第20話 エキドナのダンジョンへ
いよいよダンジョン攻略が始まりますが。
第20話 エキドナのダンジョンへ
マリガトリア帝国は約7000年前に栄えたと言われる伝説の国家である。
帝国を立ち上げたのは恐ろしい力を持った帝王アズマンという男である。
タイトバイトス皇国のセブレイン侯爵の話によれば、魔物との共存を考えていたアズマンだったが、ある時、魔物の凶暴化によって魔物と戦争状態になり、彼の家臣は魔物は所詮低級な生き物であり支配で十分であると言い、魔物に対して力による支配を望んだ。
共存を望んでいたアズマンは悩んだ末に強力な魔法で彼は全ての支配を解き、世界を反転させ、地中深くにその帝国を沈め、自分の配下の『四獣』と呼ぶ魔物の王に地下帝国へ通じる入口を守らせた。
さらにアズマンは世界に散らばっていた四人の強力な魔女を呼び寄せ、強力な『時の魔法』というものを使い、その四人の魔女に森の『四獣』に人間を接触させないように結界を張らせて管理をさせたというものである。
『東の森』の守護獣ヨルことヨルムンガンドの話によれば、魔物の国に攻めてきたのは人間達の方であって、自分達はアズマンに呼ばれ、『帝国の人間を地下に閉じ込めるので地下から逃げ出さないように出入口を見張っておくように…』と言われたと言い、『北の森』の魔女マグローシャの話によれば、『タラスクは人間を恐れ、主とも言えるアズマンでさえ殺そうと思っている』と言っていたが、当の『四獣』タラスクは帝国のことを『帰りたくない恐ろしい場所』と言うも、アズマンについてはマグローシャが思うほど憎んでいないという。
これまで、帝国や四つの森の関係者からそれぞれ話を聞いてきたが、全員の話が揃うことはなかった。
何ともそれぞれが違う事を言っているのだ。
だが、確かな事実としては、彼女達は四つの森に広大な結界を張り巡らして、外部からの悪意を持った人間の侵入と内部からの凶悪な魔物の流出を防いでおり、ヨルやタラスク達、アズマンから使命を受けた『四獣』が守っていたのは帝国の入口の扉ではなく、その森の中に作られた『マリガトリアン』つまり『古文書』を開けるための鍵を護る番人であった。
まあ、確かに森の扉が地下の出入口だとは誰も言っていないし、『古文書』は、地下帝国の出入口に繋がっているので『四獣』が出入口を守っているというのはあながち間違いではない。
また、『マリガトリアン』とは、今もなお戦いが続く帝国において、アズマンが来るべき『神』を招くための物である事が判明し、『マリガトリアン』の謎を解明していく過程において、アズマンは恐らく日本からの転生者であり、チョッコ・クリムやカリスマ・エージらとかなり近しい関係の人物であろうと推測されていた。
「なあ、主ぃ。なんか、地下の帝国ってようわからんわ。」
ゼリーが、『べれり庵』の中にある、専用個室の中で蔵光に話しかけた。
ここは、クランズ『プラチナドラゴンズ』のメンバー専用の個室であり、高級ホテルのスイートルーム並の広さと豪華さを兼ね備えている。
内装はゼリープロデュースの『和モダン』のテイストなので、要所要所に、畳や障子などの建具が使用されている。
蔵光とゼリーは誠三郎達からの報告を受けた後で、今後の予定を計画してから部屋に戻って来ていた。
蔵光は部屋の窓側に置いてある大きなソファーに座っていた。
「そうだな、皆、言っていることが少しずつ違うんだよなあ。それにさっき誠さんが言っていたアリオスタ・ヴィストゥラっていう人だったかな?その人の話の中でもマグローシャさんとか、地下帝国を思わせる『地中国』の話が出てきたり…あれじゃ、ビー・クイーンという魔物の王と言うか女王は『四獣』の位置付けになっているほどの魔物のはずなのに『四獣』にもなっていない。何かマグローシャさんも1000年前の話に出てきたりしてるのを聞くと意外と自由に『北の森』を離れているみたいだし…よくわからないなあ。」
