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水無月蔵光の冒険譚~第二部 古代地下帝国の謎を追え  作者: 銀龍院 鈴星
第一章 古文書の謎
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第13話 北の森の美魔女

マグローシャ再登場。

第13話 北の森の美魔女

『北の森』はタイトバイトス皇国の北部に広がる広大な森林地帯である。

その広さはノースヨーグの森の3倍以上とも言われている。

この森は『北の森の美魔女』と言われるマグローシャという魔女が管理し、また、この森には昔から魔物が数多く生息し、その深淵部には、魔物の主が住んでいると言われていた。

そして、その魔女がその魔物の主を魔法の力で抑えているとも伝えられていた。


だが、全てはこの森の奥に人間を入れないための嘘であった。

それは全て地下帝国に住むアズマンという帝王と、彼女達森の魔女、そして、『四獣』と呼ばれる魔物の王らの策略であり、本当は、森の中にある地下帝国への入口とそれを守るために配置された魔物の王、さらにそこへ人を近付けさせないために配置された魔女達であった。


『四獣』の一体であるヨルの話では、森の魔女は1000年~2000年の周期で地上の人間界と地下帝国を行き来しているようであったが、普通の者はある一定の条件がないと足を踏み入れることが出来ないようになっていた。

恐らく帝国に行くための条件、それに必要なアイテムだろうと思われる『古文書』。

確証は無いが、恐らくこれはアズマンが作ったものと思われた。


古文書の封印を解くため、ひとつ目の鍵は解除した。

二つ目の錠前を解除するため、『北の森』にやって来た蔵光達はこの森の主である『タラスク』という魔物の王を探しにやって来ていた。


(あるじ)ぃ~、ホンマに他の『四獣』も探しに行くんか?」

ゼリーが森の中を歩きながら蔵光に尋ねる。

どうも、先程、『東の森』の扉の中に書かれていた文章が気になるようであり、行きたくなさそうである。


「うん、行くけど、どうしたの?ゼリー何か、あの扉の中のニホンゴを見てからおかしいよね?何が書かれていたの?」

「あ、うん、それなんやけど、内容自体は大したことは書かれてへんのやけど、どうも、そのネタ元と言うか、書いた本人がどんな奴なんかなと思ってな…」

「書いた本人って、アズマンっていう人のこと?」

「そうや、あれはよっぽどコアな奴しか知らん話やのに…まあ、今はまだ確証が得られんから、主にはまだ言わへんけど、まあ、でも、予想してた通りやったら嫌やなと思ってな。時機が来たらちゃんと言うから。」

「わかった。」

蔵光は余りゼリーの過去を追及しようとはしない。

ゼリーはその時がくれば必ず話すと信じているからだ。


「ところで『タラスク』って一体どんな魔物なの?」

ヘルメスがヨルに聞いたのは名前だけであり、詳しい正体は聞かされていない。

なので、ヨルにその『タラスク』という魔物の正体を聞いた訳なのだが、

「うーん、僕と同じで普段は人間の姿をしているので名前と顔はわかるんだけど、どんな魔物なのかは、はっきりとはわからないなあ。」

ヨルは他の二体の魔物の王の正体についても、はっきりとは知ってはいなかった。


「じゃあ、ヨルみたいに魔力無効、気配遮断とか認識阻害は出来るのかな?」

「それは知らないなあ。」

蔵光がタラスクのスキルを尋ねるが、それすらもヨルはわからないようであった。


「もうすぐやな。」

ゼリーが言う。

この森は、チョッコ・クリムが昔、親からの虐待に耐えきれず、魔法で反撃した後、逃げ込んだ森であり、その後、『森の美魔女』と呼ばれるマグローシャという老女の家に辿り着き、そこで魔法のいろはを学んだ所であり、彼女にとっては庭みたいな場所である。

