第31話 マリガトリアン解除
ようやく、マリガトリアンの表紙が開きます。
第31話
「そうか、そしたらどちらもワイがいかんと話にならんちゅう事やな。」
ゼリーは誠三郎やヘルメス達の話を聞いて、どちらも自分が関係する話であることを理解する。
ここは、『べれり庵』の敷地内にある、蔵光達のクランズ『プラチナドラゴンズ』の本拠地となる建物の中にある一室。
ここは『プラチナスカイドラグナー』の整備工場と近い場所に建てられていて、『べれり庵』全体が見渡せるような高台に建てられている。
この建物内に入るためには、色々なゲートと言うか、チェック場所を通らないと到達出来ないようになっている。
まずは、正面ゲートというか、日本のお寺やお城等にある『門』の建物があって、門番や宿泊等の利用客の受付がある。
そして、そこでチェックを済ませると次は、『べれり庵本館』において、女将のお出迎えがある。
ちなみにこれについては、以前、誠三郎の部下であり『忍』一人であった『稲妻』が女将に収まっていた。
ここで、客と関係者との振り分けを行う。
そして、そこから関係者専用通路を通って従業員達が働いている事務室を抜け、一度、建物の外に出てから、再度、チェック用のゲートで認証を受けた後、ようやく建物の前に到着する。
そこで、再認証を受け、ようやく建物内に入ることができるのだ。
この中には、『ビスコ部屋』はもちろんの事、世界中の『情報』が存在する。
そのためのセキュリティなのだ。
当然外から塀を乗り越えたり、空から侵入しようとしても防御結界が張ってあるので、絶対に無理だし、もし、悪意を持って侵入しようとして、例えばメンバーの誰かが精神操作を受けていたとしても、チェックゲートでの認証で全てばれてしまうので容易に侵入は出来ないようになっているのだ。
「どちらから行く?」
蔵光が尋ねると、ゼリーは、
「どちらでもエエけど、そやな、とりあえずは、セイノジの方の『ケントルム・テラエ』の件を先に片付けよか。」
と言いながら蔵光の方を見る。
一応、自分の主だし、従魔だから、契約で勝手に行動は出来ないようになっている。
「ゼリーがそれでいいんなら、俺もそれでいいよ。」
蔵光は快く承諾する。
「よし、それではゼリーを連れて行くか。」
と誠三郎が座っていた椅子から立ち上がる。
「俺も行くよ、多分、鍵を開けてもらうだけなら直ぐにでも終わるだろうし、その足で次の南の森にも行けば、今日中にも『マリガトリアン』が解除されるんだろ?」
と蔵光も立ち上がった。
「わかりました。では若も同行を願います。」
と誠三郎が頭を下げる。
こうして、蔵光達は、誠三郎達が話を付けた西の森へ先に行くことになった。
森の目的地までへは高機動型魔導飛行船『プラチナスカイドラグナー』で、森の最奥部の上空まで行き、そこから下に降下するという単純な方法で行くことになった。
初めてこの森に入る者や、また最奥部に到達したことのない者にも必ず発動すると言われる『空中迷宮』。
それは上空から侵入しようとした者にも、空中で発動展開し、迷路のように人を惑わせる『迷宮の魔法』とも言われていた。
その『空中迷宮』であったが、誠三郎達のような一度、最奥部に行った人間がメンバーの中に一人でもいれば、空からでも発動は無いということらしいので、蔵光は誠三郎の後に付いてプラチナスカイドラグナーから下船し、空から降下する。
丁度、飛行船の真下に降りたが、その場所にはビー・クイーンが、配下の虎蜂族と共に待機していた。
「待っていたぞ。」
ビー・クイーンが待ちきれないような声を出す。
ゼリーが空間魔法で亜空間から『ケントルム・テラエ』を取り出す。
すると、虎蜂族達の間から、呻き声とも唸り声ともとれる声が聞こえてきた。
「おぉー!」
「あぁ、遂に!」
「これで、我々に光が戻る。」
ゼリーはビー・クイーンに神剣『ケントルム・テラエ』を渡した。
恐る恐るそれを受けとるビー・クイーン。
1000年間も自分達の手を離れていた神剣だ。
さぞや長い時間であったであろう。
ビー・クイーンは受け取った剣を天に向けて掲げた。
すると、眩しい光が辺りを照らし、その光が次第に弱くなっていくと、剣の先端付近にひとつの『鍵』が輝きながら宙に浮いていた。
「こ、これは…!」
誠三郎が驚き、ビー・クイーンを見ると、ビー・クイーンは、
「以前、マグローシャが言っていた。『マリガトリアンの鍵は剣の中に隠す』と、そして、それを取り出すためには、私の魔力を剣に注ぎ込む事が条件であると…」
