第23話 エキドナのダンジョンの真実
タラスクの話です。
第23話 エキドナのダンジョンの真実
タラスクが蔵光達の前で、涙を流していた。
「ようやく、呪いが解けたのか…」
と喉の奥から絞り出すように声を出した。
何かを知っている様であった。
「どういう事?」
「ありがとう、彼等を救ってくれて…」
「救ってくれて?タラスクは、この呪いを知っていたのか?」
蔵光が尋ねると、タラスクは少し目線を下に落とし、何かを決意するような表情となる。
「実は…、私には制約があってダンジョンに入る者には何も話すことが出来なかったんだ。だけど、呪いを解いてくれた君達になら、本当の事を話すよ。」
と言ってタラスクは、自分が知っていて黙っていたことを話始めた。
それは彼女の目線から見たマリガトリアの真実であった。
約7000年前、彼女達は、まだアズマンが世界を地下に沈めるまでは、普通に地上で生活をしていた。
それは魔物が暮らす国であった。
その当時、この地は、人間が住む国と魔物が住む国とに分かれていた。
その頃、人間の土地には『神の子孫』と言われる人間達がいて、今の人間とは比べ物にならないくらいの魔力を持ち、あらゆる魔法を駆使し、力を持たない人間を支配して生活していた。
だが、そんな彼等の圧政の間に割り込み、その全ての国々を纏め、支配をしたのがアズマンと呼ばれる帝王であった。
彼はある時、突然この世に現れ、『神の子孫』とも呼ばれる人間達が支配する国々をその力で制圧した。
『神の子孫』と言われた者達の力は絶大であったが、アズマンの力はそれを圧倒し、たちまち自分の勢力下に治めていた。
一方、魔物達の方は『神の血を受け継ぐ者』と呼ばれる者達が、彼等の中の王となり、魔物の国を作り支配していた。
魔物の王達は何人もいて、魔物の国もたくさんあったが、魔物達もこの超人的なアズマンという男には非常に恐れを抱いていた。
それ程の力をこのアズマンという男は持っていたのだった。
そのため、魔物の王と呼ばれた者のうち、三体の魔物が彼に話し合いを求めた。
それが後に『四獣』と呼ばれる者達のうちの三体であり、メディスロン、タラスク、そしてヨルムンガンドの母親のアングルボザであった。
後の一体、ビー・クイーンは、後で四獣に入ることになる。
話の主な内容は最長老であったメディスロンが行った。
話し合いをして初めて知ったのは、アズマンが、魔物の国を支配しようとは思ってはいなかった事であった。
彼は人間と魔物との『共存』を理想としていた。
そのため、魔物の王達はアズマンと契約した。
アズマンが今後も魔物の国を支配しなければ、自分達もアズマンに逆らう事はしないと…
それからしばらくは、人間の世界と魔物の国は平和な時を送っていた。
だが、そんな幸せな時間はそう長くは続かなかった。
魔物の国の実力者達が、人間との共存を嫌い、人間の国を襲い始めたのだった。
大量の人命が彼らにより奪われた。
その中にはアングルボザもいた。
何故アングルボザが裏切ったのかは誰も理由は知らなかった。
そのため魔物の王のうちアングルボザを除くメディスロンとタラスクは、自分達の預かり知らぬ事であったとアズマンに謝罪をしたが、最初は聞き入れて貰えず、これに関わった魔物達の時間を停止させ、自分の空間魔法の中に隔離してしまったのだった。
この時はそれら魔物の処分が保留となり、しばらくの間、アズマンの預かりとなった。
だが、これに異を唱えたのが、神の子孫の代表者達であった。
彼等は恐るべき魔力を持ち、最初の頃、アズマンと対立したときは最後まで抵抗した者達であったが、アズマンの圧倒的な力に屈しただけであり、その中には未だにアズマンに対して敵意を持っている者さえいた。
それらの者が、
『何故、魔物達にあそこまで攻められたのにも関わらず、何故やり返さないのか?』
と詰め寄られるのだった。
アズマンはあくまで魔物との『共存』を求めており、既に魔物と契約している以上、攻め込むことは出来なかった。
そのため、彼等にはアズマンの煮え切らない態度に反抗して、魔物の国に攻め込む者が出始めたのだった。
魔物達は、その大半の戦力をアズマンの空間魔法に閉じ込められているため、『神の子孫』と呼ばれる者達にとっては、一方的な虐殺とも取れる様な戦いとなっていた。
アズマンは、このままでは人間と魔物との不毛な戦いが永遠に続いてしまう事を危惧し、自身の最大魔力を使って、この地上から普通の人間を残して、『神の子孫』と呼ばれる人間だけを地下にある『地中国』という所に飛ばしたのだった。
飛ばされた『神の子孫』についてはどうなったのかはわからないが、タラスクはその後、アズマンのところに呼ばれる。
そして、そこでこう話をされたという。
今回の件は、自分の力だけでは全く解決出来ないため、お前達、魔物の王達の力を借りる事にすると。