そして、その記憶を受け継いでいるゼリーもまた懐かしい森でもあるのだ。


蔵光達が歩いていた先に、小さな小屋が見えてきた。

丸太組みのログハウスの様な造りの家で、その佇まいは、チョッコ・クリムが逃げ込んだ当時と全く変わっていなかった。


「懐かしい…と言うよりも、マグローシャの家…全く変わってないやんか!」

普通であれば、古くなって建て替えているとか、壁や屋根の木材などは腐って無くなっているとか、変化があるはずなのだが、全くそれがない。

「『時の魔法』の影響なんか?」

ゼリーがその原因を考えて答えを出す。


家の前の庭等に植えられている花等も、綺麗に咲いていて、雑草とかも生えておらず、その周囲も綺麗に整頓されていた。


「ちょっと覗いていこうか…」

蔵光が建物に近付いていく。


すると、建物のドアが内側から開き、一人の若い女性が現れた。

見た感じ年齢が20歳代くらいで、黒いローブに身を包んでいて、長めの茶髪に綺麗な顔立ちをしている。


「誰かね?」

その女性が蔵光達に聞いてきたので、ヘルメスがリーダーとして挨拶をする。


「こんにちは、私は冒険者ギルドの冒険者でヘルメスと言います。あ、あの?この小屋ってマグローシャって言う女性が住んでいませんでしたか?」

とこの女性に尋ねる。

「私が、マグローシャだが、何かねあんた達は?」

とその女性が答えた。


「ええーーーっ!」

全員がその答えに驚く。

「あ、あのマグローシャっていう人は二人いるのですか?」

「ここにいるマグローシャは私一人だけだが?何の用だね?」

「イヤイヤ、あのマグローシャっていう人はもっと、おばあさんというか、もう少し年齢がいっているというか…」

とヘルメスが言うと、突然、そのマグローシャと名乗った若い女性が笑い出す。


「あっはっはっはっ!なるほどね、どこで聞いたのか知らないが、私の以前の姿を聞いてきたのかい?」

「以前の姿?」

「ちょっと、()けてきたんでね、リフレッシュしてきたんだよ。何せ私は『森の美魔女』って言われているからねえ。」

と説明した。

「何でやねん?リフレッシュくらいで、しわしわの婆さんがそんなに若くなるわけないやろ!」

とゼリーの突っ込みが炸裂した。

「おやおや?そのツッコミ、初めて会った時のチョッコ以来だねえ。」

とその女性が言うと、その言葉にゼリーが一瞬、動きが止まり、その顔をまじまじと見る。


「えっ?何故その事を?もしかして、本当にマグローシャさんなんか?」

「もしかしなくても、(わたし)ゃ、マグローシャだよ。」

その女性は静かに笑っている。


「うわあーー!」

ゼリーが叫びながらマグローシャに抱き付く。

ゼリーはチョッコ・クリム本人ではないが、その記憶を受け継いでおり、マグローシャと一緒に暮らした記憶も共有しているため、その女性をマグローシャ本人であると認めた瞬間、マグローシャに会った懐かしさと300年間以上生きていたという奇跡に感動して抱き付いてしまったのだった。


「うわあ、マジでこの臭いマグローシャさんのだよ。」

ゼリーが泣きながらマグローシャの服に染み付いた薬草等の臭いを嗅いで本人と識別している。


「さっきから何だね、この喋る妙な生き物は?それとそこにいるのはヨルだよね?何でここの森に来ているんだい?」

とマグローシャが言うと、ヘルメスが、これまでの経緯を説明することとなった。


蔵光達はマグローシャの家の中に招き入れられ、そこでヘルメスが、マグローシャに説明した。

チョッコ・クリムが水無月水覇のやらかした不始末の呪いが解ける日まで生き長らえるため、ラージスライムの中に入り、そこで自分の記憶や知識をそのスライムに刷り込ませ、さらに自分はそのスライムの作った空間魔法に入れてもらい、300年という歳月を生きてきたこと、そして、その後、水無月一族の蔵光の従魔となったこと。

蔵光が冒険者になるためにメトナプトラに渡り、冒険者となるのにゼリーが付いて来ていたこと。

今回は、ギャラダスト家の者が『東の森』の魔女であるサンマーサから手渡された『古文書』の封印を解いて、この古文書の中身を調べようとしている事、『東の森』でヨルと出会い、ここまでやって来たという事を順に話したのだった。