と語った。
「と言うことは、300年以上も鍵は盗まれたままだったということなのか?」
と蔵光が尋ねると、
「その通りだ。だからこそ、我々はもちろん、マグローシャはこの剣の回収に躍起になっていたのだ。自分の弟子達に代々その命令を引き継がせてまでもな…」
とビー・クイーンが答える。
「うわ!そんな事、全然知らんかったし。教えても、もらわんかったわ。知ってたら直ぐにここへ渡しに来てたし!」
とゼリーもその話を聞くと驚きを隠せない様子であった。
どうも、話によるとゼリーはこの『ケントルム・テラエ』をマグローシャの正当な伝承者の証と思っていた様だった。
だから、盗賊団『蜂の巣』を討伐し、グリーン・ビーから手に入れたときにどうしても欲しいと、冒険者ギルド・タスパ支部のギルドマスター、ジアド・アロバスタに頼み込んで貰ったのだった。
ま、その割には結構、魔族を斬ったりとか使い方が粗かったのだが…ゼリーはかなり『ケントルム・テラエ』のことを気に入っていた様であり、ビー・クイーンに渡すときには、少し惜しそうな顔をしていたが、事情がわかってようやく納得したようである。
「じゃあ、『マリガトリアン』を解錠してもらおうかな。」
と誠三郎がビー・クイーンに言うと、ビー・クイーンは頷きながらゼリーが空間魔法で出してきた『マリガトリアン』の鍵穴のひとつに合鍵を差し込み回した。
すると、前の二つの解錠の時ように、鍵穴の横の宝石の色が赤から緑に変わる。
「よし、後ひとつ!」
蔵光が拳を握り小さくガッツポーズをする。
ビー・クイーンがそれを見て、
「お前達が、我々の呪縛を解いてくれることを期待している。」
と言った。
そして、手に持っていた『ケントルム・テラエ』をゼリー渡す。
「えっ?何で?」
ゼリーは驚いてビー・クイーンの顔を見る。
「私達の本来の仕事はお前達が言う『悪魔素』を排除すること、そして、その目的はガロヤスミカンダの復活を阻止するためであった。だが、お前達は既にそれを倒し、我々の目的も達している。だから、それはお前が持っていても当然の物だと思っている。」
「いや、でも…」
「気にするな、今、確認したがそれは既に『聖神力』に変化させる力を失っている様だ。恐らく『マリガトリアン』の鍵を封じ込めたときにそうなったのだろう。」
「えっ、じゃあ。」
「それは我々には無用の長物だということだ。まあ、新しい『ケントルム・テラエ』は土の女神にでも作って貰えるようお願いするとでもしよう。」
ビー・クイーンがそう言うとゼリーの顔がパァーっと明るくなる。
「そ、そうなんか!?ええんやな?もろうても?も、もう返さんで?!」
「ああ、構わん。」
「うわー!やったー!」
ゼリーが剣を持って小躍りしている。
彼女らにとって、この1000年間は途方もない時間であったであろうし、特にこの300年間は、神経を磨り減らす日々だったに違いない。
だが、ようやく神から渡された神剣も手元に戻り、やれやれというところだったろうが、彼等にとって、『ケントルム・テラエ』は足枷にしか過ぎなかったのかも知れない。
表情は読み取れないが、もしわかるとすれば、憑き物が取れたような顔になっているのであろう。
蔵光達は彼等の見送りを受け、次の『南の森』に向かった。
ここでも西の森と同じく、最奥部の上空まで『プラチナスカイドラグナー』で行き、そこから地上に降下して向かう。
南の森ではメディスロンが人の姿で待っていた。
何やら髭を蓄えた長老のような姿で、炎の色を 模した様なオレンジ色のローブを纏っていて、長い髪の毛の色や髭等も、やや茶色に赤色がかっている色をしていた。
「待っていたぞ。」
メディスロンは、ヘルメスではなく、アズマン質問に対するの答えを待っていた。
そして、ヘルメスがゼリーを前に進める。
「こやつが、アズマンの言っていた謎の言葉の答えを知っているのか?」
「そうです。恐らく答えられると思います。」
「わかった。では、小さき者よ、アズマンからの問いに答えてくれ!『チヨコが賢者の新弟子面接を受けた時に、自分は誰の娘だと言っていたか。』」
「えっ?それって、何やったかな?」
「えっ?ゼリー、わからないの?」
「うーん、もう、300年以上も前の記憶やからなあ。」
「じゃあ、何で、東の森の扉の文章の答えはわかったの!?」
「うーん、あれはネタのキモやったしな、まあ、うーん、ちょっとエージに聞こや!」
