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水無月蔵光の冒険譚~第二部 古代地下帝国の謎を追え  作者: 銀龍院 鈴星
第一章 古文書の謎
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第18話 暗黒の魔法使い

話が混乱するかも。


第18話 暗黒の魔法使い

ガルガード帝国とブラキア神聖国との北部の国境付近のさらに北側に、フロンバルトという大きな島があった。

そこは誠三郎達が、鉱石を求めて上陸していた島であるが、その島は、ガルガード帝国もブラキア神聖国も領有権を主張していなかった。

この島は大陸に住む魔物よりも強力な魔物が存在しているため誰も上陸出来ないからだった。

ここにはかなりの鉱石の埋蔵量が見込まれていたが、ここに向かう冒険者すらいなかった。

恐らく、以前の誠三郎であれば危なかったであろう。

あのキングドリルよりも強い個体がゴロゴロといてそのほとんどが、鉱山であるアグメイヤ火山に住んでいた。

当然、ドラゴンやヒドラといった龍種、亜龍種はもちろんのこと一体でも城の城壁が壊滅的な被害を被ると言われ、怪力の持ち主であり人をも食べると言われるキングオーガ等の巨人種の集落も存在するとさえ言われていた。

誠三郎達はそんな島に上陸して、採掘作業をしていた。

採掘した鉱石はゼリーから渡された空間魔法が付与された鞄に入れていた。

それは、チョッコ・クリム時代に作って以来になる魔法付与鞄(マジックバッグ)であった。

それに大量の鉱石を詰め込み、そこでの作業を終了した。

その後に立ち寄ったのがブラキア神聖国の北西部にあるシナトゥーラの街であった。

移動には飛翔魔法を使用したのだが、シナトゥーラの住人に見つからないようにかなり人家から離れた場所に降り立ち、そこから歩いて街まで移動した。

街に着いた誠三郎達は、この街にある冒険者ギルドシナトゥーラ支部に足を向けた。

かろうじて、この街には支部があったから良かったものの、間違えてガルガード帝国の様な冒険者ギルド非加入国などに入ってしまったら、密入国でとんでもないことになってしまっていただろう。


ここでは、ギルドで出されているクエストの確認や採掘した鉱石や魔石等の価格確認と、買い取り用として取り分けて採掘していた鉱石や魔石を売却した。

クエストの確認については、当然、受ける訳ではないのだが、その土地によって出されているクエストの傾向を確認し、見識を広め深めるという目的があった。

また、鉱石や魔石の売却も同じように、その土地で産出される鉱石等の傾向や、そこでの物価等を確認するために必要な行動であった。


そんなことで、受付嬢と話をしていた時に誠三郎は、不意に声をかけられた。


「あのお、スミマセン。もしかしてクランズ『プラチナドラゴンズ』の方でしょうか?」

誠三郎がその声にドキリとする。

慌てて背後を見ると男が一人立っている。

誠三郎は、敵意があれば、すぐに殺気を感じて対応するのだろうし、完全に油断した訳ではないはずなのだが気付くのが遅くなってしまったというよりも、気付けなかった。

それほど、その人物の気配の殺し方が、完璧であった。

顔を見るとまだ、幼さを残す金髪で20代前後位の若い男であった。

黒いローブに金色の杖を手に持っている。

ローブの頭巾は被っていなかったので、かろうじて顔や髪の毛の色等が確認できた。


「うお!っと驚いた。まさか、これほど気配を消す者がいたとは…」

「申し訳ありません、つい癖で気配を消していました。私は冒険者ギルドの聖都オズラガン支部で魔法使いをしているアリオスタ・ヴィストゥラという者です。」

「何故、我々がプラチナドラゴンズの者だと?」

「先程、受付で魔石等の買取りをしておられた時にクランズの名前を出されていましたので…」

「ああ、なるほど、それで、我々に何の用が?」

「あの、実は確認をしたいことがございまして…もしかして、あなた様は、クランズを結成される前に、あの盗賊団『蜂の巣』を討伐されてはいませんか?」

「うーん、確かに、討伐はしたが…それがどうかしたのか?」

「やはり…で、あの、その時に頭目のグリーン・ビーが短剣を持ってはいませんでしたか?」

「短剣?いや、それがどうしたのだ?」

誠三郎はアリオスタという魔法使いが言っている短剣については、すぐにゼリーの持っている短剣であるとわかったが、この男の言う事を最後まで聞くまでは知らない風を装う事にした。


