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夢見る林檎  作者: 夢見愛溺
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予兆

 ずっと夢で見ていたあの光景、景色。夢だからと言って長い間忘れていた。知らない、知ってる?知らない?私は何も。


 「何ぼーっとしてんのよ!りんご!!」

高校二年の夏、町内の夏祭りに林檎と来た九条涼子が言った。九条涼子は苗字からもわかる通り結構な大富豪のお嬢様だ。

「あー、ごめんごめん」

と言いながら林檎は中学の時見た夢を思い出していた。今、涼子と二人でりんごあめを買うために屋台に並んでいる、この光景。何の変哲もないある中学生の日。林檎はこの光景を夢で見た。林檎は昔から妄想癖が強く、誰も思いつかないようなことを言って周りを困惑させていた。周りの目を気にするようになり思っていることは閉ざすようになっていった。

 りんご飴を買い終わった二人は人気のない境内に座っていた。お嬢様なんだからこんな人気のないところにいて大丈夫なのだろうかと思いながらも林檎は思惑とまったく関係のない話を涼子に振っていた。

「楽しいね、来年もお互い暇だといいのに」

「そうね、私は受験があるからちょっと今より忙しくなるかも」

微笑んだ涼子の顔は月明かりに照らされてとても美人だった。


 家に帰り自室のベットの上に倒れこむ。ハアとため息をつき今日起こったことを思い出す。私は予知能力があるのかな、とあらためて考えているうちにいつの間にか眠っていた。


「  様!  様!」

夢の中で誰かの声が聞こえる。清流の流れるような、しかし一度とらえた獲物は離さないような声。この声で半分起きてしまったため目を瞑って妄想しているような脳の状態の中で、林檎は得体のしれぬ幸せを感じていた。


ピピピピッピピピピ

 アラームが鳴り響く。林檎は飛び起きた。午前九時。遅刻だ。今日は八時から林檎の所属している茶道部があったのだ。ダラダラとお菓子を食べながら駄弁っているるだけだがそれに青春をあずけていた。家族は仕事で、頼みの中学生の妹はバトミントン部でとうに出かけていた。起きたんならついでに起こしてくれてもいいのに、と心の中で思いながら準備をすまし高校へと向かった。


 茶道部には林檎を含む女子が四人男子が三人所属していた。先輩は引退し、後輩は一人も入らず、二年生だけであった。周囲の人は皆ゲームをしたり、喋ったり、思い思いに行動していた。

「りんご、お茶入れといたからここに置いとくぞ」

茶道部員の一人の東条衣吹が声をかけた。ありがとう、と返事しながらふと林檎は衣吹を見た。衣吹は一般的に言うイケメンだった。


 帰ってきてから自室にこもりぼーっとする。この部屋で誰かを待っている気分になってきた。何かの予兆だろうか。すると、急にキーンと耳鳴りがした、と思うと気づけば目の前に白髪の男性が立っていた。服装的に裕福な国の王子のような、戦士のようなマントを羽織っている。初めて会うのにどこかで会ったことのあるような、この瞬間を自分自身が一番待ちわびていたような気がした。

「さあ姫、行きましょう」

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