60『褒められて伸びるコの間違った教育法。』
『チャチャチャチャチャチャッッ!!』
10匹の【モスマン】が、一斉に鳴きながら横並びで一列になり背伸び万歳で、踊り始めた。
魔力汚染で脳が───
とかではない・・はず。
感情レーダーの反応は・・善意。
魔物から善意が見えたのは初めてだ。
( ・・惚れないよ? )
「お、襲ってくる感じでは・・ありませんわね?」
「あっ、マユを一斉に吐き始めたよ?」
「大きい・・ソレに同じ白色でも輝きが違いますわ!」
「こ、コレは・・マジの鑑定士に見て貰うレベルッス!
お礼・・の、つもりッスかね!?」
「幹太姉ちゃんスゴーい♡」
もうやめて。
俺のライフはゼロだから。
失敗を誉められるのはかなり恥ずい。
「幹太姉ちゃんに、なついたのかな?」
「何百年も前に、そうゆう・・凶暴な魔物を使役させる研究が在ったとかは聞いたッスけど」
「あっ、ワタクシも座学で習いましたわ!
・・ですが、卵から育てても魔物は人間にはなつかないので失敗した、とか」
「元々【モスマン】は人間に手出ししない、大人しい魔物ッスけど───
・・可能性としては、『魔物を気遣って』あんな『高密度魔力』を渡したから・・ッスかね?」
「研究をしていた連中は、人類の敵である魔物に気遣いなんて、しなかったのかもしれませんわね」
「そもそも、高密度魔力を譲渡する・・なんてカンタさん位しか出来ないッス!」
「幹太姉ちゃんだもん!」
悶える俺を放って考察する三人・・を無視して、マユを吐きながら踊っていた【モスマン】を眺めていた。
『チャチャチ・・チャ!?』
・・突然、揃って獣道の奥へと消えていった。
周りの、その他【モスマン】も。
「お、怒らせちゃったスか?」
「いや・・感情レーダーだと、善意が突然消え失せたけど悪意は無かった。
・・何か彼等にとって、パニックになるようなトンでもないことが『あの先』で起きたっぽいな」
「山火事かなぁ?」
「魔物の森の【コカトリス】みたいに余所から危険な魔物が入り込んだ、かもッス」
「・・御姉様?」
「───その二つなら、今なら何とかなるかもしれないな。
取敢ず様子だけでも見に行こうか?」
◆◆◆
「こ・・コレ、岩山・・だよな?」
【モスマン】達は崖崩れ跡に糸を吹き掛けていた。
落石防止の為・・には見えない。
崖崩れから見える『ソレ』を隠したがっているみたいだ。
「その筈・・ッス。
じゃなきゃ・・こんな馬鹿げたモノ・・唯の悪夢ッス」
「心音とかは・・一切しないね。
少なくとも生きて無いよ?」
「コレは・・教科書の通りなら間違い有りませんわ!
『街破級【ファフニール】』・・!!」
崖崩れの裂目の奥───
山と同じくらいの巨大な人型生物の死体が埋まっていた・・。




