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ショートショート6月~

力量不足

作者: たかさば

…いったいここはどこ。


ただの真っ白な空間?


何も、ない。


「ねえ、ここどこなの・・・?」


答えてくれる人は誰もいない。

周りを見渡しても、ただ、ただ、白。


「背景くらい、ほしいよ!!!」


ぱっと、背景が出た。

真っ白が、緑色になった。


「うはあ!!色、色ついた!!」


周りを見渡しても、ただ、ただ、緑。


「ゆ、床!!床が欲しいよ!」


ぱっと、床が出た。


何だこの世界は。

僕が欲しいと願うものが出てくるのか?


「大自然が欲しい!」


ぱっと、「大自然」が出た。

緑色の背景に、「大自然」の文字。


…違う!そうじゃない!!!


「果てのない草原、目の前にはりんごの生っている木、小さな湖。」


ぱっと、いろいろ出てきたぞ。


見渡す限りの草原、ぼっさぼさ!!

りんごの生っている木はあるが、青いし手が届きそうにない。

小さな湖はあるが泥水みたいだ。


「果てしなく広がる緑の芝生!目の前には手の届く位置に赤いりんごがわんさか生ってる木!透き通って飲める水の湖!」


ぱっと、いろいろ出てきたぞ。


見渡す限りの芝生は、大成功だ!

手の届く位置に赤いりんごがいっぱい生ってる!ひとつとって食べてみると…すっぱくてえぐくてとても食べられない!

透き通って飲める水の湖は…うっ!!めっちゃくさいぞ?!


「よーし、手の届く位置に甘くておいしいりんごがわんさか生ってる木!透き通ってにおいのない飲める水の湖!」


ぱっと、いろいろ出てきたぞ。


りんごは…甘くておいしいが、味がない。りんごの味がしない!!!

湖の水を飲んでみる…うわ!!苦くてぬるくてまずい!!


「手の届く位置に甘くておいしくて爽やかでほんのりすっぱくていいにおいのするりんごが生ってる木!!透き通ってにおいのない冷たくて何も味のしない飲める水の湖!!」


ぱっと、いろいろ出てきたぞ。


りんごは…甘くておいしくて爽やかでほんのりすっぱくていいにおいだけど、明らかにりんごの味ではない!ちょっと待て、あのりんごの味をどう表現したらりんごになるんだ?そもそもりんご味って認識だから表現のしようがないんじゃ?いやいや、でもこれはこれで食べられる味だから、妥協しよう。

水は冷たくて味もしないしにおいもない、よしこれでいいだろう。妥協も必要だ。



ぴーごろごろ・・・


なんだ?腹、腹が痛い!!ちょ!!トイレ!!


「と、トイレぇええええ!!!」


ぱっと、「トイレ」の文字が出てきた。


「温水洗浄機能付きの洋式便器、タンクに水が入ってて流すことができる!」


ぱっと、温水洗浄機能付きの洋式便器が出てきた!ふたを開けて用を足す!!!草原のど真ん中で何やってんの僕・・・。


「トイレットペーパー・・・やわらかくて白い流してもつまらない薄手の紙!!!」


ぱっと紙が出てきた。コピー用紙がやわらかくなった紙だ。拭けない事はない!!!


それにしても腹の痛みが治まらない。

・・・そういえば、甘くておいしくて爽やかでほんのりすっぱくていいにおいのするりんごが生ってる木とは言ったけど、「食べられる」って、言ってなかったような気がするぞ?!


ピンポーン!!



「残念だけど、君は世界を創ることができなかったので、あーる!」


「はい?!」


なんだかよくわかんないけど、僕は、失敗しちゃったみたいだ。



「もうちょっとがんばって物語を書いて欲しいので、あーる!」











わしは物語の神であーる。


このところ、なろうという物語を自由に発表できる場所が相当にぎわっているという噂を聞いたので、あーる。

物語の神としては、ぜひとも確認しておきたくなったので、あーる。


物語を書くものたちの、実力を知りたいと思ったので、あーる。

夜な夜な、物語を書くものたちの魂をお取り寄せして、技量を見せていただいているので、あーる。

何もない空間にお招きして、自由に世界を構築してもらっているので、あーる。


あわよくば、新しい世界を創ってもらって、神になってもらおうという魂胆で、あーる。

実は、神は足りていないので、あーる。


ところが。


なかなか。


どうして。


世界が全然、出来上がってこないので、あーる。


踏みしめる大地のイメージが、はっきりしないので、あーる。

広がる世界のイメージが、あやふやなので、あーる。

単語でごまかしてしまいがちなので、あーる。


世界ができねば、物語は始まらないので、あーる。


人物の構築はさらに難しいので、あーる。

作者一人きりでは、物語は広がりにくいので、あーる。


最近チートとか言うものがはやっているそうなので、あーる。

誰かの創った世界に、チートを持って乗り込んでいくらしいので、あーる。


なんだかとっても、ずるいので、あーる。


なんだかとっても、もったいないので、あーる。



文字で世界を構築するのは、難しいので、あーる。





「誰か、世界を生み出して欲しいので、あーる!」



わしの言葉を、届けるので、あーる。




届いた?


今晩、招いてもいい?




返事は、聞かないので、あーる。



勝手にご招待するので、あーる。




君の挑戦を、見届けるので、あーる!


失敗してもちゃんと返すから安心して欲しいので、あーる!




目が覚めなかったらごめんなので、あーる!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです! 突き詰めていくと、どんどん哲学的になりそうですね! そもそも空気はあるのか? なぜ明るい? 土壌の成分は? 頭がおかしくなっちゃいますね! [一言] 幸田さんのレビュー帳…
[良い点] おもしろかったです (*´▽`*) [一言] 確かにきちんと書かないと相手に伝わりませんね。 反省しきりであ~る (ノ∀`;)
[一言] 難しいですよね、情景描写。 ファンダジーの世界は、読者が勝手に同じような世界を共有しているようなので、描写が適当でも良いみたいですが。 ちゃんと書くと、冗長とか、読みにくいとか言われるらしい…
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