70『る○ぶ、異世界にも進出。』
「幹太さん、お久し振り」
「お久し振りです。
・・最近はどうですか」
「景気は、御陰樣で良いよ」
「・・そう、ですか」
半グレ共以降は、特に問題なく旅に出れた。
土魔法にて秋原家を歩かした魔法で、家と土台と足を作って旅開始。
足は移動速度を重視して、蜘蛛タイプ。
チホさんは、ずっと遠い景色だけを見てる。
うんうん。
俺も初めて異世界を旅してた時は、例え何でもない景色であっても見飽きなかったなあ。
・・で、【 国境の村 】。
その商工ギルド会長。
83年前、物流の止まった世界にて物流回復の旅をしたが・・その頃に世話になった人だ。
彼のお父さん、先代会長はディッポ団長と仲が良かった。
そして彼自身は、ジキアと仲が良かったのだ。
商売人としての裏表を感じさせない、気持ちの良い人なんだけど・・あまり体が強くない。
偶に俺ん中に来て、商談とかしてるからまだ健在だけど・・本来ならとっくに───
「コッチに・・永住───」
「───幹太さん」
「は、はいっ!?」
「貴女たちと共に居るのは楽しい。
・・けどね、最近は父さんやジキア君の夢ばかり見るんだ」
「・・・・・・。
・・・・。
・・。
───分かり・・ました」
彼は魔法使い。
魔法使い同士の会話に、嘘も御為ごかしも通用無い。
「・・・・はい、通行許可書だよ。
───良き旅を」
「───良き旅を」
たぶん、コレが最後の会話。
お互い笑顔だから、良い別れなんだろう。
◆◆◆
「そうですか、会長は・・」
「ええ」
【銀星王国】から【国境の村】を通りすぎ、【連合】へ。
飲食料を求め向かったのは、複数の小さな国が集まって出来た【連合】内では、比較的大きな村。
この村の商工ギルドで会長をしているのは、俺たちの仲間で83年前共に旅をしていた人だ。
縁の下の力持ちとゆうべき彼には本当に御世話になった。
「貴方も、ギルドの後進がたいぶ育ちましたし・・」
「ハハ、未だ未だですよ」
彼も50代の見かけながら、100歳を超える。
なんか俺ん中の世界には・・色んな企業が、色んな施設を建てており、彼も時々は俺の中へ来ている。
中でも温泉施設が御気に入りらしい。
「ですが、妻は【人土】ですしね・・」
83年前の旅で、【人土村】から付いてきた女性【人土】の一人と・・何らかの再縁が有ったらしい彼は、俺の80年の眠りの間に彼女と結婚していた。
「・・いずれ、妻と共に御伺いしますよ」
「・・はいっ、お待ちしています!」
やった。 人生の仲間をゲットだ。
正直・・もう、知り合いに先立たれるのは辛いからな。
◆◆◆
昔馴染みと久方ぶりの再会、そして再び共に歩むと誓い・・『 最後の 』 村を目指す。
「みんな。 次の村にリリさんと共に居るハズの源太ちゃん、あと何でか『三者を越えし者』や・・・・羅佳?
え? 何で羅佳が?」
「あの子も『旧世代』相手にコソコソしてたっぽいしね。『反』のヴォイドを止めたパーティ・・じゃないかしら?」
「あー・・なるほど」
俺たちと、颯太との再会の邪魔になる一切のモノは持ち歩かないよう───と言われたので通信機の類いは持っていない。
魔力パスのみ。
魔力パスも、プライバシー侵害しないように普段はほぼ完全に閉じ・・今も位置と感情が分かる程度に薄ボンヤリとだけ繋げている。
だから、詳しい事情は分からんが───
「まあとにかく、もうすぐリリさんたちの居る村へと着く」
「リリ・・」
「基本みんな、歓迎ムードだけど・・完全には喜びきれてない感じかなあ?」
「リリに何か有ったんでしょうか!?」
「嘘は吐きたくないから正直、その可能性は有る。
ただ、重ねて言うけど深刻な感じはしないし・・打ち身程度の怪我か、軽い風邪程度だと思うよ」
「汚物? は消毒です」
「もちろん、リリさん以外の可能性も有るわ。
傭兵団が数人付いてってるみたいだしね」
「チホちゃん、大丈夫だよー」
「そうだぜ、リリ姉ちゃんは魔法使いなんだろ?
だったら自己再生魔法が有るから、そんぐらい直ぐ治るさ」
「これから行く村は、料理が有名で体力回復効果も高い・・って、【国境の村】で買ったガイドブックにも載ってるしねぇ」
「みんな・・そうですよね!」
チホさんが擬似魔法使いになったのはリリさんと別れてから。
魔力パスは、ココに居るメンバーとしか繋げられていない。
心配だろうけど・・もうすぐ会えるんだ。
仲間とは・・ずっと一緒に居て欲しい。




