第11話 伝説の龍神と水無月家の魔力
ちょっと水無月家の秘密が出てきます。
第11話 伝説の龍神と水無月家の魔力
ヨルムンガンドはこちら、魔法世界『マーリック』では、神の子供で、伝説では巨大な蛇若しくは龍であったと伝えられている。
その力は、地を裂き、空を駆けて雷神と戦ったとも伝えられている。
全ては伝説であり、多分、ワダツミ等にすれば神様扱いであろう。
そんな奴を、仲間とかにして、自分がそこのリーダーとかって出来るはずもない。
仲間とかの話は即、却下だ。
そう思って、ヨルに乗船NGを出したのだが、駄々をこねられ、ヘルメスはとうとうヨルをドラグナーに乗せてしまったのである。
「あーあ、やってしまった。」
船内に戻ったヘルメスは座席でうなだれるようにして頭を抱える。
「わっはっはっはー!」
ゼリーは大笑いしている。
ゼリーにとっては面倒事が大好きという変わったところがある。
こんなめったに無い面倒事が起きれば、ゼリーにとっては目茶苦茶おいしい出来事なのである。
「しかし、ヘルメスもやるのおー!龍神を仲間にするとはな!」
「うるさい!乗せたくて乗せたんじゃない!」
とヘルメスはゼリーに吠える。
「そんなこと言わないでよ、ヘルメスの姉御!」
そう言ったのはヨルであった。
船に戻った時にトンキが『姉御』と呼んでいたのが気に入ったようであり、それからずっと『姉御』と呼んでいる。
「あー、うるさい!何であんたが姉御と呼ぶの!?神の子なんだから、そんな俗っぽい言い方はやめなさい!」
と言うヘルメスもいつの間にか神の子に『あんた』呼ばわりをしているが…
「まあまあ、でも、ヨルは何でアズマンさんの下にいたの?」
蔵光は、純粋に、ヨルの様な神的な存在が普通に人の下に付くとは思えなかった。
まあ、確かにアズマンという人物は聞く限りでは無敵のチートマンなのだが…
「うーん、強いからかな?」
「あー、やっぱり。」
「でも、他の人も強かったけどね。」
「他の人?」
「うん、僕達の事を殺そうとした人達のこと。」
「それって…本当に人なの?」
ヘルメスはヨルの話を聞くに、どうも地下帝国の人間と呼ばれている者達がとんでもない存在なのではないかと思い始めてきたのだ。
「うーん、アズマンさんに歯向かっていってた人達は魔法とか凄かったと思う。雷の魔法で沢山の山を一気に破壊したり、火の魔法で湖を干上がらせたりしてたなあ。」
とヨルが言うとゼリーが、
「ヨル、よう聞けや、それは普通の人間が出来る事や無い。もしかして、そのマリガトリア帝国とやらは『神の国』やったんか?」
「いやー、僕は違うと思うんだけど…」
「その話だけを聞いていると、とんでもない奴ばっかりで、どうもそんな気がしてな。」
「僕なんか誰にも太刀打ち出来ないくらい強かったなあ。」
「それが、おかしい、魔力値が2億5千万を超える奴が弱いとかありえへんやろ?」
「うーん、魔力値がどうとか言うのはよくわからないけど、僕達、一応魔物の王とか言われてたけど、帝国の人達は強かったのは間違いないんで。」
「ふーん、まあ、ええわ。とりあえず、ヨルがうちらの仲間になるっちゅう話なんやったら、後で色々と聞くことも出来るやろ。」
とゼリーがヨルの話を聞くのを一旦やめる。
蔵光達は飛行船の中でエージの解析状況を確認した。
ドーム状の部屋の中の座席に座ると、前面の壁に仕掛けられたパネルが開きの中から巨大なモニターが現れた。
そして、そこにエージが映し出される。
「やあ、みんな、久しぶり!あの古文書の解析の途中経過を伝えるね。って、そこにいる男の子は誰?」
エージが座席に座っているヨルに気付く。
「ああ、彼の名はヨル、自称『東の森』の番人らしいよ。」
と蔵光が言うと、ヨルがその言葉に引っ掛かったのか、文句を言おうとしたが、
「蔵光の兄貴!『自称』とか…『らしい』って…どういうこと?…でも、待てよ?そうだな、うーん確かに自称だな。」
