79『反動で、男好きが多いです。』
≪【巫女】様バンザイ!
【巫女】様バンザイ!
【巫女】様バンザイ!≫
≪幹太ちゃん、御疲れさん≫
≪体力回復の薬草を用意するのですよ≫
≪幹太様、父母の名誉を守って下さり有難う御座います≫
≪幹太・・頑張ったな≫
≪幹太・・何時も、申し訳ありません≫
俺の中の、魂の世界で称賛の嵐。
気恥ずかしいけど・・まあ、ソレだけの世界の危機を救った自負はある。
今だけは、良しとしよう。
・・・・。
個人的には───この、沢山の人々は・・どうやって俺の様子が分かっているのか、が、気になるんだが・・。
俺の中と言いつつ、俺の内臓と一緒に有るとかじゃない。
あくまで、俺の魔力が作りだした複数の 『 青い世界 』 の一つってだけだ。
俺が、俺の世界に入ると・・チャンネルが閉じてそうゆーのは分からんしね。
俺の視界が、テレビみたいに見れる場所とかが有るのだろうか・・。
その・・最初に『反』を倒した時、彩佳とお風呂に入った時とか───
・・止めとこ。
怖い。
俺は純情可憐な乙女なのだ。
ソレよか、『反』だ。
「寄生虫探査魔法 & 時空震探査魔法!」
生物が使う魔力の揺らぎを感知する魔法と、ヴォイドが魔力に反応して起きる歪みを探査する魔法を同時使用。
肉片の一欠片からすら復活した『反』を、逃さず調べる。 調べ尽くす。
肉片を発見しだい、【 魔王の粘土 】が唯一吸収できない巨体スライムの全身を使って根こそぎ拐う。
≪【巫女】様、池上の所のモンでさぁ≫
「あ、はい。
何ですか?」
≪『反』の魂はどうしましょうかねぇ?
アイツぁ・・魂の欠片を、扉を通して移動できるんでしょうや≫
「あー・・。
ゼレバくんに寄生してたっていう・・」
≪ソレには、見当と対策が有ります≫
「母さん?」
≪最初の『反』は・・三人の人間が、溶け絡まった状態だったとか≫
83年前。
魔物が大発生し、俺と颯太は・・多くの傭兵団と共に原因となる魔物を退治しに行った。
その傭兵団の中に『反』の源となった下種傭兵三人組も居たんだが・・私利私欲の為、奴等は同じ組織に属する傭兵仲間を危機に陥れたのだ。
俺はまあ・・出来るだけ永く苦しむよう、細工して三人をスライムプールに落としたんだけど───まあ、永くなりすぎた訳だな。
≪おそらく最初に『反』を倒した時、三人の魂が解れて散々になり・・そのウチの一つが運悪く、肉片と巨大な魔力と揃ってしまったのでしょう≫
「最初の『反』を倒した時・・確かに『殺した』って感覚はあった」
≪つまり、あと一人の『反』の魂が何処かに居るはずです≫
肉片は・・うん、コレで全部回収した。
魔力も───颯太たちから助かったって感情が、魔力パスを通して来ている。
≪魂だけの移動・・魔女の【 魔力体 】に近い移動法でしょう。
───此方には何千万という魔女が居ますからね≫
「魔女のテリトリーに、矮小な下種が一匹迷いこんだって訳かあ」
≪ええ、彼女等を動員すれば───ちょっ!?
仁一郎を貸す訳が無いでしょう!?
なっ、空太が欲しいのなら戦争です!≫
・・なにやってんの。
まあ、そのうち見つかるか。
「───おまえ・・もうちょい感情じゃなく、本能で生きりゃあ良かったんだよ」
俺、本来の姿形に戻り、左手の一部を袋状にして包んだ【 魔王の粘土 】に語り駆ける。
秋原の人間は割りと、本能で動くしな。
「俺とおまえ、同じスライムプールで溺れた者同士・・そうすりゃ、ひょっとしたら、もしかしたら───仲間に成ったのかもな」
何も代えさない【 魔王の粘土 】。
この中に、魂は無い。
「ま、良いや。
───バイバイ」
今度こそ念入りに、細胞一片残らず潰して終わり。




