63『運営様に怒られない話。( たぶん。)』
「ぐっ・・ぐぐっ・・・・」
「アタシはローソクを持上げるイメージだけど・・想像力の化け物、幹太ちゃんは炎その物を持上げるって言ってたしねー」
誰が想像力の化け物だ。
ココは傭兵ギルド総本部VIP室。
先ずは親友だと言うヨーに任せようと、彼女がチホさんの魔法師匠に成っている。
その隣に理太くん。
次は自分が身体強化魔法を教えるため・・なのと、理太くん自身も炎魔法の練習している。
颯太と同じく、身体強化魔法は天才的な才能が有るけど・・炎魔法だとかは一切使えないようだな。
「ま、ヨーが使う魔法は『 究極の基礎 』というか・・使いやすい魔法だろうさ」
「『 原始 』魔法、とでも言うべきだものね」
「ああ」
彼女の 『 母親 』 から習った魔法らしい。
最初に魔法を使った、あの人の───
≪・・幹太ちゃぁん?≫
「聖者?」
≪キミは・・コレで良いのかい?≫
「覇者・・ヨーの事か?
そういや二人は、ヨーと全く会話してないな。
・・逆に聞くけど、二人は良くないと思っているのか?」
聖者と覇者、あと『三者を越えし者』である賢者。
この三人の魔女は、昔とある男の嫁だった。
三人は、深く深く男を愛していた・・けど、男のほうは彼女等を利用していただけだったのだ。
「今はもう、『 アイツ 』 は居ない。
───ヨーは、ちょい天然だけど良い娘だろうさ」
≪良い娘なのは認めるわよぅ。
・・認めるからこそ、『 彼 』 にヨーが消されはしないか・・心配なの≫
≪無論、かつて世界を救った 『 三者 』 としての矜持から言わせて貰えば・・事はヨーだけの話じゃない≫
二千年前、千年前、83年前の、世界的危機の再来・・か。
≪ヨーは・・3年前までは、魔法を使え無かったわぁ。
貴女の目覚めとリンクしたかの如く、魔法を使えだしたのよぅ?≫
≪ヴォイドは、厳重に封印してある。でも・・・・でも、なんだよ。 幹太くん≫
・・・・。
「問題無いさ。
魔王討伐隊に、新世代の傭兵団や騎士団に【人土・人花・人狼】。
魔女は全員味方になってくれた。 ウィンも。
そして何より・・ヨーが居る。
『 アイツ 』 なんか、敵じゃ無いさ」
≪そうか・・そうだね。
君が言うなら、そうなんだろう≫
≪今や、全魔女の主となった幹太ちゃん≫
「別に主になったつもりは無いし、チカラが無くても同じ結論だよ」
皆には、それだけのチカラが有る。
≪分かったわぁ、このお話はコレで御仕舞いよぉん≫
「このお話は?」
≪幹太くんと彩佳ちゃん、まだまだ 『 お盛ん 』 みたいだねえ?≫
「はいっ!?」
「ぶフォっ!?」
隣で俺たちの会話を、ミルクティーを飲みながら聞いていた彩佳が・・思いっきり吹く。
同じく、反対側隣で聞いていた颯太もニヤニヤしながら聞いてくる。
「結婚して三年目ぐらいだったら・・全然ガマン出来ない時期だよねぇ♡」
「颯太っ!?」
「大丈夫、ダイジョーブ♡
僕と理太郎くんも、割りと子供たちが寝てる隣で・・・・♡」
「颯太あああっ!?」
秋原家の人間が、性欲強めなのは・・まあ認める。
性欲が強い=相手 ( 俺の場合は彩佳 ) への愛情が強いって事だからな。
颯太にも、そりゃその素養は有るんだろうけど・・特殊な性癖はお呼びじゃ無い。
聖者と覇者の二人に毒されたと思いたい。
悪霊か。
魔女の主っつうなら、その権限でお祓いしたい。
「幹太さん!?」
「幹太姉ちゃん、どうしたんだ!?」
「あ、なんか旦那様と同じ表情してるー!」
あ、あんな変態と一緒にすんな。
「も、もう寝ようかって話をしてたんだよ!」
「・・そうね( 怒 )」
「「「 はあ・・? 」」」
怪訝そうなチホさん理太くんヨーの三人だけど、寝る。
彩佳も溢したミルクティーを拭きながら ( 何故か ) 俺を睨んでくるし・・寝る。 ぜったい寝る!
でも、小声で悪魔の囁きが───
≪( 幹太ちゃぁん? 私が貴女のお母さんの前世・・森の民の御先祖様だって忘れてなあい? )≫
「( んぁ・・!? )」
≪( 貴女のお母さんの植物好きは、私の血筋。 薬毒なんでもござれ。
・・媚薬も、ね♡ )≫
「( !?? )」
「( 幹太姉ちゃぁん、一度ハマっちゃうと・・逃げだせないよ? )」
・・・・・・・・。
結局、10分ぐらいはガマンしたんだが───キツくなった俺と彩佳は、空き室を ( 黙って ) 借りて朝まで鍵を掛けた。
隣じゃ無い。
だから、聖者に勝ったのだ。
・・勝ったのだ。
◆◆◆
「おはよー」
「・・・・颯太、何か言う事は有るかしら?」
「うににににに・・!?
ごめん、彩佳姉ちゃんっ!?」
目の下にクマを作った、でもお肌ツヤツヤな彩佳に頬っぺたをツネ上げられる颯太。
まあ颯太の気持ちは・・何となく予想出来る。
颯太の好きな人は・・もう居ない。
そして【人土の巫女】のスペアにして、強力な【人土】である颯太は・・コレからの永い時間を───一人で過ごさなきゃならない。
たぶん、寝寂しい夜を・・多少はああやって誤魔化しているんだろう。
( 主な被害者は俺と彩佳だが。)
「俺にもっかい 『 再構成 』 が来て、善人男に惚れちゃうように・・颯太にも春が来ると良いんだけどなあ」
「颯太さんに、春・・ですか?」
「あ、チホさんおはよう」
「おはようございます、幹太さん」
コチラもやや目の下にクマが有るチホさん。
変な意味・・では無く、徹夜した甲斐あって幾つかの魔法を覚えたらしい。
「理太くんから、二人が旅立つキッカケは聞きましたが・・」
「俺が目覚めた数日後・・ずっと病床に居たのに───まるで 「 もう良いよ 」 と言わんばかりに理太郎くんは亡くなられたそうだからなあ」
まあ颯太の心の問題だ。
颯太に任せるしかない。
( 聖者は、キツく怒っといた。)