アリオスタはそれを聞くと、大きなため息を付く。

「はあー、そうですか…『蜂の巣』等という名前を付けているから、もしやと思ったのですが、やはり違ったようです。」

「何か訳がありそうだな?良ければ話してみたらどうかな?もしかしたら、役に立てるかも知れんからな。」

「あ、ありがとうございます。」

アリオスタは誠三郎に礼を言うと、これまでの経緯を話した。


「実は…」

アリオスタが誠三郎に話した話は、何か因縁めいた話であった。


例の短剣は正式な名前を『ケントルム・テラエ』というものらしく、元々は地中国という国の物で、そこに住む神の蜂ビー・クイーンという神魔虫という者の所有物であった。

神魔虫とは、神に仕える虫の魔物の事であり、魔物とは言うが全く別物である。

どちらかと言えば神獣に近い扱いだ。


そして、話は1000年前に遡る。

元々、この頃のブラキア神聖国はこれ程酷い人間至上主義の国では無かった。

しかし、ある日、その亜人種差別を惹き起こすこととなった事件が発生した。


その事件は、発生したというよりも、判明したという方が正しいのかも知れなかった。

それは今でもブラキア神聖国に、恐ろしい獣人の話『ワーウルフ伝説』として伝えられている。


その昔、ブラキアのとある森の中に住んでいたワーウルフと呼ばれる狼の獣人が、20年間に渡り、人間を食べ続けていたという恐ろしい話であった。


この事件がきっかけとなり、ブラキア神聖国は国内全域において獣人を始めとした亜人種排斥(はいせき)運動が巻き起こったのである。

それは大きなうねりとなって国を覆い、やがて国内は人間と獣人との内戦状態になっていった。

獣人との戦いは熾烈を極めた。

元々は仲良く住んでいた人間と獣人が、何故これ程程までに憎しみ合えるのかわからないほどの戦いであった。

最初は獣人の力に敵わず、劣勢を強いられていた人間の側であったが、ある日、思わぬ援軍を得た。

マグローシャという魔法使いが、この戦いに駆け付けたのだった。

元々、彼女は使命を帯びて、ある森の管理を任されていたが、この国の危機を聞かされ、この戦いを止めさせるために、一時期的に森を出て来たという話だった。

彼女は最初、中立の立場を堅持していたが、相手側の獣人の代表となるものが当のワーウルフを擁護する言動を始めたことから事態は混乱し出し、獣人と対立するようになってしまう。


