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水無月蔵光の冒険譚~第二部 古代地下帝国の謎を追え  作者: 銀龍院 鈴星
第一章 古文書の謎
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第10話 森の番人ヨル

番人出てきます。

第10話 森の番人ヨル

恐ろしい魔物が跋扈する『東の森』の上空で、認識阻害の魔法を解いて現れたのは、パッと見て年齢が10歳くらいの男の子であった。


金色の短髪で、目の色は緋色、可愛らしい顔立ちだが、人間ではない。

かなり強力な個体であると判断される。

体には濃い青色の絹の様な艶のある布地に背中には龍の刺繍が入った服だ。

襟が詰襟で、蔵光が着ている武術家の様な服に似ているが、(すそ)が長く、足首辺りまであり、長い袖口はゆったりとした造りになっている。


「俺は水無月蔵光、君は?」

蔵光が尋ねると、その少年は、

「僕はヨル、ここの番人をしている。」

「えっ?番人?も、もしかして、マリガトリア帝国の入口を守っているという?」

「そうだよ。よく知っているね。君達は誰?何をしにここに来たの?」

とヨルという少年が聞いてきた。

疑っているという様子ではなく、ただ単に興味があって聞いてきている様子である。


ただ、いきなり、例の帝国の入口の守護者という者が現れたので、蔵光達も面食らう。

まあ、森の一番奥なので、そんなにいきなりでもないのだが…

突然目の前に現れたことには間違いない。


「俺達は冒険者ギルドの冒険者で、ここの調査に来たんだよ、正体不明の龍がいるとかでね、でも、さっき向こうで赤いドラゴンを討伐したんで、また、引き続き調査をして大丈夫そうだったらそれで調査を終わろうかなと…」

「えっ?あの赤いドラゴンを退治したの?」

蔵光の言葉にその少年は驚く。


「うん、結構手強かったな。」

「凄い!僕は身を隠して逃げるしか出来なかったのに。」

蔵光が赤いドラゴンを倒したと聞くとヨルの目が輝く。

「でも、君もあの赤いドラゴンと同じ『魔法無効』と気配遮断、認識阻害を持っているじゃないのか?」

「持っているけど、アイツの方が魔力を無効化した後の素の力が強くて全く敵わなかったんだ。」

蔵光は先程の気配の隠蔽等から本人の能力を指摘すると、それをあっさりと認める。

「なるほど、でも番人が逃げてたらダメなんじゃないのか?」

「ここの封印の結界は僕が許可するか、死ぬかしないと開かないし、他の森の封印はまた別の条件だから、僕の所はそう言う訳で逃げていれば絶対に大丈夫だから…。」

とヨルが答える。


「なんや、そこら辺の結界にしたら適当そうに見えて結構優秀やな。」

とゼリーがその答えに納得する。

「そうなんだ。」

と蔵光が言うとゼリーは、

「そらそうやろ、番人としてはその場を離れるのはアカンねんやろうけど、封印結界が優秀やったら、その番人は封印を解くかどうかの判断をするだけやからな。まあ、結界の番人というよりか、管理人やな。」

「はあー、管理人ねえ。」

「そう言うこっちゃ!で、ヨルとか言うたな、何で、ワイらのことを尾行(つけ)てきたんや?」

ゼリーがヨルに尋ねると、ヨルは意外にもというかこれについてもアッサリと答える。


「ああ、それね、ちょっと面白そうだったから。」

「なんやそれ?」

「だって、中々、この扉の前に辿り着ける人って少ないでしょ…それなのに、扉の前に来て、壊そうとしたりもしないで、さっさと帰る人って一体何者なんだって思ってね。」

「ああ、なるほど、そう言うことか。」

「でも、空を飛べるなら最初から飛んでくれば良かったのに。」

「わはははは!それで辿り着けるんやったら苦労はせん。」

ゼリーが笑う。

「えっ?どういうこと?」

「なんや、お前、知らんのか?ここには歩いて来ないと、空からは絶対に辿り着けないように『空中迷宮』の魔法が掛かっているっちゅうことを?」

「えっ?そうなの?マズマンさん何も言ってなかったなあ。」

ヨルはゼリーの言葉に素直に驚いていた。

『空中迷宮』は空間魔法の一種であり、これをある一定の行動を起こそうとしたときに発動するように仕掛けられていた。

今回の場合は空から直接、この扉の前に来ようとした時に発動するようになっていた。

そして、魔法が発動展開すれば絶対とまでは言えないが、自動的に亜空間が展開して、その中を彷徨(さまよ)う事になる。

ただ、ここには正規のルートで一度、来てしまえば、二度目の来訪からは発動しないようになっているようであった。


まあ、何にせよ、ヨルはこの魔法の事を本当に知らなかったようだった。


「アズマンって帝国の帝王の事だよね?」

「うん、何か良く分からないけど、人間が僕達の国に攻めてきたんで、マズマンさんが魔法で帝国の入口を閉めたんだよなあ。」

「えっ?人間が攻めてきた?どういうこと?」

「うーん、良くわかんない。アズマンさんに呼ばれて、帝国の人間が僕達の事を殺しに来るから、帝国の人間を地下に閉じ込めるので逃げ出さないように出入口を見張っておくように言われたんだ。」

