第29話 ブラックファイアバード
最強聖獣はやはり強い。
第29話 ブラックファイアバード
ザビエラが、メディスロンの正面に立つ。
その距離、約200m程。
そして、気配遮断の状態を普通に戻す。
すると、ようやくブラックファイアバードとなってしまったメディスロンもこれには気付く。
グルルルルルーー
喉の奥を鳴らしてザビエラを威嚇する。
体長は翼を広げると200m以上になる怪鳥である。
一度、その翼で仰げば、周囲の木々が千切れ飛ぶ程の威力を持つ。
また、ファイアバード種特有の火炎攻撃は、口から吐く炎だけではなく、翼の間の器官から発する燃焼ガスに引火させることにより起こす、炎の竜巻による広範囲攻撃も持っていた。
ゴガアアアーー!!
メディスロンはいきなり炎の竜巻による攻撃を繰り出した。
それは、口からの火炎放射と違って、まさに『炎の竜巻』、辺りを一瞬で火の海にしてしまった。
ザビエラはこの攻撃を、聖槍デスフレアで凪ぎ払うと、消えるというか、炎を吸い込んでいた。
「これは!」
当の本人もこれには驚いている。
「デスフレアにこのような能力があるとは…」
まあ、元々の属性が炎の槍なので、火や炎に対する耐性があるのはわかっていたが、こんな炎の吸収能力があるのであれば、これからの戦いを有利に進めることが出来ることは直ぐにわかる。
メディスロンは今のところ気配遮断を解いたザビエラにのみ気付いている様子で、ヘルメスには気付いてはいない様だ。
その機を逃す手はない。
ヘルメスは気配遮断を継続したまま、メディスロンの背後から飛びかかるが、何かに弾かれる。
「あわわわあ!」
ヘルメスは勢いよく後方に弾かれたが、何とか体勢を立て直して、立ち上がる。
「くっ、防御魔法か!」
メディスロンは体に防御魔法を展開していた。
ヘルメス自身も防御魔法を自分の体に展開していたので、なんとか怪我は無かったものの、メディスロンの展開しているものは恐らく、元々の魔力値が一億程度として、黒龍化すれば約10倍、10億マーリョックの防御魔法となる計算であり、ヘルメスが生身で突入していれば大ケガは免れなかったであろう。
魔法は魔力値の上下関係によって干渉度が変化する。
こんな高魔力値を持つ魔物に防御魔法を展開されれば付け入る隙が無くなってしまう。
それに、先程のヘルメスの攻撃でメディスロンには、その存在が気付かれてしまった。
メディスロンは黒い炎に包まれた羽を投げナイフの様にヘルメスへ飛ばしてきた。
物凄い勢いで飛んでくる羽を何とかかわす。
後方の岩が砕け、木が燃え上がる。
「どうすれば!?」
ヘルメスは迷っていた。
力でも、魔力値でも上を行く魔物が防御魔法を展開していた。
防御魔法なんぞ普通の魔物がかけるわけがないというか、知るはずもない。
何故?、知能が上がっているのか?
それとも、別の理由が存在するのか?
さらにメディスロンの体の温度が上昇し、全身が炎に包まれる。
それも黒い炎だ。
その後も何度か剣を叩き込んだが、防御魔法により全く歯が立たない。
『駄目なのか?いや、まだまだ!』
ヘルメスは自分に言い聞かせると、今度は『聖神力』を解放する。
さらに例の黒い炎の羽が飛んできた。
ヘルメスはそれを『聖剣ヴォルガナイト』で払い落とす。
すると、羽は黒い霧となって砕け散ってなくなる。
黒い炎の羽にはやはり『聖神力』が効いた。
「よし!なら、こうだ!」
ヘルメスは『聖神力』を上昇させ、メディスロンの攻撃範囲内に突入していく。
ザビエラも『聖神力』を発現させ、メディスロンの防御魔法の防御壁にデスフレアに攻撃を突き立てる。
「うおおおーー!」
ガキーーンンン!!!
