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第2話 男とオトコ。オンナと女。

弓美という女性を店に送った幸男は、その日フラれたことも忘れ軽い足取りで家に帰り、リビングのドアを開けると、そこに妹がいた。


「ただいま。」


との声にソファに座っていた妹は顔をあげ、にこやかに微笑んだ。


「おかえりー。あれ?デートは?」

「んー…。ダメ。」

「あ…そ…。いつもの?」

「うん。まーしょうがないな。」

「ん…。でも…なんか…いいことあった?」


「ん~…。ちょっとステキな人に出会いました~。」


「ふふ。またぁ~?恋多き人。」

「まー、そういうこと言うなって。」


と話していると、玄関のドアが開き声が聞こえた。


「こんにちわ~。」


「あ。トオルちゃんだ。入って~。」


妹の彼氏のトオルだった。幸男は妹の頬を指で押して

「なんだよ。彼氏…玄関まで迎えに行ってやれよ。」

と言ったが、リビングのドアが開いて、トオルがすでに立っていた。


「いえ、勝手に入ります。こんにちわ。お姉さん。」


「あいや…。」

妹は焦って声を上げた。トオルも気づいて言い直した。

「あ…すいません。幸男さん。」


そ…。オレ、戸籍上は女。

本名、弓美。

中学の頃に、中身は男だと気付いて今に至る。

家族は男として受けれてくれてる。


それは、理解ある家族でよかった。


仕事の仲間も、誰も女と気づいてないまま生活してる。

ま…温泉旅行とか、プールとか断ると、なんでっていつも言われるけどね…。

最近はタトゥ入ってるって言ってごまかしてる。


人一倍、彼女欲しいけど…

ま、そういう現状で、どうにもならない感じ…。


部屋に戻ってベッドにゴロリと横になる。

窓の外は次第に暗くなり、思い出すのは今日出会った彼女の顔…。


…弓美さんは、店にいるんだよな…。

いってみる…かな…?


財布を手に取って髪をしこたまいじって上着を変えて外に出た。

店までは遠いけど、楽しい気分で歩いていることを忘れるくらいだった。


店の前で、超緊張…。手汗がヤバい。

意を決してドアを掴んで開けた…。


カラーン


「いらっしゃーい!」


迎えてくれたのは和服姿の恰幅の良いママ(?)。

上着をとって壁にかけてくれた。


「あの…弓美さんいます?」

「あー、弓美さん?どーぞー!」


え?ここって…普通のとこじゃない…。

オカマバー??


見ると、カウンターで弓美さんが忙しくお酒を作っていた。

それを見ながら彼女の前に座った。彼女は気付いて


「あら!さっき助けてくれた…えーと…。」

「あ…青田です。青田ユキオ。」

「え?ユキオさん?」

「ええ…どうかしました?」

「あ…いえ。じゃぁ、ユキオちゃんね。よろしく。なに飲みます?ボトルサービスしちゃう。」

「あ、じゃぁ、麦焼酎もらおうかな…?」

「あら?欲のない人ねぇ~。」


と、後ろから飴色の瓶をとってグラスに注いで水割りを作ってオレの前に出してきた。


「あの…。」

「ん?ユキオちゃん、どうした?はい…どうぞ…。あたしも頂いていい?」

「あ、どうぞ…。弓美さんって…。」

「なに?」

「あの…おとこ…?」


彼女は慣れているのか、軽く微笑んで


「やだ。ハッキリきかないでよ。乙女をつかまえて。」

「あ…ゴメンなさい。」

「うん…。そ。でも、ピュアな女よ~。」

「あー…そうなんですね。はは…。」

「ごめんね~。こんな女で。ひょっとして勘違いしちゃった?」

「いえ。そんな…。」

「ふふ…。こういうとこ来ないの?」


「あ…まぁ…少しは…キャバとかは行かないですけど…。」

「ふーん。まじめなのね~。」

「そうですかね?」

「まー、ウチにくる人は、気を抜いたり、楽しみに来てくれる人が多いけどね。色物も多いし。」

「そうでしょうね。フフ。」


「お休みはなにしてるの?」

「あ~…平日休みなんですよ。コックなんでね。」

「へー!コックさん。お料理食べてみたいわ~。」

「弓美さん、舌肥えてそうですね。」

「あらわかる?うるさいわよ~。」

「作ってあげたいな~。」

「ぜひ、ごちそうして。」

「じゃ、名刺…受け取ってくれます?」

「わぉ!ラッキー!いただきまーす。」


オレは財布から名刺を取り出して、彼女に渡した。


「じゃ、これ。」

「へー…。お店の名前…なんて読むの…ほりましお?」

「「彫磨汐ホルマジオ」ですよ。イタリアンレストラン。チーズって意味です。」

「へー。じゃぁ、今度行ってみるわね。」


そのあとは、ホントにとりとめのない話。

雑談。お互いが、芸能人の誰それに似てるとか、

スポーツの話し…、お互いに日焼けしたくない話しとか…。


楽しい時間が過ぎていった。

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