92『儂のう・・顔面に手よりデカイ蛾が留まってから、どうしても駄目なんじゃ・・。』
「そ・・颯太よ、何ぞ幹太だけで独り占めしよる食いモンとか無いんか・・?」
「う~ん・・僕、幹太姉ちゃん程は鯉洗いとか生好きじゃな、」
「其ンなら儂、もっと『大きい』ハズじゃあ!?」
「「「そうですよ!?」」」
あ~・・何か颯太と源太ちゃんが言い争っているなあ・・。
でもまあ・・あの二人ならケンカって事は無いだろォ~・・。
「御姉様・・終わりましたねぇ」
「そおだなあ・・色々あったなあ・・」
「こちらも進路を決めた娘が何人かいるわ~。
ウエスト傭兵団に入りたいって娘以外にも、自分たちだけで傭兵団を作りたいって娘もいるわね~」
ああ~・・『対、街破級』の肩書きを持つ者がタマに『村破級』を狩ってくるだけで、その辺の偉そうにしている一般人 ( この国でお金を稼いでいる一般人は男だけ ) よか、よっぽど稼げる。
ソレを嫉妬した馬鹿が何かしてきても片手であしらえるだけの対人戦闘術は持っているしな。
「デロスが女学園に来た時、騎士そのものに幻滅した娘も誠実な白百合騎士団や黒薔薇騎士団を見て、やっぱり騎士になりたいって娘も多いのよ」
「会社は?」
「正直、今迄の卒業生より成りたいって娘は少ないわ。
肩書きを生かしたい娘が多いみたい」
そう語るリャター夫人は残念そうな気持ちは微塵も無く、むしろ誇らし気だ。
「カンタさん達はどうするのかしら?」
「んー・・源太ちゃんしだいってのもあるけど、今までとそんな変わんないかなあ・・。
『楽しむ』ってのが大事かと」
「ソレは大事ねぇ」
「『楽しむ』・・」
「取敢ず、【ファフニール】の居た山と【北の村】と【街】には行って挨拶したい相手に会うつもりです」
「なら手続きその他の為に【街】までは付いていって良いかしら?
・・最後の授業に」
「良いですよー」
源太ちゃんも出来る限りチカラになりたいって言ってたし、コレぐらいは許してくれるだろう。
「幹太姉ちゃん、ダイエットしてもう少し小さくなりたいんだって」
「ゆ、許せんのう・・」
◆◆◆
次の日。
朝食の後、皆でまずは【ファフニール】の居た山へと出発。
「『蛾』なんで、ちょっと一見怖いかも知れんけど」
とうとう、会話しながら登山していると遠くから
『・・チャ・・? チャチャチャ・・』
と聞こえてきた。
「「「お・・おおう・・」」」
「おおー・・【モスマン】達、元気にしていたか?」
颯太とザレは慣れたモンで、俺達を取り囲んだ【モスマン】に普通に挨拶をしている。
他は───
慣れてくると案外愛くるしい顔に警戒心を解く者、「いや、魔物は魔物では!?」っていう者、ただただ『蛾』が苦手って者もいる。
「俺達・・旅立つ事になったからさ、その挨拶と───
ほら、【ファフニール】騒動で怪我していた奴も居ただろ?
だから御土産を残していきたいんだ」
『チャー?』
「あの青いマユ、あるか?」
『チャチャチャッ!!』
10匹居た【モスマン】の内、7匹がタァーッと、走り去っていく。
「かっ、会話出来よるんかのう・・!?」
「んー、どうだろ?
何となく、そーゆー気がするっていうか・・魔力のパスが繋がっているのに近いのかなあ」
走り去った【モスマン】の後を付いてゆくと以前ジキアと共に来た場所より、【モスマン】と青いマユがたくさんいる所に着いた。
人間にバレてない秘密の里って感じか?
( たぶん ) さっき走り去った7匹の【モスマン】が幾つか青いマユをもいで持ってきた。
早速このマユに魔力を送ると、薄い青色が一瞬で真っ青になり、大きさも若干膨らんだ。
『チャー♡』
御辞儀? っぽいのをして、そのマユをどっかの樹上へ持ってった。
その場で食わなかったって事は誰か食べさせたい【モスマン】が居るのか。
たぶん怪我した奴のだろうな。
並んでいた次の【モスマン】が持つマユにも魔力を送ってゆく。
粗方終えた所で最初の【モスマン】が、例の上等な真っ白いマユをくれたのを見て───
「コレ・・【魔力譲渡】で、私達にも出来ませんかね?」
と、女生徒の一人が言ってきた。
あー・・どうだろ?
少し違うといえば違うっぽいしなあ。
試しに一個、マユを女生徒に渡すと4人係り、息も絶え絶えでやっと真っ青のマユになる。
そのマユを食った【モスマン】が
『チャー・・・・・・チャア』
( ふう・・・・仕方ないなあ ) って感じで真っ白いマユを女生徒達にあげていた。
「あっ、そういえばこのマユって王様にあげたマユより凄いってザーロスさんが言ってたよ」
「あのコの家はソレで食べてる家だから、目利きは確かよ・・リャター商会から買い取ってザーロスに渡すだけで黒にはなるわねぇ」




