59『野生の生き物を餌付けしてはイケません。』
「───ココを・・こうして、コレで完了ッス」
ジキアが、葉についた【モスマン】のマユを傷つけず取り、ひっくり返して葉についてた部分の穴を見せてくる。
キノコの傘にも見えるな。
「おぉ・・芋虫が入ってんのかと思った」
「芋虫と卵のマユは土ん中ッス。
【モスマン】は、餌の小さい虫や植物をマユで包んで、マユごと食うらしいッスね」
「じゃあ【モスマン】のゴハン無くなっちゃうの?
みんな大人しく見てるけど」
「取るのは空っぽの白いマユッスよ。
基本、この山の魔物は自衛以外で人間を襲わないらしいッス」
「【モスマン】もですの?」
「そうッス。
マユの数を守る為にも、出来うる限り殺しちゃ駄目ッスよ」
「「「了解 ( ですわ )」」」
あの羽が退化して手足が進化したようなのが【モスマン】か。
山に入った俺達を遠目に眺め、警戒する魔物達・・いわゆる野生動物のような動きを観察しつつ、【モスマン】のマユを集める。
「微かに青みがかってるのが、中のエサが融けてマユに魔力が宿っている状態ッス」
「グロも無さそうだな」
「白色なのは、エサが取れない時期用の非常食らしいッスね。
今はその時期じゃ無いッスから【モスマン】が餓死する心配は無用ッス」
「ふーん、本来はマユに貯まった魔力を食うんだな。
じゃあ非常食を採っちゃう御返しに、青いマユに魔力を分けようか」
「出来るんスか?」
【魔力吸収】の要領だな。
【ワーム】にやった、相手の体内に俺魔力を送るアレだ。
爆散も魔力汚染も困るんでちょっとだけ魔力を送る。
「・・う、うすい青色が一瞬で真っ青に成りましたわ」
「あと大っきくなったよ」
「や・・ヤバくないスか?」
「・・・・・・よし。
代替えのエサを用意して、捨て───」
───と、思ったら一瞬で【モスマン】が群がる。
「「「ひいっ!?」」」
「うわー凄いねー」
颯太以外が腰を抜かす。
体長30cmの人型蛾10匹が、膨らんで20cmぐらいになったマユに群がり貪り食う様は恐ろしすぎる。
「・・く、食い終わった・・みたいッス」
「う、動かないですわ」
「み、みんなで逃げん?」
「あ」
10匹の【モスマン】が・・ゆっっくり、コチラを振り向いた。




