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遭遇した人物は危険人物

 私の“鑑定スキル”が必要であるらしい。

 でもこの力で調べてもらいたいものってなんだろうと思っていると目の前の彼女は、


「ただその前にその、“鑑定スキル”自身を調べさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「調べる、ですか?」

「貴方の“鑑定スキル”は異常に精度がいい。その点で気になる部分もありまして……神話に出てくる、“真実の瞳”ものをご存知ですか?」

「いえ」


 どうやらこの世界の神話だかなんだかに、私の能力に似た何かがあるらしい。

 そう思って私は黙っていると、


「その話はこうです」




--------☆-----☆------------


ある所に一人の村人がいました。彼の周りには荒野が広がっており、食べるものも殆どありません。このままでは植えて死んでしまいます。なので彼は、神様に助けてくださいとお祈りをしました。すると空から人が降ってきます。その人物は、獣といった耳がない男でした。彼はどうしてこの世界に連れてこられたのかは分からない。けれど村人は彼が、神様がこの世界を助けるために呼んでくれたのだと考えました。そこで耳のない彼はいいます。『何故この世界はこんなに枯れ果てているのかと』村人とは答えます『ずっと天候もおかしく魔物が跋扈して、農作物もあまり育てられないのです』そこで耳のない人は少し考えてから地面に触れました。すると、どうすれば再びこの場所が緑豊かになるのかがわかったのです。こうして、そのとおりにすると昔のような森が荒野に現れました。それから村人とその耳のない人は二人で、世界を癒やして回りました。そんな彼らが作り上げた国が今の、銀狼の国フェンリルなのです。


--------☆-----☆------------



「というものです。ですからあの銀狼の国ではよく異世界からの召喚が行われているのです」

「そ、そうなのですか」


 私は今、異世界人と気づかれたのだろうかと思った。

 この人はどういうつもりなんだろうと私が思っていると彼女は、


「その方の話を私は貴方があの“鑑定スキル”を使った時に感じました。そして貴方の力があれば、この世界に起きているあの神話のような事象をどうにか出来るかもしれません」

「そのために私を?」

「……ええ。ですので、調べさせていただいてもよろしいですか?」


 今ほんの少し間があったようなと私が思いつつ、そこで私はあることに気づいてとっさに胸を隠して、


「い、痛いのは嫌です」

「大丈夫です、普通のものを幾つか鑑定していただくだけですから。……でも何で胸を隠すのですか?」


 不思議そうに問いかけられた私はハッとした。

 何度も確認するのに胸を触られたあの経験を私はいつの間にか学習してしまったのだ。

 なんてことだと私がある種の絶望を感じているとそこで、私のお腹がぐぅとなく。


 こ、こんな時にと私が思っていると目の前の竜の人が小さく笑い、


「でもその前に食事を用意させましょう。お腹が空いてはやる気がでないでしょうから。美味しいものをご用意しますよ、楽しみにしていてください」


 そう彼女は告げたのだった。







 そういえば竜族って何を食べるんだろう? なんかこう、私が予想をしないような食べ物とか出てこないよな……と思った私の前に出されたのは、果物の盛り合わせだった。

 

