第17話 ブラキア神聖国シナトゥーラ襲撃事件
誠三郎からブラキア神聖国等の情報がもたらされます。
第17話 ブラキア神聖国シナトゥーラ襲撃事件
誠三郎達が行っていた島の南にあるブラキア神聖国は、メトナプトラ国のルーケ地区を目茶苦茶にしていた例の盗賊団『蜂の巣』の首領グリーン・ビーの出身地であるガルガード帝国の東側に位置する国で、人間至上主義の国と言うことでも有名であるというのは以前話したが、このブラキア神聖国について、不穏な話を誠三郎が聞き込んできていた。
その話の中身とはこの様なものであった。
ブラキア神聖国の人間至上主義は徹底しており、獣人やエルフなどの、所謂、亜人種は徹底排除の姿勢を堅持しており、国内で発見された場合は、その亜人種は捕まって処刑されるか、奴隷として過酷な労働を強いられる事となるというのがもっぱらの評判であり、この国に入ろうとする獣人はまずいない。
だが、ついこの間の事であるが、このブラキア神聖国のシナトゥーラという街に獣人の集団が攻め込んだらしい。
この街は、ガルガード帝国とブラキア神聖国の国境近くの街であり、北部で唯一平地で接している場所でもあり、国の要所としても重要な街であり、この街のすぐ西側にあるシナトゥーラ砦は南北に延びる長さが約20kmにもなる巨大な砦であった。
攻め込んできたのは200人以上の部隊であったが、何とかブラキア側もこの砦で撃退したようで、半分以上の獣人がこの件で死亡していた。
こんな事例は今までに無かった事であったため、ブラキア神聖国側が詳細に調査したところ、攻撃してきた部隊はどうも隣のガルガード帝国から送り込まれたのではないかという事が判明したようであり、ガルガード帝国に対してブラキアがかなり追及をしたらしいのだが、完全に関与を否定したとのことであった。
だが、この件もブラキアが証拠も無しにガルガードに詰め寄った訳ではない。
獣人達のうち、ブラキア神聖国が討伐した者が装備していた鎧や剣などにガルガード帝国の紋章が入っていたからだった。
だが、ガルガード帝国側も、証拠品を見せられてしまえば、なかなか上手く否定が出来ないところであったが、のらりくらりとして結局、
『獣人が攻め込んだのは、ブラキア神聖国に奴隷となって囚われている自分達の仲間の獣人を取り戻しにでもしようとした獣人の集団の仕業ではないか。』
というかなり強引な理由をつけて、うやむやにさせてしまったとのことである。
そして、最終的には、
『ブラキアに攻め込んだ彼等は盗賊であり、それらは帝国から大量に盗まれた物であって、盗賊と我々とは一切関係はない、盗まれた装備品は 即時こちらへ返却願いたい。』
と言い出してブラキア神聖国に武器等の返却を求めたらしい。
ブラキア側も証拠品のため当面の間は預かり置くとの回答であり、現在の両者の間には険悪な空気が流れているとの事であった。
誠三郎達は鉱石等の採掘が終わった後に、、ブラキア神聖国の街のひとつであるシナトゥーラに一度、立ち寄った際に聞き及んだものであり、かなりピリピリとした空気が流れていたという話であった。
蔵光達は、『べれり庵』内に設けられた自分達のクランズ『プラチナドラゴンズ』のプライベートルームにて、誠三郎と、誠三郎と一緒に鉱石採取に行っていた雷鳥『ヒダカ』から話を聞いていた。
ヒダカは雷を操る鳥の魔物であり、古龍ギルガンダの知り合いであり、現在は『プラチナドラゴンズ』のメンバーであり、誠三郎の配下の『忍』として稼働している。
今はギルガンダの秘術魔法『ジギン』によって人間の姿に変化している。
「せやけど、それってどこかで聞いた話とよう似とるな。」
と蔵光と一緒に話を聞いていたゼリーが口を開く。