とヨルは一人で言って納得する。
ちなみにトンキから蔵光をどう呼べばいいか聞いたところ『蔵光の兄貴』がいいと言われたので、そう呼んでいる。
これも結構気に入っているようだ。
「一応、マソパッドの測定で、魔力値が2億5千万くらいで、本当の名前がヨルムンガンドとかになっていた。」
「はい?ヨルムンガンド?それって…?」
流石のエージも伝説の龍神の名前が出るとは思っても見なかったようである。
「蔵光君、何を言ってるんですか?!ヨルムンガンドと言えば神の子って言われていて…」
「わかってる。そう、仲間にしたのはリーダーのヘルメスだから。」
と蔵光はヨルを船に乗せたヘルメスの名前を出してチラリと見ると、ヘルメスは、
「うわ、蔵光殿、私を売りましたね。」
と言ってジロリと蔵光を睨む。
「ごめんなさい。」
蔵光は笑いながらヘルメスに手を合わせる。
ヘルメスもそれを見て苦笑いをする。
ヨルを乗せたのは本当に予定外であり、ヘルメスにとっては事故のようなものであった。
「ハイハイ、本当の神クラスは魔力値が2億5千万どころの話ではないんで…冗談は置いといて、古文書の話をするよ、あれを確認したけど、ゼリーの見た日本語のメッセージは、確かにマリガトリア帝国に関することであることがわかった。それは表紙に使われているヤイダ樫の部分に…」
とエージが古文書の解析経過を説明していると、蔵光達は別のところに引っ掛かっていた。
エージの話もそっちのけで船内で話をしている。
「神クラスは2億5千万どころの話ではないだって?それはどういうこと?」
「そもそも神って魔力値とかあるの?」
「そう言えば、ヨーグのラーの神殿で太陽神ラーが出た時に、マソパッドで測定したのかな?」
とか何とか色々と話をしていると、とうとうエージが怒り出した。
「ちょっと!!人の話を聞きなさいよ!」
「いや、エージ、さっきのエージの言葉に皆が引っ掛かっているんだよ。」
蔵光がエージに説明する。
「えっ?何それ?」
「いや何って、神様って言ったって、どれくらい魔力値があるのかなと思うてな、ただ…そもそも魔力値というものが神様に存在しているのかどうかということ自体がどうなん?!!っちゅう話や。」
「エージが変なことを言うから、皆、気になっちゃって…」
「ええっ?!神様の魔力値がいくらなのかということ?あっ、でも『存在上限界』の魔力値が大体500億Mくらいになるのかな?だからヨルが神の子だと言うのならそれに近いくらいは魔力値が無いとおかしいかなと…だから冗談は置いといてと言ったんだけど…」
とエージが説明したが、全員の顔がキョトンとなる。
「えっ?存在上限界?それって、一体?」
「ああ、存在上限界って言うのは、魔力を持っている者がこの魔法世界マーリックに存在できるとされる限界の魔力値の事を言うんだ。だから、それ以上の魔力値を持った場合、この世界では魔力が強過ぎて姿を維持することが出来ず、精神体の様になるという説だね。実際に、それ以上の魔力値を持った存在はこの世界にはいないし、それ以下だとしても、100億Mを超える魔力値を持っているのは魔神とか水無月家の伝承者達くらいだからね。」
とエージはサラリと、この物語の肝である水無月家の魔力値の事をバラしていた。
「ひ、100億M以上?」
驚いたのはゼリーとザビエラ、オルビア、そしてヨルだった。
ヘルメスは以前、ライズの高級宿屋『熊の肉球荘』にて、ヴィスコから蔵光の魔力値を聞かされていたので驚く事は無かったが…1-70
その場がシーンと静まり返る。
「主の馬鹿げた魔力値は魔神並みや言うことやな。」
ゼリーは衝撃の事実を初めて聞き、驚く。
ちなみに魔神とは魔族が崇める神であり、一度魔の大森林地帯の北部にあるガイライナスという地域の魔族達が現世界に魔神を召喚したことがあり、俗に言う『ガイライナスの魔神城の壊滅』事案という大惨事になったことがあり、危うくその地区の魔族が全滅しそうになっていたのを蔵光の父親の水無月航夜がそこに乗り込んで解決したという記録がある。