「そこなんや!話が一本、こう、スーっと通ってないと言うか、ホンマ、誰かに情報操作されてるで。」
「そんな芸当が出来る人間はただ一人だけ、アズマンだけなんだろうけど。」
「そうやな、でも何でまたそんな事をする必要があるんやろかな?」
「わからないな…やっぱり本人に聞かないとダメだな。」
「そうやな。」
そう言いながら、蔵光はソファーに横になりながら、窓の外に見える夜景を見ていた。
まだ、この辺りは家も少ないため真っ暗なのだが、夜空だけは絶品であった…
翌日、蔵光は『北の森』の100階層ダンジョンに挑戦することになった。
付き添いは当然従魔のゼリーであり、『南の森』へはヘルメスとザビエラのペアが行く事になった。
『西の森』へは誠三郎とヒダカの師弟コンビが行く事になった。
各森へは、魔導飛行船『プラチナスカイドラグナー』で、行く事になったが、この飛行船になってからは移動の時間が飛躍的に上昇し、クエストの処理にかかる時間も比例して短縮され、処理の件数も増えていた。
まあ、それも蔵光達の超人的な力があってこその話なのだが…
「おーい、主ぃー!行くで!」
そう言うとゼリーが、魔導飛行船から飛び出した。
蔵光達のいる場所は『北の森』の上空約1000mの所あたりにいた。
今回の目的の場所は『東の森』にあったような巨木の扉ではなく、小さなダンジョンの入り口であり、飛行船はそのダンジョンのある場所の丁度上あたりに位置していた。
蔵光としては今まで、ダンジョンと言えばクワッテ鉱山やギルレア洞窟など比較的階層の少ない場所での探索が何度かあったが、ここは地下100階層まである本格的なダンジョンであり、蔵光の中では『冒険者=ダンジョン探索者』と言っても過言ではないとさえ思っているので、今回のダンジョン攻略は非常に興味津々の体験となっていた。
また、ここは自然のダンジョンではなく、人工ダンジョンのため、タラスクは小細工は無いとは言うものの様々な仕掛けがあると思われた。
蔵光も飛行船から飛び出した。
さながら、スカイダイビングの様であり、体は物凄い勢いで地上へ向けて速度を上げていく。
「うわー!おもしろーい!」
蔵光が久しぶりに笑っているのを見て、ゼリーもニヤリとする。
蔵光は精神異常耐性が強い。
特に現在は、憎み、恨み等に対しての精神的異常状態への感情移行変化は無効になっている。
これは、敵から精神的な攻撃を受けた時に動揺して、計画性もなく、無差別、無謀な攻撃をしないようにするためのものである。
このスキルは嬉しい、楽しい、悲しい等の感情への制約は少ないのだが、そのスキルの影響で、どうしても精神への影響は軽くなってしまい、表情に大きく出ることは少ないのだ。
なので、蔵光が表情を出して笑う事は、蔵光が人間性を出している証拠でもあり、非常に少なく、珍しいものであるのだ。
ゼリーとしては感情の無い生き物や、表情の乏しい人間よりも、笑いを持つ豊かな感情を持つ人間の方が好きであり、人が笑う表情を見るとホッとするところがあった。
これはチョッコ・クリムの過去の記憶である芸人宮離霧千陽子のものでもあった。
蔵光は落下の途中で体の水分に魔力を通し、体全体を魔力操作して、空中で速度を減速させる。
ゼリーも同様に、自分の体に飛翔魔法を使って浮かんだ。
そして、ゆっくりと下へ降りて行った。
前回と違い、既にこの場所、つまりダンジョン前に到達していたので、未踏破の者のみに発生する『空中迷宮』は発生しない。
普通にダンジョン前に着いた。
ダンジョンの入口には扉は無いが、その両脇に石碑のような石が置かれ、紋章なのか文字なのかわからないものが彫られていた。
入口の周囲には切り出された石が逆U字状に組まれているが、かなり小さめに作られていた。
入口前には既にタラスクが立って待っていた。
