58『距離を取られた・・ように見せかけて油断している、バカ可愛───無防備な奴を一撃で仕留める気マンマンです。』
「ザレ、疲れを残さない程度に訓練しようか」
「は・・はいっ、御姉様♡」
俺が、樹脂油による炎魔法を得意とするように、ザレは目に見えて分かり安い土魔法を得意とする。
土魔法の利点は、材料が何処にでもあり、非常に安定しているトコ。
弱点は炎より重い土を操作する事による魔力ロスと、足元からの攻撃しか無いトコ。
「・・うん、身体強化魔法と土魔法の併用がだいぶ上手くなったな」
「ホントですか!?」
うーん・・魔法は普通に使えるんだよなあ、ザレも自分の体内魔力を確認しつつ操作する。
ふと、決意を決めた顔をして野営準備をしているジキアに近づく。
「───あっ・・あの」
「な、なんスか?」
「ま・・魔力弁異常で排出異常の人は皆魔法を使えるんですの!?」
「ああ、オレの聞いた症状は───
魔力異常による高熱を出した後、弱い自己再生魔法擬きを多少発露するぐらいらしいッスね」
「つまり、魔力を制御した・・なんて聞いたことない訳ですわね!?」
「そうッスね」
ザレが目を瞑りながら天を仰ぎ深く息を吸う。
暫くして、ゆっくり息を吐いて・・再び俺の方へ歩いてくる・・途中でクルッと再び、ジキアへ振り返り───
「明日は負けませんわ!」
「お、オレだって負けないッス!」
───あ。
・・ザレに赤くなるジキアに嫉妬する自分と、ジキアに話しかけるザレに嫉妬する自分がいる・・。
元の世界に帰るから・・待ってる人がいるから・・って、ジキアとザレから距離を取ってる俺が言う事じゃないよな。
お互いに失礼だ。
「───幹太姉ちゃん?」
「ああ・・彩佳に、父さんと爺ちゃんに会いたいな・・てな」
「うん・・そうだね。
・・でも僕は幹太姉ちゃんから絶対離れないよ!」
「・・ああ。
俺も颯太を守るからな!」
ジキアに、ビシィッと指差すザレ。
魔法使い云々、俺の彼是はともかく、ディッポファミリー傭兵団も女学園のみんなも、俺にナニかをくれた人には幸せになって貰わなきゃいけない。




