第32話 開いた古文書と謎の質問集
謎の質問の内容は『クリム&カリスマ』の異世界コント集で収録されています。
第32話 開いた古文書と謎の質問集
ここはギルレアンの温泉宿『べれり庵』の敷地内にあるクランズ『プラチナドラゴンズ』の本拠地の建物内。
その一室に、蔵光、ゼリー、ヘルメス、誠三郎、ヴィスコ、ザビエラ、オルビア、ヒダカ、トンキら『プラチナドラゴンズ』メンバーとジパング王国からエージことカリスマ・エージが来ていた。
四つの鍵で開けられた古文書の表紙を開き、中を確認したが、やはり中身は古代文字『ニホンゴ』で書かれた文章であったため、読むことが出来るのがゼリーやエージだけであった。
そのため、中の文章の解読は二人に任せる事になった。
マリガトリアンにはメディスロンが言った通り、いくつかの問題文が書かれていた。
まずはゼリーが、古文書『マリガトリアン』の中に書かれていた問題を読み上げることとなった。
そして、問題を聞いて、それを解く担当はカリスマエージである。
これは『南の森』でゼリーは、メディスロンが出した質問に答えられなかったため、ゼリーではなく、その質問に答える事が出来たエージの方が適任であろうと言うことで急遽、抜擢され、ジパング王国から引っ張って来られたのだ。
エージは今回、ジパング王国から初めて外に出た訳なのだが、ゼリーの空間魔法により、自分のラボから一瞬でこの部屋まで転送されたため、旅行をしてここまでやって来たという感動は一ミリもない。
「それでは、第一問や。『異世界召喚で召喚されたエージが神官チヨコから言い渡された使命とは何か?』ああ、これ…、ワイはわからんわ。」
すぐにゼリーはあきらめたが、エージはさらりとその質問に答える。
「『魔王ゴルゴンゾール討伐』ですね。」
「ああ、そう言えばそんなんあったわ。エージ、お前ようわかるなあ。正解や!」
「そりゃそうでしょ。自分が作ったネタですから。」
エージは少し自慢気である。
まあ、エージとしては、生前に宮離霧千陽子から散々尻を叩かれて苦労して作ったネタなので死んでも忘れないだろう。
まあ、一度死んで転生しているのだが…
反対にゼリーとしては300年近い昔の記憶となるので、忘れている事が多かった。
なので、『東の森』で答えられたのは奇跡と言う他無かった。
「そしたら、第二問、『バイト勇者2の『勇者チヨコのまかない料理』の新作の名前は?』やが?」
「それは、『今日はマジ魔王の生首南国フルーツの濃厚ソース掛け、滴る血はドリアンの香り』です。」
「ひゃあー、何か、わからないですけど、凄すぎですぅ。それって答えは合っているんですか?」
それを隣で聞いていたヴィスコは、何か恐ろしいものを見た様な表情となっている。
それは、今までに全く聞いたこともない言語であることや、その言語を使用した得体の知れない質問と回答に気圧されている感があるからだろう。
そして、『マリガトリアン』は出題された問題が正解される度に青白い光を放ち、次の問題を出題するというシステムをとっているようだった。
「えっと、次の問題は…えっ?『チヨコのチーム名は?』……これって…何やコイツ、こんなことまで…」
ゼリーが固まり戸惑いながらも、自分で質問に答えた。
「答えは『スターセブン』や…」
『マリガトリアン』は再び青白い光を放つ。
「ちょっと待ってくれ!」
ゼリーがストップをかける。
「おい、エージ、コイツ一体誰や?」
明らかにゼリーは動揺していた。
チョッコ・クリム本人では無いが、チョッコと同じ深層の記憶を共有、つまり、チョッコ・クリム本人の記憶だけでなく、転生前の宮離霧千陽子としての記憶を持つため、言わばチョッコ、いや千陽子の人生を疑似体験している様なものだから、そうなるのも、仕方ない。
チョッコの転生前の宮離霧千陽子は若い頃、暴走族グループのリーダーをやっていて、そのチーム名が『スターセブン』であった。
だが、アズマンがその質問を出すという意味、それはつまり、その事実を知る者は、千陽子が芸人であることと、『スターセブン』のリーダーであった事実の両方を知る者であり、それに加えて、千陽子が異世界に転生したと認識出来ている人間に限られる。
「と言うことは、例の殺人事件の後に、千陽子さんの過去の事を知った人物でしょうか?」
とエージが推理する。
芸人宮離霧千陽子の過去が大々的に知られたのは、千陽子がある殺人事件の解決に関わっていたからだった。