ただ、そのうちの一体、アングルボザは既にアズマンの空間魔法の中に閉じ込められているため、新たな魔物の王の一体としてその息子、ヨルムンガンドが急遽抜擢されることとなった。
だが、ヨルムンガンドは魔物の王の息子ではあるものの、アングルボザがアズマンの空間魔法に入れられた本当の事情をよく知らされていなかった。
アズマンの話によると、ヨルには詳しい事は説明せずに、ある扉の守護を任せたと聞かされる。
併せて、その事はヨルには秘密にするようにきつく申し付けられた。
そして、アズマンはタラスクにも、ヨルに与えたことと同じ様な内容の命令をしてきた。
それは、『マリガトリアン』と呼ばれる封印の本の施錠を解除出来る者が、いつかこの地中国にやって来る。
それはアズマンから『神』と呼ばれており、その者がこの世界に降臨したとき、自分達の前に現れるので、それまでその鍵を守り、また、その権限を持つものが現れれば、その鍵を使って開けてやって欲しいと言われる。
タラスクはアングルボザや他の魔物が人間の国を攻め込んだ事で負い目を感じていたため、黙ってこの命令を聞くことにした。
だが、タラスクはここで、アズマンから信じられない言葉を耳にした。
先日、人間の国を襲った魔物の行為は許されるべきものではない。
今回の件でアズマンは100階層にもわたるダンジョンを作り、その最下層に『マリガトリアン』の鍵を置くとタラスクに聞かせる。
また、そのダンジョンの管理をタラスクに任せると共に、各階層には自分の空間魔法に入れて処分を決めかねていた魔物を投入することにしたというのだ。
タラスクは最初、その意味がわからなかった。
だが、しばらくしてその恐るべき意味がわかる。
それは、ダンジョンの中で魔物達は何度も殺されるが、本当の完全なる死が訪れるという訳ではなく、その後、何度も生き返らされ、再び殺されるという無限の死のループの魔法をボス魔物に掛けるというものであったのだ。
これは古い記憶だけが消えずにずっと残り続けるというものであり、殺される恐怖の記憶が幾度も自分に襲いかかるという恐ろしい呪いの魔法であった。
この呪いを解くためには『相手に殺意を向けても、相手から攻撃されないこと。自分達も攻撃をしないこと』であった。
その条件をクリアしないと呪いは解除しないと。
そのため、全ての魔物を殺して到達した最下層に置かれた鍵は本物ではなく、偽物であり、本当の鍵は呪いを解いた者の前にのみ現れると教えられる。
また、条件のひとつとして、『ダンジョンに潜る者やダンジョンのボス魔物に対してタラスクがその話を漏らしては絶対にいけない、漏らせば呪いは解けなくなる』というものであった。
これではまるで生き地獄であり、いくら魔物達が悪いことをしたと言っても、こんな酷い扱いを受けるとは、絶対に避けなければならない。
そのためタラスクはアズマンに抗議した。
だが、これは聞き入れてくれなかった。
『絶対に許さない!殺してやる!』
この時、タラスクはアズマンにそう叫んだという。
だが、アズマンはそれには何も応えなかった。
そんな事を言ったとしても、タラスクが本気でアズマンを殺すことが出来ない事くらいわかっていたためであったからだったのか真相はわからなかった。
タラスクは約7000年の間、このエキドナのダンジョンの呪いが解けるまで、誰にもこの話を話すこともできず、じっとダンジョンの前に立ち、呪いを解いてくれる『神』の到来を静かに待っていたのだった。
その話をし終わるとタラスクはゼリーが体内に入れていた『マリガトリアン』と蔵光が持っている本当の鍵を受け取り、解錠する。
鍵を回すと、ヨルの時と同じ様に鍵穴の横に取り付けられている宝石が赤色から緑色に色が変わる。
心なしかタラスクの顔に安堵の表情が浮かんでいる様であった。
「よし、あと2つだ。」
蔵光が軽く頷く。
それを見ながらゼリーがあることに気付く。
「タラスクよ、もしかして、さっきの話で出てきたヨルの母親のアングルボザというのもダンジョンのボス魔物として配置されてたんか?」
「うん、最後の100階層にね。私はそれをヨルに話すことをアズマン様から禁じられていたから何も話せなかったけどね。」
「そうか…そしたら、アングルボザも何もかも全部、消えてしもうたんやな。」
「うん、全ての罪を償ってね…」
タラスクは寂しそうな表情で元ダンジョンがあった場所を見ていた。
ヴ「アズマンさんてかなり酷い人なんだね。」
(`ε´ )
ト「うーん、それはどうなのかな?そもそも契約をしていたのにそれを破ったんだろ?」
(o゜з゜o)ノ
マ「まあ、確かにタラスク的には同族がそんな目に遭えば怒るよな。」
ヽ(´・ω・`*)
ト「まあこの世界は基本的に弱肉強食だし、特に魔物なんかは強い者に従わないと駄目な世界だからなあ。」
σ(´・ε・`*)
ヴマッソ「うーん、だよねえ。」
( ̄~ ̄;)
だよねえ。(*´・ω・`)b




