59『完全無欠の自業自得。』
「女お───幹太さん、此方の人払いは終わりました」
「あ、どうも済みません」
「女王───お姉ちゃん、アッチはつうこー止めだよ?」
「有難うね」
ふう。 颯太に会うため移動してたら・・まさか共に、ヨーの気配を感じるとは。
しかもどうやら【銀星王国】へ向かっているみたいだし、ソチラへ進路変更したら───こんな、暴漢事件だ。
「ヨー、そっちの日本人の子は?」
「アタシの友達だよ、幹太ちゃんー」
「ど・・どうも、女王さ───」
日本人の彼女が何かを言おうとして・・【銀星王国】の国民に、「 しぃーっ! 」 ってヤられている。
・・なんなん?
何か、俺の知らん間に内緒事でも有ったのか?
あと何で、ヨーは彼女のオマタに魔力を送ってんだ?
───ただならぬ関係、な訳無いよな?
浮気じゃ無いよな?
「大丈夫? コイツに何かされなかった?」
「い、いえ・・ヨーが守ってくれたんで」
「そっか、良かった」
彩佳がクワガタで周囲を視認警戒 ( 数百の超高性能ドローンを同時に飛ばしているようなモン ) し、怪しげな男に【人茸化キノコ】を植えていた。
・・相変わらずグロいなあ。
特に今回は、街中で白昼堂々とヤラかした犯罪者だ。
ソコソコぶち切れている彩佳が、ちょい多めにキノコを植える。
全身が菌糸に捕らわれ、顔の上半分のみピョコンと露出していた。
・・ひとつサキノ男になる、例の広告みたい。
「幹太の姉御!」
「あ、皆さん!」
パトロール中の傭兵団が騒ぎを聞きつけて、やって来てくれた。
昔こそ男尊女卑をしていた彼等だけど・・今は街の治安維持に務め、国民の模範と成るべく清く正しい生活をしている。
・・だからみんな、そんな立派な彼等がチラチラ俺のお乳を盗み見てるからって、そんな目しちゃダメ。
仕様が無いんッスよ。
「───では、コイツは牢にブチ込んでおきますんで」
「お願いします」
【銀星王国】で犯罪者に人権は基本的には無い。
刺又や、刺又の先が輪っか状に閉じるヤツで犯人をワザと痛くしながら連行してゆく。
───と、そうこうしているウチに・・この魔力パスは!
「幹太姉ちゃーーーん」
「そっ、颯太ぁ!」
颯太が、颯太が・・向こうから走ってきた。
三年待ったんだから・・焦らず、歩いてココまで来たが───やっぱり顔を見ちゃうと駄目だな。
俺も颯太も、お互い駆けよる。
「幹太姉ちゃん、会いたかったよぅ!!」
「俺も、俺もだぞ颯太ぁぁ!」
抱擁。 号泣。
彩佳も結婚してからは、しんみりと泣いてくれるようになった。
あと知らん子。
9歳ぐらいの頃の理太郎くんにソックリだ。
颯太の子・・は流石にないだろうから、孫かな?
ヤンチャそうな子だけど・・彼も泣いてくれている。
「た・・確かに、三年ぶりの再会だから感動はするんでしょうけど───颯太さんたち、普通に連絡はとってたんでしょ?
理太くんに至っては・・初めて会う、ただの親戚よね??」
「秋原家の七不思議かなー。
彩佳ちゃんも、昔は 『 何故泣く? 』 って、言ってたらしーし」
「・・・・」
「チホちゃんも、もし秋原家にお嫁さんに行ったら急に泣きだすよー?
軽くホラーだからー」
「・・・・」
何か、ヨーが適当言っているが……家族との再会は泣くものだろう?
◆◆◆
「じゃあ、颯太と理太くんトコには何も無かったんだな?」
「うん。 雑魚の群だけだったよ」
「楽勝だったぜ!」
嘘は言っていない。
「そっか。 俺んトコもだ」
「手品が得意なのと、実力を勘違いした馬鹿ぐらいよね」
「何処もおんなじだね」
「ああ」
俺たちも、嘘は言っていない。
「でも・・じゃあ何で、幹太姉ちゃんたちは遅刻したんだ?」
「「 うぐ・・っ 」」
子供は無邪気で・・残酷だなあ。
≪理太くぅん? この二人は夫婦なのよぉ?≫
≪まあ、色々ある訳だね≫
「んー?」
───しまった。
颯太ん中には、色々詳しい人が居たんだっけ。
一瞬で感づかれちまった。
二人の一言で、颯太とヨーが気付く。
ううう・・俺ん中だと颯太はまだ12歳なんだけどなあ。
「えっと・・」
「幹太ちゃんと彩佳ちゃんはねー。
ファミコン版タ○チのパスワードみたいな事をしたんだよー、チホちゃん」
「???」
遠い喩えなのか、そのものズバリな喩えなのか───とにかくヤバイ喩えを出すな。
俺と彩佳の顔が赤くなるのを見て・・日本人の女の子、チホさんも気付いたみたいだ。
勘弁して下さい。




