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水無月蔵光の冒険譚~第二部 古代地下帝国の謎を追え  作者: 銀龍院 鈴星
第一章 古文書の謎
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第2話 人喰い龍の噂

新たな問題が発生します。

第2話 人喰い龍の噂

ここは、温泉宿『べれり庵』の敷地内にあるある建物の中。

その建物は、巨大な箱形をした建物で、『べれり庵』の建物からは全く見えないその場所は、周囲を大きな樹木で囲み、壁の色も、目立たないような迷彩色で塗装されていた。

別に怪しいことをしている訳ではなく、宿にやって来る客に違和感を与えないために造られた高機動型魔導バス『プラチナスカイドラグナー』の格納庫兼整備工場である。

そこには、トンキ工場長率いる整備士ゴーレム達が整備スタッフとして、『プラチナスカイドラグナー』の整備にあたっていた。


『プラチナスカイドラグナー』はあれから数回マイナーチェンジを繰り返し、今では、空も飛べるようになっていた。

形もバスとは言っているが、既に流線型の円盤のような形になっていた。

また以前使っていた10㎏の魔石を取り外し、今回打ち上げられた『G・M・C』plusに使っている巨大な魔石と同じ場所で別に見つかった重さ30㎏の天然魔石を搭載し、空中停止並びに飛行を実現した。

魔石の大きさは小さくて、総合的な出力等で見れば500㎏の魔石には劣るが、魔石の性能で言えばこちらの方が高く、魔力の集積力や浸透度、放出力等々、精度で言えば遥かに上である。

ちなみに魔力集積力とは魔力を魔石内に貯蔵しておける量を言い、浸透度とは、それの値が高ければ高いほど、不純な魔素を吸収しないと言われており、魔力の素となる魔素の純度が高いレベルで魔石へ浸透させ、吸収させるという値のことである。

放出力はその逆で、魔石内に貯蔵した魔力を無駄なくエネルギーに変化させる値のことを言う。


これらの魔石は、魔石や魔鉱石、金属等の鑑定官でもある誠三郎が、ヒダカと共に世界各地を探して見付けてきたものである。

ちなみにこれらの魔石は、支配地であれば所有権についてその国や領地の統治者と面倒な手続きをしなければならないが、非支配地、領有権の発生していない未開地から採取してきているため、その必要は無く、採取すれば自分達のものとなった。


今回はこの魔石に、飛翔魔法や認識障害魔法、透明化や気配遮断の魔法を組み込み付与させていた。

当然ながら技術は全てジパング王国の技術開発部から来ている。


トンキは、午前中のドラグナーの整備作業を終えて、休憩に入っていた。

作業と言っても、ドラグナーには大きな故障もなく、防御魔法等のお陰で傷ひとつついていないため、目視点検と魔石の魔力残量の確認や、バス内の空間魔法の展開状態の異常の有無の確認などが主な仕事であり、あとはホテルのようになった各室内の清掃や点検、備品や食料品等の補充等、車両整備とは程遠い作業で、トンキの服装は車の整備士が着るような濃い青色のつなぎの作業服を着ているが、決して機械をいじって油まみれになるような作業ではない。


整備工場の建物の外には開閉式の屋根が付いたテラスが設けられているが、そこに丸形のローテーブルがひとつと背もたれ椅子がいくつか置かれていて、トンキはその椅子のひとつに座り、そこから見える雄大な景色を見ながら大好きなアップルティーを楽しんでいた。


トンキは魔族である。

今の生活は、魔族時代には想像も出来なかった平穏な生活である。

トンキは戦いを好む魔族に生まれながらも、根っから争い事が嫌で、ある事がきっかけで魔族の住む『魔の大森林地帯』を逃げ出し、逃亡先でヘルメスやマッソルと知り合い、冒険者となった。

冒険者になっても、斥候など、あまり戦闘には関わらない仕事をしていた。

それが、今では非戦闘員であり、自分達の専用魔導バスの整備士兼運転手である。

彼にとって、争いのない今の生活は夢のような生活であった。


トンキは、最近になって配布されたニューマソパッドを操作していた。

「あーそう言えば、この間、ザビエラ様はギズモワール村に行かれたんだよなあ。あの件はどうなったんだろう?」


トンキが一人『黒龍掲示板(こくりゅうけいじばん)』を見ながら呟いていると、そこにマッソルがやって来た。

その手には自分用のコーヒーが入ったマグカップが握られていた。

「どうしたんだ?ブツブツと?」

と言いながらマッソルはトンキが座っている椅子とテーブルを挟んで反対側の椅子にドシリと座る。

マッソルは人間の中ではかなりのマッチョで巨漢である。

というのも冒険者として一年前までは『棍棒使い』という変な職業に付いていて、装備している武器としては大きな棍棒を普段から持っていたため、力だけは自信があった。

ただ彼もクランズ『プラドラ』のメンバーの一人であるが、トンキと同様、あまり争い事は好まないタイプであり、冒険者に登録したのも生活のためということであり、実際に受けていたクエストは薬草採取や掃除等が中心で、ヘルメスには薬草採取中、森の中でゴブリンに襲われ、瀕死の状態になっているところを助けてもらった事があり、それからはヘルメスのことを自分よりも年下だが姉御と慕って行動を共にすることとなった。

