56『仮想現実装置をテーマにした小説を書いてると、何となく使いづらい単語です。』
「颯太ちゃん、幹太姉ちゃんの魔力パスはどっちだ?」
「んーっとねぇ・・アッチだね」
もう【ジート砦】に居るハズの幹太姉ちゃんが居ない。
普段なら、遅刻しない人らしいんだけどさ・・颯太婆ちゃんの話だと、魔物と戦ってるかなんか在ったんだろうって。
基本、トラブル体質らしいぜ。
「その・・魔力パス? って、便利ね。
ドコでも誰でも分かるの?」
「何時でも繋がっていたい程、『 好きな人 』 か 『 嫌いな人 』 ならね」
「嫌いな人も、なんだ・・」
チホ姉ちゃんが、意外そうにしてる。
ようは、心の強い繋がりに魔力が反応してるんだしな。
その点じゃ、好意も悪意も同じって事だぜ。
「幹太姉ちゃんはねぇ・・。
昔、僕たちを襲ってきた半グレをこの魔力パスで遠隔餓───さ、行こうか」
「餓───・・なにっ!?」
あー・・この時の話は何回か聞いたなあ。
颯太婆ちゃんと理太郎爺ちゃんとで、内容が違うんだ。
「颯太ちゃんは、この時に格好良かった理太郎・・ちゃんに惚れたんだよな」
「ちょ・・もう、ヤダなあ♡」
「理太郎ちゃんは、この時の事をずっと後悔してたんだ」
「・・はあ、僕は嬉かったのにねぇ」
魔法使いじゃ無い理太郎爺ちゃんは・・まあ、正直弱い。
この時、颯太婆ちゃんを守るために半グレへ立ち向かっていって───返り討ちにあった理太郎爺ちゃん。
颯太婆ちゃんは 『 自分を守るために向かってくれた 』 姿に惚れ。
理太郎爺ちゃんは 『 守るのに失敗した挙げ句、気絶してた間に全部終わってた 』 のが情けない・・って、酔っ払った時に言ってたな。
「何ナニなにー? 恋バナー??
ヨーはねー、旦那様とねー・・」
「恋バナじゃ無くて、魔力パスの話だったんだけど・・ヨー、リリの魔力パスとか分からない?」
「ヨー、リリちゃんと会った事ないし」
「・・それはそうよね」
「僕もリリさんの事は分かんないけど、リリさんと僕の仲間が一緒に居るらしいから案内は任せて」
「お願いします」
オレは知らないけど・・『三者を越えし者』って人とクジャラって人、秋原家だと颯太婆ちゃんの爺・・婆ちゃん? の源太ちゃんとその人の娘の久喜さんだな。
早く会いたいぜ。
「まず、近い幹太姉ちゃんと彩佳姉ちゃんと合流してからだけど」
「女同士で結婚して女同士で子供産むんだから、スゲーよな」
「えっ!? そうなの!?」
「幹太姉ちゃん、この・・ぎ、【銀星王国】? の女王様だから法律も好き放題だぜ」
「じ、女王様・・( と、その妹!? )」
「悪徳政治は絶対しないけどね」
「こ・・子供ってのは??」
「二人が【人土の巫女】と【人茸の巫女】だから・・かなあ?
人体の神秘だよねぇ」
「神秘すぎよ・・」
未だに、二人に子供が出来たちゃんとした理由は分かんないらしい。
聖者と覇者の二人は、なんか変な方に話を持ってくし・・。
「ん? 幹太姉ちゃんたちの魔力パスに動きが有る・・この感じ、僕たちに気付いたのかな?」
「そ、そこまで分かるの?」
「僕や幹太姉ちゃんの魔力だと、分かり過ぎちゃってプライバシーの侵害に成っちゃうからね。
普段はパスを閉じているんだよ」
「へー・・」
「ヨーもヨーも!
旦那様が忙しくて、ずっと会えない時は魔力パスで仮想エッ───」
チホ姉ちゃんが、ヨー姉ちゃんのクチを塞ぐ。
あー・・これ知ってる。
エロとエロが何か言おうとして、颯太婆ちゃんに怒られてるヤツだな。
◆◆◆
「ヨー、飛ばせるよ? 全員」
「ごめん。 私、ちょっと生身で空は無理だわ」
朝メシが終わり。
出発の時間。
チホ姉ちゃんが魔法使いじゃ無いから、超速歩魔法で行けない。
オレと颯太婆ちゃんは身体強化魔法系しか使えない。
から、空は飛べない。
( 颯太婆ちゃんは昔一回だけ幹太姉ちゃんの魔法で空を飛んだらしいな。)
んで、歩いていく事になった。
まあオレも、みんなと早く会いたいのは会いたいけど・・異世界をゆっくり観光したいってのも本音。
「向こうも僕たちの方へ歩いてきてる。
今日中に会えるよ・・!」