「そうなのだ、例の盗賊団『蜂の巣』の時と同じだ。『武器や防具は帝国から盗まれたものであり、所持していた宝物等も自分達の国の物であり返却願う』と言う、全く良く似た話なのだ。」1-61
誠三郎が蔵光らと討伐した盗賊団の名前を出した。
「それって、ガルガード帝国が全て裏で糸を引いていると?」
ヘルメスがその話にピンときたようである。
「確証はないが、恐らくはな…」
と誠三郎が頷いた。
この話は、クワッテ鉱山の一件でトンキがヘルメスにコソッと耳打ちしていた話である。
ヘルメスは、この頃がまだパーティーがクランズになっておらず、蔵光に余計な話を聞かせて煩わせないようにとの配慮からトンキに口止めしていたものであったが、結局、これが全て蔵光の超聴力で聞かれていて、後で色々と蔵光から追及されたという事があり、全員が知るところとなっていた。
「我達が立ち寄った、そのシナトゥーラという街で聞いた話なのだが、獣人達が街に攻め込んで来た話はしてくれるのだが、どうもガルガードが武器、防具、金品等の返却要求をしてきた事や、その意図的なものについて、その辺りの事を聞いたんだが、街の者全体が知らないのか、それとも知っていても喋らないのか…恐らくは後者だと思うのだが、住人全体がどうも非常に口が固くてな…ほとんど情報が取れなかったのだ。」
とヒダカが首を傾げながら言うと、誠三郎も、
「何故、ガルガードの奴等が獣人を使ってそのような事をして来ているのか知っている様子なのだが…」
と腕組みをして考える様な仕草を見せる。
「ガルガード帝国と言えば、確か、盗賊団『蜂の巣』の頭目にグリーン・ビーとか言う奴がおったな、アイツは確か帝国の魔法使いやったかな?」
ゼリーが言うとヘルメスも頷いて、
「そうだ確か、その後の調査では、元ガルガード帝国の上位魔法使いとか言っていたな。それに、八鬼殿が討伐したキベツという男は元ガルガード帝国の魔法騎士という肩書きだった。」
と答える。
蔵光は、
「確か、ビーはそんな事を言っていたな…」
と言うと、ビーが死に際に蔵光とゼリーに言った事を話した。
ビーが盗賊になる前、ガルガード帝国の上位魔法使いとして仕えていたこと、王国の次期王位継承者の争いで、自分達が推していた王子が王位継承できず、王位継承した側の派閥から追いやられ城を出たこと。
さらには帝国の暗殺部隊が追っ手から逃走している間に盗賊団を組織して略奪行為を繰り返して、最終的には組織を拡大し、資金を貯めて帝国に復讐するつもりであったと話していたと語った。
この話は冒険者ギルドタスパ支部のギルマス、ジアド・アロバスタに報告している。
「蔵光殿、ちょ、ちょっと待ってくれ、その話は少しおかしいぞ、ガルガード帝国はここ、何年間も王位継承争いなどは起こっていない。というか、現在の王は在位20年間で全く変わっていないはずだ。」
ヘルメスが蔵光の話すビーの話を指摘した。
ヘルメスは初めて蔵光の話を聞いたようであった。
「何だって!?そんな…アイツは既に死を覚悟していたのに、その最中にもアイツは俺に嘘を付いたということなのか?いや、そんなはずは…」
蔵光がビーの話を反芻する。
「若、ビーはあの時、死を前にしても嘘をつかなければならない状況下にあったと考えた方が自然かも知れませんぞ…」
誠三郎がビーの付いた嘘の裏に秘められている謎の存在を指摘する。
「それは、やはりガルガード帝国に関することでしょうか?」
ヘルメスも誠三郎の指摘によって導き出される答えを探る。
「奴はあの時、まだガルガードの魔法使いだったと考えて間違いないだろう。」
誠三郎が断定する。
「という事は、ビーは帝国の命令を受け、あのルーケイースト地区を含む、彼等がスラム化を促進させていた全ての街を、牽いては国を弱体化させようとしていたと…」