トンキについてはその後、訳あってヘルメス達のパーティーに入ることになる。1-59


「いや、なに、この掲示板に以前から出ている黒龍の目撃情報なんだけど、どうなったのかなと思ってな。」

とトンキが言うと、マッソルも自分の腕にはめているニューマソパッドを確認しながら、

「あー、一年前から出ているノワイヤの目撃情報だよな。確かに、あれからトンと聞かなくなったな?もしかしたらあの『魔海嘯』の時に殺されたんじゃないのか?」1-123

「でも、今でも時々、あの近くで行方不明者が出ているんだよなあ。」

「近くと言うと?」

「タイトバイトス側にある小さな村『ビーレイク』の近くで何人かいなくなっている者がいるらしいんだよ。」

トンキが目を細くして、怪しそうな顔をする。


「へえ、それが本当なら大変な話だな?」

「そうだろ?なので、アズミノール領の隣のスプレイド領にある冒険者ギルドグレリオーダ支部の冒険者が、とりあえずと言うことで国境付近の対応をしているらしいんだけど、あんまり積極的ではないらしくて、あくまで自国内に止まっているいるみたいなんだよな。」

「あータイトバイトスのギルドを気にしているのか?」

「恐らくな、まあ、よっぽどでない限り、お互い縄張りもあるし、自分達の仕事場を荒らされたくないからな。」

「さて、それはどうかな?それだと、タイトバイトスの『東の森』なんかはかなり怪しいじゃないか。本来なら一番に調査に入らないと駄目なんじゃないかなと思うんだけど、大体、今時の冒険者は自分の生活を基盤にした活動をしている奴がほとんどだから、実際、命がけであの危険と言われている『東の森』に入って行こうとするような功名心のある奴はあまりいないだろうなあ。」

「確かに。あの『魔海嘯』以降、魔物は少なくなったとは言え、場所によっては多くなっている所もあるらしいし、各地のギルドに魔物の討伐依頼が結構入ってきているらしいけど、ここでも、あまり討伐クエストを受けようとする冒険者も少ないらしいからな。」

「へえ、そうなのか?俺はここの宿主になってからは完全に一般人化してるからな。この新しいマソパッドを与えられてもあまり見る機会も無くてな…情報に(うと)くて…」

「それは、俺も同じだよ、時々、ドラグナーを運転するときにメンバーの皆の話を聞いて初めて知る情報も結構あるくらいだから…」

「そうなのか?ハハハ、それを聞いて安心したよ。」

「え?そうか?」

「そりゃそうさ、ウチにくる客なんかは、ここが『プラドラ』の拠点と知っている客も多くて姉御ファンがやって来る事が多いから、色々聞かれたりするんだけど、何にも知らなくて、逆に教えて貰うことが多くてな…」

「はははは、それは大変だな。」

トンキが笑う。


そこに、ザビエラがやって来た。

トンキの元上司の上位魔族である。

現在は魔法で人間の姿に変化しているが、実際の身長は約4.5m(マイト 1マイト=1メートル) もある巨大な体をしている。

胸のところに鶏の卵大の魔石が取り付けられた白いコートの様な服を着ている。

これは魔石に付与された魔法により防御力強化や耐毒、耐麻痺等が施された特殊な服であるのだが、ザビエラ自身の魔力値の高さに伴い、攻撃力や防御力等の基本的な身体能力が非常に高いため、この装備の防御力に関しては、ザビエラにとってはただの布地を体に張り付けているレベルであり、あまり意味はない。

