60『「彩佳もだぞ!?」と言ったら、腹パンチ。』
さっき逮捕した奴の話を聞きに行く道中、俺たち一行は情報交換っつうか・・ただ会話する。
「き・・99歳と92歳、ですか・・」
「まあ俺は80年間寝てたから、精神年齢は19歳だけどな」
「ホントは俺と颯太婆ちゃんって、祖母と孫の関係なんだぜ」
「黙ってて御免ね? チホさん」
「い、いえ」
「ヨー、ほんとは83歳のお婆ちゃんだけど・・まだ友達でいてくれる?」
「・・そりゃビックリはしたけど───
もちろんよ、ヨー。
貴女は・・私の二人目の親友なんだから」
「うん!」
日本人の女の子、チホさん。
父さんの幼馴染み、美千代さんの曾孫らしい。
母さんが親友だと言っていたな。
颯太もヨーも、俺たちの年齢を言って無かったそうだ。
二人に目配せして、実年齢を打ち明けた。
「ヨーと颯太さんの自力はともかく・・幹太さんの若返りは魔力を持たなくても、誰でも若返れる───ってソレ、国家機密級の話じゃないんですか!?」
「俺は別に秘密にしては無いんだけど・・何か、回りがなあ」
「ま、バカは居るしね」
「俺ん中に入れる条件も 『 人様に迷惑をかけない 』 ってだけなのに、そんな事も守れない奴が多いんだよ。
あ、チホさんなら良いぞ?」
「もうちょっと歳を取ったら・・まあ」
以前、壮年の女性たちから 『 入れろ請求 』 が来た事が有った。
曰く、『 俺は女性の味方のハズだ 』 入れなきゃ 『 女性差別と見なす 』 とか何とか。
俺が助けてきた女性たちとは、『 絶対的に 』 違う連中に何を言われようと知ったこっちゃない。
「でも・・若返りって、肉体操作って事ですよね?
ならちょっと・・最近、ヤケ食いする機会が有って、その、お腹が───」
「ソレは効果無さそうだねぇ、幹太姉ちゃん?」
「ぐ」
目覚めてから・・平和な世の中、激しい運動する機会は無く、ね?
その、ね?
食っちゃ寝してたら、ね?
お腹が、ね?
颯太がニヤリとする。
うう・・。
精神年齢だと俺は19歳、颯太は92歳だからなあ。
格と年期が違う。
「───み、美千代さんには俺も有った事有るよ。
酔っ払って、「 ひょとしたら貴方は、私の子供だったかもしれないのォ~ 」 って絡まれたなあ」
「ご、御免なさい」
露骨な話題変更に付き合ってくれるチホさん。
エエ娘や。
みんなもヤレヤレ顔で乗ってくれた。
「あれ、昊御義母さんと口論に成ってたわよねー」
「僕は3歳の時だから、ちょっと覚えて無いなぁ。
・・んぅ? アレかな、幹太姉ちゃん」
「ああ、アレが傭兵ギルド総本部だ」
傭兵ギルドへ行くと、例の犯人は本部の人間が連れてったとの事。
理太くんが、キラキラした目で聞いてくる。
「幹太姉ちゃん、傭兵ギルドとの違いは何なんだ?」
「ギルドは傭兵が。 本部は事務員が主に働いているんだぞ、理太くん」
「むかし、一部のギルド職員が腐ってた事も有ったからねぇ。
ギルド職員の養育施設でもあるらしいよ」
「へー、じゃあオレはギルドで働くぜ!」
「俺も」
「僕も」
「いや・・アンタ等は特別顧問として、有る意味では総監のイーストよか偉いんだからね?」
「俺、現場主義だもん」
「僕も」
「ほんとアンタ等姉妹は・・。
受付とか、雑務を喜んで引き受けたりするしさ」
「良いじゃん」
「ねー?」
頼んできた女性は新人さんで、俺の事を知らなかったっぽいけど。
「アッチは傭兵学校。 まあ専門学校だな」
「空っぽですね?」
「ちょい前に入学式が有って・・そこで何か、発表会みたいなんをするってイーストが言ってたな。
合同ピクニックかな?」
「傭兵集団のピクニックとか・・何かの隠語にしか聞こえないんだけど」
イーストは内容を教えてくれなかった。 イーストは・・まあ俺のせいで、秋原家の中では非常に立場が弱い。
何時もなら堕ちる、甘え声を出してみても・・なお教えてくれなかったのだ。
子供たちが、俺と颯太が三年ぶりに会うのに邪魔に成らないよう・・といってくれたのと、同じ理由っぽいが・・。




