90『わしが女学園園長リャターであるっ!!』
「あっ、おぉーい・・ザレ!
リャター夫人がドコに居るか知ってる?」
「あぅ・・あの・・」
───んん?
俺と颯太と源太ちゃんの三人で部屋を
出てやや離れた場所でザレを見つけた・・が。
顔が青ざめている。
「その・・え、園長は・・園長室、かと・・」
「どうし───
・・あ。
ザレ・・ひょっとして、俺達と源太ちゃんとの会話、聞いちゃっ・・た?」
「ご、御免なさい、御姉様!!
ゲンタ様、ソウタ様・・!!
───わ、ワタクシ・・御姉様が眠ってらっしゃった間の事を纏めた書類を作って・・ソレで・・ソレで・・」
「あー・・ハイハイ」
うっすら涙を浮かべるザレをゆっくり抱き締める。
流石に今回はおふざけナシで泣きじゃくるザレ。
まあ一番悪いのは防音室でもない部屋で内緒話をしていた俺だ。
元男とか異世界人だとかは一才口出していないんで、あくまで俺達がココを出ていくとか国家機密っぽい話を聞いてただけか。
「うぅ・・ご、御免な・・ごめ───」
「俺こそ御免な・・」
颯太と源太ちゃんも申し訳なさそうに佇む。
・・暫くして、落ちついたザレが俺から一歩離れる。
「───ふぅ・・・・。
大事な話です・・もの。
御姉様達の判断は当然のことですわ♡
さっ、園長室へ行きましょう!」
「あっ、ああ・・」
◆◆◆
「あら~・・そうなの~」
園長室にて、リャター夫人との相談。
「カンタさん、字は読めたかしら」
「簡単になら」
「じゃあこの書類を見てちょうだ~い」
難しい単語は分からないけど、何の書類かは一目見て想像出来た。
女生徒達が何人かづつで分けられ、上に『会社』とか『騎士』とかの単語がある。
「進路予定表・・?」
「ええ・・元々、座学はある程度終えていたし戦闘は二人の御陰で皆が満足のいく結果になったわ」
「そんな俺達なんて・・たったの二週間ちょい教えただけ・・元々、彼女等の素養が高かっただけですから」
「いいえ・・卒業後ウエスト傭兵団に行きたいって娘もいて、彼方様もプロでも通用するレベルですって♡」
あー、この書類の娘達だな。
【ファフニール】戦の帰り、ウエスト傭兵団団長とイーストさん相手に目が♡になってた娘達が載っている。
「稀にあるそうなのだけど、魔法使いと一緒に生活していると身体強化とか強化される人が居るんですって。
・・何て言ってたかしら?
自ら魔力を生み出す魔法使いが近くに居ると魔力弁がどう、とか?
特に近くに居る魔法使いが強力なら強力なほど───」
はあー・・。
成る程ねえ・・。
確かに身体強化は剣術体術以上にメキメキ成長していった。
ゼロスタートだった、師匠らしい師匠が居なかった・・からだと思っていたんだけど。
未来のリャター夫人を想像させる娘が何人か居るぐらいだしな。
「だから貴女達の旅立ちに問題はないわ。
気兼ねなく旅立ってほしいの」
「そう・・です、か。
───有難う御座います」
「ソレで『対、【ケルピー】』は私も薄々考えていて、準備は怠りナシよ。
実はこんな事も在ろうかと、【ファフニール】退治に来た傭兵団に余ったバリスタ用の矢とか商会で買っておいたわ」
「じゃあ・・」
「今から早速準備開始しましょう!」
「今すぐ!?」
ホントこの人、俺達を雇う事を決めた時といい【ファフニール】退治を決めた時といい即断即決だ・・すげえ漢らしいなあ。




