98『源太は最初のプロットでは『のじゃ炉裏』にしようかと思ってましたが炉裏枠はすでに颯太がいるので止めときました。』
───城。
城の定義とは国や時代によって変わるのだろうが、この世界においての『城』とは『『街破級』の一撃にも耐えられる建築物』のことである。
【銀星王国】王都。
王の住まう場所。
その城の一室、会議室。
今この部屋には【銀星王国】最高権力者16人が顔をあわせ国の行く末全てを決めてゆく。
「ではダロス、その子ザーロス、弁明せよ」
「はっ、その機会を頂き有難う御座います。
我が愚かなる息子デロスの不始末にて皆様を騒がせ申し訳有りません」
「其処からは私、ザーロスが。
まず───」
王族と高位貴族は皆、魔法使い。
つまり嘘は通用しない。
嘘は言ってないが真実の全てを語った訳でもない・・という綱渡りでザーロスは、とある『火種』を隠す事に成功する。
自分の手元に置くには火傷しそうな『火種』。
権力豚に渡しても辺り一体焼け野原になる未来しか見えない『火種』。
「───成程、不完全なる『街破級』と魔法付与・・か」
「私如きが『対、街破級』の一員になる事になる奇跡の種です」
ザーロスは自分と我が家の為。
会議室の面々は己と己の住まう自国の誇示の為。
そして───
「『魔女狩り』・・か」
───会議の間、唯一言発した王・・。
皆、様々な思惑を張り巡らしてゆく・・。
◆◆◆
俺と颯太が初めてこの世界に来た日。
魔力が見えず魔法が使えず、暴走し腕を失い・・挙げ句、身体が動けなくなった。
その為・・颯太が身動き取れなくなり、ディッポファミリー傭兵団が偶々来てくれなかったら、颯太は死んでいただろう・・。
あの時の事は今でも夢に見る。
犬ゴリラへの恐怖。
颯太への申し訳無さ。
・・自分への苛立ち。
「で・・でも、自分への罰だなんては思って無いっつうか・・俺の中の回路?
腕を通して色んな魔力魔法を使う度・・色々整理出来るっつうか・・?
俺の多重魔法展開が生まれたのは手が使えないから───」
「───幹太」
「・・・・っ」
・・呆れられてる。
んな目で見詰められても・・。
「・・まあ、自力では治そうとはしとるし、今はエエじゃろ」
「ゲンタさん・・」
「【アルラウネ】の花は一体一ツ。
テリトリー内に別の【アルラウネ】が居るとは限りらんしの」
「ええー、そんなあ」
「颯太よ・・?
颯太にも原因が・・いや、此れも今はエエか」
「・・?」
源太ちゃんの難しい顔・・。
母さんが死んだ時以来だな。
「もおちょい自信持てい。
『そんな』御主でも色々救っとるんじゃよ」
「そうですよ、御姉様!」
「わ・・わかった、ワカッタって!」
別にソレだけが『俺』だ、なんて言うつもりは無い。
◆◆◆
【アルラウネ】のテリトリーだった辺り。
この辺は特に素材回収が進んでいる。
【アルラウネ】の魔力伝達・監視網の役割を果たすエリ草が強力な回復薬の材料になるから。
けど他の【アルラウネ】と遭遇したという話がない以上・・居ないんじゃないかね。
・・っていう話をしてもどうせ「また逃げてる」って言われるだろうから、話さないけど。
「【アルラウネ】ぇ~!」
「出てこぉいっ!」
源太ちゃんとリャター夫人以外が若干血走った目で【アルラウネ】を探すサマを見て・・地球の絶滅していった動植物って、こんなふうに人間に追い詰められてったんじゃないかなあ・・とか思う。
───んん?
「な・・なあ、辺りの魔力の質が変わってきてないか?」
「またまた・・ウヤムヤにしようとしたって無駄ですよ!?」
「いや・・ホントに・・」
「・・うん?
そういや・・何ちゅうか・・妙っちゃあ妙じゃのう?」
『どちら様ですか?』
「「「「・・・・!??」」」」
俺達しか居ない筈の【魔物の森】の奥の奥。
ソコで聞こえた声の主は・・颯太よりなお小さい・・四~五歳ぐらいの幼女だった。
「【アルラウネ】を探しているようですが・・この辺には居たのは以前刈られた個体が最後。
可能性があるとすれば・・西際でしょうか?」
「えぇー!? 反対側じゃ───んぐっ!?」
源太ちゃんとリャター夫人が颯太を押し退け、前に出る。
源太ちゃんは警戒色たっぷりの、リャター夫人は何時もの笑顔で。
だけど・・何時でも抜剣出来る構えで。
「颯太、下がっとれ」
「貴女、可愛いわねぇ・・♡
御名前は? 何処から来たの?」
「名前はビタ・・と、申します。
何処から・・は、ちょっと説明しずらいのですが他国から」
・・嘘はついて無い。
感情レーダーでも悪意は見えない。
むしろ、情報をくれた時は善意すら見えた。
仲間・・が、居る訳でも無さそうだし・・何なんだ?
この子・・?