ヨルの話を聞くと、ゼリーや蔵光も首を(かし)げる。

「何や、セブレインの話というか、それを話したという魔女の話と大分違うな。」

「大分というか全然違うよ、これは一体…どういうこと?ヨルはサンマーサさんとは話はしてたのかな?」

「時々かな…」

「その時に、アズマンさんが帝国に魔法を掛けた理由とかの事で何か話をしたことあるかな?」

「うーん、無いかなあ…みんな、アズマンさんに直接、仕事を与えられたから、僕は入口の守護で、サンマーサさんとかマグローシャさんは森の結界を張るとか…」

「どこかで情報操作された感じやな。」

「誰がそんなこと?」

「まあ、今の人間やあらへん、帝国の誰かや。まあ、今となっては誰が嘘ついてても同じ事やけどな。」

とゼリーが話を締めたが、ヘルメスの言葉が話を現実に戻す。


「でも、ヨルがここにいるということは、ヨルに頼めば扉を開けて貰えるんじゃないの?」

とヘルメスが言うと、蔵光達もハッとした表情となる。

高速思考をし過ぎてなのか、通り過ぎていたのか、ようやく扉を開ける方向に話が戻ってきた。


「ヨルはここの扉を開けられるんだよね?」

「うん、そうだけど、君達はあそこの扉を開けて欲しいの?」

ヨルが確認してきた。

開けたらそこに何があるのか、そして、そこで蔵光達は何をすればいいのか全くわからない。

目的がないのだ。

宝を探すわけでもなく、人を訪ねる訳でもない。

目的が定められていなければ、肝心なときに判断が鈍る。

それに、情報が少なすぎる。

ヨルをこのまま信じていいものかどうかもハッキリとしていない。

わからない以上、やはり、ここは今、開けるべきではない。


「いや、止めておこう。古文書を読み解いてからだ。」

と蔵光が言うと皆もそれに従う。

「そうだな、開けようと思えば開けられるなら、慌てる必要はない、他の森も調べた方がいいかも…」

ヘルメスが言うと、皆が(うなず)く。


「ふーん。他の森にも行くんだ。」

「ああ、そうだな。」

「面白そうだから、僕もついて行っていいかな?」

「えっ?番人の仕事は?」

「えっ、ああ、それね。いいよ別に、サンマーサさんも帝国の方に戻ったみたいだし、口うるさい人がいないから大丈夫だよ。」

「ええっ?!!」

蔵光達が衝撃の言葉に驚く。

あれだけ、どこへ行ったのかわからなかったサンマーサの所在があっさりと判明した。

「帝国に戻ったって、どういうことなの?」

ヘルメスが尋ねる。

「ああ、アズマンさんとの約束だからね。」

「約束?」

「うん、アズマンさんに『時の魔法』を掛け直して貰うんだよ。」

「魔法の掛け直し?」

「そうだよ。いくらアズマンさんの魔力が強くても定期的に帝国に帰って魔法を掛け直してもらわないと普通に年をとってしまって死んじゃうからね。」

「なるほどな、で、前回はいつ頃帰ったんや?」

ゼリーが前回の事を確認する。

「えっ?前回の事?うーん、千年とか二千年とかそんな感じかな、あまり良く覚えていないなあ。」

「わかった、それでエエ。」

ゼリーがその言葉で納得する。

「どうしたの?今の質問?」

「アズマンという奴の魔力の強さを確認しようとしたんやけどな、単純に千~二千年は継続する魔法を使うとるということや、馬鹿げた魔力やで。」

「確かに…恐ろしい程の魔力だという事はわかるけど、それって未だに帝国が存在しているという事だよね?」

「そう言うこっちゃ、帝国の人間が生きとるかどうかはわからんが、今もアズマンが生きとるという事は間違いない。それも恐らく年もとらず、この世界に転生してきた時と同じ姿で…」

「そんなこと…」

「多分、アズマンの使う『時の魔法』というヤツは、時限魔法を亜空間だけやなく、この世界でも自由自在に使えるっちゅう、言うたら空間魔法とかの上位版や、多分、転生時のギフトスキルやな。神さんもエグい転生スキル渡しとるな。」

とゼリーが額にシワを寄せる。


「それって、無敵なの?」

と蔵光が聞く。

「そうやな、まあ、時間を自在に操れる奴に勝てる奴はおらんやろな。何せ『時間を止めて』『空間に入れる』それだけで相手は一貫の終わりや。魔力の強さから見ても、恐らく(あるじ)でもそれは防がれへんやろな。あと、自分の周囲の時間だけを逆行させれば、いつまでも若いままでいられる。それに、もし、万が一病気や怪我をしたとしても時間を逆行させれば怪我を負う前の状態に戻るしなあ。」