「果物はお嫌いですか?」


 私は先ほど攫ってきた彼女が不安そうに私に聞いてくる。

 なので私は、


「いえ、好きです」

「それは良かった。この果物は今が旬ですので、ぜひ堪能していって頂ければと」

「はい……えっとその、そういえばあなたのお名前を聞いていないのですが……」


 そこで私は先ほどから話していたこの竜族の人が何という名前なのか、ずっと分からないままだったので聞いてみた。

 それに目の前の竜の人は瞳を瞬かせてから、


「そういえば様子を観察していたのですでに出会っていた気になっていたのですが、名前を名乗っていませんでしたね。私の名前はリファスと言います」

「そうなのですか、リファスさん……私は、タクミです」

「では改めましてタクミ、よろしくお願いします」


 微笑んだ竜の人リファスは、優しそうに私に言う。

 さて、そうして果物に私は手を付けたのですが、それが全て熟していてとても美味しい。

 美味しいなと思って食べていると、竜の人リファスが優し気に私を見ている。


 微笑ましいものを見ているかのようだ。

 にこにこと笑っているその様子がまるで“姉妹”でも見ているかのようだ。

 と、そこで彼女が、


「可愛いですね、タクミは。見ていると昔のレイスを思い出します」

「レイス?」

「ええ、私の遠縁の王族で、昔は幼く素直で私の後をよく歩いてついてきていましたね。彼は特にそのオレンジのやわらかい果実が好きでしたね」

「あ、これ、凄く美味しくて私も一番好きです」

「それは良かった。私達は基本的に果物しか食べませんので、お口に合うかどうかと思ったのですが大丈夫なようでよかった」


 それを聞いた私は、一番おいしいのはマンゴーに似ているよなと思いながら食べつつ……あることに気づいた。

 基本この竜の人達は果物しか食べないらしい。

 つまり、パンやらお肉やらはここにいると食べられない。


 確かにこの果物は美味しいが、でも果物だけなのはちょっと……と私は心の中で思いつつ、


「でも私の力を使ってどうにかなればそれで私は帰してもらえるんですよね?」

「……」

「あの……」

「いえ、タクミがあまりにも可愛いので知人の花嫁候補になって頂けないかと思ったのですが、その顔では難しそうですね」

「じょ、冗談ですか?」

「半分本気です。本当はもう少し仲良くなってからと思ったのですが、これだけ可愛ければ手を出そうという者もいそうなので先に」


 そう言われてしまった私は凍り付くしかない。

 そもそも私は……そう思うとカイルの事が頭に浮かんできてしまう。

 でもここで事あったなら私は何をされてしまうんだろう、そう私が思いつつ、ふと気づく。


「そういえばリファス以外の竜の人が私に会いに来ないのは何故ですか?」

「こちらの事情で色々とありますから。特に貴方はレイスの好みでもありそうですし」

「え?」

「とりあえずはこの部屋にいる限りは安全ですので外には出ないようにしてください。私もこの部屋の外の安全は保障しかねます」


 そうリファスは困ったように告げたのだった。







 取りに行くものがありますのでとリファスが部屋から出て行った。

 そして私は部屋に取り残されるのだが。


「なんで私はモテているんだろう」


 疑問に思ったので口にしてみたが、やはりおかしい気がする。

 そもそも私は平凡だし。

 相変わらず謎が深まるばかりだ。

 でもあのリファスが連れてくるであろう知人は絶対に拒んで逃げだす自身があるのだけれど、カイルだったらと思うと、私は自分が全力で拒絶できるか分からない。


「困った。答えはどうしよう……うー」


 枕に顔をうずめた私だけれど、それでもこんな部屋に閉じ込められている不安からか、考えてしまう。

 やはり部屋の中にいるのはな、本当にあの人が信用できるか分からないし、と思ってこっそり部屋を出てみることにした。でも、


「鍵がかかっている。よし、“鑑定スキル”と」


 私は鍵の構造を見て、そばにあった棒などでカギを開けてしまう。

 相変わらずの万能っぷりだなと思いながらペタペタと廊下を歩いていく。

 人っ子一人いない。


 まるで人払いされているかのよう。

 それはそれで不気味に感じて私は歩いていくと、


「お前、誰だ?」


 振り返るとそこにはリファスに似ているが彼よりも背の高いイケメンがいた。

 だがこの表情を見る限りあまり関わりあいたくない。

 私はそのばから全力逃走した。


 後ろで待てとかいう声が聞こえたが無視して部屋に戻る。


「はあ、びっくりしたな」

 

 仕方がないので部屋の中でごろごろしているとリファスが訪れて……怒られた。


「レイスがいるから出るなといったのに。貴方のような容姿の子がレイスは好きなのですよね」

「ご、ごめんなさい」

「……確かにいきなりこんな場所に閉じ込めているのですから当然の反応ですね。申し訳ありません」


 リファスが謝ってくる。

 見ている感じでは誠実そうではあるけれどと私は思っているとそこで、


「では、こちらの物の鑑定をお願いできますか?」

「? 中に似たようなものの入った瓶?」

「はい、まずは能力について説明もしないといけませんので、よろしくお願いします」


 リファスの告げたその言葉に私は、とりあえずはやってみようと瓶を一つ取り出したのだった。








 私が知らないこの館の一室にて。


「あいつがリファスが連れてきた少女か。確かに能力がと言っていたが、それに対する見返りも全部俺は知っているんだぞ」


 そう呟いたレイスは小さく笑う。

 昔からの知り合いのリファスが、とある少女にご注進らしいという話を聞いたのはおとといの事。

 その能力に惚れたのだという話にはなっていたが、調べると、それ以外の話も出てきた。


 そしてそれ以外がレイスには気に入らない。

 だから、目的が達成できて油断したところで、レイスも行動を起こそうと思う。

 すでにどうするかの準備もすんでいる。


 リファスが青くなるのが楽しみだ。


「あいつがリファスのお気に入り。俺はそんなの認めない。絶対に邪魔してやる」


 そうレイスが笑ったのだった。



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