58『アホの子 vs アホの子。』
男の人が物陰から出てきたー。
服も身体も、何日も洗ってないにおいだなー。
ヨー、不潔なひとキラーイ。
「そっちの黒髪の女・・オマエ、日本人か?」
「・・だ、だったら何なのよ!?」
あ。
チホちゃんが怖さの余り・・つい、『 そう 』 言っちゃたけど───
なんとなく・・だけど 『 それ 』 は言っちゃ駄目な気がするなー。
「・・・・。
・・ひ、ひひ、『 見つけた 』 ぞ!」
「な、何よ・・何を───」
『 エア・プレス! 』
なんか、男が笑いだしたけど・・。
言い終える前に、魔法でフッ飛ばす。
・・殺してないからねー?
「チホちゃん、話なんか聞く必要無いからー。
無視して逃げよー?」
「え? でも? ・・う、うん。
そ、そうね」
チホちゃん、パニくってるなー。
まあフツーの女子学生は、こんな状況に慣れてないかー。
「もうすぐ幹太ちゃんが来る時間だし、颯太ちゃんと合流しよー?」
「え、ええ。
魔力パスってので、颯太さんの位置が分かるんでしょ?」
「任せろー!」
・・やだなー。
なんでチホちゃんを狙うんだろー?
80年前にチイちゃんが倒して、チホちゃんを利用してたマフィアの生き残りかなー?
マフィアは地球人で・・アイツは、異世界人だしなー?
◆◆◆
アタシが本気をだせば、あんな奴置き去りに出来るけど・・チホちゃんに合わせたスピードだとねー。
颯太ちゃんも、アタシたちのピンチに気付いたみたいだけど・・お互い迷路みたいに入り組んだトコに居たから、颯太ちゃんたちのスピードでも中々合流出来ないよー。
うー・・チホちゃんを守る為なら建物をブッ壊して、颯太ちゃんトコまで一直線の道を作っちゃおうか、それとも・・この男を、殺───
『 クワガタたちっ! 全ての通路を! 』
「えっ!?」
女の人の声。
と、共に凄い数の虫。
うわー・・軽ーく、うなされる光景だねー・・。
今晩は、虫の悪夢で決定だよー。
「・・ったく、今の【銀星王国】で女性を襲おうたぁ、良い度胸じゃない」
「は、離せ・・!?」
「獲って食いはしないわよ。
この子たちはね」
「な、なんも喋んねえぞ!?」
「あっそ」
言って、女の子は掌からキノコを産みだして男に植えた。
もがき苦しみだす男。
うー、また悪夢が増えたよー。
チホちゃんもカタカタと、男にじゃなく女の子に震え───あ。
んーと、んーと・・水魔法で揮発させれば、誰にも ( チホちゃん自身にも ) 気付かれ無いかなー!?
「まったく・・アンタたち、大丈夫?」
「は、はい! ・・って、日本人?」
うん、助けてくれたのは日本人の女の子だねー。
「彩佳ちゃんも大丈夫ー?」
「ええ。 いくらアタシでも、こんな雑魚相手に負けはしないわよ。
・・さあ、洗いざらい吐いて貰うわ」
『ぎ──ぎぽぽ─あ──ひひ───』
うわー、R18だねー。
彩佳ちゃん、幹太ちゃんを天然って言うけど・・割と似た者夫婦だよねー。
天然って、本人が一番気付けないんだよ。 ヤレヤレだぜー。
「彩佳、周囲の封鎖は終わったぞ」
「あんがと。 思ったより早かったわね?」
「なんか知らんけど、何人かが手伝ってくれたぞ。
───久しぶり、ヨー」
「久しぶり、幹太ちゃん」
さーて、天然夫婦のお出ましだー。
チホちゃんは大丈夫かなー?
アタシたち、フツーの感性だとキツいぞー?




