第22話 ダンジョン攻略の果て
ダンジョン攻略終わります。
第22話 ダンジョン攻略の果て
一夜が明けたのか、『海の家』の外は明るくなっていた。
蔵光が外の景色を見たが相変わらず、砂の世界であり、砂山の頂上から見渡す地平線は限りを見せていなかった。
「なあ、ゼリー、父さん達も昔はここのダンジョンに入っていたんだよね?」
「ああ、タラスクがそんな事を言うとったな。」
「その時はゼリーみたいな従魔もいなかっただろうし、こんな小屋もなかったのに、どうやってこの砂漠を抜け出たのかなのと思ってさ。」
「確かに、そない言うたらそうやな。じいさんらの時はこんな快適空間はなかったやろうしな。」
とゼリーが頷く。
「多分、すごく単純な事で解決するんじゃないかなと思う。」
「そうやな。」
蔵光と、ゼリーはその謎を少し考える事にした。
二人は高速思考で思い当たる事を頭の中で推敲する。
そして、同時に、
「あっ!もしかして!?」
と叫ぶ。
「押して駄目なら…」
「引いてみろ!か…」
と言うと、二人は向かっていた方向に体を向けると、そのままの状態から静かには後退りする。
何歩か後退りすると、突然、目の前に、巨大な扉が姿を現す。
高さが20m近くもありそうな巨大な両開きの金属扉だ。
「やっぱり!」
「そうやった!」
蔵光とゼリーが、お互いに顔を向き合わせる。
扉が出現してから前に進んでも扉は消えることはなかった。
蔵光は扉の前に立つ。
すると、扉は静かに開いていく。
扉から奥に入ると、そこは60階層のボス魔物の部屋となっていた。
そこは巨大な牢獄と言えば良いのであろうか、先程までの砂漠の景色とは一変して、現れたその部屋は、城壁に使用される程の巨大な石の壁で周囲を囲まれた部屋であった。
部屋の高さや幅は約150m四方程度はあろうか、天井も壁も石で塞がれていて、出口は見当たらない。
あるのはこの部屋を照らす松明の灯りだけであった。
それに、湿ったような、カビ臭い臭いが鼻を突く。
魔力で作られた人工のダンジョンであるはずなのに、ここまで再現されていることに驚かされる。
そして、驚かされることはまだあった。
ボス魔物である。
それは上半身が女性、下半身は巨大な蛇の胴体と尻尾という半人半獣の魔物であり、上半身は少しと言うかかなり大きい体であり、上の部分だけでもは20mはあろうかと思われた。
エキドナという魔物もそうらしいが、これも同じような身体特徴がある。
メデューサの眷属であるためであろうか。
ギリシャ神話ではエキドナは、メデューサの血から生まれた『クリューサーオール』という魔物から生まれた子供であり、メデューサから見れば孫にあたる位置付けで、女性の上半身に蝮の胴体をしていたとも言われている。
この魔法世界マーリックでも地球と同じ様な名前と、それに似通った魔物が存在しているようである。
「何だありゃ…」
「こら、アカン!魔力値がハンパない。」
ゼリーが声を挙げる。
階層が半分を過ぎて、とんでもない程の魔力を持った魔物が現れた。
蔵光に比べれば大したことはないのだろうが、ゼリーにすれば恐ろしい程の魔力であった。
「こ、こいつ、あのラドラ・マークス・グリードより強いで!」
とゼリーが叫ぶ。
ラドラ・マークス・グリードはあの『魔海嘯』事件の首謀者の一人であり、古龍の黒龍である。
事件の終結後、死体から残存する魔力値が確認されたが、大体12億~15億Mくらいはあったであろうと言われていた。
だが、この目の前にいる魔物はそれを超えた魔力を持っているらしい。
ゼリーが空間魔法でニューマソパッドを取り出す。
そして、相手に向かって使用した。
これまでの階層で出現した魔物の名前や魔力値はこれで確認していた。
ゼリーはみんなの様に腕に巻くことが出来ないため、エージに携帯型の別モデルを特別に作って貰っていたのだ。
「アイツの名前は『デルピュネー』っちゅうらしい、魔力値は22億ちょっと…主、こいつは力だけではアカンで!魔力使わんと!それに、あと…魔眼が、」
とゼリーが言おうとしたとき蔵光が口を開く。
「わかってる。終わった。」
蔵光がそう言うとデルピュネーはその場に倒れ込む。
デルピュネーは、出現して即行で蔵光に討伐されていた。
良く見ると蔵光達とデルピュネーとの間には薄い水のカーテンが揺れている。
「これは…?」
ゼリーが不思議そうに見ていると蔵光が解説する。
「これは、『水恵・膜布』と言って、『膜』の強化版ってとこかな、水月じいちゃんが使ってただろ?」
「ああ、あれな、で、何でこれなんや?」
「これは、『水盾』よりは防御力は弱いけど、『膜』よりも強くて、これから『滴』が撃てる。『水盾』は攻撃出来ないからね。」