この頃、ブラキア神聖国は、元々『地中国』と呼ばれる精強な国と親交があった。

この国の国王は人間であったが、忠実な魔物を配下に従え、地下にある国を支配していたとも言われていた。

その配下の魔物の中に『神の蜂』と呼ばれるとても強い魔物がいた。

そして、ブラキア神聖国は地中国の神魔虫に助けを求め、ついに『神の蜂』であるビー・クイーンと呼ばれる者も人間側について戦いに参加することになったのだった。


ビー・クイーンは『神の蜂の軍』を指揮して、みるみるうちに凶暴な獣人の軍を鎮めていった。

やがて彼女らが参加したお陰で内戦は終結し、獣人達はブラキア神聖国から出て行ったのだった。

その後、マグローシャはビー・クイーンから『ケントルム・テラエ』を手渡される。

ビー・クイーンは『神の蜂』の中でも彼等を統率する女王蜂であり、この剣があれば、『神の蜂の軍』を指揮する事が出来ると教えられた。

そして、もし、何かあっても、この剣に魔力を流し込めば、いつでも『神の蜂の軍』がその呼び掛けに応えるとも言われたのだった。


その後、ブラキア神聖国は獣人の排斥運動をさらに押し進め、とうとう獣人のいない国を実現させた。

そして、この戦いに協力してくれたビー・クイーンに敬意をはらい、国の紋章に『神の蜂』の紋様を取り入れることとなったと言われていた。


『神の蜂の軍』が何処に帰っていったのかは誰にも分からなかったが、地中国に帰っていない事だけはわかっていた。

それは、彼女がやって来たという『地中国の入口』が塞がっていたからだった。

内戦をしていた時には開いていた入口は何故か『神の蜂の軍』にも動かせない山ほどの巨大な大きさの岩により塞がれ、地中国に帰る道を閉ざしていた。


マグローシャはその後、自分の森に帰っていった。

そして、『時の魔法』に守られながら約650年が経過した頃、初めて弟子を取った。

今でも天才魔法使いと語り継がれているフェルス・ケイアガードという者である。

マグローシャは彼にあらゆる魔法を教え、彼はそれを全て習得した。

彼は、森を守らなければならないマグローシャに代わり各地で発生する魔物の出現や災害に対して積極的に出向き、討伐、救援していった。

彼の名声はどんどんと上がり、『不世出の魔法使い』とか『稀代の天才魔術師』と言われもてはやされた。

だが、彼のその素晴らしい経歴も、あることがきっかけで、歴史の中に(うず)もれてしまうのだった。

彼はある時を境に、『悪』に見いられる。

自分の力に溺れ、私利私欲のために魔法を使い、気に入らなければ簡単に人の命さえ奪った。

所謂(いわゆる)、『暗黒(ダークサイド)魔法使い(ウィザードリー)』と呼ばれる者になった。

暗黒の魔力は、負の魔素に似て人間の体を蝕むが、飛躍的に魔力値を上昇させる。

彼は、その後、マグローシャの所有する『神の蜂の短剣』である『ケントルム・テラエ』を盗み姿を消した。

それからのフェルス・ケイアガードの消息は全く判然とせず、代わりに彼の悪行だけが世界に広く認知されるようになった。

マグローシャは、フェルスの唯一の弟子であったセイントマルクという者を呼び寄せた。

彼もまた天才と言われた魔法使いの一人であった。

マグローシャは彼に『ケントルム・テラエ』の回収を指示した。

それは指示というよりも、フェルスを殺してでも回収せよという絶対的な命令であった。


彼はフェルスの足取りを追って世界各地を飛び回ったが、その足取りは(よう)として知れなかった。

セイントマルクも年をとり、その捜索は弟子に継承された。

それはフェルスが、暗黒の魔法使いとなってから取った弟子に、その剣を継承者の証として渡している事がその後の調査等で明らかとなったからであった。

そして、長い歳月が経ち、マグローシャはもう一人の直系の弟子となるチョッコ・クリムを取る。

そして、彼女がマグローシャの家を出る時、

『あの剣は、暗黒の世界に置いておく物ではない、いずれ現れるであろう高い魔力を持つ魔法使いにより、その魔力があの剣に流し込まれれば『神の蜂の軍』が世界を襲い、彼等に世界が支配されてしまう。それは絶対に避けなければならない。』

と言って彼女にも『ケントルム・テラエ』の捜索を依頼したのだった。


こうして、その後も300年以上に渡って捜索の手が拡げられた。


アリオスタ・ヴィストゥラもその一人であった。

彼はセイントマルクの弟子の系列の魔法使いの一人であった。

彼は、冒険者ギルドの冒険者となり、クエストをこなす傍ら、『ケントルム・テラエ』の捜索に当たっていた。

そして、暗黒側の魔法使いと呼ばれる者を調べていた時、『蜂』の名前を付けている盗賊団『蜂の巣』の噂を耳にする。

この盗賊団の頭目はグリーン・ビーと言って、かなりの魔力を持つ、魔法使いであるということが判明する。

だが、盗賊であり、どこに隠れ住んでいるのか皆目、その所在が分からなかった。


だが、ある日、この盗賊団が討伐されたことを知る。

冒険者ギルドで確認したところ、討伐したのはC級の新人冒険者だったという話であった。

相手は人数が200人を越えるA級の盗賊団である。

たかだか数名の、それもC級以下の冒険者が討伐出来るような盗賊ではない。

何かの間違いではないかと思い、確認のために海を渡り、タスパ支部に訪れたがその者達は一足違いで別のパーティーと一緒に、次のクエストへ出向いていた。

そのパーティーの名前はシルバーユニコーンというB級ランクの冒険者パーティーで、クエストの手伝いで入ったとの事だった。

ついでに『ケントルム・テラエ』の事も尋ねたが受付ではわからないとの事であり、詳しいことを聞こうとジアド・アロバスタにも面会したが、盗賊団の所持していた金品の情報は教えられないと言われ仕方なく断念した。

だがその後、彼等が、メトナプトラの首都ヨーグにおいて『プラチナドラゴンズ』というクランズを立ち上げ、あれよあれよという間に実績を上げ、今ではリーダーのヘルメスともう一人の拳法家はSS級の冒険者にランクアップしたと聞いた。

その頃は、アリオスタ自身も別のクエストが忙しかったり、元々ブラキアとメトナプトラはかなり距離が離れていたこともあったりして、長期にはブラキアを離れる事が出来無かったこともあり、会える機会がなかったのだが、いつもその事は頭の片隅にあった。

そして、本日、たまたま立ち寄った冒険者ギルドの受付で誠三郎が『プラチナドラゴンズ』の名前を出した事に驚き、本当にプラチナドラゴンズの者かどうか確認するため、気配を消して近寄ったのだった。

アリオスタは若くしてA級の冒険者になり、気配遮断の魔法にはかなりの自信があった。

だが気配は消したものの、誠三郎には恐ろしい程の気配察知能力があるとわかった。

このまま殺気のひとつでもを出せば、即、殺されると感じたため、そのまま何もせず声をかけたのだと正直に誠三郎に話したのだった。


そこまで正直に話をしてもらった誠三郎は、アリオスタに『ケントルム・テラエ』の所在について話すことにしたのだった。

現在はゼリーという水無月家の継承者の従魔が所持しており、この従魔がチョッコ・クリムの系統を引いている者であるという事を説明したのだった。

アリオスタはその話を聞くと、肩の荷が降りたようにホッとした表情となり、『ケントルム・テラエ』の呪縛から解き放たれた様であると誠三郎に告げ、その場を去って行ったのであった。


ヴ「ゼリーちゃん師匠、トンでもないことを隠してましたね。」(*゜Д゜)ゞ

ト「ガルガード帝国から返せと言われていたやつかも…」(o゜з゜o)ノ

マ「でも凄い物ですよね。」(*>∇<)ノ

ト「確かに…凄いと思う。」(`ロ´;)

ヴ「でも、確かこれ記念品とかの扱いじゃなくて、クライ渓谷で普通に使ってた奴だと思う。」

( ̄▽ ̄;)

確かに良く切れていたと思う。1-40


それではまた次回をよろしく。⊂(・∀・⊂*)


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