とゼリーが言うとヘルメスも、

「そ、それは凄い!というよりもそんなことは神の領域ではないのか?」

と驚きで声が大きくなる。

「まあな、どちらにしても敵には回したくはないわな。」

「サンマーサさんとか、魔女に掛けた魔法は一体どんなタイプなのかな?」

蔵光は魔法の事が珍しくて仕方がないようであり、全員が空中に浮かんで話している事を忘れている様子である。

「まあ、良くはわからんけど、記憶の保存だけをしてから、体が動いていない時、例えば寝ている時などに、さっき言うた魔法で、定期的に体の周りの時間を逆行させれば、いつまでも若いままの体を維持できるというような条件付きの魔法みたいなものと違うかな、確かマグローシャもそんな研究しとったしな。」

「なるほど、で、その魔力の効力が切れるのって何でわかるのかな?」

「さあな、何か特別な方法で分かるようになっているのかと思うんやけど、まあ、それはエエとして、ヨルをどうするかや。船に乗せるか乗せないか。ヘルメスどうする?」


確かにヨルは扉を開ける権限を持っているが、それを乗せて移動するというのは如何なものかなということである。

決断を迫られたリーダーのヘルメスもどうするか悩む。


「よし、オルビアに聞いてみよう。」

とヘルメスも重大な責任を回避するため、直ぐに船内のオルビアに連絡をつける。


「うーん、そうですね。別に構わないと思いますが…」

と何かオルビアにしては歯切れが悪く、言いにくそうにしている。


「どうしたの?何か不都合があるのかな?」

心配して蔵光が尋ねる。

「別に、不都合という程のものではないと思いますが、いつものように2つの未来が見えますね。」

「はあ、なるほど、『運命の神の領域』というやつか…」

「そうですね。結論的には、彼を船に乗せれば私達の仲間入りです。乗せなければ、彼はしばらくは普通にここの番人として暮らすでしょう。」

「しばらくは?」

「ええ、その後は、よく見えません。恐らくはアズマンという人が掛けた『時の魔法』の影響で見えにくくなっているのだと思います。」

「なるほどな…ヘルメス、リーダーが決めてくれ。彼を乗せるか乗せないか…」

蔵光も判断をヘルメスに委ねる。

判断を迫られたヘルメスは、まさかのオルビアの『責任のブーメラン返し』に動揺していた。


「お、お、そうきましたか。うーん。トンキ、彼の魔力値は?」

ヘルメスはとりあえずトンキにヨルのデータを確認する。

そう言われたトンキも、とりあえずモニターを確認する。

「えっ?ああ、ヨルさんね、ええっと、えっ?!一、十、百、千、万…、に、2億5千万…マーリョック?」


「ええっ?!」

かなりの高魔力だ。


ヘルメスのマソパッドには魔力値を計測する機能はついていないため、トンキから、そのデータをリストバンドのニューマソパッドに送ってもらい確認する。

「えっ?いやいや駄目でしょ、これ?」

ヘルメスが言うとヨルが、駄々をこね出す。

「えー!何で?何で?乗せてよー!皆に悪いことしないから~!」

「いや、高魔力値は慣れてはいたけど、貴方の本当の名前、ヨルムンガンドって神の子供じゃないの?」


北欧神話ではヨルムンガンドは巨大な毒蛇という伝説があり、ロキという神様の子供で、フェンリルやヘルという兄弟がいると言われている。

ここ、魔法世界『マーリック』でも少し伝説の内容は違うが、神様の子供であることは同じであったようだ。


マ「またまた、訳のわからない存在が登場してきたね。」(*´・ω・`)b

ト「訳がわからないと言えば、ゼリーさんの存在ですね。知識も豊富で頭の回転も早い。魔力値はかなり多いし、多分、変化の魔法を使えるはずなのに、なぜ人間の姿に変化しないのかなと…あの訳のわからないスライムネコなる不思議な動物の姿になっているのか?」

((( ̄へ ̄井)

ああ、それは蔵光がゼリーの要望で変化させたからなあ。まあ、言ったらゼリーのポリスィだからだよ。

ヴ「ゼリーちゃん師匠は変な人間の姿よりも、今の姿の方が100倍可愛いから、あのままがいい。」

(*≧з≦)

じゃあギルガは?古龍だけど?

ヴ「ギルガ様は今の人間の姿がいいです。古龍の姿だと大き過ぎるし、怖いです。」

((( ;゜Д゜)))

デルタも本当の姿ってどうなんだろうね?

龍の墓場に帰ってるけど、二人とも普通に元の姿になっているのかな?

ヴトンマッソ「それはそれで怖いですね。」

ヽ(;゜;Д;゜;; )ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!


じゃあ次回まで⊂(・∀・⊂*)さいならー!

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