第24話 南の森の魔女
他のメンバーの者達も四つの森に入って行きます。
第24話 南の森の魔女
『南の森』にはヘルメスとザビエラのペアが行く事になったと言っていたが、南の森の中枢に行くためには『南の森の魔女』に顔合わせをしなければならない。
だが、『南の森の魔女』であるサバーニャはヘルメスの申し出を断っていた。
それは、自分達は森を守るためにここにいる。
森の中に資格の有る者以外を入らせないことと凶悪な魔物を外に出さないためだからというのが理由であった。
ヘルメスが『マリガトリアン』の名前を出し、さらに『東の森』の魔女サンマーサが死んでいるであろうということを告げたが、それでも森の奥には入らせて貰えなかった。
「どうしたらいいのよ、こんなこと蔵光殿に言えないし!」
ヘルメスは、まさかサバーニャに断られるとは思っていなかったため、心の準備をしていなかった。
そのため、断られて少しパニックを起こしていた。
だが、こんな事でめげていては、次には進めない。
「『マリガトリアン』の現物はゼリー殿が所持されていますので、見せるわけにもいきませんし…かと言ってこのまま断りもなく勝手に森を通るのもダメでしょうから、何とか別の方法を考えてみましょう。」
ザビエラは冷静に状況を正確に分析し、判断している。
さすが、魔族の王国で魔准将をしていただけはある。
ザビエラは魔の大森林地帯にあるジェノマという地区を統治していた魔王アリジンの配下として仕えていた。
戦闘部隊のトップ集団のひとつとして魔王軍を支えていた。
その働きは個人的にも優れており勇猛果敢で単騎でも敵を殲滅する力があり、数々の武勲を上げながらも、それだけでなく自軍を統率する力も群を抜いていた。
そのため他の幹部からも一目置かれていた。
だが、それを妬む同じ魔准将のデストロに陥れられ殺されそうになったのは記憶に新しい。
現在は蔵光の従者として、クランズ『プラチナドラゴンズ』、通称『プラドラ』を支える一人となっていた。
その彼も、勇者覚醒し、現在は魔力値が約4500万Mにも上昇していた。
魔族を統率する魔王でさえ平均の魔力値が150万マーリョックと言われるレベルであるのに、この恐るべき魔力は彼を進化させ、魔力だけでなく、筋力や思考力にも影響を与えていた。
これはヘルメスも例外ではないが…
「とりあえず、オルビアに相談してみる。」
ヘルメスがザビエラに言うと、ザビエラも、
「私もそれが良いと思います。下手な動きをするよりも良いアドバイスが貰えるかも知れませんし…」
と答える。
ヘルメスも頷くと『水蓮花』でオルビアに連絡をつける。
大体、困った時はオルビアに相談すると言うのが最近の『プラドラ』のメンバーの流れになりつつある。
「なるほど、わかりました。これには私が直接行く方がいいかも知れませんね。」
「えっ?!オルビアが直接?」
「ええ、そうです。」
オルビアの声の調子から、かなり大事な事である事が窺われた。
しばらくすると、オルビアが魔導飛行船『プラチナスカイドラグナー』に乗ってやって来た。
操縦士のトンキが『南の森』の入口の北側にある広くなった場所に魔導飛行船を着陸させる。
「お待たせしました。」
オルビアが船から降りてきた。
その顔には少し緊張の面持ちがあった。
「そんなに待ってないわよ。気にしないで。」
ヘルメスが応える。
「ありがとうございます。早速ですが、私をサバーニャさんの所に連れて行って下さい。」
「わかった。付いてきて。」
ヘルメスはそう言うと、オルビアを深い森の中に誘う。
「歩きながらで結構なんで聞いてください。」
とオルビアがヘルメスに言う。
「どうしたの?」
「実は、サバーニャという人は、私の能力によく似た能力を持っています。」
「同じ能力?」
「いえ、全く同じではありませんが、予知に近い能力をもっています。」
「そうなんですか!?」
ザビエラもその言葉には驚いたようである。
「私の持つ『先見の乙姫』は先の未来をかなり先まで見通すことができます。それは人でも動物でも、ほとんど何でもなんですが、多岐に渡る分、全体が浅く、特に人間の運命等などは深くは見られません。逆にサバーニャさんは、未来と言っても、人間に関する未来しか見れないようですが、その分、それらをかなり深く見通せる様です。私は、彼女ほど深く見られる訳ではありませんから、ヘルメスさん達を森の奥に通さないと言うことは、それなりに理由があるのだと思います。」
と説明した。
「それなりの理由…」
ヘルメスがその言葉を復唱する。
「ええ。」
オルビアは頷く。
ザビエラがオルビアの話の疑問点を確認する。
「あの、多岐に渡る予知と、限定的な予知との違いはわかるのだが、浅いとか深いとか言うのはどういう意味なんだ?」
「浅くと言うのは、起こりうる事態を予知ことは出来るのですが、そのものが起こった本質を知ることが出来ないのです。つまり、人が殺されるということが予知出来たとしても、その殺される理由とかが今一つわからないということです。深い場合は、殺される理由や殺され方などがはっきりとわかります。」
「なるほど、だが、オルビアもかなり深いところまでわかるんじゃないのか?」
「私の場合は『遡視』の能力があるので、それを補っているところはありますが、彼女には敵いません。」
「そんな凄い彼女が通さないとなると、よっぽどだな。」
ヘルメスが眉間にシワを寄せる。
「彼女には何か見えているのでしょう。それもあなた方の命に関わる何かを…だから入るのを止めた。」