「それを国が行っていると公にしてはまずいから、あくまでも国から追放された体を装って仲間を集め、盗賊行為で貯めた資金を極秘裏に帝国へ送金していた…」
かなり核心的な話である。
ヘルメスと誠三郎との話を聞きながら蔵光があることを思い出していた。
それは、オルビアの誘拐事件で事の顛末が報告された時、あの黒龍モグル・ランカスが『蜂の巣』を自分達の計画に利用していたという報告だった。
それは、モグルが『魔海嘯』を起こすためビーの連絡網を利用していたという話である。
ビーは自分達が利用しているスラム化に関してその周囲の街などに自分の配下を配置させ、冒険者ギルドの動きや、警備隊の状況を探らせ、自分達が捕まらないようにしていた。
恐らくは警備隊に忍ばせていた配下からモグルへの筋が出来たのであろうと推測されていた。
「だけど、確か、ビー達の行動はあのモグル・ランカスとも繋がりがあったようだけど…帝国は黒龍とも繋がりがあったのだろうか?」
蔵光が可能性のひとつとして黒龍との繋がりを推測する。
「うーん、それは何とも言えませんな。黒龍は人間をエサとしか見ていませんから、利用というよりも、お互いに有用な情報を交換しあっていたと考えた方が自然かもしれませんな。でも、モグル達の動きはビーから帝国の方に逐一報告はされていたでしょうな。」
「今回の件も獣人の襲撃は帝国の関与があるんだろうけど、そもそもガルガード帝国は今まで獣人を利用した事があったのだろうか?」
「わからないな。ヴィスコに調べてもらうか?」
「そうですな。あの『忍』の情報網を精査すれば何か分かるかも知れませんぞ。」
「よし、では、早速、ヴィスコにお願いしよう。」
ヴィスコは『ビスコ部屋』で、蔵光達の話を聞いていた。
「わかったよー!調べてみるー!」
とヴィスコは『水蓮花』で応答してきた。
「後は、ゼリー。」
と誠三郎がゼリーに声をかける。
「何やセイノジ、何かワイに用か?」
「そうだ、お前、あの件でビーの持っていた剣を報酬でもらったよな?」
「ん?あ、ああもろたで。それがどないしたんや。あれはもうワイのもんや、誰にもやらへんで。」
「ふっ、ゼリー、お前、あの剣が何なのか知っていたな?だからこそ、ジアドにあれ程執拗にねだったという訳だ。」
と誠三郎がニヤリと笑ってゼリーに指摘する。
「なっ!?何の事や!?わ、ワイは何も知らんで、何もな!」
ゼリーの様子があからさまにおかしくなる。
「八鬼殿、あの剣がどうかしたのですか?」
とヘルメスが尋ねた。
「あの剣は…」
誠三郎があの剣に纏わる話を始めだした。
それは、ゼリー、いやチョッコ・クリムや彼女に関係する魔法使いに関する話でもあった。
マ「ヒダカさん、ブラキアで正体がバレなかったんですね。」(。・_・。)ノ
ヒ「何故だ?」(゜д゜)
マ「いや、正体がバレて、獣人に疑われたりしたら大変かなと思ったんで。」ヽ(´・ω・`*)
ヒ「馬鹿者!我は神獣が一柱、『雷鳥』であるぞ!獣人等と一緒にするでないわ!」(`Δ´)
マ「そうでしたか、それは失礼しました。で、先日の趣味の話の続きなんですが、何か良い趣味でもありましたでしょうか?」
ヾ(´∀`*)ノ
ヒ「はっはっはっ!そう言うだろうと、ちゃんと準備してきたぞ!」o(*≧∇≦)ノ
ト「そうなんですか?で、どのような趣味を?」
(゜-゜)
ヒ「寝心地の良い『雲』を探すという趣味だ!」
( ̄^ ̄)
ト「はい?」(*´_⊃`)ノ
マ「ヒダカさん、一柱なのにまたやりましたね…」
( ´Д`)=3
ヒ「何故だー!?」(; ̄Д ̄)?
雷鳥ヒダカの苦悩は続く。
ヾ(´・ω・`)ノ゛ではまた。