「へえー!この子がチョッコの記憶を移されたっていう魔物かね?で、当の本人は空間魔法で若返りの薬待ちってかい?あっはっはっはっ!あの子はいつでも人を驚かせるよ。」

「イヤイヤ、あんたもやで!」

とゼリーがすかさずツッコミを入れる。

「じゃあ、まだ、あの子は生きているんだね?」

「ああ、今から会わせたるわ。」

そう言うと、ゼリーがチョッコのいる亜空間を開く。

空間の中から老女のチョッコ・クリムが現れた。

「何だねゼリー?若返りの薬が用意出来たのかい?」

と言いながらチョッコは空間から足を伸ばして床に足を付ける。


「あら?ここは…」

チョッコ・クリムがマグローシャの家の中をぐるっと見回す。

「ゼリー、ここは、マグローシャさんの…?」

「ああ、そうや、正真正銘マグローシャの家や!」

とゼリーが説明した。

そして、若くなったマグローシャと年を取ったチョッコとを対面させた。


「まあ、チョッコ、年を取ったねえ。」

とマグローシャが老女となったチョッコをまじまじと見る。

チョッコも若くなっているマグローシャを見て、最初は誰だかわからなかったが、ゼリーからマグローシャであると説明を受けると、

「あのなゼリー、こんな残酷な再会は無いで、年齢が逆転するとかホンマ有り得へんわ。」

とチョッコが言うと、ゼリーは、

「そうやな。まあ、こうして久しぶりに会ったんやし、積もる話もあるやろうから、しばらくは外の世界におったら?」

と返す。


「まあ、私が300年前にチョッコに言った『森の美魔女』というのもこれで証明出来ただろうし、私は満足だよ。この子達の話が終わったら、後でゆっくりと話でもしようじゃないか。」

とマグローシャが言うとゼリーも、

「そうやそうや、それがええわ。」

と同調する。

「ちっ、仕方ないな、まあ、お前とシンクロ出来てないし、今の自分等の状況も知りたいから横で聞いといたるわ。」

とチョッコも返した。


そして、マグローシャが再び話を元に戻す。


「あの古文書をサンマーサがねえ、それなら、あの子はもう…」

「マグローシャさんが帝国に戻ったのは、若返るためなんですか?」

と蔵光が尋ねると、マグローシャは、

「まあ、それをしないと、今度は段々と私達に掛けられた呪文の効果が弱くなってきてどんどん年を取る事になり、年寄りになってしばらくしたら最後はチリのように消えてしまうんだよ。」

「ああ、だから、セブレインさんはサンマーサさんがもう少ししたら消えてしまうとか言っていたと言ったんだね。」

「その話を聞くところでは、恐らく森のユニーク個体が暴れている事で中々、帝国に戻るため森を離れて留守にすることが、できなかったんだろうよ。」

「それは赤いドラゴンを結界の外に出さないためですか?」

「その通りだと思うよ、私達の結界は術者がいなくなるとすぐに弱くなってきて、強い魔物なら結界を破って外に出入りできるようになる。だから自分が消えそうになる直前まで森の中にいたんだろうて。だから『マリガトリアン』を手渡したんだろうね。」

「『マリガトリアン』?それが『古文書』の本当の名前ですか?」

「ああ、そうだよ、本当は、それを持って帝国に戻り、持ち回りで次の『四つの森の魔女』が持つことになっているんだが、それを誰かに一時的に渡したのではなく、託したとなればちょっと問題があるね。」

「あの…近くにあるビーレイクという村の人達も同じ頃にいなくなったのですが、それと関係があるんでしょうか?」

ヘルメスはビーレイクの村に結界が張ってあった事やその村の人間がサンマーサがいなくなった頃と時を同じくしていなくなったこと等を話する。

「それは本当かい?それが、本当だとすると大変な事だよ、サンマーサはやっぱりもうこの世にはいないだろうね。それにそのビーレイクという村の人間も…」

「えっ?それはどういうことなんでしょうか?」

ヘルメスの質問にマグローシャが重い口を開き、驚くべき話を始めたのだった。



ヴ「スゴーい!『森の美魔女』は実在した。」

o(*≧∇≦)ノ

ト「そんなにスゴいの?」

( ・-・)

ヴ「当たり前だよ!あのチョッコ・クリムの師匠であり、あの有名なセイントマルクさんの師匠の師匠だよ!今の魔法使いの有名処は大体この人の流派からきているんだから!」

ヾ(o≧∀≦o)ノ゛

マ「で、そのセイントマルクさんの師匠って誰なの?」

( ゜ 3゜)?

ヴ「チョッコ・クリムの兄弟子で漆黒の魔法使いフェル…」

ハイハイ!ストーップ!!それ以上言わない!

((ヾ(≧皿≦メ)ノ))

また、気を抜いていたらトンでもないことを!

それを口にすることは許されませんよ!禁句です。

( `Д´)/






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