第1話 解析依頼
さあ、新しい冒険に出発だ。
第1話 解析依頼
『古文書』それは、文字通り昔に書かれた書物である。
当時は、意味の通る言葉であっても、年月が経てば、言葉が変わり、文字も形を進化させ、その頃の文章は難解と解読不能の古代文字の羅列となり、迷宮のような謎に陥ってしまって簡単には前に進ませてはもらえない。
ここに一冊の本がある。
いわゆる古文書だ。
それが、冒険者ギルドサリドナ支部に持ち込まれた。
ここは、魔法世界『マーリック』、所謂剣と魔法の世界だ。
サリドナとは、マーリックに存在する国のひとつヴェネシア王国ヴェレリアント領の主となる街であり、領主バジルス・カース・ヴェレリアントが住んでいる街でもあった。
最初、そのバジルスの下に、その古文書が持ち込まれ、その後、案件処理を依頼されたのが、つい最近になって支部として新設された冒険者ギルドサリドナ支部であった。
支部には、SS級冒険者ヘルメス・カース・ヴェレリアントをリーダーとする最強クランズとしても名高い『プラドラ』こと『プラドラドラゴンズ』が所属していた。
彼等は元々隣国メトナプトラ国のタスパ支部というところに登録されていたが、サリドナがヘルメスの故郷でもあったため、この度のサリドナ支部の新設に伴い、登録変更となっていた。
サリドナ支部の建物はモロマネスク様式という中世ヨーロッパ風の建築様式により建てられていて、三階建ての立派な建物で、大きな石材を使用することや小さなアーチ窓、円形階段塔を複数塔持っているのが特徴である。1-97
屋根瓦が鮮やかな青色の焼き瓦を使って葺かれていて、遠くからでもかなり目立つ。
ここは、サリドナ支部のギルドマスター、通称ギルマスの執務室。
出来て間無しのその部屋は、建物の一階部分にあり、新しい木の香りと、美しく磨きあげられた大理石の床等によって造られていた。
アーチ窓は、他の部屋より大きめに造られていて採光は比較的良好であり、サリドナ支部は、サリドナでも比較的小高い土地に建てられているため、一階でも周囲の美しい街並みが一望できる。
また、バジルスの屋敷からも近いため、時々バジルスが娘のヘルメスの様子を見にやって来ることもしばしばであったが、ヘルメスは忙しい身分であちらこちらに飛び回っているため支部にいた試しはなく、その都度、ガックリと肩を落として帰っていくのが恒例となっていた。
この冒険者ギルドサリドナ支部は、あのヴェネシア王国最大の危機となった『魔海嘯』事件の約一年後に設立されていた。
また、ここのマスターには、元S級冒険者であった、通称Mr.Mと言う正体不明の謎の人物が配置されることとなった。
普段、頭からスッポリとフードの様なお面を被り、顔は全くわからないが、プラチナドラゴンズ、通称『プラドラ』の者達にはかなり頼りにされているようであった。
「これなんだけど、見て貰えるかな?」
そう言ってMr.Mが古文書を、ギルマス部屋の真ん中に置かれた大きな応接用テーブルの上においた。
Mr.Mの声を聞くに、優しいと言うかどちらかというとフレンドリーな口調であり、それでいて、かなり若い者、年齢で言うと二十代くらいではないかと思われた。
そしてそのMr.Mの前のテーブルを挟んで座っているのが、珍しく支部に戻ってきたヘルメスと蔵光こと、水魔神拳の使い手である『水無月蔵光』、そして蔵光の従魔であるスライムネコのゼリーであり、ソファーに座りながら、身を乗り出してその古文書を見ている。
「これですか…」
ヘルメスがその古文書を手に取る。
かなり古い物らしいが、古代の保存魔法が掛かっているようで、かなり保存状態は良いようだった。
その本は、約30cm×40cmくらいの大きさで、外側は木と革で表紙が造られ、角の部分には金属の部品が使われる等、かなり重要な内容が書かれているものと思われた。
しかしながら、残念な事にその本には開く部分の数ヶ所に、鍵が掛かっていて、本を開く事が出来なかった。
確かに良く見ると、本の表面に鍵穴も見える。
「これなんだけど、どうも魔法でもロックがかかっているみたいで、合鍵で解錠せずに無理にこじ開けようとすると火の魔法が展開して燃え上がる仕掛けになっているみたいなんだ。」
とMr.Mが説明する。
「これをどこで?バジルスさんから回って来たと聞いたけど?」
蔵光が尋ねると、Mr.Mが、
「実は、隣のタイトバイトス皇国にある冒険者ギルドグランマニア支部からバジルス殿を通じ、極々内密にと言うことで依頼転送があったんだよ。」
と答えた。
「え?ここって、まだ新設して間がないですけど?」
とヘルメスが尋ねると、Mr.Mが、
「そりゃあ、新進気鋭のクランズ『プラチナドラゴンズ』が、あのジパング王国と繋がっているということは、去年の『魔海嘯』事件でかなり有名になったからね。」
