87『「いいか新人・・犯人を追い詰めるコツは、『金』か『女 ( 男 ) 』の流れを見る事だ」って話。』
「源太ちゃん、色々話をしたいけど・・俺、先に寝るよ」
「なんじゃ? しんどいんか?」
女学園へ到着。
リャター夫人が学園へ皆を案内する中、俺達用の部屋が用意されてある学生寮を指差し源太ちゃんに告げる。
以前、魔力を使いきって気絶した時は数日寝っぱなしだった。
初めての時もそうだったけど、今回は戦闘真っ最中だったから途中で目が覚めたんだろう。
無理矢理目覚めたせいか、数日は寝りっぱなしになるだろう頭の重さがある。
「・・そうか、分かった。
事情は儂から伝えとこう」
颯太とザレ、女生徒の何人かに連れられ寮に入る──直前に気を失った。
◆◆◆
「あっ、幹太姉ちゃん。
起きた!?」
「御姉様、御加減は如何ですか?」
「ん・・バッチリだ、有難う。
みんなは?」
「ソレが───」
・・・・?
歯切れが悪いな?
自分では如何とも・・とにかく直接話を聞いた方が早い、との事で学園の方へ。
やはり数日寝てたそうで、何人かは既に帰ったそうだ。
「うん?
起きたか、大丈夫かの?」
「ああ、体調も魔力もバッチリだよ。
・・会議は?」
ちょうどお昼時だったみたいで、ほぼほぼ皆食堂にいた。
俺も数日食ってないんで薄めたシチューと果実水を貰う。
「・・うむ、ソレなんじゃがのう・・。
まあ、今迄通りと言えば今迄通りじゃ。
全員、同じ組織に入って云々ではなく
『リャター商会混成団・1000人』の中に名前だけ貸す───ちゅう訳じゃわな」
偶々の偶然が重なりに重なった結果、1000人で倒せた。
自分達に本来の『対、街破級』の実力がある訳ではないので期待されても困る。
何の催しにも出ないし、誰の下にも付かない。
・・って事らしい。
「じゃあ何も問題無いんだよな?」
「他の皆は、の。
問題は儂等家族・・颯太に聞いたんじゃが、お主が『ちいと』と呼びよるこのチカラじゃよ」
「・・あー・・やっぱり?」
「特に幹太。
お主、今なら【ふぁふにいる】を一人で倒せるんか?」
「少なくとも・・【デロスファフニール】なら」
伝承の【ファフニール】は100m超えな上、もっと賢しそうなんで最後の大爆発は当てれない気がする。
少し威力を下げた奴を連射・・颯太と二人なら何とかなるか?
ただ、【デロスファフニール】なら俺達三人が居なくても1000人で倒せそうだけど・・。
「ザーロス殿が困っておったぞ。
儂等のチカラは上位貴族を超える、下手に晒そうモノなら戦争に発展しかねんとな」
然りとて、自分家で匿うにはリスクがデカすぎる。
犯罪だとか世界征服だとか野心も無いし、目の届く範囲で大人しくさえしてくれるなら───
寧ろ自由にしてくれ、って感じか。
現場にいた黒薔薇騎士団の一人が話を継ぐ。
「元々、ザーロス様は『黒い川』『魔物の森』等事件でゲンタ様を【ゲラェブ領】御領主ダロス様に紹介しております。
この条件を飲んでくれるならば、カンタ様ソウタ様の存在はダロス様まで届くことなく一切政治利用される事は無いでしょう」
「まあ・・願ったり叶ったり、かなあ」
元の世界へ帰る為、支配階級に接触はしたい。
でも飼われるような状況は避けたい。
俺達を飼おうとするか、始末しようとするか。
思っていた以上に俺達と支配階級の連中とは針ネズミなようだ。
近付いたような離れたような。
「んで、どの『目の届く範囲』に居るかじゃよ」
「ん?」
「リャター夫人達の下か、ディッポ殿の下か、儂の下か、じゃ」
「───えっ?
儂・・って・・源太ちゃん、一緒に来てくれないの!?」
源太ちゃんはテーブルに立て掛けていた長剣と首の首飾りに目をやる。
・・なんか妙に色っぽい仕草で。
「お主等が此方で仲間に出逢うたように、儂も仲間と使命を得た。
・・もし二人が別の道をいくゆうんなら其れでエエが、儂は儂の道をゆく」
「・・そう、なんだ」
颯太を見ると、困ったように笑う。
既に聞いてた話みたいだな。
「儂とて二度と会えんと思とった二人に会えて嬉しい。
・・が、なんも今生の別れっちゅう訳じゃない。
『魔力のぱすを繋げる』ゆうんも覚えたし、何時でも逢えるわい」
「その使命って?」
「世に仇なす魔物を退治する。
此れは傭兵の仕事とも若干違うでな」
源太ちゃんが触る長剣を見て───
「・・男?」
『ギクッ』
───何か聴こえた。
空気の震動に因らない・・でも、何らかの音が。