ヘルメス達が防御壁に剣を突き立てるが、やはり全く攻撃が通らない。
「く、魔力どころか聖神力も全くこの防御魔法に干渉出来ない!」
ヘルメスの攻撃が弾かれ、ヘルメスは少し、トーンダウンしているが、ザビエラの方はまだあきらめていない。
戦闘種族としての意地と誇りが体を突き動かす。
「なんの!」
ザビエラの高速の突きが、メディスロンの火炎を躱しながら、さらに防御壁への攻撃を継続する。
ヘルメスもザビエラに感化され、再び、攻撃を始める。
二人とも諦める事をしない。
さらに、連携技も激しくなり、二人の連擊が防御壁に突き刺さる。
しかし、全く攻撃が通る気がしない。
逆にメディスロンの火炎攻撃が通り始めた。
ヘルメスは躱したり、ヴォルガナイトで払い除けたりしているが、防御魔法の壁は既に破壊されたり、装備が少しずつ破壊されるなど、ジリ貧状態だ。
ザビエラについては、今のところ火炎攻撃は、聖槍デスフレアが吸収してくれているが、攻撃は相変わらず通らないため、どれ程耐久力が持つのか不透明だ。
ヘルメスはほとんどの技を出しきったつもりだった。
このまま逃げたとしても恥ではないだろうが、自分の気持ち的には『敗走』はしたくないと言うのが本音だ。
だが、明らかに実力が違う。
撤退か攻撃続行か判断を迫られていた。
撤退の見極めを誤ると、命に関わる。
既に辺りは、メディスロンの火炎攻撃で火の海となっていた。
このままでは、自分達が炎の海に飲み込まれてしまうのも時間の問題だろう。
こんなとき蔵光に助けを求めたいところだが、生憎、北の森のダンジョンに潜っている最中だから、助けを呼ぶことは絶対に無理だ。
『万事休すか…』
そんな思いが頭をよぎる。
「ヘルメス殿!ここは私に任せて、撤退を!」
ザビエラもこのギリギリの状態に先を見たのだろう。
「私一人では逃げん!」
ヘルメスは最後の魔力と聖神力を振り絞り、メディスロンに剣を向ける。
だが、無情にも、その最後の防御魔法壁が、メディスロンの口からの火炎攻撃で破られ、ヘルメスはその勢いで、後方に吹き飛ばされた。
「げふっ!」
ヘルメスは後方にあった岩へ強烈に叩きつけられる。
さらに、黒炎の竜巻がザビエラを襲う。
炎の吸収限界が来たのか、それまで、普通に持てていたデスフレアが高熱を帯び、真っ赤になってきたため、持てない程の温度になってしまっていた。
「うがっ!」
さすがのザビエラも思わずその熱さに手を離してしまう。
「しまった!」
妻の名前『フレア』を忘れぬために、そして、最後に死ぬ時までそばにいるようにと、名付けた名前、それが、『デスフレア』だった。
『くそっ!ここまでか!』
何という力の差、これが聖獣と言われた魔物の王の本当の力なのか、それとも、単に負の魔素を吸収し、魔力値が上がっただけの存在なのだろうか。
どちらにしても、敗北が決定している。
ザビエラはヘルメスだけでも助けようと、ヘルメスに駆け寄る。
「ザビエラ!来るな!狙われてるぞ!」
ヘルメスが叫ぶ。
ザビエラも自分がメディスロンに狙われていることは重々承知していた。
「私が攻撃を受ける、その隙に早く!」
ザビエラはヘルメスの近くまで近寄ると、今度はくるりと振り返り、武器もないまま両手を広げメディスロンに立ちはだかる。
防御魔法を張ったが、魔力値の差から見ても一時しのぎにすらならないだろう。
ザビエラは最後の最後まで足掻いていた。
しかし、メディスロンの最後の攻撃は無情にもザビエラの予想を超える、巨大な黒火炎の火柱となって二人を襲った。
ゴウッー!
物凄い黒火炎が付近一体を燃やし尽くすかの如く燃え上がった。
二人のいた場所が炎に包まれ、爆発したように上空高く火柱が上がる。
こんな攻撃を受ければ、骨すら残らないだろう。
ヘルメスは死んだと思った。
だが、様子がおかしい。
「あ、あれ?」
ヘルメスが声を出す。
「こ、これは?」
ザビエラも生きているようだ。
二人は辺りを見回す。
「あっ!」
二人は同時に声を出す。
二人の周囲に水の防御膜が張られていた。
「水月様!!」
ザビエラが声を出す。
空中に浮いた状態で、蔵光の曾祖父、水無月水月が二人の前にいた。
「おー、二人とも危なかったのおー、まあ、ちょっと待っとれ。」
水月はそう言うと、メディスロンの方へに向きなおる。
「おーおー、もう真っ黒になってしもうたか。」
と水月はメディスロンの姿を見て少し残念そうな顔をする。
メディスロンは口から黒龍の様に、黒い霧状の蒸気の様なものを吐き出している。
醜悪な顔付きがさらに険しくなり、醜く歪む。
そして、再び口から黒火炎の炎を吐き出す。
先程の業火に匹敵するほどの炎だ。
だが、水月には届かない。
彼の展開した、『水盾』は炎を完全に遮断する。
そして、
「最後じゃ。」
水月はそう言ってメディスロンの体を巨大な『水球』で包み込んだ。
『水恵・膜』だと、最後の足掻きで、羽の攻撃などがあるかも知れなかったが、完全に体を包んでしまえば、相手からはそれ以上手出しをされることがなくなり、こちらも二の手はいらない。
メディスロンは『水球』の中で氷結した。
『凍』である。
そして、その氷山のごとき巨大な氷の塊は地面に地響きを立てて落ちる。
「もう、間もなく心の臓が止まる。」
水月がそう言った、その時である。
「ちょっと、ちょっと待って下さい!」
ヘルメスが水月に声をかける。
「ん?どうしたんじゃ?」
水月が不思議そうな顔をする。
「まだ、間もなく心臓が止まるということは、まだ止まっていなくて、メディスロンは生きてるということなんですよね?」
「あ?ああ、もう間もなく死んでしまうがな。」
「ちょっとだけ、ちょっとだけ、時間を下さい。」
ヘルメスがそう言って巨大な氷の塊に近付く。
「まだ、生きているのなら!」
ヘルメスはそう言うと、氷の塊に持てるだけの『聖神力』をぶつけた。
「今なら、今ならまだ間に合うかも知れない!」
それを聞いたザビエラも、ハッと何かに気付く。
「そうか!」
と言って先程、手を離してしまった『デスフレア』を掴む。
ジュー!