と言うと、ヘルメスは
「あー!エージ君の…」
「ご名答。」
『魔海嘯』事件の終結後、ヴェネシア王国では国王のウィルドネスから大々的にクランズ『プラチナドラゴンズ』の活躍を報じられ、その際に、ジパング王国の『龍を狩る一族』こと水無月一族と共に助けられたことも触れていたため、『プラドラ』と『ジパング王国』との関係が明らかになっていた。
また、ヘルメスの言ったエージという人物は、そのジパング王国技術開発部の若き天才科学者『花里須磨叡知』のことであり、その卓越した頭脳により生み出された数々の発明品は、他の国の追従を許さなかった。
エージは、これまでにも色々と魔力と科学が融合した魔鉱機や魔導機を生み出し、有名なところでは『魔導機能型お尻洗浄機能付き水洗式トイレ』や『お風呂型魔鉱機・湯弐場』、『高温式発汗促進魔導装置・躁中』『最新式・自動室内熱交換機能魔導機』『新型魔導機能式冷蔵庫【冷蔵】』等の生活に便利な魔鉱機や魔導機の開発の他、通信端末である『魔素口探索魔導機』通称『マソパッド』、大気圏外に打ち上げられている通信衛星のような特殊通信魔導機『地上位置探査・魔素解析・座標測定型地図作成装置』Ground location exploration.Magical analysis. Coordinate measurement type map making device略して『G・M・C』やスーパーコンピューターと同じような機能を有する『高速情報処理魔導機・流星』等があった。
ちなみに、水洗トイレの魔鉱機などはメトナプトラなど一部の国に輸出され人気を博している。
しかしながら、通信に関する端末については、軍事的な問題もあり、ジパング王国内でもそれら機器を使って色々な国の重要な情報がかなりやり取りされているため、今のところは輸出の対象にはなっておらず、特にマソパッドについては、世界各地に配置しているジパング王国の特殊部隊である『忍』が全員携帯しており、それらが収集した情報をマソパッドを通じて集約することにより各国の実態が明らかとなっていることもあり、この端末の存在は極秘事項となっている。
そのため、この端末は、万が一他人の手に渡るようなことがあった場合、自動的に壊れ、中の造りや情報などが全くわからなくなるような仕掛けになっていて、絶対に外へ情報が漏れないようになっていた。
余談は後にして、今回はタイトバイトス皇国が、そのジパング王国の高い科学技術を見込んで、バジルスを通じ、そこと繋がりのあるサリドナ支部の『プラドラ』に古文書の解読依頼をしてきたのだ。
「タイトバイトス皇国とか言うてたけど、この古文書の出所はどこや?」
ゼリーがMr.Mに尋ねる。
「うーん、これを言っちゃって良いのかな?」
とMr.Mは、表情は見えないが、困ったような声を上げる。
「言わな、古文書、ジパングに送らへんで!」
とゼリーが言うと、Mr.Mが焦って、
「言うよ!言うよ!タイトバイトス皇国のギャラダスト家だよ!」
Mr.Mが慌てて答えるが、ゼリーも大体の依頼主がわかっていたようであり、
「やっぱりな、まあ、しゃあないなギャラダストには借りがあるからな。」
ゼリーはそう言うと、『水蓮花』という通信魔法でクランズのメンバーである女の魔法使いヴィスコ・ダ・ギャマに連絡した。
「ヴィスコ、エージに連絡して、『古文書を転送魔法で送るから、解読頼む』って言っといてくれや。」
と指示をする。
「了解!」
ヴィスコは、サリドナから約100km離れたヴェレリアント領の西方にあるギルレアンという温泉街に所在する『べれり庵』という温泉宿から応答した。
ここは、ギルレアンにおける温泉宿兼蔵光達のクランズ『プラドラ』の拠点となっている。
ここの宿主も、マッソルというクランズのメンバーが管理を任されていた。
ヴィスコは『べれり庵』内に特設された部屋にいた。
ここには、エージが発明した、特殊な魔導機が多数溢れていた。
前述の魔導機に加え、『プラドラ』のメンバー限定でリストバンド型のニューマソパッドも追加発明され、全員に配られた。
リストバンドに魔石と数個のボタンが付いた小型のマソパッドが取り付けられたものであり、そのまま腕にはめた状態で使ったり、取り外して使う事も出来るようになっている。
また、それに伴い、マソパッドの使用魔力制限が完全解除となった。
というのも、従来のタイプのように本人の魔力を使うのではなく、外から魔力を吸収してエネルギーに変えるというものであり、余程のことが無い限り誰でも使えることとなっていた。
つまり、理屈上は蔵光でも使えるという事であったが、やはり蔵光に関してはその膨大な魔力が機器の動作機能に邪魔をしてかなりの影響があるとのことで相変わらず使用が出来ず、本人はかなりショックを受けていた。
