これはある婚活サイトでのメッセージのやりとりの実録(コピペ)である その10
某婚活サイトでの、私とbeckoningさん(33歳・女性・婚歴なし・子どもなし)のやりとり。
去る9月28日にウィンクを送信したら足あと(私のプロフの閲覧履歴)が残っていたので、これは脈があると思いメッセージを送ったが、開封されず。10月12日にも同じようなメッセージを送るがリアクションなし。
ところが昨日(10月16日)になって相手からウィンクが送信されてきたので、再度同じ内容のメッセージを送ったら、本日(10月17日)返信が来た。
【私からbeckoningさんへ】10月16日
beckoningさん。こんばんは。初めまして。
僕は郵便局で、深夜の仕分け作業をしています。
今日は仕事明けで、仕事は非番です。
サンサ右京(右京区総合庁舎)の近くに住んでいますが、実家は八坂の塔の下で、両親は健在です。
実家にしろ、現住所にしろ、読書が好きなので、図書館に近いというのが何よりです。
ゆうべ、図書館で借りた田辺聖子さんの『新源氏物語』を読み終えました。
文庫本で5巻総数2700ページ。この名作の舞台に住んでいることに、感謝せずにおれませんでした。
beckoningさんは、何かおすすめの本ありますか?
【beckoningさんから私へ】10月17日
MNさん、はじめまして。
まずはたくさんのプロフィールの中から、私のことを選んでいただきありがとうございます。
それとこちらからの連絡が遅くなってしまい、失礼しました。マッチドットコムのシステムをきちんと理解していないままだったので、これまで手間取っていました・・・。
私もMNさんのプロフィールを拝見させて頂きましたが、自分と同じように真剣にお相手を探していて、それでいて優しそうな印象を受けて、とても好感が持てました。
慣れない場なのでまだ少し緊張していますが、今後MNさんと親しくさせて頂ければと思います。どうかよろしくお願いします。
ところでMNさんに提案したいのですが、あらかじめ連絡先の交換をしておきませんか?
というのも、MNさん以外の方からも沢山お誘いを頂いていて、ありがたいと思う反面、中には関東や東北など遠くの方もいらっしゃるので、そのつど断りの連絡をするのも、なんだかやり切れなくって・・・。
私としては、親しみやすい印象を受けたMNさんの他に、お会いしてみたいと思うお相手はいらっしゃいませんでした。ですのでもしMNさんさえよければ、恋人募集の掲載も区切りをつけたほうがいいのかも?と思っているんです。
提案したのは私なので、こちらの連絡先をお伝えしておきます。
普段使っているヤフーの連絡先になります。アドレスはbeckoningnnのヤフーメールになります。
まずは簡単なご挨拶の連絡とさせて頂きました。私のおすすめは、ありがちですけどノーベル文学賞を受賞されたカズオ・イシグロさんの作品でしょうか。
それではMNさんからの連絡、楽しみにお待ちしていますね。
【私からbeckoningさんへ】10月17日
beckoningさん。こんばんは。
せっかくのお誘いですけど、肝心のメアドが抜けていますよ。
それはそうと、おすすめがカズオ・イシグロですか……。
僕はmatch登録女性プロフの「最近読んだもの」をいつもチェックしているのですが、今月はその中から湊かなえ『告白』、原田マハ『楽園のカンヴァス』、篠田節子『インドクリスタル』を読みました。それぞれに充実した読書時間を約束してくれる秀作だと思いましたが、人にすすめるとなるとどうでしょう。
おととい宇治十帖を読み終えた田辺源氏もmatch会員女性のおすすめ本で(日本語が美しいとのことでした)、図書館から借りてきたのですが(大抵買わずに図書館で借ります)、これはもとが千年もの間読み継がれてきた古典だけによかったです。通巻5巻の第2巻目中「真木柱」の巻で、鬚黒の大将が愛人の玉鬘のもとへと通う夜、正妻北の方は甲斐甲斐しく夫の身支度を手伝いますが、理性では詮無いことと悲しみを押し隠していても、やがてこらえきれなくなり、とうとう発狂してしまうくだりは迫真の描写です。「火取りをよりよせ、大将の着物に香を薫きしめた」という風に、北の方の屈辱に寄り添った場面がさりげなく示されるので、発狂に至る展開に説得力があるのです。ついには火取りを引き寄せ、大将のうしろからぱっと浴びせ、灰が真っ白に舞い立つ。「ほほほほ。いい気味だ、その恰好で六條院へ行かれるがよい。玉鬘の姫君とやらが、さぞ可愛がって下さいますよ……」
matchとは関係なく、僕個人からbeckoningさんへのおすすめがトマス・ハーディの『日陰者ジュード』。中公文庫から上下2巻で出ていましたが、現在は品切れです。図書館には置いてあるかもしれません。ただし川本静子の新訳に限ります。
このストーリーを昼おびで連続ドラマにしたら受けるのではと思うくらいですが(そういえば数年前にドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』をドラマ化した番組を昼おびでやってましたね。吉田鋼太郎の出演で)、ラスト近くに衝撃的シーンがあり、さすがに現代でも(いや現代だからこそ?)映像化はNGかもしれません。
トマス・ハーディは『テス』が代表作の英国の文豪ですが、『日陰者ジュード』のほうが数段おもしろい。
ましてノーベル文学賞受賞をきっかけに原作ドラマの再放送が決定したカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』より断然おもしろい。ファンなのにごめんなさい。でも『日の名残り』はなかなかよかったですよ。
シリーズ過去作をご覧の皆様にはすでにお馴染みの、なりすまし業者の誘い手。
メッセージが送信されてきたときにはもう、相手女性のプロフは閲覧できなくなっている。
それにしても、肝心のメアドを書き落とすとは……。
このなりすましさんのポンコツぶりは、笑わずにいられない。
機械的なコピペを繰り返してるとこうなるのだ。
こっちも前々作(その8)とかなりの部分重複してるので、偉そうなことは言えないが。
しかも、わざわざカズオ・イシグロをすすめてくるなんて。
得たりやおうの展開に、どっちが誘い水を掛けてるんだかわからなくなる。
ぜひ「その8」と引き比べてほしい。