「このダンジョンは『エキドナのダンジョン』と言って、最初から出てくる魔物は相当強いと思ってもらって結構だ。ここでは10階毎にボスと言われる強力個体の魔物が現れる。このボスのレベルは当然下へ行くほど強くなる。また、90階と100階のボスは原初の魔物と言われていて強さのレベルが他のボスよりかなり高い。私が言うのも何なのだが気を付けて行くようにな。」
とマリガトリアの入口を守護するはずのタラスクが注意説明をしている。
「わかった。」
蔵光が頷いた。
「それでは行ってもらって結構だ。」
タラスクが手を挙げると、両脇に置かれた石碑の模様が光り、入口に仕掛けられていた結界が解除される。
「ほお、ここにも結界とは、念の入ったことやな。」
とゼリーが感心している。
「ここまで来れたからといっても、ここから先は別次元の強さの魔物が出現するから、間違って入る者の命を守ってあげないとね。」
とタラスクが、結界の設置理由を説明する。
「なるほどね。では、行こうか。」
と蔵光が言うとゼリーもそれに応えた。
「寝泊まりセットはワイの空間魔法の中に用意してあるから何日かかってもエエで。」
「いや、そんなに日にちを、かけたく無いんだけど…」
「まあまあ、エエがな。ゆっくりと進もうや。」
とゼリーは半分観光気分の様であった。
蔵光がダンジョンの入口の中に一歩踏み入る。
何かのスイッチが入ったかの様に、壁に掛けられている松明の灯りが灯る。
流石に魔石の文化以前に作られたダンジョンなのか灯りの仕掛けは松明であったが、通路の奥にある松明まで瞬時に点灯するのを見ると、逆にその技術にかなり驚く。
通路は土壁ではなく、石造りの頑丈そうな造りで、灯りのお陰で奥まで見通せそうだったが、かなり暗くてやはり中に入らないと奥までは様子はわからない様であった。
初めの一階層は、普通はいわゆる弱い魔物が出るのがテンプレとやらになるのだが、ここは違う。
このダンジョンの中で言えば『弱』なのであろうが、長い通路を抜けると、いきなり10m級の三つ首ヒドラが現れた。
まあ、これについては蔵光が水魔神拳の水魔法『水化月』で瞬殺したのだが、この様なそこそこ大きくて、それもいきなり強力な個体が、一階層で出るとは予想もしなかった。
普通の冒険者ならダンジョンで下まで到達出来るのか不安になるレベルのはずなのだが、蔵光にはそんな事は全く感じている様子はなかったようだった。
ト「そう言えば、ヴィスコはダンジョンとか入ったことあるの?」
(*´-ω・)
ヴ「そんな恐ろしいものあるわけないでしょ!只でさえ恐ろしい魔物がいる場所なのに、それが階層を下る毎に強くなるだなんて、入ろうだなんて考える奴なんか、パーティーでも有り得ないし!」
(`ε´ )
マ「あれ?でも、一度、行かなかったか?」
((゜□゜;))
ヴ「あれは、アサッテ君が誘ってくれたやつでしょ!マッソル!やっぱり私の嫌な記憶を掘り返してきたわね!」
(´~`;)
マ「確か20階層の中級ダンジョンに行ったときの話だけど、あの時はほとんど私達は何もしなくて、最下層のボス魔物もアサッテさんが倒してくれて、お宝にありつけたってヤツだったよね?ヴィスコが怖がりすぎて最初の方でバンバン大きな魔法使ってしまって、結局、一階層ですぐに魔力使い果たしてしまって大変だったんだよなあ。」
┐( ̄ヘ ̄)┌
ヴ「もう、うるさい!私の黒歴史をばらすな!」
(*`Д´)ノ!!!
ト「ちなみにその時のボス魔物って?」
(-ω- ?)
マ「確か…オーガロードだったかな?」
ヾ(゜▽゜*)
ト「へー!オーガの上位種じゃないですか!流石、アサッテさん、中々やりますね!」
ヘ( ゜Д゜)ノ
マ「まあ、蔵光さんの攻略しているダンジョンに比べたら、大したことは無いんですがね。」
ヽ(;´ω`)ノ
いやいや、オーガロードは魔物の中でもかなりの強力個体だからそんな大したこと無いことはない。
流石SSSクラスの冒険者です。(´・∀・`)
また彼、出してみようかな?
ではまたねヽ(・ω・)ノ