精神状態異常無効のはずなのに…
ちなみにメンバーの現在の魔力値についてだが、ヘルメスは勇者覚醒した後、どんどん魔力値が上昇し、最終的に上昇が止まったのが、約5000万マーリョックくらいに到達した頃であった。
ザビエラも約4500万M、八鬼誠三郎も約4000万Mまで上昇していた。
魔力を持った人間の平均値が500M、最高値平均が2000M、魔族の下位魔族が平均で3万M、上位魔族が平均上限値12万M、魔王の平均魔力値が約150万Mであることからみても、彼等がどれ程の化け物であるかがわかるであろう。
魔力はその数値だけではなく、上昇に伴い肉体的な変化ももたらし、肉体の強度や耐久力、瞬発力、それに精神力などが飛躍的に上昇する。
そのヘルメス達の化け物級の魔力値であっても今回のニューマソパッドは十分に操作許容範囲(そもそも魔力がいらないから当然なのだが…)であり、一応、エージの設定ではM値が0M~数十億Mまでの魔力値を持つ者が使用可能と言われていた。
なので、メンバーの一人である古龍ギルガンダことギルガの魔力値が8000万Mほどであっても故障等せず、普通の機能を発揮している事からしても、如何に蔵光の魔力値が破壊的なものか解るであろう。
原因としては、いくら本人が意識的に魔力値を抑えたとしても、潜在的な魔力値を測定する機械のためなのではないかとの、エージの見解であった。
あと、マソパッドに関してはそれ以外にも、改良されたのが『G・M・C』であり、さらにそれら複数台が追加され宇宙空間に放たれた。
これにより、世界各地に散らばる『忍』が所持しているマソパッドの通信機能が飛躍的にアップし、通信誤差や速度、精度も修正された。
改良された『G・M・C』の中には約500kgもある超巨大な天然魔石を使用した『G・M・C』plusという新型魔導機を導入したのも理由のひとつであった。
これは、全てのマソパッドの位置を特定し、管理をするという代物であり、世界中にいる『忍』の位置を全て把握出来るようになっていた。
これを打ち上げるのにはかなり苦労したらしく、航夜、王鎧、水月らが魔力を合わせて大きな水球にそれを閉じ込め大気圏外に打ち放ったらしい。
何か、めちゃくちゃ話が横道に反れまくったようなので、元に戻そう。
まだまだ、その部屋にはエージの発明品等が色々とあるのだが、その解説は次の機会があれば、することにしよう。
とりあえず、ヴィスコはその部屋、通称『ビスコの部屋』の責任者となっていた。
まあ、知りたがり屋のヴィスコにとっては夢の様な部屋であろう。
何せ世界の情報が集約されるのだから…
ヴィスコが部屋の中にある魔力操作盤を操作すると、室内にある巨大なモニターが連動し始める。
様々なウインドウがモニター画面に現れ、そのひとつにヴィスコが右手の人差し指を向けて、そこから魔力の光を放つ。
ウインドウが魔力に反応し、映像と文字が映し出される。
流石に『水蓮花』ではヴェネシアからジパングまでの長距離を通信魔力では音声を飛ばせないらしく、この『G・M・C』plusが大いに役立っていた。
逆にマソパッドは『水蓮花』のように『超薄型でパッと見では全くわからないほどの形状』といったものではなくスマートフォンタイプくらいの大きさであり、かつ複数同時通信や秘匿通信といった機能などが出来なかったため、エージが現在その辺りを改良中らしい。
それが出来れば『水蓮花』の能力を全て凌ぐこととなり、かなり凄い事になるが、それはもうしばらくはかかるであろうと思われた。
画面の映像にジパング王国にいるエージが出てきた、そして、
「はいはい、何ですかヴィスコ?」
とエージが聞いてきた。
「あ、エージ君、何かゼリーちゃん師匠がエージ君に古文書の解析をしてもらいたいらしくて、こちらである程度確認した後で、そちらに送るらしいので、受付の用意をしていて欲しいって言ってました。」
とヴィスコが言うと、エージも、
「わかった。用意をしておく。」
と答えた。
「お願いします。」
ヴィスコがエージへの依頼を完了する。
このやり取りは既に『水蓮花』を通じてゼリーや蔵光達に共有されていた。
ゼ「あーあーやってもたな、第二部。もう、引き返されへんで。」
ホンマや、あれだけ緊急事態宣言終わったら辞めるって言ってたのに、自分でも訳がわからない。
ヴ「もしかして、ウソつきですか?」
あ、いや、うーん、コロナ禍のせいですかな。
まだ続いてるし…
ト「じゃあそれが終われば、連載も終わると?」
或いは…
ゼ「アカーン!」(`Δ´)
ヴ「アカーン!」(`ε´ )
ト「絶対に!」ヽ(`Д´)ノプンプン
ゼヴト「アカーーン!!」
ヽ(;゜;Д;゜;; )ギャァァァ
わかりました。力の続く限り頑張ります。
第二部の応援よろしくお願いします。(心の中だけで結構です。)
(・ω・`人)