろうけど、蔵光さん達の力を見た後なら、そんな芸当も可能だと納得するしかないわね。」
「それで、その時に追い込まれたのは黒龍化していない普通の龍達ばかりで、黒龍化していた龍は全てその時に討伐されたということなのね?」
「そういう事や、ワダツミなんかもそれで追い立てられて、ここにやって来たという口や。」
「なるほど…」
ヘルメスやヴィスコは、『龍の災厄』の真実を知り、何とも言えない顔をしている。
2000年も昔から言い伝えられてきた話が、実は違っていましたと言われても、中々納得できるものではないが、水無月家の力を見て知っている者としては納得せざるを得ない。
「じゃあデルタさんとかは?」
ヴィスコはギルガの恋の相手であるデルタの事を聞いた。
「把握済みらしい。」
「ひゃー!」
水無月家の情報網の凄さに驚く。
「そのことなんやが、水月のじいさんが『魔の大森林地帯』に入り込んでいたのは、その昔、水無月家が黒龍化から救いだした家系と言われるマークス家の者達のうち、突然、龍の墓場から姿を消したと伝えられていたデルタの兄貴のラドラ・マークス・グリードの足取りを調べるためやったらしい。」
「じゃあ、モグル・ランカスの件も?」
「いや、モグルの事はわかっていなかったみたいで、どうも、水月のじいさんがラドラの事をジェノマの魔王アリジンに聞きにいった時、逆にダウスの事を調べて欲しいと魔王から依頼があったみたいで、ダウスと接触していたデストロ達を調べていた途中にたまたまラドラの存在を知ったらしい。」
「たまたまですか…」
「ああ、たまたまや。まあでも、水月のじいさんに付いている『上忍』が仕入れた情報みたいやけどな。」
「なるほどですぅ。」
ヴィスコは初めて聞く裏話に目を輝かせる。
「だが、奴らは中々用心深くて表に姿を現さんかったようで、探しきれずに結構、難儀してたみたいや。」
「はあーそれを蔵光さんが?」
「そういう事や、まあ、モグルはたまたまやったらしいし、その後にガロヤスミカンダの件でも奴が釣れると思わんかったみたいや。それで、水月のじいさんもあの時は慌ててやって来たみたいや。」1-159
蔵光もその話を聞いていたみたいで、うんうんと頷く。
「凄いですぅ。」
ヴィスコが目を輝かせている。
「強運というか、主はそういうところは引きが強いところあるからな。」
確かに、これまで彼女達もご都合主義と言わんばかりの蔵光の引きの強さを目の当たりにしてきた。
今回も、『マリガトリアン』の事で、かなり引きが強い事が証明されていた。
魔導車はしばらくして、壁に取り付けられた高さが約20mくらいもある大きな門の所に来て停車した。
"今から、生体認証のデータを取りますで、ご協力よろしくお願いします。"
と魔導車から放送のように連絡が入る。
高級魔導車といっても蔵光達の乗っている魔導車は結構大きいこともあるが、運転席と後部座席には仕切りがある。
本来の目的は、運転手に乗車している者の話し声が聞かれないようにするためなので、運転席と後部の座席は区切られているのだ。
一応、仕切り窓があり、その窓を開ければ直接後の席の者と話は出来るが、中の仕切りを閉じてしまえば、直接、運転手と話が出来ないため、こういった連絡機能がついている。
「この声が出る機能って、プラチナスカイドラグナーにも付いていたよね。」
とヴィスコが言う。
声を魔力に乗せてスピーカーの様に声を伝える魔鉱機だ。
そんな機能もエージが開発したのだが、他の国には流通していない。
これも情報を伝達する機能のある道具であるため、輸出を禁止している。
頭の良い者なら、これを改造して携帯電話のような魔鉱機を作る可能性が十分に考えられるからだそうだ。
「さあ、降りようか。」
蔵光が車を降り、門の設置箇所にある壁の中に設けられた施設に案内する。
「ここは、生体認証をするための装置が置いてあるんだ。」
蔵光はそう言って施設のドアを開けた。