この時に召喚した魔神が魔力値が約150億Mであったとも言われているが、それはつまり、航夜の魔力値はそれ以上ということになるのである。
ゼリーはジパングにいる時に、噂では聞いていたが余りにも嘘臭い話のため信用してはいなかったのだが、これを聞いて改めて水無月家の恐ろしさを認識する。
ヨルの魔力値の話はどこかに行ってしまっていた。
「あのーもういいかな?」
エージが話の続きをしたそうにしている。
「いいよ、」
蔵光が返事をする。
「じゃあ…」
再びエージの古文書解析の途中経過が説明された。
内容は、古文書の表紙であるヤイダ樫の表面を詳細に確認したところ、マイクロ文字レベルの文字の彫り込みが確認されたという。
それには、『四つの森』の魔物の王に扉の鍵が渡されていて、四人の魔女の一人に古文書を渡しているらしい。
古文書の鍵は魔女に聞けばわかるようであり、その鍵を順番通りに使用して古文書の錠前を開けるということらしい。
「えっ?でも、魔女は地下帝国に戻って行ったんだよね?」
蔵光がヨルに再度尋ねる。
「うん、それは間違いないよ。」
「いつ、帰ってくるの?」
「うーん、魔法を掛け直すだけだから、もうすぐしたら帰ってるけど。」
「えっ?そうなのか?じゃあ、なんでサンマーサさんはギャラダスト家に古文書を託したのかな?すぐ帰ってくるのだったら、預ける必要は無かったと思うのだが…」
ヘルメスも古文書をギャラダスト家が託された意味が分からなかった。
それも、それを託すには魔女四人の総意が必要のはずである。
事前に話が出来ていたのかはわからないが、わかっている事は、古文書の錠前を開ける鍵が四つあり、それは『四つの森』に存在する四体の魔物の王が、帝国の入口に通じる扉の鍵として所持しているのではないかということだった。
『古文書を開くには四つの鍵が必要で、古文書によると、それはそれぞれ、魔物の王に渡されたとなっている。その魔物の王達の存在を知っていると思われる四人の魔女は帝国に戻って行った。だが、どの様な理由なのかはわからないが、その前に古文書はギャラダスト家に託された…ということは、鍵は魔女や魔物の王が手元に持っているのではなく、それぞれの森の中に隠しているということなのか?』
とヘルメスが高速思考で考えをまとめていく。
だが、
「あんな小さな古文書の、それも、それを閉じている鍵をあの大きな森の中から一個ずつ探し出さないといけないのか?」
とザビエラが言うとゼリーも、
「単純に考えたら、無茶苦茶やな。だが、絶対どこかににヒントはあるはずや。」
とヒントの存在を示唆する。
「うーん、ヨルは何か知らないかな?」
と蔵光が聞く。
「僕は扉の開け方だけしか知らないよ。」
「だよね…」
と蔵光が頷いた時、ふとあることに気付く。
「ヨルの守っていた扉の鍵って、他の森の扉の鍵とは違うんだったよね?」
「うん、そう聞いているけど、それがどうしたの?」
「俺の考えが間違いなければ、古文書の鍵の全ての謎は解けていけると思うんだが…」
と蔵光が自分の考えを皆に伝える。
「あー、なるほど、それ正解かも…」
とヘルメスも納得したのか頭を縦に振った。
ゼリーも、
「主、時々、メチャクチャ鋭いことを言うな。」
と感心する。
ということで、全員一致で蔵光の作戦を開始することとなった。
ト「ヨルさん、私に『ヘルメスの姉御はわかったけど、水無月蔵光さんの事をどう呼べばいいんですか?』って聞いてきたんで、仕方なく『蔵光の兄貴』と呼べばいいんじゃないかと言ったんだけど、あんなに気に入るとは思わなかった。」
Σ(-∀-;)
マ「やっちまったな。」(゜д゜)
ト「ああ、姉御同様、やっちまった。」
Σ(>Д<)
人は時々、やってしまう時がある。
後悔先に立たず。
では、次回もよろしく(*>∇<)ノ