「ほう、そら便利やな。で、他にも理由があるんやろ?」
ゼリーは、蔵光がこの技をわざわざ使うには理由があると直ぐに理解していた。
「うん、それにこれは結構、魔力値との関係もあるみたいだけど…魔力抵抗力が強くて『魔眼』の魔力を通さなくなるらしいんだよ。」
「何やて?何でそんな事を知っとるんや?」
「前回、ギルレア洞窟で倒した七つ首のヒドラの眼球をジパングに持ち帰ってもらってエージに解析してもらったら、結構色々な事がわかったみたい。眼球に魔力を通さないと魔眼の力が発生しないとか、眼球に魔力を通して魔眼の石化能力が発動するには0.12/sとかなんとか、良くわからないけど。」
と蔵光は首をかしげながら言う。
「ふーん、あの時、持って帰った首はそんなことになっとたんか…」
ゼリーはそい言いながらデルピュネーの死体を見る。
魔力値が20億を越える魔物を一瞬で倒し切る蔵光の魔力干渉力の凄さをまざまざと見せつけられ、蔵光の恐ろしさを再確認する。
「ああ、あれは『水恵・膜』を使ったから…」
「それは、わかってる。やっぱり、主はヤバいわ。」
ゼリーが恐ろしさを通り越して呆れていた。
そして、デルピュネーに近付くと死体を空間魔法で回収する。
すると、目の前に次の階層への扉が現れた。
「次、来たで、ほな行こか?」
ゼリーが蔵光を促す。
「ああ、わかった。」
それからの階層も特に70階層までは問題はなかったが、現れる魔物は普通の低級ダンジョンであればボスクラスの魔物が連続して出現していた。
流石の蔵光も魔力切れを起こしてはいけないということで、ゼリーが時々『海の家』を出して休ませようとするが、蔵光はあまり気にしていない様であった。
70階層への入口は59階層の時と比べて比較的、楽に開ける事ができた。
69階層は所謂、『モンスターハウス』であった。
大量のモンスターが湧き出す現象であり、一般冒険者がこれに巻き込まれたらもう逃げ出すしかない。
今回の『モンスターハウス』の魔物は、蔵光がジパングのエブーダの森で倒したキングドリルの大群である。
流石に、この大群は大変だろうと思われたが、蔵光は如意棒を扇風機の様に高速回転させて、キングドリルをたちまちミンチ状態にしていった。
100匹以上いたのだが、十数秒で完殺した。
そして、70階層のゲートの扉が出現した。
再び森の中であった。
ズーン、ズズーンと遠くから地響きがしてくる。
さらにメシッ、メシッ、バキ、バキッと森の奥で、次々と生木が折れ、薙ぎ倒される様な音が同時に森の中に響く。
明らかに森の木の高さよりも高い、山の様な大きな何かがこちらの方へ近付いてくるのがわかる。
「主ぃ、あれは猪かな?」
「ああ、そうだな、ちょっと大きいけど猪だね。パイアって言う猪の魔物みたいやな。」
ゼリーがニューマソパッドを見て、森の中から現れた魔物の正体を答える。
確かに巨大な猪である。
巨大と言っても、どれくらい大きいのかちゃんと文章にしないとわからない。
その猪の体の高さは有に50mを超えていた。
鉄程の硬さがある体毛で周囲を覆われた、その目は赤黒く光り、常に殺意を撒き散らし、森の帝王としての威厳を保つ。
そして、その口元に生えている大木の様な巨大な牙は大きく半円を描いて天を貫かんとせんばかりに鋭く尖り、前後の足に生える巨大で鋭利な蹄は狂気を孕み、破壊と殺戮を求めているようにも見える。
だが、今までの魔物とは違い、殺気を放っているが、こちらへ攻撃はしてこない様子であり、双方が対峙した状態で止まっている格好となっていた。
そのため、普通であれば蔵光が一撃で瞬殺しているのであろうが、蔵光も攻撃をせず、じっとしている。
いつもと何か様子が違う。
「主、どうしたんや?」
ゼリーが蔵光に尋ねる。
「憎しみの感情が流れてくるんだけど、俺達にではない、何かに怒り、憎しみの感情をぶつけているようなんだよ。あと、この猪から心臓の音が2つ聞こえてくるんだけど…」
「何やて…?!それって…ちょっと待って!『身体透視』!」
ゼリーが猪の体の中を確認する。
「ビンゴや主!この猪、お腹に子供がおる!」
「やっぱり…でも、何故、こんなダンジョンのしかもボス魔物が子供を…?」
「わからんな、この個体を倒す事で何か意味があるんか?ワイには可愛そうな結末が展開されるだけやと思うんやけど…」
「俺もそう思う。これ、倒したらダメなやつじゃないのかな?」
「そうやな、相手が殺気を放っていたとしても、お腹の子供に気付いて絶対に殺さないと言うんが正解かもな。」
とか何とか色々と推測しながら、蔵光達が猪の前で、攻撃もしないで、しばらくの間、立ち尽くしていた時、急に猪の体が輝き始めた。
