62『「 よーし、一緒に奴等のミソを掬おう! 」「 ソレは遠慮します 」』
『───でっ!?
なんで日本人を狙った?』
『お、オレも『旧世代』に入りたかったんだ・・』
『・・入れなかったのか?』
『き、き『旧世代』のノの、いっぱイい一般兵にももも劣ると言わレれたタたたたた───』
・・・・。
最初は支離滅裂な感じがしていた取調室の犯罪者。
半グレやヤクザ共・・息を吸うように人様へ迷惑をかける人種の、舌の根の乾かぬウチにコロコロと変わる 『 あの言動 』 だな。
けど・・徐々にヤバイ感じに変化してゆく。
ヤツに取りついた彩佳の菌糸が、 「 キシャッ! 」 と威嚇する。
「彩佳?」
「彩佳姉ちゃん?」
「ひ、必要な情報だけは絶対に吐くようしたもん」
必要以外の情報は吐けなくなっても良いっつう事ですな。
コッチの部屋の、彩佳以外の人間全員からカタカタ震える音がする。
・・まあ、ソレはともかく───
「『旧世代』・・ね」
「幹太ちゃんと彩佳ちゃん、颯太ちゃんは、聞いて無いかもだけどー。
旦那様とかは知ってんだよねー」
「へ?」
「姉妹再会の邪魔に成らないよう、結構みんな動いたらしーよ?」
「「「 あー・・ 」」」
心当たりは・・無くは無い。
『反』との戦いで、奴の体内の扉魔法からの 『 ヴォイド流入 』 が無くなったのは・・そうゆう事なんだろう。
子供たちやイーストがコソコソしていたのも・・まあ、そうだよな。
有難や。
「んで、『旧世代』とチホさん・・日本人を狙う事と、何の関係が?」
「チホちゃん、日本でも狙われたんだよねー」
「よし、アイツ殺そう」
「あ、アンタ、人の所行に震えといてソレっ!?」
「仲間に手ぇ出す奴は許しまへん!」
「・・・・」
「チホちゃーん。 この夫婦って結局、似た者夫婦だからー」
「ワタシ、ナニモ、イッテナイ」
で・・結局コイツは先祖のゴタゴタも有り、『旧世代』の事もよく知らずに憧れていたらしい。
ネオナチを騙るガキみたいなモンか?
・・暴走族に憧れるガキ、の方が近いかな。
『旧世代』かっけー♡
↓
『旧世代』入りてー。
↓
『旧世代』、「お前なんか要らん」
↓
でも『旧世代』に入りてー。
↓
『旧世代』の敵に、日本人が居るらしい。
↓
あ、日本人はっけん!
↓
↓
↓
で、襲ったら返り討ち───【人茸化】され、現在に至るっぽい。
みなが呆れる。
「しょっぺえ奴だなー。 チホ姉ちゃん、ビビること無えよ」
「うん、そーだよー。
ヨーが付いてるもん!」
「ありがとう、二人とも」
理太くんとヨーは、雑魚を捕まえた。
めでたしめでたし・・と、成っている。
・・けどなあ。
「チホさんには悪いけど・・ちょい面倒かもしれん」
「え?」
「そうね・・この手のチンピラって、一匹見たら三十匹いると考えるべきよ」
「【銀星王国】首都に居るかぎり・・また別のに狙われちゃうかもねぇ」
「そんな・・」
悲しげなチホさん。
特別なチカラを持たない一般人が、数十人の犯罪者から狙われてるって聞いたら・・そりゃ怖いよな。
んー・・・・。
「取敢ず・・えりゃっ!」
「きゃっ!?
───え? ええ?」
「【チホさんの巫女】に成ったから。
チホさんはコレで疑似的な魔法使いだよ」
「は? え? まほ?」
「わっ、チホ姉ちゃんから魔力が出てる!?
幹太姉ちゃんすげー!」
「幹太ちゃんから魔力を借りてるんだねー。 ヨーも【巫女】になる練習しよっと」
チホさんは、眩げに目を細めつつ・・キョロキョロしていた。
急に見え始めた魔力を、目で追っているっぽい。
「あぅ? あー・・?」
「アンタも、リリって友達と会うまで暫く一緒に居るんだから・・幹太の非常識には馴れといた方が良いわよ?」
「大丈夫、幹太姉ちゃんは優しいから」
ちょい停止していたチホさんが、虚ろな目で自らの掌をグーパーして・・ 「 はあ 」 とだけ答えた。
聞けば、チホさんは・・どうも『反』のヴォイド源にされていたらしい。
今回の異世界旅行も、その彼是の末に迷惑をかけた親友に会いにゆくため。
一生ヴォイド体質と成り、魔法使いの友達と別離した自分が ( 疑似 ) 魔法使いになる───その因果にも放心してたそうだ。
「『旧世代』・・か。
ウザいな。 もう全員逮捕されたっぽいけど、残党とかウゼェなあ」
「今日は、この首都に宿泊するんですよね?」
「傭兵ギルドのVIP室を使っても良いし、王宮にもコネが有るからアッチに泊まっても良い。
どっちも信頼のおける傭兵団や【人土】に騎士団が護衛してくれるから」
「幹太さんが王宮にコネ・・って言うか、有る意味王宮が幹太さんに───」
「シッ。 シぃーッだよ、チホちゃん」
「・・?
まあ不安なら、疲れているだろうけど今すぐ首都を出発しても良いよ。
なあ?」
頷くみんな。
チホさんに任すようだ。
「・・私、日本で『旧世代』に色々されて───ヨーや【人土】の皆さん、自衛隊の方々に助けてもらいました」
「うん」
「チホちゃん・・」
「でも、助けられるだけじゃ無く・・私も何かしたい。
幹太さんから御借りしたチカラですけど───負けたままでいたく無いんです!」
「・・分かった。
コツさえ掴めば簡単な魔法を教えるよ」
「オレ、身体強化魔法を教えるぜ」
「さっき襲われた時みたいに、イザという時は超速歩魔法で逃げられるだけでも、心に余裕が出来るからねぇ」
「ヨーも教えるー!
魔力パスで繋がろー!」
「ええ、お願い」




