57『ひゃっはー! おもてなししてヤるぜー!』
「ココが【銀星王国首都】・・」
「異世界情緒に少しだけ、日本の便利さが交ざって・・素敵ですね。
公衆トイレが多いのも助かります」
「颯太ちゃん、ココで幹太姉ちゃんに会えんのか?」
「んぅー、どうしよっか?
待ってても来るし・・素通りしたら、【北の村】辺りで4~5時間早く会えるかな」
チホ姉ちゃんたちを見れば・・クチの端が、微かにピクピクしてる。
・・たぶん、オレも。
「し、4~5時間くらいなら───か、観光したいなー・・なんて」
「あはは。 だと思った」
チホ姉ちゃん達が、よくぞ言っててくれたって顔をしてた。
そして颯太婆ちゃん、こうなるって分かってたんだな・・やっぱ颯太婆ちゃんは強くて優しくて最高だな!
「その為に本当は進路じゃない、この国へ寄り道したんだよ。
幹太姉ちゃんも、それで気分害したりなんか絶対にしないし」
「じゃあ・・」
「うん、この国のお小遣いをあげるから遊んでおいで」
「わーい」
「えっ、私も良いんですか!?
どうも済みません!」
「わーい」
ヨー姉ちゃんが素直に喜んでいるのを、チホ姉ちゃんが注意してた。
この国のお金は昔、颯太婆ちゃんが幹太姉ちゃんと共に 『 姉妹傭兵団 』 で稼いでた頃の残りらしい。
何時か・・オレもこの国で傭兵んなって、稼ぐってのも良いなあ。
◆◆◆
「ココが傭兵ギルドだよ」
「り、リリが読んでた小説だと・・こういう場所で、怖い人に絡まれちゃったり───」
「大丈夫だよ、チホ姉ちゃん。
怖い奴が居たらオレがブッ飛ばしてやんぜ!」
「アタシもー! ギルド館ごとブッ飛ばしてやんぜー!」
「いや・・ギルド館ごとは───」
「んだァ? ずいぶん騒がしいな、ココはガキの遊び場じゃ」
「「 ・・こっ、怖い奴ーー!!! 」」
スゲーでかいモヒカンマッチョのオッサン ( 肩にトゲトゲのパット ) が、ギルド館から出てきた!?
「あ、その人は───」
咄嗟に攻撃しちゃったオレのパンチや、ヨー姉ちゃんの魔法の威力を・・颯太婆ちゃんが完璧にいなす。
ちょい焦って、マジパンチしちゃったし・・ヨー姉ちゃんは宣言通り、ギルド館ごと吹き飛ばす威力だったんたけどな・・。
やっぱ颯太婆ちゃんはスゲーぜ。
「 めっ!」 って、二人とも怒られちゃったけど。
「───あ、あれっ!?
もしかして、颯太の姉御ですかい!?」
「うん、久しぶり。 元気にしてた?」
「ええ、お陰さんで。
おう、オメェ等! 颯太の姉御だ!
準備しやがれ!」
「「「 おうっ! 」」」
オッサン等が、颯太婆ちゃんにペコペコしながらギルド館が片付けられてく。
颯太婆ちゃん、この国の英雄だし最強の傭兵団だし・・崇められてんだな。
パッと見は9歳の女の子な颯太婆ちゃんに、デケェオッサンが頭を下げてる光景にチホ姉ちゃんが目を丸くしてる。
「ソレで颯太の姉御、何の用っすか!?」
「まず、紹介するね。
この子が僕の・・家族で」
「秋原 理太です、さっきはゴメンなさい」
孫・・って言おうとして、チホ姉ちゃんの事を思い出したみたいだな。
チホ姉ちゃんなら、全部言っても問題無いっぽいけど。
「この人は、僕の父さんの知り合いの曾孫さん」
「ど、どうも。 ち・・チホです」
まだちょいオッサンの悪人顔にビビってるけど、颯太婆ちゃんにペコペコしてるからチホ姉ちゃんの警戒心も溶けてってるぜ。
「で、この人は───ヨーさん」
「ヨーだよー!
よろしくねー!」
・・何だろ?
今、颯太婆ちゃん・・変な間があったな?
だいぶ颯太婆ちゃんの事を理解してくれたチホ姉ちゃんも、そう感じたみたいだ。
「おう、よろしくな!
じゃあ俺たちも。
俺たちは昔、どうしようも無いクズ野郎だったんだが・・颯太の姉御と、その姉───幹太の姉御のお陰で改心できた連中だ」
「く、クズ・・」
「おう。
中にゃあ、幹太の姉御の献身的な説得にも応じ無かった馬鹿共もいたがな。
・・あ、今ココにゃあ居ねぇから安心してくれ」
「は、はあ」
お互いの自己紹介が終わったら、颯太婆ちゃんが 『 観光したい 』 っていう本来の要件を言ったぜ。
颯太婆ちゃん名義の 『 傭兵預金 』 みたいなのが在って、ソレに結構な量が入っているみたいだ。
「先月までは日本円も問題無く使えたんですがね。 今、大扉が使えなくて・・商人共が日本円を渋ってやがんでさあ」
「颯太ちゃんが、悪い奴等をブッ飛ばしたから、大扉は使えるハズだぜ!
オレも手伝った!
もうすぐ街破級を一人でヤれるんだぞ!」
「さ、さすが秋原の人間でやすな。
ですが一般人に、その情報が降りてきてねぇと成ると・・まだまだ日本円や日本不信は続くやも───」
「その辺、僕には分かんないかな。
偉い人に聞いてよ」
「アンタ等姉妹が、この国で事実上のNO.1とNO.2なんですがね・・」
「に、二番目に偉いんだ・・」
颯太婆ちゃんを、尊敬の目っつうより・・ビビった目を向けるチホ姉ちゃん。
偉いけど、偉そうじゃ無いんだしなあ。
「じゃあコレが颯太の姉御の分と、三人の分の金でやす」
「ありがとう」
「で、どうしやす?
昔と比べて女でも歩きやすい国になっちゃあいますが・・観光の間、護衛は着けやすかい?」
「んぅ・・僕と理太くんには要らないけど・・」
「ヨーも要らなーい。
チホちゃんはアタシが守るしー」
「ええ。 私も、ヨーが居ればそれで・・」
「じゃあ護衛は良いや。
みんなは普通の警備をしててよ」
「分かりやした。 楽しんでって下せい」
◆◆◆
幹太ちゃんが来るまで自由じかーん。
颯太ちゃんと理太くん、アタシとチホちゃんとで二組に別れてお買い物ー。
イザという時の為に、お互い魔力パスは繋ぎっぱなしだねー。
レッツ、ぴーぴんぐとむー!
「ちょっとだけ日本の文化が交ざっているのが面白いわね・・」
「ぶんめー? の、ブレイクスルー? とか言うのを起こさないために、ちょっとずつ日本文化を交ぜてるんだってー」
「ああ・・なるほど」
チホちゃんとお買い物、楽しいなー。
あっという間に、約束の時間が近付いてきた。
偉い旦那様のお仕事を、ヨーも手伝ってるから・・ヨー、あまり人付き合いが無くて友達いないんだよねー・・。
「───ん?」
「どうしたの、ヨー?」
「なんか・・ソコのひと、だぁれ?」
「!?」
チホちゃんがビックリしてる・・。
やっぱり普通の人には気付けない感じで、隠れて付いてきてたんだねー。
「さ、さっきの傭兵さん!?」
「違うよ、チホちゃん、」
隠れてる人・・悪い心が見えるなー。