「私達の命を?」
「ええ、恐らく…私の能力がそう言っています。」
「オルビアの能力?」
「はい。」
「何か良くわからないけど、オルビアをここに連れてきたのは正解だったということだけはわかるわ。」
『南の森』は『北の森』に匹敵する程の大きさを持ち、そこに住む魔物の強さも『北の森』に比例する。
『北の森』の時は蔵光達もいたが今はヘルメスとザビエラ、そして戦闘力の無いオルビアの三人だけであり、心許ないのは否めない状況ではあった。
サバーニャのところまでは、出てくる魔物も少なく、また、弱い魔物ばかりであり、普通の冒険者でも倒せるほどであるので、ここまでは難なくやって来ることが可能だった。
こうして、ヘルメス達は再びサバーニャの住んでいる家にやってきた。
サバーニャの家はレンガ造りの二階建て家で母屋部分と、円筒状の建物が横に建てられている。
この建物も『時の魔法』により守られているのか7000年の時を過ごしてきたとは思えないほど新しく感じられた。
コンコンと家のドアをノックする。
「開いてるよ。」
と奥からサバーニャの声がする。
「失礼します。」
ヘルメス達が家の中に入る。
最初の時は家の外で対応され、所謂『門前払い』をされたので入ることもなかったため気付かなかったが、サバーニャの家の中はマグローシャの家程、薬草や薬の様な臭いはしない。
「私の家は、マグローシャさんのところほど臭わないよ。」
ヘルメス達は一瞬心の中を見透かされたような気持ちになり、ドキッとする。
「はっはっはっ、悪いね。ちょっとあんた達の事を見せてもらったよ。そこのお嬢ちゃんほど深くは遡れないけどね。」
とサバーニャは言う。
サバーニャもマグローシャと同じ様に若い女性であった。
年齢はどう見ても20歳代前半くらいにしか見えない。
髪の毛は金色で瞳は茶色、顔立ちは整っていて美しく、邪悪な気配は感じられない。
黒いローブは森の魔女共通なのかデザインは少し違うが、サバーニャのは足元まで隠れる様な長いものであった。
彼女もアズマンに若返らされたのであろう。
ヘルメス達は建物の一階にある応接室の様な部屋に通された。
部屋には小さな窓がひとつだけ設けてあり、そこから森の景色が見えるが、はっきり言って森の中なので木しか見えない。
壁には占星術の事が書かれているタペストリーが掛けられていたり、占いに使うような呪具も棚に置かれていることからサバーニャの仕事は占い師なのであろうと推測された。
部屋の真ん中には小さくて小綺麗な机の周りに椅子が四脚置かれていた。
「私はねマグローシャさんと違って魔法薬品は売ってないからね。」
と言いながらヘルメス達をその席に座らせる。
「あの、また来たのですが、何とかこの森を通してもらえないものでしょうか?」
ヘルメスは席に着くと、直ぐに森を通してもらえるように要求する。
先程も話していたのだから無駄な話をする必要もなかった。
「はっはっはっ、別に構わないよ。」
サバーニャは笑いながらあっさりと通行を許可する。
「えっ?どういう事ですか?さっきはあれほど駄目だと言っていたのに?」
「ふっ、それはね、あんた達がその子を連れてくると分かってたからだよ。」
とサバーニャは目線でオルビアを指す。
「オルビアがここに来ることに何か意味があるのでしょうか?」
「そうだねえ、あると言えばある、無いと言えば無い。」
「えっ?と、どちらなんですか?」
「人間は、人の言葉に素直に従う者と、そうでない者がいる。予知なんてのもそんなもんさ。あらかじめ予知されていて、それを知らされても、それが自分の意に沿わない結果であったり、目的が達成出来ないとなれば、諦めるものもいれば、覆そうとする者もいる。アズマンは従う者、まあ、弱い人間なんだよ。」
サバーニャは、ヘルメスの問いに対して検討違いな事を言う。
だが、その言葉の意味を理解できる者がいた。
オルビアである。
「もしかして、この森を作った原因は…」
オルビアがサバーニャに尋ねた。
オルビアはサバーニャに『遡視』を使っていた。
『遡視』は『先見の乙姫』に付随する特殊な能力のひとつであり、その者の過去を遡って見ることが出来るのだ。
「そうだよ、お嬢ちゃんがここにいないと、私の言うことが、正確にこの子達に伝わらないかも知れないからねえ。ただ森に入る前に私の話をちゃんと聞いて貰いたかったから足止めしたんだよ。」
とサバーニャがオルビアに言う。
サバーニャの正確な年齢は7000歳以上であるからこの中で一番の最高齢のザビエラであってもこの場では子供扱いだ。
あと、オルビアが『遡視』を自分に使っていることも承知の上なのだろう。
サバーニャは深く人を見る、それを所々拾いながら喋るときもある。
なのでそれが単なる単語の羅列のようになってしまうこともあるため、オルビアがいれば、ちゃんとわかるように解説してくれると思ったのであろう。
「私達は長く生き過ぎたんだよ…」
サバーニャは、そう言うと、窓の外を見ながらマリガトリアン帝国が地下に移された経緯について話を始め出したのだった。
ヴ「オルビアと同じと言うか、上位的な能力を持つ人間がいたのね。」
Σ(-∀-;)
ト「まあ、流石にアズマンという人が選んだ人達だから納得の人選でしょ。」
(゜-゜)(。_。)(゜-゜)(。_。)
マ「でも、何かまだ訳有りみたいだよね。」
ヽ(´・ω・`*)
ヴ「まあ、それは仕方がないかな?」
(´・∀・`)
まあまあ。それは今後の話の展開でね。
ヾ(´∀`*)ノじゃあまた。