中は比較的広く、どこぞの情報管理システムの部屋のように、屋敷内に取り付けられた多くの防犯カメラと思われるモノから送られてくる映像を映すモニター画面が部屋の壁いっぱいに取り付けられていて、多くの人間がそれを監視していた。
それを見る限り、とても壁の中にある施設とは思えない位の構造で、門の管理者と思われる者達がそこで働いていた。
ヘルメス達が通された部屋は、そこから通路を少し奥に入った所にある小部屋で、小部屋といっても学校の教室くらいの大きさがあった。
そして、そこには空港の搭乗者に使われる金属探知ゲートのような長方形の魔鉱機が置かれていた。
「お一人ずつ、この生体認証装置の中をお潜り下さい。」
この部屋の女性の担当者が案内する。
「じゃあ、私から…」
そう言ってヘルメスが前に進み出る。
そして、長方形のゲートを潜る。
特に何も体に感じるものはなかったが、担当者からは、
「はい、結構です。」
と言われた。
そして、その後は次々にゲートを潜っていった。
「ありがとうございました。今ので、皆様の指紋、血液型、瞳の虹彩パターンを確認させて頂きました。」
「えっ?何それ?」
ヴィスコが聞き慣れない単語に首を傾げる。
だが、特に担当者からは、それの説明はなされなかった。
「多分、言うてもわからんやろうからな。」
とゼリーがニヤリと笑うとヴィスコは、
「あーもー!何なんですか、ゼリーちゃんは!バカにしてるでしょ!」
とほっぺたを膨らませている。
「簡単に言うたら、個体別の体の情報を取らせてもらったんや。これがあれば、いくら、変化の魔法を使って本人のフリをしていたとしても、これでわかるようになっとるんや。」
とゼリーが簡単に説明する。
「へー、そうなんですか。」
ヴィスコは理屈はわからないがとりあえず納得したようだった。
「それに、この認証の後に、立ち会いの人間の証明が必要なので、勝手にこの装置を使って認証をしても、登録作業が出来ないようになっているので、すぐに関係者に成り済ます事も出来ないようになっている。」
「で、認証者は俺。」
と言いながら、蔵光が認証ゲートの横にある菓子箱くらいの小さな箱形の装置に手を入れる。
すると、箱の上部に取り付けられた魔石のライトが緑色に点灯する。
「良し!これで皆の認証は済んだよ。」
蔵光がニコッと笑う。
「そしたら行こか!」
とゼリーが旅行会社の添乗員の様に手を上げ、全員がそれに続いて部屋を出ていった。
【アサッテ・ハイドのクエスト日記】
(ドリタニア王国のダンジョン内にて)
ソ「アサッテ!このドリトスのA級ダンジョンヤバイぞ!」
(;゜0゜)
ア「言われなくてもわかってるよ!」
(*゜Д゜)ゞ
ガ「ソウド!魔力は?」
( ゜Д゜)ノ
ソ「もうすぐ切れる。」
ヽ(´・ω・`*)
ガ「じゃあ俺が盾になるのでリルカとシンを連れて上に戻れ!」(;´゜д゜)ゞ
ソ「わかった!」
(。・`з・)ノ
ア「すまない!俺の判断が甘かった!」
人( ̄ω ̄;)
リ「みんなで決めたことでしょ!貴方だけの責任じゃないから。」
┐( ̄ヘ ̄)┌
ガ「そうだぞアサッテ!ドリトスに新しいダンジョンがあると言ったのは俺だしな。」
(´・ω・)っ
ア「わかった、じゃあ、とりあえず仕切り直しという事で…『セレクトカット』!」
ヽ( `・ω・)ノ
シ「アサッテのそのスキル何でも選んで切れるんだけど限界があるんだね。」
ヽ(;´ω`)ノ
ア「そりゃそうだよ、でもまさか、こんなゴーストの多いトコだとは思わなかったよ。俺のスキルでも流石に実体がなけりゃ切れないからな。」
┐(-。ー;)┌
ソ「俺の火魔法でも効かないんだからな。困ったもんだよ。そりゃ!逃げろ!ファイヤー!」
( ´-ω-)y‐┛~~火火火炎
ア「あー全然効いてねえ!ガズウ、もういいぞ!取り込まれないうちに引き上げだ!」
( ´△`)
ガ「俺達はどこで間違ったんだ?」
(´・ω・`)?
やっぱり必要なのはあの力でしょ。(o゜з゜o)ノ