いまだ、『デスフレア』は熱を持っていた。
掌に伝わる高熱の痛み。
『ぬん!今度は離さん!』
ザビエラはヘルメスに続き、『聖神力』を氷塊に打ち込む。
「ぬおおおおおあーー!!」
「うおおおおおおーー!」
二人はメディスロンの体内に聖神力を送り込んでいた。
今、あの強固な防御魔法壁は消失している。
水月の展開した『水球』の干渉を受けた時に、破壊されていた。
今ならメディスロンの体に『聖神力』を流し込めば体内にある全ての負の魔素を消滅させることが出来るのではないかとヘルメスは思ったのだった。
「なるほどのお。」
水月もヘルメスの意図に気付くと、『水球』の温度を変化させ、気温と同じ温度に変化させる。
そして、水球の魔力操作を解いた。
巨大な氷塊が制御を失い、辺りに大量の水が飛び散る。
既にメディスロンは気絶し、グッタリと地面に倒れていた。
「よし!」
ヘルメスとザビエラはさらにメディスロンの体の上に乗り、直接、『聖神力』を流し込む。
メディスロンの体に刺青の様に張り付いていた黒い呪文のようなものが徐々に消えていく。
ドクン…
「はっ!」
ヘルメスの真下でメディスロンの心臓の鼓動が響く。
ヘルメスとザビエラは、メディスロンの体から離れる。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン
次第に鼓動が早く、強くなっていく。
「ぐはあ!」
メディスロンが息を吹き返す。
「やったー!」
「よし!」
ヘルメスとザビエラは歓喜の声を出す。
「なんと、本当にやりおった。」
水月も目を丸くする。
「うううっ」
メディスロンがその巨大な体を起こす。
「どうじゃな気分は?」
水月がメディスロンに声を掛ける。
ぼんやりした目で水月を見ていたメディスロンの焦点がようやく合ってきた。
「す、水月様?!」
メディスロンが水月を見て驚く。
「久しぶりじゃのお。」
「わ、私は一体?」
メディスロンは完全に記憶を無くしている様子であった。
ヘルメスはこれまでの経緯をメディスロンに話した。
「そうだったのか…我は、あの黒い霧に意識を奪われたのか…すまなかった。人間の勇者達よ。」
そう言うと、メディスロンはこれまでの自分の事について話し始めたのだった。
ヴ「ちょっとー!ヘルメス目茶苦茶ヤバかったじゃない!聖獣ってヤヴァい!」
(;゜д゜)
マ「確かヒダカさんも聖獣だったと思うんですけど、やっぱりあれくらい強いんですよね?」
ヽ(´・ω・`*)
ヒ「も、も、も、もちろんだ!あれは負の魔素の力を借りて強くなっているだけだ。我はあんなドーピングなんぞ無くても、強いわ!」
( ̄^ ̄;)
ト「じゃあ、今度、姉御と戦ってもらおうかな。」
(*´∀`)♪
ヒ「バ、バ、バ、バカを申すな!ヘルメス殿は我の頭の頭だから、そんな失礼な事が出来るわけなかろう!決して我が負けるという訳じゃないんだからね!」
(;´゜д゜)ゞ
マ「いやぁ大丈夫でしょ、訓練だと言えば姉御もすぐ殺ってくれますよ。」
(-_-)ヒヒヒ
ヒ「殺って…って字が違うぞ!」
ヽ(;゜;Д;゜;; )ギャァァァ




