66『此方の世界も青かった。』
「───娘が・・なんですって?」
「ひぃっ!」
「いや、『 ひぃ 』 じゃなく」
イーストから、『 娘が拐われた 』 と連絡が来た。
彼が、何処かで拵えた子供でないかぎり・・拐われたのは俺の末娘、『 秋原 イーシア 』 だ。
2年前に産まれた、ラブリーチャーミーな素敵な子。
天上の花も、己の醜さを恥じらう愛らしさの化身だ。
そんな子を・・何処の誰か知らんが───
「・・うー、あー・・。
実はもし、幹太ちゃんと勝負したら───結構互角かなー、なんて思ってたんだけどねー・・」
「あわわわ───」
「やっと───やっと颯太婆ちゃんが、幹太姉ちゃんの方が強いって意味分かった・・。
ちょっと、幹太姉ちゃんと試合してえって思ってたけど・・やめる」
「かかか、幹太の姉御っ!!
落ち着いて下せぇ!」
「イーシアは・・イーシアはまだ2歳で、体も弱いんだぞ!?」
みんな何故か竦み上がっているけど・・そんな暇ないっ!
渾身の魔力パスで探すっ!!!
「いやー・・弱いって言うか───」
「彩佳!」
「・・そりゃ分かってるわよ。 血が繋がって無いとはいえ、イーシアもアタシの娘よ。
命掛けで探すし、助けるわ。
・・ただねえ」
「頼むよ、彩佳っ!?
───ほら、アッチに2km地点だ!」
「だから探すってば。
クワガタたち、お願い」
うう・・イーシア、辛い目にあってないかなあ!? 酷い目にあってないかなあ!?
「・・・・彩佳さん、ちょっと探すのを躊躇ってます?
・・いえ、魔力が見えるようになって───彼女が本気で心配している事は分かるんですが」
「うーん、オレもスッゲエ心配だけど・・その子も秋原家の人間なんだし、強いんじゃねえか?」
「そうだねぇ・・。
僕と幹太姉ちゃんが前に会ったのが3年前だから・・イーシアちゃんと直接は会ったこと無いんだよ。
妊娠中に心停止しかけた、とは聞いたけど」
「そうなんだー・・心配だねー」
そうだよ、心配なんだよ!
「・・ん? か、幹太の姉御・・アッチに2kmって」
「何ですかっ!?」
「ひぃっ!? ど───ドスコイエンペラーズが隠れてる場所と一致するなー・・って」
。
「ひぃっ!?」
「あ、あの超魔力が・・一瞬で全て消えると───ソレはソレで怖いですね・・・・きゃっ!?」
「・・・・さあぁぁぁぁぁ、みぃんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・馬鹿ガキ退治に行こうかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「は、はひ」
皆が立つ、足場の土を持ち上げる。
今は【銀星王国】の城の脇に有る、『 秋原家 』 を歩かせた魔法だ。
広場の土とはいえ、交通が不便になるから周囲から寄せた土で蓋。
なあに、そんじょそこらのシェルターよか丈夫さ。
「・・チホちゃーん。
最初チホちゃんが相手に怪我させた時にショックを受けてたけど・・たぶん今から凄い怖いコトが起きるから・・天井のシミでも数えてた方が良いよー」
「あのね・・天井なんてドコにも無あああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・っっ!?」
土を大ジャンプさせる。
ちょっと一瞬で雲の高さまで来たけど・・周囲の慣性は、制御してある。
問題ない。
「問題しか無ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・っっ!?」
「だっ、旦那サ"マ"あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・っっ!?」
「そっ、颯太婆ちゃん、宇宙かなあああぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・っっ!?」
「宇宙はもうちょい上かな」
「颯太・・あんた孫が鼻水垂らして泣き叫んでんだから、もうちょっと優しくしてあげなさいよ」
「コレも修行だよ」
急上昇かーらーのーーー・・急降下あああぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・っっ!
待ってろ、糞共。
『 恐ろしい 』 って言葉の意味・・今日生まれて初めて知る事になる。




