99『ガチのログハウス ( 電気・ガス・水道ナシ ) に憧れる人は多いそうですが、余りの不便さにすぐ飽きる人も多いらしいですね。』
「君は今、何処に住んでるん?」
「今ですか?
今は、ちょっと向こうの木の上です」
四~五歳ぐらい、薄く赤みがかった灰色のロングヘアー、肘や膝をパッド代わりの皮を当てた布製服の旅装、少なくとも見た目は極々普通の『ビタ』と名乗った幼女が住んでいると指差した方へ歩きだしたんで、ついてゆく。
「お、おいっ・・幹太・・!?
付いてゆくんか!?」
「なら放っておけって?
・・大丈夫だって。
嘘なんかついて無いのは源太ちゃんも分かってんでしょ」
「そ、そりゃあ・・のう・・。
じゃが───」
「感情レーダーでも善意だったよー」
「あらあら、そういう問題でも・・あっ、ちょ・・!?」
◆◆◆
木だ。
まごう方なき木。
ツリーハウスみたいなんを想像してたけど、何も無い木。
・・まあ幼女にんなモン期待する方が悪いか。
「住みますか?
私、もう出ていきますので」
「あれ?
俺達が来たせい?」
「えっ!? ち、違いますよ!?
目的を果たしたからです!」
「目的?」
「さっき言ってた【アルラウネ】が本当に死んでいるか確認しに来ました。
・・もし生き残ってたいたなら───
───殺さなきゃいけないんで」
「・・おおう」
一瞬・・殺気? みたいなんが出てた。
源太ちゃんとリャター夫人は思わず咄嗟に剣に手をかけ・・颯太は意味も分からずって感じで飛び退きつつキョトンとしている。
「憎い仇とか?」
「あっ、そういうのでは無く───
・・いわゆる、使命というヤツです」
「使命」
「はい」
「・・使命」
「そうです」
・・なんだろう。
『使命』という言葉を聞いて・・ナニかが心に『ストンと落ちた』のか『引っ掛かった』のか。
スッキリ・・しているのか?
イライラ・・しているのか?
( ナニが、かは分かんないのはちょいストレスだけど。)
よく分からんけど・・うーん・・・。
・・ただ、さっきの腕の事を色々言ってきたみんなの顔が浮かぶ。
「ココを出てどうするの?」
「西際に居るかもしれない【アルラウネ】の所へ行きます。
そして・・生きていたら殺します」
「俺も付いてって良い?」
「良いですよ」
「かっ、幹太・・!?」
源太ちゃんが俺を捕まえ、やや険しい表情で睨んできた。
「・・幹太・・どうした!?
さっきから適当過ぎるぞ・・!?」
「えっ? そうかなあ?
割と今までも、チートに任せて行き当たりばったりだった気がするけど」
「なんで其処迄あの幼女を信頼しとるんじゃ!?」
「ん? いや、逆だけど?
寧ろ、物凄い警戒しているんだけど」
こんな森の奥にこんな幼女が一人・・怪しいじゃん。
少なくとも唯の迷子が迷いこんで無事で済む森じゃない。
たぶん、だけどザレと同タイプの魔力弁異常でリャター夫人と同タイプの身体強化・・そんな感じの魔力の流れが見える。
「し、しかしじゃなあ・・!?」
「・・なんだよ?
元々【アルラウネ】を探してたんじゃん」
俺が色々救ってきたから、救われても良いっつったのはソッチだし。
俺はヤケになって腕を捨てたんじゃない。
◆◆◆
夜。
森で一晩野宿する事になった俺達は交代で見張り番をする。
この中でほぼほぼ一番体力の無い俺が休憩しろ、との事。
あと、付き添いで颯太とビタ。
そして俺達三人が寝静まった頃───
「ゲンタさん・・よろしいのかしら~?」
「・・さあ、のう」
「御姉様も最初は、もっと警戒していたと思いますわ・・。
・・でも、あの『使命』という言葉を聞いてから特に・・」
「・・・・。
幹太と颯太はのう、二人とも・・知らず知らずのうちに御互い嘘を付き合っておるんじゃよ」
「えっ・・!?」
「その事と腕の事が気掛かりで・・ついつい言い過ぎたやもしれん・・。
若干ヤケっぱち気味に為っとるように見えんでもないの」
「でもカンタ先生の言う通り、あのコを放っておく訳にもいかないんでは?」
「其れは無論じゃ。
・・・・・・・・。
・・儂の我儘で始まったような騒動に巻き込んで済まんが───
幹太と颯太の『ふぉろ~』をしてやってくれんかのう?」
「はっ、はい! ソレはもちろん!」
「あの娘達には沢山『救われた』し~・・ビタさんも可愛いしねえ♡」
「とっても頼りになるけど・・ちょっと頼りないヒトですからね、カンタ先生って」
「「「あはは・・っ♡」」」
「───・・・・。
済まんのう・・」
そして、朝がきた。
・・あれ?
俺、見張り番してないんだけど!?
何で起こしてくんなかったん!??