だが、これでも人間のレベルでは最高級の防御力を誇る装備らしく、この間、ヘルメスらとノワイヤの高級店へ買い物に行き購入したものであった。


「あ、ザビエラ様、どうされました?」

トンキが椅子から立ち上がり、空いた席の椅子を勧める。

そして、テーブル上に置かれた予備のカップにポットの中のアップルティーを注ぎ入れ、ザビエラの前に出す。


「ああ、すまない。」

ザビエラはトンキにお茶を出された礼を言いながら椅子に座る。

元上司とは言え、礼節を重んじるザビエラはトンキの憧れの人物でもあった。

そのザビエラが、久しぶりに整備工場に顔を出してきたのだ。

トンキとしては非常にうれしい事であった。

だが、ザビエラの話はその嬉しい気分を一気に冷めさせた。


「黒龍かどうか解らんが、どうもタイトバイトス皇国の『東の森』に人間を喰らう龍が生息しているようだ。」

「龍…ですか?」

トンキが唾をゴクリと飲み込む。

「ああ、タイトバイトス皇国の冒険者ギルドがウチのクランズに調査依頼をしてきたらしい。」

ザビエラの話によると、どうもタイトバイトスの冒険者達が『東の森』の調査に関してかなり、及び腰らしく、誰も調査に行きたがらないらしい。

先程の噂話が現実の問題となっているようだ。


黒龍でなくとも、龍種、つまりドラゴンは少なくとも魔力値が200万~1000万マーリョックもあり、普通の冒険者では到底太刀打ち出来ない存在である。

もし、龍の存在が確認されても、今のご時世では、『東の森』に行きたがる冒険者は皆無であろう。


「蔵光様やヘルメス殿は、昨日依頼を受けた古文書の事で対応出来ないみたいで、ギルガ様はまだ龍の墓場から帰って来ていないしで、人手が足りなくてな。」

とザビエラがクランズのメンバーの現状を説明する。

「八鬼様やヒダカ様は?」

とマッソルが尋ねる。

「ブラキア神聖国の北にある島に出かけている。」

「ブラキアですか…遠いですね。」

ブラキア神聖国はガルガード帝国の東にある国で人間至上主義の国と言うことでも有名である。


「俺達やヴィスコ、オルビアさんじゃ戦闘には役に立たないしなあ…」

「まだ確かな情報も入ってきていないが、昔から4つの森には必ず魔物の(ぬし)がいると言われているからな。」

「あーそれ、聞いたことがあります。何でも昔は各森に魔女と呼ばれる魔法使いを配置してその魔物達を抑えていたとか…」1-112

とトンキが言うと、マッソルも、

「俺も聞いたことが、確か『マリガトリアの伝説』とか言って、強い結界を張って森から魔物を出さないようにしていたとかで、その四大魔女が国を守っていたという話でしたね。何だったかな、四匹の魔物の主を魔女達が力を合わせて封印したとか退治したとかだっけ?でも魔女と言っても所詮は人間でしょう?それが(ぬし)と呼ばれるような恐ろしい魔物を抑え込めるもんなんですかねえ?」

と曖昧な記憶で話しをする。


「とにかく、今、その仕事を引き継いでいる魔法使いが実際にいるのか、魔物の主が今もいるのかどうかだが…」

とザビエラが難しい顔をする。

「本当に龍がいるのなら結界を破って出てきている可能性があると?」

「うーん、そうだな、そこで相談なんだが、ギズモワール村に一緒に来てもらいたいのだ。」

「え?私がですか?」

とトンキがビックリする。

ザビエラがあまり人に物を頼むタイプでないため余計に驚いていた。

「そうだ、トンキに来てもらいたいと言うよりも、あのオルビア殿に一緒に来てもらい、ギズモワールの魔法使いシンディーナ殿に会って貰いたいので、トンキには魔導バスで送ってもらいたいというのが、本当のところだな。」

「ええ?またどうしてですか?予知だけならオルビアさんにここでしてもらえればいいのでは?」

「普通ならそうだが、予知された魔物の種類によっては戦い方も変わるし、龍だとて火を吹くだけの同じ攻撃ばかりでは無いだろうしな。」

「なるほど、オルビアさんが予知した魔物の特徴をシンディーナ様に伝えて、どんな魔物なのか特定してもらうっていうことですね?」

「その通りだ、シンディーナ殿はあの辺りの魔物にも詳しいし、もし彼女の知識でわからなくても、自宅にある蔵書を見て調べるだけでもかなりの魔物に関する情報を得られると思うのだ。」

「なるほど、わかりました。それじゃあオルビアさんに連絡を…」

「いや、それは、既に終わっている、オルビア殿も間もなくここへやって来るだろう。トンキはドラグナーを出してくれればいい。」

「わかりました。それでは早速、バスの用意を。」

「ああ頼む。」

トンキは『プラチナスカイドラグナー』の準備のため格納庫の方へ走って行った。


「トンキも大変だなあ。」

マッソルがトンキの後ろ姿を見送りながら呟く。

山の木々は紅葉の季節を迎え、テラスから見える景色は秋の様相を見せていた。


ゼ「トンマッソ!お前ら、今回はエライ出番があるやないか。」( ̄^ ̄)

トンマッソ「アーザース!」

マ「これも神様(作者様)のお陰で御座います。」

うむ、善きに計らえ。お主にはまた、良い機会を与えようぞ! (  ̄ー ̄)ノ

ト「あっ、マッソルそうきたか。では私も…、神様(作者様)、私もマッソルと同様、いつも作品に出させて頂き大変感謝しております。」

うむうむ、良い心掛けじゃ、双方、今後とも精進せよ。

トンマッソ「ははー」( ノ;_ _)ノ

ゼ「ケッ!アホらし。」( ´Д`)

私をバカにする者には天罰を与える。( ̄^ ̄)

これぞ天『魃』!

ゼ「ヽ(;゜;Д;゜;; )ギャァァァ」


コントなら宮離霧千陽子を見てね。

(´・з-)ノ⌒☆ではでは。

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