「コアなファンやったらそうなる…事務所はそれまで千陽子の経歴は出してなかったからな。」
「そしたら、熱烈ファンの後追い自殺とか?」
「アホ、そんなことあるか!死んでワイらが異世界に転生してるとか普通、考えへんやろ!」
「そうですよね、そうなれば、僕達と同じ時期に死んで、同じ様に転生して僕達が同じ様に転生している可能性を知っている、もしくは疑えることができる者ということになりますよね。」
「そうや、そうなれば、やっぱり一緒に事故に巻き込まれたマサやんとちゃうんか?!」
「いやぁ、木村さんはそんな面倒臭いことしませんよ。」
エージは木村マサトシ転生説をアッサリ否定する。
「まあ、そうやな、それにワイらを『神』とか思ってないやろし。」
「ですよね、木村さんがそんな狂信的なファンじゃあるまいし…」
「そうそう、狂信的なファンじゃ…狂信的な……おい、エージ」
ゼリーが何かを思い出していたが、エージも何かに思い当たったようだった。
「千陽子さん、たぶんそれですよ!」
エージも完全に話している相手が千陽子と重なっているようで、呼び方もチヨコになっていた。
「アイツ、名前は何て言うてたかな?」
「確か、確か、た…か、顔は少し、うっすらと、ボンヤリ覚えているような、いないような…」
「要するに、覚えてないんやろ。」
「すみません。って分かるわけないですよね!舞台から客席なんて暗くて見えませんし、あの頃の時代、ファンが芸人に直接接触するなんてことうちの事務所が許しませんでしたしね。」
「そうやな、それにワイのところにやって来る奴らなんて荒くれた奴ばっかりやったしな。」
「そうですよ、千陽子さんの事を恐れて普通の人は近寄らなかったですからねえ。」
「そうそう、っておい!人をライオンや化け物みたいに言うな!」
「いや、ある意味ライオンや化け物より怖かったですから。」
「どういう意味や!」
ゼリーがエージにツッコミを入れる。
「はあー流石ですぅ。ゼリーちゃん師匠の連続ツッコミ!」
とヴィスコが感動している。
ちなみにヴィスコはゼリーのツッコミの弟子だ。
「しかし、ワイらと同じ様に死んだとなると…他には、相手の運転手とかやな。」
「転生者の定番となると…そうなりますね。実際に相手の車とかは見てませんが…」
「やはり、転生トラックかな。」
「トラックですか?どうでしょうかね、それだったらテンプレ通り居眠り中の運転手かな?あ、でも、事故した車が車線を逸脱して歩行者を跳ねたとか?」
「そうとも考えられるな、せやけど流石にワイらのファンが都合よく道路上に立っている訳ないし…」
「あー、でも会場近かったし、その可能性もあるかも。でも、その場合、事故した車に僕達が乗っているなんて、ちょっとわからないでしょ?」
「それはわからへんで。好きな奴の事をメチャクチャ調べてくるストーカー的な奴、たまにおるからなあ。」
「いや、そうですね、だったら事務所の車を覚えていて、到着待ちとか?まあ、有名人のファンなら有り得ない話じゃないですけど…僕達はそんなに売れてなかったし…」
「うわーわからんわ。また振り出しやん!アズマンの正体は一体誰やねん!」
ゼリーがプルプルの頭を抱える。
「とりあえず、今の状態では全くらちが明きませんから、続きの質問に答えていきましょう。」
とエージが、アズマンの正体の推理を一時中断させた。
「そしたら次の問題、『剣聖チヨコが持っていた『絶対カウンター』の他に持っていた最強スキルとは?』」
「確か『絶対優越』でしょ。相手より絶対にちょっとだけ強くなるスキル。」
マリガトリアンが正解の色を放つ。
こうして、次々とゼリーとエージはまさに『神』のごとく、難解な問題を解いていった。
そして…
「エージ、これが最後の問題みたいやで。」
「どうぞ、言って下さい。」
エージが頷く。
「そしたら、最後の問題。『『恐怖のクリスマスプレゼント』で魔導師チヨコが剣士エージにプレゼントしようとしたが値段が高騰してて購入出来ず渡せなかったモノとは?』」
「えっと、あれって、確か何かのツアーだったよな…」
これまで、スラスラと答えていたエージが、とうとう最後の問題で詰まってしまった。
「おいおい、エージ、もしかして、忘れたんか?」
ゼリーが心配そうな顔になる。
「だ、だ、大丈夫だと思う。えっと、確か『人食いドラゴンの縄張りツアー七日間の旅』だったかな。」
エージがそう言うと、マリガトリアンが虹色に輝き、この魔法世界『マーリック』の世界地図が空中に映し出され、ある一点が赤く点滅している。