そして、太陽が輝いているくらいの輝きが起きた後、次第に光の力が弱っていき、最後には光が無くなった。
それと共に、あれほど巨大であった猪の姿が無くなり、目の前に一人の若い女性が立っていた。
その腹部は妊婦の様に大きく、明らかにあの猪が変化したものとわかる。
そして、蔵光に対して言葉を掛けた。
「どこのどなたかは知りませんが、私達の呪いを解いて頂きありがとうございます。」
と頭を下げた。
「えっ、?呪い?それってどういう事?」
蔵光は意外な言葉に驚く。
その女性は涙を流しながら、蔵光達に意外な話をしたのだった。
「私の名前はパイアと言います。私達は、その昔、地上に住んでいた『神の子孫』と呼ばれる者達と戦いを起こし、敗れ、相手の王から呪いを掛けられました。それは、『神の子孫』の治める土地に住んでいた普通の人間を無差別に殺してしまったという罪によるものでした。それからは私達はこの100階層にも及ぶダンジョンの魔物として生きるように宿命づけられました。ダンジョンに入ってくる者を襲い、殺すことが使命で、他には何も出来ない。何度殺されても、しばらくたてば、魂と肉体は復活し、再びこのエキドナのダンジョンのボス魔物としての『生』を生きなければならない。これが未来永劫続くこととなりました。それにより、ある者は発狂し、またある者は怒り、悲しみ、苦しみました。帝王のアズマン様に慈悲を乞いましたが、しかし、それは受け入れられず私達は永遠の業を償わされていました。私も子供を身籠った状態で何度も何度も殺されました。でもその度に生き返り、その記憶だけが自分に蓄積して残っていくのです。
私は自分だけでなく、何度も何度もお腹の子供を殺される事が繰り返されていたことで、精神状態は既に限界でした。怒り、悲しみ、様々な感情が私を押し潰そうとしていました。唯一、この呪いを解く手段は『相手に殺意を向けても相手から攻撃されないこと』でした。ですが、そんな事をされて平気な人間はいません。私もお腹の子供もその殺意に当てられた人間によって幾度も殺されていました。ですが、貴殿方はそうではなかった…私の殺意を受けてもなお攻撃もせず、その場に立っておられました。それによって呪いの解除の条件が発動し、私に掛けられた呪いが解けたのです。」
とパイアは話したのだった。
「なるほど…、あの怒りと殺意の感情にはそんな理由があったのか…」
蔵光は、パイアの話を聞き、ようやく先程の感情の謎が解けたようであり、静かに頷く。
「じゃあ、今まで倒してきたボスの魔物は…?」
「恐らく呪いが解けたと思います。」
「で、どうなるの?」
「これで、安らかな死を迎える事が出来ます。」
「えっ、?どういう事?」
蔵光がその女性に聞こうとした時、女性の体が光る粒子になって消えていった。
『ありがとうございます…』
という言葉を残して。
「ようやく成仏出来たんや、あいつらにとって、死が最後の安らぎの終着地点やったんやろうな…」
ゼリーがそう言い終わると、目の前の森が消え失せ、蔵光達は最初に入ったダンジョンの入口前に戻っていた。
「あれっ?残りのダンジョンは?」
「呪いが解けたからもう終わりなんやろな。」
とゼリーが言いながら地面に落ちている何かを拾い上げ、蔵光に渡す。
「ん?鍵?」
「恐らくそれが『マリガトリアン』に使えるホンマもんの鍵と違うか?」
「これが…」
蔵光はその鍵を目の前に持っていきじっと見つめる。
「じゃあ、今までの水無月家の人達が手に入れていた鍵は?」
「あれは、このダンジョンの本当の謎を解いていないから多分ニセ物やろな。」
「なるほど、そうか。ん?」
蔵光が、不意に背後に気配を感じ、振り向く。
そこには涙を流しながら立っているタラスクの姿があった。
ト「猪の肉ってボタンとも言うよね?」
(´・ω・`)?
マ「そうだな。そう言えばうちの『べれり庵』でも『ボタン鍋』という料理で猪の肉を使うなあ。結構人気商品だぞ。」
( ´ー`)
ト「そうだった。あの味噌の美味さが後を引くんだよなあ。」
ヾ(゜▽゜*)
ヴ「私はちょっと無理。あの臭いがあまり好きじゃないから。」
((‘д’o≡o’д’))ブンブン
マ「そうだよなあ、それで今、コックゴーレムにその臭いを抑える技術を開発させているんだよ。」
(* ̄∇ ̄)ノ
ト「へぇー、臭いが無くなればヴィスコも食べやすくなるかな?」
(*´・∀・)ノ
ヒ「我は生でも食べられるぞ!」( ̄^ ̄)
トンマッソ「いや、人間には無理っす。熱を加えないとお腹壊すので…」
Σ(>Д<)
あー鍋食いてー!
あ、ボタンでなくてもいいんで…∩(´∀`∩)