「はあ!?ちょっと大丈夫なの?エージ君?」
「まあ、大丈夫やろ、頭脳明晰やし、こちらに転生してそないに年数経ってないから。」
「はあー、心配だわ。」
ヘルメスが、そう言いながらマソパッドを使ってエージに連絡を入れる。
「はーい、こちらはエージです。あ、ヘルメス。こんにちは、珍しいですね。今日は何ですか?」
「実は…」
ヘルメスはメディスロンの言った質問をエージに伝えた。
「ああ、それは『セイリアの娘』ですね。」
「ああ!それや、それそれ!さすがエージや、よう覚えとったな。」
「そりゃ、僕が考えたネタですから。」
「そうやったな。わはははは!」
ゼリーは大笑いした。
「じゃあ、答えは『セイリアの娘』で。」
とヘルメスが答えた。
すると、メディスロンの体が崩れていく。
「どうやら、正解だったようだな…」
「えっ、えっ?!ちょっと!」
ヘルメスが驚く。
「我には既に寿命が来ていたのだよ。だが、この鍵のために普通に寿命では死ねなかったし、普通に殺されれば鍵は我の体からは取り出せないようになっていたのだ。それに、我は、アングルボザとおな……」
そこまで言ったところでメディスロンは崩れて消えてしまった。
メディスロンが立っていた場所に『マリガトリアン』の鍵が落ちていた。
「何で?!せっかく助けたのに…それに『マリガトリアン』を開けられるのは貴方しかいなかったんじゃないの!?」
ヘルメスは叫んだが、声は森の中に吸い込まれていった。
「奴は、正解すれば、こうなる事を知っていたんやろな。まさか答えられる奴が現れるとは思ってはおらんかったやろうけどな。」
「アズマンっていう人もちょっとひどい…」
「こうしないと駄目な理由があったのでは?」
と蔵光が言う。
何とも悲しい鍵の取り出し方である。
「でも、メディスロンが死んだ今、どうやって『マリガトリアン』を開ければ…?」
「『マリガトリアン』の鍵が『四獣』しか開けられへんねんやったら、ヨルにでも開けてもらうか?それだったら、開けられるかも。」
「それだろうね。じゃあ飛行船に戻ってヨルに解錠してもらおう。」
こうして蔵光達は鍵を持って高起動魔導飛行船『プラチナスカイドラグナー』に戻ってきた。
そして、ヨルに解錠をお願いする。
ヨルが鍵を持って『マリガトリアン』の最後の鍵穴に鍵を差し込み回す。
カチリと音がして、全ての赤色の宝石が緑色に変わる。
「よし、全部開いた!」
古文書『マリガトリアン』は静かに、そして、わずかに光りながら表紙が開いていった。
ギ「おい、『べれり庵』にアシスのアップルパイを置くらしいな。」
( ̄▽ ̄)
マ「あ、ギルガさん、まあまだ予定なんですが、耳が早いですね。」
ヽ( ・ω・)ノ
ギ「ちょっとアシスに立ち寄ったからな。そこで、耳にした。」
( ̄^ ̄)
ト「えっ?ギルガ様はメトナプトラに行ってたんですか?」
σ( ̄∇ ̄;)
ギ「ああ、少し用事があってな、ヨーグまで行ってきた。訳は言えんがな。」
(*´・ω・`)b
ヴ「あーギルガ様怪しいですぅ!」
(;¬_¬)
ギ「な、な、な?!何も怪しく無いぞ!」
(;´゜д゜)ゞ
ヴ「そうなんですか、で、デルタ様はお元気ですか?」
(* ̄∇ ̄)ノ
ギ「ふん、デルタだと?あんな腑抜けたマザコン野郎とは思わなかったわ!」
ヽ(`Д´)ノプンプン
マ「どうしたんですか?ケンカでもしたんですか?」
(´・ω・`)?
ギ「うるさい!アイツのことは言うな!」
(。・`з・)ノ
ヴ「ははーん、わかりましたよ、ギルガ様。」
( →_→)
ギ「何だと!?何がわかったのだ?」
Σ(゜Д゜;≡;゜д゜)
ヴ「要は痴話ゲンカですね。恐らく、マザコンとか言う話から推測しますと、お義母様を大切にするデルタ様と口論となったとか?それで、竜の墓場を飛び出し、ヨーグにいるゼム夫妻のところに駆け込んだというところでしょうか?」
(・д・)ノ
ギ「な、な、な、なーー!」
(@ ̄□ ̄@;)!!
マ「じゃあ何故、『べれり庵』に来なかったんですかね?」
ヴ「そんな理由で、『べれり庵』に戻って来たら皆に気を使わせると、思ったのではないかな?」
ギ「ギャーー!ヴィスコー!お前、絶対、近くで見ていただろ!」
( >Д<;)
ヴ「ビンゴみたいですね。」ヾ(゜▽゜*)
それでは、また次回をお待ち下さい。
(* ̄▽ ̄)ノ~~ ♪えっ?待ってないって?