「ここやな、ここが、古代地下帝国マリガトリアに入るための入口っちゅうことやな。」
「あれっ?この場所って…」
ゼリーの隣で見ていたヴィスコが最初に気付く。
そして、ヘルメスにもわかったようだ。
それは、マソパッドの地図で一度見たことがある謎の大陸であり、蔵光達、水無月家のホームグラウンドであった。
「ああっ?!これってジパング王国じゃ?」
「どうして帝国の入り口がジパング王国に?」
流石の蔵光も驚きを隠せない。
マリガトリア帝国の入口が何故そこにあるのか、また、何故そこになければならなかったのか。
「偶然か、はたまた必然なのか…」
誠三郎もこの事態に表情が曇る。
「主ぃ~早い、帰国になったな。」
とゼリーが茶化す。
蔵光は武者修行という名の下に、ジパング王国を後にした。
そして、世界に広がる謎を求め渡り歩く事が出来る『冒険者』となるため、ジパング王国には無い『冒険者ギルド』で登録し『冒険者』となった。
冒険者となり、どのような事になるかわからなかったが、ジパング王国へは当分帰ることはないだろうと思っていた。
だが、冒険者となり一年程で、まさか里帰りするとは思ってもみなかった。
世界から唯一、鎖国している謎の国『ジパング王国』。
普通の人間では、入ることすら許されない『修羅の国』とも言われている。
それは、蔵光達、水無月家の事を言っているのだろうが、未だにその実態は謎に包まれていた。
「私達、ジパング王国に入ることが出来るんでしょうか?」
ヘルメスが蔵光達、ジパング王国の者に尋ねた。
「うーん、俺達の国はギルドカードも通用しないからなあ。」
と蔵光が言うと誠三郎も、
「普通、他国の人間は一切国内に入ることは出来ん。」
と答えた。
「どうやったら入ることが出来るの?」
とヴィスコが質問する。
「ジパング王国の人間と身内になるか、国の厳しい審査を受けて通ることかな。」
「えっと、それって私達が蔵光殿のクランズ仲間だとしてもですか?」
「そうだな、クランズはあくまでも『仕事仲間』という括りだから、身内でない限りは、審査を受けなくてはならない。」
「それじゃあ、国の発行する許可証とかがいるってこと?」
「まあ、それも重要なんだが、元々、鎖国をする理由が『情報の漏洩防止』なので、まず『国から何も持ち出すことはしない』ということを確約させられる。」
と誠三郎が言うと、ヴィスコが、
「そんなことでいいの?」
と不思議そうな表情をした。
だが、ゼリーがそれを聞いて、
「アホ、それが一番ネックなんや!」
と呆れた顔をする。
「えっ?それはどう言うこと?」
ヘルメスも首を傾げると、誠三郎が説明する。
「『ジパング王国』に入国する人間は、基本的に国内から『情報』すら持ち出せない。すなわち、人間の記憶すら外で喋られない様にするため、入国後、五年は国外に出られない。つまり、最低、五年間は国内に止まらなくてはならない。、そして、その五年間は、ジパング王国の情報から隔絶した場所で隔離生活を送った後に解放されるので、例えば二年間国内にいたとしてもプラス五年間、つまり、七年間、ジパングで生活しなければならないという事を確約させられるということなのだ。」
「五年間ですか…」
ヘルメスは驚きの事実に表情を固くする。
「言うならば、間者として情報を本国に伝えようとしても、その情報は五年前の情報になるため、それは全く用を成さないモノとなるからだ。」
「えっと、五年間は牢獄に入るのですか?」
ヴィスコが尋ねると、
「いや、牢獄ではないが、年毎に、ジパング王国の本土の周辺にある指定された島の収容施設に送られ、そこで軟禁状態で過ごすことになる。そして、その間、情報を一切遮断された生活を送らなければならない。当然、そこから逃げ出そうとすれば、『忍』がその人間を追跡して隠密裏に始末することとなる。」
「そ、そんなこと…出来る訳ない…」
ヘルメスがボソリと呟くと、誠三郎も、
「そうだ、『出来る訳ない』のだ、だから誰もその約定には同意しない。つまり、ジパング王国には入れないということなのだ。」
誠三郎が、余りにも敷居の高い、ジパング王国への入国審査の実態を説明すると、ヘルメス達は絶句していた。
次回から新しい章に入ります。
新章はジパング王国に関する話になります。
どうなるか、わかりませんが頑張って続けていきます。
(*>∇<)ノ
今回のオマケコーナーはお休みです。
更新すれば、ここへ上書きされているかもです。
(*´∇`*)




